Bifid nose と洋語で書いて、訳すと二分鼻尖と訳します。先天性疾患の病名で口唇裂の伴うことが多いので形成外科領域ではよく使われる言葉です。
知っての通り、顔は胎児のときに両側が離れていてだんだん中央に寄ってきます。中心線はその際に合わさるのですが、口唇裂は鼻孔の底から上口唇が合わさらなかった結果です。当然鼻尖も軟骨が離れています。これが二分鼻尖Bifid noseです。
しかし、先天性疾患ではなくても、鼻翼軟骨が離れている人は少なくないのです。鼻翼軟骨の形は鼻尖の形として顕われます。鼻尖の丸い人の中の多くは二分鼻尖に近いのです。
今回思いついて、取り急ぎフリーハンドで図を作ってみました。パソコン用のブルートゥ―スマウスでデスク上で書いたのでうまく書けませんでした。がたがたですが、意味は分かると思います。念のため、手術は上手ですから、一緒に考えないでください。
黒線が輪郭と鼻の孔を、青線が軟骨を示します。鼻翼軟骨は、下から見ると曲がっています。両側のカーブが鼻尖のドーム型を作ります。正面から見て翼の様なので鼻翼軟骨といいますが、付け根の両側付近が鼻尖のドームの部分になります。
上図で鼻翼軟骨の間に赤い線を書きました。隙間です。両側の鼻翼軟骨の間には脂肪が挟まってますが、多い人から少ない人まで連続的にバリエーションがあり、アジア人では多い傾向があります。その結果両側軟骨の間隔が離れているのです。
私は、鼻尖が大きいと訴える人の中で、はっきりと隙間を触れる人には、両側の軟骨を縫い寄せる手術を第一選択としています。ついでに耳介軟骨を入れて高くする場合もあります。
それでは症例写真を供覧します。左が術前、中が術翌日でテープなし、右が術直後ですが、テープを貼ってから撮りました。上から正面像、下面像、右斜位像を並べます。
なーんだ小さくなっていないじゃあないか?。テープで寄せているだけかよ~!。との声が聞こえるかも?!。そうです。術直後は腫れて小さく見えません。それをテープで小さくします。
でも、そうなんです。軟骨は両側を3mmずつ、つまり6mm寄せました。縫合は水平マットレスと言って、糸を掛けた部位を線でくっ付けます。術中皮膚縫合をする前に中を覗いて、小さくなっているのは確認しました。皮膚側から触れても判りました。
ところが、剥離した皮膚皮下脂肪が腫脹します。剥離した皮膚皮下脂肪が腫れて、倍以上に分厚くなります。鼻尖の皮膚皮下脂肪は厚く、平均3mmはありますから6mm程度なっているのではないでしょうか。ということは縮めた量の分厚くなって、見た目に元と変わらない訳です。それに皮膚は剥離しているので、浮いています。
そこで、重要になるのがテープ固定です。2重の作用があります。軟骨上の浮いた皮膚をピッタリくっ付ける作用。腫脹して厚くなった皮膚を押さえ付けて、少しでも早く治す作用です。軟骨上の皮膚皮下組織を浮いたままにすると間に血液や浸出液が貯まり、それがコラーゲンに置き換わって、瘢痕が形成されます。つまり厚いままになります。これをテープ固定で防がないと軟骨を寄せた分のサイズダウンが反映しません。皮膚皮下脂肪が軟骨に癒着するのには、約3週間かかります。その間必要ですが、1週間後からは夜間のみでも良いでしょう。実際に3週間常時テープ固定を続けた患者さんが居ましたが、綺麗に縮まりました。しかも、鼻尖の両サイドに影が出来て自然でした。
術翌日のテープなしの画像は、貼り換えの瞬間に撮りました。これまで言って来た通り、何をしても(打ち身でも、手術でも)48時間が腫脹のピークですから、この時が一番腫れています。もちろん皮膚は癒着していません。見た通りに、鼻尖は術前よりも大きいかも知れません。テープを貼った画像では鼻尖が格好いいですよね!。ちゃんとテーピングを続けると、その形になります。
もう一つ、鼻翼軟骨縫合によるBifid noseの修正術は戻るという流説があるようです。間違いです!!!、埋没法とは違います!!、ネットの情報でしょうか?。情報は正しいとは限りません。それに経過を提示しているクリニックなんてほとんどないじゃあないですか!。じゃあー、私は必ず経過を追って魅せて行きますよ!。
ネット情報は誘引性が高く、医学的に正しいかどうかのレフェリーは存在しません。厚労省も野放し状態です。さすがに規制の機運が見られる様です。このブログは先魁です。
そのような訳で、今後の経過が重要です。来週以降もご覧下さい。