2017 . 4 . 20

可愛い目元はできましたが、黒目整形切開法と目頭Z−形成の組み合わせは開瞼向上が至上ですが、合併症に注意!

本症例患者さんは可愛い雰囲気ですが、結果はキラキラした、パッチリクッキリの綺麗な目元をつくれました。ところが開瞼の向上が合併症を生じた様です。差は少々なのですが、原疾患があると悪化する事があるので自らも顧みて注意喚起をしたいと思います。後段で説明します。

下の画像は術前と術後2週間です。

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症例は20歳代後半の女性で美意識が高い患者さんです。これまで8年前にS美容外科で重瞼術埋没法。3年前にPクリニックで目頭切開Wー形成法。3年前に当院で両側NILT2点(切らない眼瞼下垂手術=黒目整形)1年半前に左が緩み、1年前に左右内側1点追加。やはり緩んだ。なかなか定着しない、特に内側が挙がらないため、今回切開法をして定着させましょうということになりました。形態的にも改良を計りたい希望です。

他院で受けた目頭切開手術はW−形成法ですから、蒙古襞のの拘縮が解除されていない為に目頭の位置が下にあるため、吊り目に見えるのがキツい感じです。やはりZ−形成法による拘縮解除を求められました。実は別の診療でも当院に通われていて、当院を気に入られて当ブログをひもといて、目頭切開の症例を沢山ご覧になり、「これだ!」とピンと来たので、私の手術を受けたくなったそうです。毎回記していますが、目頭切開はZ−形成法が最良です。他の方法の手術を受けない方が皆さんの為です。なおその点は最近やっと理解認識されてきました。患者さんがブログ画像を見て「こうして欲しい。」と訴えます。「そうです私はそうします。」と言ってるのに、他の手術を受けてしまう方が居るのが残念です。

術前の他覚所見を説明します。挙筋筋力(滑動距離)は13㎜と正常範囲で先天性筋性眼瞼下垂は否定的。眼裂横径は27㎜と標準的、内眼角感距離は35㎜と離れ気味(以前に受ける前の数字は40㎜だったそう)、角膜中心間距離は60㎜と標準的。つまり蒙古襞の被さりはまだ残り、前回の目頭切開の効果が不足と感じている。フェニレフリンテストは仕事の都合で施行しませんでした。(点眼後数時間は細かい作業が不能となる。) 後天性眼瞼下垂は軽度有り、皮膚は重瞼が緩んでいるため瞼縁に乗っかっています。(皮膚性眼瞼下垂です。) 視診上目頭の位置が目尻より下にあり、下向きに尖っています。本来モンゴリアンスラントは、目頭と目尻を結ぶ角度が平均5度の外上がりです。形態的に改善したい部分です。機能的にはご覧の様に力のない眠そうな目元を呈していますから、眼瞼下垂症の改善が求められ、皮膚等の前葉を挙げる重瞼固定も併用するべき症例です。【実は結果論ですが、フェニレフリンテストをする際には眼病の有無を聴取しますから、聴いていれば判った事でありました。】

術式はいつものヤツ。重瞼線は既存(埋没法)の8mm高。切除は幅3mmとし、Z−形成の上の辺に連続させます。一辺は左4mm、右5mmの60度のZ−形成のデザインです。挙筋はLT法=黒目整形=眼瞼結膜側での結膜、ミューラー筋、腱膜のtacking;ズボンのタックみたいに折り畳むことで強化します。重瞼の伝達力は弱いため再建固定しました。

今回は症例の術前と術直後と術後1&2週間の画像を提示します。まだ出来上がりではありませんのでお間違いなく!

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1週間で落ち着いて来ましたがまだ内出血の跡が少々残っています。術後2週間で何事もなかったかの様にすっきりしています。創跡も目立たなくなりつつあります。瞼縁の形の変遷が判りますよね。術前は吊り目で、黒目が瞼縁にかなり架かっています。術直後にはまだ開いて撮影出来ませんよくある事です。左の内側の瞼縁が腫脹で下がって見えます。術後1週間では中央付近の開瞼が向上しているのが見られます。術後2週間でアーモンドアイに近づいています。

目頭の位置は丸くなく、ちゃんと尖ったまま上方移動しています。患者さんの希望に沿えました。さすがに術直後には、腫脹で引かれて虫状態の目頭になっていますが、術後経過中で丁度良い尖りになっていきました。結果アーモンドアイを呈しています。はっきりした目元の要素です。

