2015 . 6 . 3

当院の目頭切開術=蒙古襞に因る拘縮の解除術は、他院の術後再建にも応用できて有効です。Ⅱ −1ヶ月後の経過−

他院での目頭切開手術の結果、なんかへんな目元の形になってしまった症例を、1ヶ月前に当院独自のZ形成術を応用した目頭修正術で修正しました。術後1ヶ月の経過を提示します。

まずは画像から、下図は左が術前、右が術直後です。

ヒツモト前ヒツモト後

術前に何が変かというと、目頭は開いているのですが湾曲が丸い。そして瞼の開きが弱い。切れ長と言えば、聞えはいいかも知れないですが、縦横のバランスと形が良くないので、異常に感じます。どう見ても不自然なのは致し方ないと思います。そもそも美容医療は形を変えるので、自然でないのは当然です。でも手術によって形を変える際に、あり得ない形にすると不自然に見えると考えられます。それに瞼は開閉する機能を持った臓器なので、機能が形態を司ります。開きが悪いとそれだけで異常感を呈し、その結果不自然に見えてしまいます。いつも言いますが、`良好な機能は美しい形態を呈し、美しい形態は良好な機能に宿ります`

この症例では、不自然に見える点が3つあります。1:目頭が被さっていないだけでなく丸い。2:蒙古襞の拘縮を解除していないため、突っ張って開瞼機能を阻害している。3:下手な重瞼術だけを行われたために、眼瞼下垂症が残り、というか医原性眼瞼下垂症を来してしまった為に、目を開かない精神状態を感じさせてしまう。言い換えると、眠そうな目に見える。

この3点を治すにはやはり、当院独自のZ−形成術による蒙古襞の拘縮解除術で2の機能を改善し、1の形態との相乗効果が得られる。3に対しては眼瞼挙筋腱膜の修復によって縦横のバランスを取る。上に術前後図を提示しました。

DSC00032術後1週間では、まだ腫れていますし、開瞼もばっちりではないです。ましてや抜糸時はノーメイクですから、ぼやけた印象像です。ただしよく見ると、黒目の上がよく開いています。

39949_20150529_1_2術後約1ヶ月で来院されました。メイクしてレンズを見つめてもらい、はっきりした目元の雰囲気を醸し出して頂けました。

もちろん完璧な形態修正は困難です。何故なら、切除したものは取り戻せないからです。何故こうなったのかというと、患者さんの希望が外人っぽくなりたい方向だったので、前医が間違って捉え、考え違いをした結果このデザインになったものと考えられます。理論的に目頭切開の修正はある程度は可能ですが、却って不自然になる場合もあります。そもそも皮膚がないのに、かぶせるには突っ張りを作成するしかないので、不自然×2になり得るのです。本症例では、外人っぽさを残すために横の開き具合はそのままとし、蒙古襞の拘縮を解除するZ−形成での同部の縦の突っ張りをなくしました。結果として丸くなくなってもいます。

目頭切開で、三日月型に皮膚を切除するだけのデザインは三つの点で最悪です。一つはたいてい開きすぎる結果となっています。逆に取り足りないと何も変わらないからです。二つ目に、蒙古襞は拘縮です。前に水かきに例えましたよね。皮膚を切除するだけでは拘縮(突っ張り)は解除できません。さらに結局縦方向に傷跡ができると、傷跡は長軸方向に短縮する作用があるため、拘縮が悪化することになります。三つ目には本症例の様に、三日月型に切除するから丸い目頭となって、ありえねえ!形になります。

未だに三日月型等の縦に切除だけする美容整形屋が存在するので困ったものです。またまたしつこくいいますが、この点も形成外科の医学的知識を学んでいない美容外科屋の駄目なところです。何しろ形成外科を学んでいなければ、できっこないんですから仕様がないんです。

39949_20150529_1_2_1_image_size_372_x

術後1ヶ月を再掲しますが、開瞼は良好ですね。目頭の形は、外人的に開いているのに、適度に鋭角で変な丸さはありません。涙湖(赤肉)の露出程度は日本人としては限界です。サイズ的には術前と変えていません。外人と比べてみましょう。英国の王妃の写真をカットしてもらってきました。画像が不鮮明ですが、見て分る様に、目頭がやや、下向きに開いていて、鋭角です。涙湖は当然露出しています。もちろん、眼裂横径は大きく、内眼角間距離との比率は1:1:1です。本症例では、この外人の比率に近づけたくて切りすぎたのでしょう。でも形は変になってしまいました。もちろん外人では、開瞼も良好です。

DSC_0076一例として、私は日本人の中では目頭が被さっていないほうですが、横のサイズは28:31:28㎜です。目頭は適度に鋭角で、丸みも残っています。涙湖(赤肉)は普通に見えています。開瞼はさすがに加齢とともに低下してきましたが(特に皮膚)、社会生活における機能上は問題はありません。

今回は、難しい修正症例を提示させて頂きました。術者自らの採点としては、70点でしょう。マイナス点は、外人と同等に鋭角になってはいないー10点と、目頭が横向きなー10点。開瞼はえられたが、彫りがないから、抑揚がないー10点。パッと見た感じは確実に改善しているので70点で合格としましょう。

本症例は今後、他にも改善したい点があります。上記最後に書きました様に、瞼からその間の鼻へと視点を移してみましょう。次回経過提示の際に検討したいと思います。