他医での手術後の修正を求められる症例が引き続いています。これもむしろ逆に、ブログでの啓蒙広告活動が、功を奏している事と感じます。それだけ読者が増えたということでもあり、有り難い事ですが、施術者としては難しい症例が増えて来て、プレッシャーが掛かります。でもそれは私にやる気を出させて、良好な結果が出ればやりがいを感じさせます。その結果今回の症例は丁度いい経過を提示できそうです。
症例は20歳の女性。先天的には一重瞼で眼瞼下垂状態を認識していた。3年前に眼科医院で切開手術を受けているが、重瞼は外れた。見ての通り下垂も残存しています。眼球位置は、角膜中心間距離60mmと平均値であるのに対して、内眼角間距離が39mmと離れている。眼裂横径も24mmと小さいつまり、蒙古襞が被さっているし、その結果突っ張り(拘縮)が強くいために開瞼を阻害している典型的な症例です。実は挙筋筋力(滑動距離)12mmと正常範囲であり、先天性筋原性(筋力低下)眼瞼下垂ではなく、フェニレフリンテストでシミュレーションすると充分に開くため後天性腱膜性眼瞼下垂状態を呈していると考えられる。前頭筋が常時収縮していて、眉毛が挙がっている。それが見た目に嫌なのでかどうかは判らないが眉を書く為に眉毛は剃っている。
ラインは前回のラインで仰臥位で瞼縁から5.5mmとし、切除幅を3mmとしました。内側まで同幅にデザインし、1辺4mmのZ-形成のデザインに連続させました。下の図で目頭を越えて切除デザインが描かれていますが、その下にZ−形成をしているので蒙古襞の被さりが1.5㎜どけたらその上に重瞼線が来る様にデザインしているのです。Z−形成の縦線は蒙古襞の稜線に沿っていて、下の線は開瞼時に僅かに見られます。
術直後の写真を下図に載せます。
今回の症例は眼瞼下垂の改善と、その結果重瞼が狭くなるので皮膚切除しました。39㎜と内眼角間隔離の原因は、やはり蒙古襞の拘縮の証拠と考えられ、眼瞼の内側の下垂の原因の一つとなっている為拘縮の解除を要しました。皆さんご存知の通りいつものやつです。
その結果機能的には眼瞼の開瞼が得られました。画像では、開く力を入れていない模様です。何故か、術直後には力を入れすぎている症例と力を入れてくれない症例があります。麻酔の影響が残っているのが原因と考えられますが、精神的作用も影響していると考えます。局所麻酔は皮膚面からと眼瞼結膜側から注入しますが、通常皮膚側からは主に眼輪筋に働いて閉瞼を阻害しますから、同じ力でも開きがプラスされます。眼瞼結膜側の注射はミューラー筋にも作用します。ミュラー筋は開きが足りない際に信号を発して反射的に眼瞼挙筋の収縮を増やす作用がありますから、ミューラー筋に麻酔が作用すると、開瞼調節性が低下して開瞼が不足します。日常でも眠いと目が開かなくなるのはこの作用です。この二つの機序のうちどちらが優位に働くかは私にも予想出来ません。それに手術直後は終わって安堵して、力が抜ける場合もあります。
上の画像では開瞼が強化されて見えないかもしれません。でも術中に仰臥位の患者さんの正面よりも僅かに上方に座している私が、強制的に「目を開いてこっち向いて下さい。」と御願いしたら、カッと開いていました。術直後の画像は機能的に評価には堪えません。
でも形態的には瞼縁の内側が下がっていたのが明らかに改善しています。黒目(角膜)の上に水平に掛かってはいませんが、内側に向けての傾斜は改善傾向にあります。私の瞼は水平に挙がりますが、多くの人は内下がりです。統計を取った訳ではないのですが、アジア人ではだいたい水平1:内下がり3くらいの比です。白人では映画等画像を見ていての印象ですが1:1と見られます。何故かと言うとアジア人では一重瞼に伴う眼瞼下垂症と蒙古襞の強拘縮が原因となるからでしょう。これらの要素があると内下がりになり、三要素が伴うと重度の内下がりになります。漫画でアジア人を吊り目に書かれるのはこの為です。もう一つモンゴリアンスラントと言って外眼角と内眼角を結ぶ線が外上がりになる特徴もあります。平均で水平線より約8度傾斜してます。これも吊り目の原因です。本症例では吊り目は軽減していますが、水平にまではなっていません。
蒙古襞の拘縮が原因で吊り目になるのは皮膚性の要素は目頭切開=Z−形成法による蒙古襞の拘縮解除術で除去出来ますが、皮膚性に突っ張って産まれ育ってて来た為に内側の眼瞼挙筋が作用しないまたは存在がない構造になったものは改善に限界があると考えられます。二重でも末広型で蒙古襞がある人はこの構造になっている事が多いため、内下がりの開瞼が多いのだと考えられます。眼瞼が開く際に全体が開いてアーモンドアイになる方がきれいだし、視界が良い筈です。この点でもアジア人は損失を被っています。
本症例は、眼科で眼瞼下垂手術を受けた後に改善度が不足したケースです。昨今の眼科医は大学等で研修する間に眼球の診療つまり視機能の診療を主体に勉強します。眼瞼の診療は二の次になる医局がほとんどです。ですから眼科医で眼瞼下垂症の手術に精通している医師は稀です。そもそも創の取り扱いにも美容的観点が欠けるためきれいな結果を出せない眼科医が多いのです。創のことは形成外科に任せろです。かといってチェーン店の美容整形外科屋には、眼瞼下垂症に対する機能と形態の両面からの診療を出来る訳がありません。見ての通りコマーシャルしているくらいですから、彼等のしているのはメディシン;医療ではなくビジネスです。美容外科と形成外科を共に研鑽して来た医師は本邦には数少ないのです。私達はその100人に満たないうちの二人です。これまで永らく、日本の医療における診療科目の標榜制度の不備を訴えて来ましたが、数年後にやっと実りそうです。そして最近やっと私達の優位性が認識されてきました。これもブログでの啓蒙活動の御陰でしょう。今後とも難しい症例が来院する事となりそうです。頑張ります。
昨今右傾化して、アジア人の独自性を称揚する傾向がありますが、眼瞼の不利性に関しては遺伝子の変異があるため否定出来ません。眼瞼の機能が低下していれば視界が低下しますし、相手から見て目元の表情が感知出来ない為にコミュニケーションが不足します。要するに頭脳労働に支障を来すのです。一重まぶたと眼瞼下垂症と蒙古襞の拘縮は同時に治せます。別に差別している訳ではありません。医療は機能障害を解消する為にあります。日本人の総体を有利な機能にしたいのです。韓国等は美容整形で国力を挙げて来ましたよね。あくまでも彼等はビジネスですが、医療としての形成外科・美容外科診療に邁進して、日本国民の機能と形態の向上を図って参りたいと襟を正しているところです。
なんかまた、振りかぶった所で、症例の経過はまだ日数を要します。機能と形態の完成を見るのには、数週を要します。まず次週をお楽しみに!