ハム状態とは重瞼線が広く、食い込みが強く、線の下の前葉が余って膨らんでいる状態です。ボンレスハムを糸で縛った様な締め付けが見られるのを称します。もう一つの説としてはハムスターのハム太郎みたいなまぶたに似ているというのもありますが、定かではありません。
もちろん自然状態ではあり得ない形です。約5年前に美容皮膚科で埋没法を受けて、直ぐ外れて切開法を受けたらこうなりました。今だにこの様にしてしまう医者が居るんですねえ。特に最近他科から(皮膚科は専門外)転向した医者がやってしまう事がある様です。
切らない眼瞼下垂手術=黒目整形基本形=NILT法でハム状態を解消したのが約一年前。中期的結果は大変良くてお悦びでした。下左が昨年の術前で下右が術後3ヶ月です。
ところが今回、前回の手術から約9ヶ月後には、下左画像の如くハム状態が再発傾向にありました。やはり切開をして確実に持続的に治したいとの希望を述べられました。ハム状態は本来切開しないと治せないのです。私は速やかに同意して、切開法を施行しました。今回の手術は切開法での医原性眼瞼下垂の修正手術として保険適応となります。
上右の画像の如く、術直後は一時的にオーバーコレクションになりました。
不思議と経過が早いですね。腫れが酷くなりませんでした。カクカク(Notch)が見られません。
上の画像は一年前からの変化。左から1年前の術前でハム状態、その右が切らない眼瞼下垂手術後三ヶ月、更に右は今回の術直後、最右が術後1週間です。経過を追って行くと、一年前の術前と比べて、昨年の術後3ヶ月が良過ぎます。本当にキラキラして綺麗でした。ところが術後半年くらいから落ちて来た様です。今回の術後の画像ではハム状態は見られませんが、腫れています。
実際に挙筋の状態はやはり、挙筋腱膜が瞼板から外れている医原性腱膜性眼瞼下垂でした。挙筋修復術が適応です。LT;Levator Tacking法(眼瞼結膜側からの挙筋短縮術))でも同様の効果が得られすが、後戻りは大なり小なり起き得ます。昨年の手術で結果は得られたのですが、持続しなかったのはそのためです。
そこで、今回の手術では、1点は前方から挙筋腱膜を瞼板に縫い止めました。縫い止めると瘢痕が形成されて癒着してズレなくなります。中央(やや内側)に1本前転修復縫合をして開瞼の程度を確認してから、角膜の内外の垂線上にLT法を加える方法を多く利用しています。これなら後戻りが有って丁度いいのに中央は戻らないからです。LT法は重瞼固定にも利用出来ます。重瞼はLT法の糸を瞼板上縁で前に出して緩く固定するので、強さの調整が出来ます。
そして今回術後1か月となりました。アイメイクのままで撮影しました。
思わず「可愛い~い!」と叫んでしまいました。予定通りすべての問題は時間と共に解消しました。メイクをすれば何も異常感が見られません。それどころか、私はきれいな目元に吸い込まれそうになり、診ているだけでウキウキしていました。
この経過を診ると、これ以上の結果は出せないと思います。ハム状態を治すのが主目的ではありましたが、ちょうど良く開いて、14mmのカラコンがフィットしている。重瞼は幅も引き込みも丁度良い。何もかも、上手にできました。瞼縁のカーブがアーモンドになり美しい。美人目ですよ!
角膜の内外はLT法ですから、術直後には瞼縁がカクッと挙がっています。でもこれは後戻りします。計算済みです。中央付近は丁度良く挙がっています。第一眼位(正面視)で、角膜の上が1〜2㎜隠れているのが正常です。前転修復部は後戻りしません。術後1か月では十分に開いています。そして重瞼の深さはLT法の糸を前に出して固定しましたが深過ぎず浅過ぎず、術後1か月では綺麗に入っていました。ハム状態の一因である強過ぎる重瞼の引き込みではないのは確かです。こうして1か月後の画像を見ると、重瞼の深さは適切でその結果としてハム状態は解消しています。
目尻方面の創が長いのは前回残っていたたるみを切除するためです。腫脹が取れて行くと折れ込んで見えなくなります。1か月での画像では重瞼の引き込み線はメイクで隠れていますが、わずかにたるみを残した結果として、引き込み線が長くなって切れ長=眼裂横径が長く見え、笑顔が引き立ちます。
術直後と術後1週間と術後1か月の眼瞼部の画像をもう一度比べましょう。
こうして比べると、やはり形態的機能的な結果は1か月見ないと判りません。本症例では、術後1週間で、形態的に機能的にいい感じですが、さすがに腫脹が見られました。予定通りカクカク(Notch)は解消し1か月では瞼縁がきれいなカーブを描いています。創跡はメイクで隠れます。ノーメイクでも気にならないそうです。
今回の手術では複雑な手技を加えました。特に線下の切除と剥離は侵襲が強いので腫脹と内出血が強い筈ですが、瞼縁がよく挙がると、線下が隠れるので目立たないのです。またダークにアイラインを引くと、収縮色ですから腫脹は見られません。1か月の経過では、昨年の経過より、更に良好な形態で機能が充足しています。患者さんはお悦びです。
前転法では腱膜を瞼板に縫合するので、その外科的侵襲に反応して癒着が起きて定着します。癒着には数ヶ月かかりますから、その間コラーゲンのリモデリングが起き少しは緩みます。でも通常目に見える程は無いです。今回の1か月の画像では見られません。予め強めにしておけばいいかというものではありません。調節は難しく、経験がものを言います。
まだ1か月ですから、経過を追いましょう。切開法では3か月を経ないと「完成!」とはなりません。特にハム状態を治す手術は手技が複雑で侵襲も大きいので、ダウンタイムが長い筈です。何故か経過が早いのですが、キャラクターが優しいからでしょう。精神的に安定した術後の日時を送ると、治りが早いのです。本当ですよ!。自律神経系の一方である交感神経反応がダウンタイムを長引かせるのです。患者さんと医療者の信頼関係が築かれ、術後も落ち着いて過ごすと交感神経反応が過敏にならずに経過が早いのです。医学的に証明されています。
そういう意味でも、本症例はブログ提示症例の中でも最も難しく面白くて、でも経過が良好な一例です。次回3か月目に拝見します。それまでお目に掛れないのでさびしいです。