下に術前、術直後術後1週間、2週間の順に近接画像を並べます。

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開瞼は充分に強化されました。術前術後を比較すると明らかに黒目の露出は増加しています。しかも、黒目の上にかかる瞼縁が水平になりました。術前は内側が被っています。二重瞼の引き込みは、挙筋の収縮による牽引力が皮膚または眼輪筋(前葉)に伝わるような構造にすれば、二重瞼になります。切開では糸で固定した線に瘢痕(創跡のコラーゲン)が出来ます。ただし瘢痕のコラーゲンが完成するのには3ヶ月程度かかります。

東アジア人の患者さんは様々な形態と機能を呈している場合が多く、そのポイントを見出します。違う形態と機能のポイントとは;1、先天性一重瞼または狭い二重瞼。何度も言いますが一重瞼は先天性異常です。2、皮膚の弛緩と下垂の程度は一重瞼と二重瞼により差が有る。3、眼瞼挙筋による挙上力の伝達性の低下。4、眼裂横径の狭小による開瞼の差。5、蒙古襞の拘縮による内側の開瞼不良。6、目頭の位置と目尻の位置の傾き=モンゴリアンスラント。

こうして、様々なバリエーションがある患者さんですから、診察時から細かく患者さんとコミニュケーションしています。そして術前のプランは適切となります。手術はプラン通り進行しますが、術中調整が必要な事も多くあります。そして人間という生物の反応としての手術後経過は個体差がありますが、結果はほぼプラン通りになります。ところが他の要素にも注意が必要な場合があります。それは眼球についてです。それが眼瞼手術の経過に影響します。眼瞼は眼球の前を蓋する為にあります。保護です。逆に開瞼は視野という視機能の向上をもたらします。通常はその面でしか関与しません。ですから建前として、眼瞼形成術に於いては、形態改善に50%:開瞼という視機能に50%の配慮をします。だから逆に、視機能の向上のみを図る目的とする科目である眼科では、眼瞼下垂手術を得意としない医師がほとんどです。ところが特殊で稀なケースですが、眼瞼の開瞼向上が眼球に対して別の影響を与える場合があります。

1、開瞼が向上して眼球の露出が増えた為にドライアイが悪化する事があります。でも、さすがに涙腺が機能している限り、涙の分泌は数週間で増加して来て治ります。特に年配者でドライアイがある患者さんには術後早期は目薬を使ってもらえば困りません。手術のダウンタイムの方が困る様です。逆に術前には眼瞼下垂症の合併症状として眩しかった(羞明)視野が手術後治る症例は多くあります。

2、眼瞼は開瞼時に上に挙がりますが、あくまでも眼球に沿っています。そもそも眼瞼挙筋は眼球の後方で骨に着いていますから収縮力のベクトルは後上方に働きます。つまり開瞼力は眼球を押すベクトルも含みます。眼球特に角膜にトラブルを抱えている患者に眼瞼下垂手術を施行して、見事に開くと、眼球を押したり擦れる外力も増えます。健常者では何も問題が起きません。これまでに報告もありませんでした。今回術後に判明したのですが、円錐角膜等の症例では疼痛や角膜剥離の悪化の可能性が生じます。一言、眼病の有無を聴いておけば防げたと思いました。もし、片眼に原疾患があるなら、健眼から片側ずつの手術をしてみる方法論がありました。患眼球の治療後に、本症例なら角膜の病状の改善が診られてから対側を手術する方法もありました。本症例患者さんには詳しく聴取した記憶がありません。聴いていれば先ず眼科にコンサルトしたでしょう。今回術後に判明して、疼痛の為に開瞼出来ないときがあると訴えられました。折角開瞼を向上したのに、痛くて開けられない事があるそうです。残念です。改善の為には眼科での治療が効を奏する筈です。

3、開瞼力が後上方にベクトルを持つので、他にも、白内障の術後のレンズの位置や緑内障の眼圧や網膜への影響もあり得ますが、これまでに報告はありません。もちろん合併症の可能性がある状態の際には手術を延ばすからでしょう。眼内レンズが僅かに押されて、焦点が数㎝変わった例は報告されていますが、生活上問題はないです。眼圧上昇の為の緑内障への影響は報告がありませんが、フェニレフリンテストや術中のベノキシール点眼の副作用はあり得ますから、必ず診察時に聴いています。

上記の如く稀に眼球への影響=視機能経の影響はあり得ます。今後はさらに詳しく診察していきたいと思います。一つ申し上げておきますが、副作用と合併症は発現機序が違います。手術後には副作用は起きません。原病の悪化としての合併症はあり得ますし、予期しない合併症は出来るだけ防ぎたいと思います。

本症例患者さんには直ちにかかりつけの眼科医受診する様に申し上げました。寛解を得られると思います。次会報告を待ちます。