実際の診療内容は私が管理します。美容外科といっても一般の医療機関ですから。ただし広告戦略と差別化はコンサルトと二人三脚で、事務長の電話応対は上手です。医療は患者待ちの仕事です。でも、何しろ手術もするし、注射系も流行りだしたとしても美的観点は手術者が非手術者より遥かに上です。ですから何が出来るかは、知識と経験が勝負です。やり方だけ教わっても、一人ひとり違う患者さんに適した医療を見出すには美容的センスが必要なのです。ライバルが居てもそこは負けません。ただし広告は負けることもあります。運営方法にも齟齬が生じ始めるから、その件に話が到ると危ない話へ進みます。まずは広告の件から書いていきます。
美容外科医院にはいくつかのタイプあります。まったくの開業医で、ほとんど一人で長年継続的に診療している医院では、患者さんがリピートしますし、深い人間関係も形成されていきます。うまくすれば口コミも発生して、集客が広告主体だけではなくなります。父の銀座美容外科医院がそうでした。ただし、形成外科医上がりで無い医師は通常保険診療をできません。保険診療には保険医登録が必要で、医師国家試験に合格し、大学病院に就職する際のオリエンテーションの際に手続してもらえます。ですから、大学病院形成外科に入局した医師はみな保険医登録証を取得していますが、いきなり美容外科チェーン店に就職したり、他科からの転向者は保険医登録をもっていないものがほとんどです。だから、非形成外科医のチェーン店は自費診療オンリーなのです。ちなみに父は大学病院で胸部外科に入局したので、保険医登録は持っていたのですが、美容整形に転向した際に辞めたそうです。
保険医登録証を持っていても、診療機関の所在地の保健所に持って行って申請しないと保険診療はできません。これが結構面倒で、初回の登録地に照会してから、登録していくのに数週間かかります。私は大分でしようとしたのですが、時間が掛かるので諦めました。それに美容外科診療が通常自費診療なのは、商業的感覚に拠っているからです。
例えば眼瞼下垂に対する切開手術を保険でしたら、約15万円かかりますが、3割負担で5万円以下です。対して保険登録していない医療機関で自費診療として同様の手術を受けると、少なくとも30万円、平均的には45万円の値段がついています。各医院のホームページ等を見れば載っています。ちなみに現在私の所属している東京皮膚科・形成外科は保険診療機関登録を受けています。
また例えば、重瞼術の埋没法は保険手術は適応できませんが、同様の手間の手術である逆さ睫毛(眼瞼内反症)手術の埋没法は両側で保険では約3万円の手術で、3割負担は1万円以下です。対して自費での重瞼術埋没法は数万円から15万円以上とバラバラです。ちなみに昨今S美容外科が2万円とかCMしていますが、昔からのやり口で、すぐ戻ります。安っぽくて、ダサい!です。だまされる人があとを絶たないでしょう。
もとい、美容医療手術の中で保険診療が適応するのは眼瞼下垂症、機能障害を伴う瘢痕拘縮。他に腫瘍切除くらいです。現在東京皮膚科・形成外科は保険医療機関登録していますが、これらがほとんどです。稀に顔面神経麻痺手術もしています。
他の美容外科運営法としてはチェーン店展開方式が、店舗数の上でも売り上げ面でも席巻しています。もう一度説明しますと、美容外科・形成外科・美容皮膚科等の美容医療は本当の口コミが少ない。近い人でも周囲の人にも自分の診療経験、つまり手術を受けたことは明かしたくない。憚るものです。近年では、軽い治療なら明かす人も増えましたが、まだまだです。
そこでは広告宣伝がものを言うのです。本来美容医療でも、医療ですから、法律で広告規制があります。みなさんご存知の通り、美容医療以外の医療機関=病院も診療所も広告は数少なく、それも名刺みたいな限られた情報しか提供していない筈です。数年前までは、医療法で決められた項目=名称、科目、住所電話など名刺に載っている程度のポジティブリストが限定されていました。数年前に規制緩和されてもやはり限定されています。それに専門医称号などは厚労省管轄の認定機構が認定しないと広告できない法律が出来つつあります。
逆にインターネットは、ユーザーが探して引く情報なので、法律上広告と見做されず、載せ放題でした。最近逆に、インターネットもバナー広告等が横行して=金銭を払ってホームページに誘導するから、誘因行為つまり広告と見做されるように法律の解釈が変更されてきました。近日中にホームページの内容に規制が掛かる見込みです。但し、ブログはまだその範疇ではありませんからこのまま続けられます。
実際に行われている広告のメディア別に整理しますと、テレビCMは、さすがに名刺広告です。画像には、診療に関係あるものは載せられません。出演はスポンサードとインタビューがありますが、スポンサードは多額なので数は少ないです。インタビューやはりスポンサーが多い者が選ばれます。
次に紙媒体としては新聞(折込のミニコミ誌や広告も含む)、雑誌、ポスティングがあります。どれも名刺広告しかできない筈ですが、抜け道を使います。雑誌には、本の広告という形をとるのです。美容外科の名刺型でない広告は全部これです。医師やクリニック名で著わされた美容医療の本は多くのクリニックが市場に出版しています。これをしていないと書籍とは認められません。書籍を広告する振りをして、内容は書籍に載せられている美容医療の診療内容を載せます。料金さえも書籍に載せています。書籍を発行しているのは医師やクリニックですから、著者の連絡先として名刺広告を載せます。つまり診療内容の広告は書籍の内容として載せて、それを医師の名刺広告と同じページの覧内に載せれば、医療法に背かないで、診療内容や料金も広告できるのです。但し高額です。
他にミニコミ誌や折り込みの情報誌やポスティング誌も、記事内に診療内容を説明して宣伝していますが、実は裏では広告量を払っているのです。でも一応記事は自分たちで書いているので、書籍扱いです。
この様に、医療の広告は抜け道を使って行われますが、そこでは当然費用対価が重視されます。これからがチェーン店の意味ですが、長くなったので次回に続きます。