Bifid nose と洋語で書いて、訳すと二分鼻尖と訳します。先天性疾患の病名で口唇裂の伴うことが多いので形成外科領域ではよく使われる言葉です。鼻翼軟骨が離れている人は少なくないのです。鼻翼軟骨の形は鼻尖の形として顕われます。鼻尖の丸い人の中の多くは二分鼻尖に近いのです。
私は、鼻尖が大きいと訴える人の中で、はっきりと隙間を触れる人には、両側の軟骨を縫い寄せる手術を第一選択としています。ついでに耳介軟骨を入れて高くする場合もあります。鼻を下に長くする場合もあります。
症例写真を供覧します。上列から術前、術直後、術翌日テープ後、術後1週間、術後3週間で、左から正面像、下面像、斜位像を並べます。
術前と比べて、鼻尖が小さくなっています。そして鼻尖の両側に影が見られます。そうです。鼻尖はハイライトに、その両側に鼻翼との境目にシャドーが見えるのが、鼻らしいのです。
実は他の患者さんに教えられました。最近私は、鼻稜(鼻の筋、スジ:鼻筋と書くと勝手に変換されて、鼻の筋肉と間違えるので、最近は鼻稜と書いてます。)にヒアルロン酸を浅く注入してシャープな鼻稜を屋根の様に作ることがあります。少量でもハイライトが見えます。注入し終わって座ってライトにかざした瞬間に患者さんが「光っている。きれ~い!」と驚嘆の声を挙げてくれました。鼻はは前に出ていますから、立体的な三次元構造が最も気になるのです。遠近感は近接してみても判りにくいのですが、光を当てると前がハイライト、横の影がシャドーになるので遠近が判ります。
鼻尖も同様で、ハイライトとシャドーが鼻尖の形を自然に魅せます。
軟骨は両側を3mmずつ、つまり6mm寄せました。縫合は水平マットレスと言って、糸を掛けた部位を線でくっ付けます。術後は剥離した皮膚皮下脂肪が腫脹します。剥離した皮膚皮下脂肪が腫れて分厚くなります。更に皮膚は剥離しているので、浮いています。テープで確実に抑えていれば3週間で癒着してきています。まだ腫脹は軽快します。
テープ固定には、二つのの作用があります。軟骨上の浮いた皮膚をピッタリくっ付ける作用。腫脹して厚くなった皮膚を押さえ付けて、少しでも早く治す作用です。皮膚皮下脂肪が軟骨に癒着し、腫脹が引き始めるのには、約3週間かかります。症例患者さんは3週間夜間だけでも励行しました。その結果、テープを張り続けた本症例では、鼻尖の両サイドにシャドーが出来て自然な鼻尖が出来ました。
鼻翼軟骨縫合によるBifid noseの修正術は戻るという流説があるようですが、間違いです。経過を提示しているクリニックなんてないじゃあないですか。私は経過を追って見せていきます。
鼻尖だけ大きくて、シャドーが見られない患者さんは数少なくありません。目元はパチっと開いていればいいし、日本人は窓のサイズも足りないので、皆治します。鼻と言えば、高さを出せば綺麗と思っている人が多いのですが、バランスが求められるのです。低い鼻は野暮ったくて、貧乏くさいだけですが、鼻尖がでかいと、顔の縦横の中心にあるので目立ちます。その中で、二分鼻尖の軟骨縫合が効を奏する症例は少なくありません。手術は両側の鼻孔内の切開だけで出来ます。この場合創が見えないので、切らない手術に分類しています。ただし症例ごとに術前の形態は違います。求める形の希望も個人差が大きいです。今回は、先ず鼻尖の形を造り、縮小しました。
もちろん二次手術は3ヶ月以上経ってから、癒着が成熟化して、形態もほぼ成立してからの評価後にするべきです。二次的な軟骨移植は、他の医師にはさせられませんから、3〜6ヶ月以上先になります。ただし本症例は他の部位の診療をも希望されています。そもそも、本症例の患者さんはより美しくありたい。目標値があり、目指したい。顔面の改良法を模索されて私を受診しました。それでは、私も頑張ります。先ず診察に因って、改善すると効果が得られる部位を見出す。または改善が可能な部位と方法論を検討する。こうして本症例患者さんの診療を、患者さんにとって理想的な形態を目指して継続的にしてきました。二点進んでいます。今後の診療についてはもう少し煮詰まったら、または先へ進んだら画像提示を承諾頂ければ紹介します。
とにかく、まだ完成ではありません。まだ縮小は進むと思います。コラーゲンの完成には3ヶ月を要するからです。