2017 . 6 . 15

ハム状態にしてしまうと治すのに一苦労。1年越しで切開法へ至りました。:その二

今回の症例患者さんは一年越しの治療経過となりました。ヘタクそな他院でハム状態にされたので改良を図って来ました。その一で昨年の経過を、コピペではなく改変を加えつつ再掲しました。その二は先日の手術の説明を載せます。

切らない眼瞼下垂手術=黒目整形基本形=NILT法でハム状態を解消したのが約一年前。前回の如くの経過でお悦びでした。ところが今回、前回の手術から約9ヶ月後には、下左画像の如くハム状態が再発傾向にありました。それでは切開をするべきか?、切開した方が良いのは間違いないのですが、「折角前回切らないで出来たのにい〜!。」と思うのは私の勝手な言い分です。

患者さんは経過を知っていますから、やはり切開をして確実に持続的に治したいとの希望を述べられました。「その通りですね。」私は速やかに同意して、上右画像の如く、切開法を施行しました。今回の手術は切開法での医原性眼瞼下垂の修正手術として保険適応となりますが、引き続きの症例提示を承諾頂きました。

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切開法での改善を図るので、通常の黒目整形切開法よりも複雑な手技を加えました。詳しい説明は後段で。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA術直後の画像でもよく開いています

その前に一年前にも説明したハムとは?を再掲します。コピペではなく改変しました。

1、重瞼線の下の皮膚が余って膨らんでいる。2、重瞼線の喰い込みが強い。3、軽度の医原性眼瞼下垂である。前医の術後生じたかは不明ですが、MRD2.5㎜と下垂ではありました。下垂にハムを伴うなら医原性眼瞼下垂症です。

そこで修正法ですが、切開すれば3点を治せます。1、重瞼線の下の余った皮膚を切除する。膨らんだ眼輪筋を削る。2、固定を一度剥がして距離を持って止め直す。3、眼瞼下垂を治す:剥がれているなら挙筋腱膜を修復する。瘢痕性に弱いなら、短縮を加える。

そして、埋没法といっても切らない眼瞼下垂手術=NILT法なら3、の下垂だけは治せます。ハムを隠せました。眼を開いたら目立たなくできました。そして、前回載せたように昨年行ないました。一度は目立たなくできました。術後当初は開瞼が強過ぎましたが、緩んで丁度よくなり、術後3ヶ月目に来院して頂いた際には、一瞬違う人かと思うくらいに綺麗でした。メイクして頂いているからでもありますが、目がパッチリ開いて、二重も広過ぎない。近接画像で見られた様に、瞼縁にアイラインを書いて二重線の下の皮膚を狭く見せていますが、実際それでカバー出来るくらいの広さに出来たと言う事でした。その意味で本症例では、一度は切らない眼瞼下垂手術=黒目整形=NILT法で開瞼を強化して、広い二重を隠してハム状態が解消出来ました。

なお症例患者さんは一年前にも、いつかは切開して根本的に治したいかもと言っていました。術後3ヶ月目には「いらないね!」って私も言いましたら、その時は患者さんも同意していました。

ところがその後徐々に落ちて来たそうです。そしてやはり根本的改善を図ってはいなかったので、ハム状態が見えて来ました。

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上の画像は一年前からの変化。左が術前でハム状態です。中が術後三ヶ月。右は今回の術前=一年前の手術から約一年を経ています。前回の術前と全く同じでは有りませんが、後戻りが生じて患者さんとしてはハム状態が気になり始めたとのことです。経過を追って行くと、一年前の術前と比べて、術後3ヶ月が良過ぎます。本当にキラキラして綺麗でした。ところが術後半年くらいから落ちて来た様です。今回の術前の画像では一年前の術前を比べればまだ少しは開きが保たれていますが、ハム状態が見られます。

これが、埋没法(切らない眼瞼下垂手術)の限界でしょうか?。その点に関する理論的解説は、後段に載せます。そこで切開法を施行しましたが、術中写真も戴きました。説明します。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

切開法でハム状態の解消を図る為には通常の切開法に加えて特殊な手技が必要となります。1、`重瞼線の下`の余った皮膚を切除する。眼輪筋も余っているので膨らんでいるから切除する。2、固定を一度剥がして止め直す。3、眼瞼下垂を治す:医原性でも腱膜性でも、剥がれているなら挙筋腱膜を修復する。

切らない眼瞼下垂手術=埋没式黒目整形=NILT法では3の挙筋の強化は成りますが、1と2の手技が不可能なのは当然です。また挙筋の強化法として、切らない眼瞼下垂手術=NILT法は挙筋腱膜とミューラー筋を眼瞼結膜側から糸で括る様に短縮します。瞼板も掬って固定力と持続性(瞼板に掛ければ糸はズレない。)を高めます。ただし挙筋に掛けた点はズレていき、周囲が瘢痕化してから固定されます。つまり、初期の数ヶ月間での後戻りの程度が改善度に繫がります。

それでは、今回の症例での手技を解説します。上記1に対しては前回の重瞼線の線下の皮膚切除を2㎜デザインしました。眼輪筋も同幅切除しました。2に対しては重瞼線を切開するので前回の固定は瘢痕を切除する事で一度外れます。そのまま瞼板の前面に達したら、線下の眼輪筋下を睫毛根が見られるまで剥離して、皮膚と眼輪筋を膨らまない様に引き上げて重瞼固定します。ラインは7㎜ですから、瞼板の上縁で適切な広さです。3、挙筋強化により後葉を引き上げれば、相対的に前葉が被りますから見かけの重瞼幅が狭くなり線下のハムの膨らみが見られなくなります。

実際に挙筋の状態はやはり、挙筋腱膜が瞼板から外れている医原性腱膜性眼瞼下垂でした。挙筋筋力(=挙筋滑動距離)は12㎜以上有り正常でしたから、先天性は否定されていたので、その通りでした。それなら、挙筋修復術が適応です。

眼瞼下垂症の手術手技は、挙筋および挙筋腱膜の短縮や修復等種々の組み合わせで、症例により使い分けられます。基本的に、先天性に対しては挙筋短縮術で筋力アップを、後天性腱膜性に対しては腱膜修復術で固定を図るという様に使い分けます。

手技的には、短縮術では皮膚側から挙筋腱膜前面へアプローチしての挙筋腱膜のタッキングが定式です。腱膜が瞼板から外れている腱膜性では、皮膚側からの挙筋修復固定術が定式ですが、上に挙げたLT法でも同様の効果が得られます。しかも、LT法ではその糸を前に出しての重瞼固定が簡単に加えられます。ただし上に述べた通り緩み(後戻り)はある程度(50~100%までの量的差異がある。)起き得ます。昨年の手術結果は得られたのですが、持続しなかったのはそのためです。

そこで、今回の手術では、1点は前方から挙筋腱膜を瞼板に縫い止めました。糸で括るだけだと糸がズレていきますが、縫い止めると瘢痕が形成されて癒着してズレなくなります。この一年前くらいから中央(やや内側)に1本前転修復縫合をして開瞼の程度を確認してから、角膜の内外の垂線上にLT法を加える方法を多く利用しています。これなら後戻りが有って丁度いいのに中央は戻らないからです。上に記した様にLT法は重瞼固定にも利用出来ます。重瞼はLT法の糸を使って緩く固定するのが調整が付け易いのです。

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上の術中の画像で説明しますと、糸が二本ずつ見えるのがLT法です。中央に白い挙筋腱膜が瞼板の上縁に付着しています。青い糸は喰い込んでいてよく見えませんがあります。上右でもまだLT法の糸が出ていますが、重瞼固定前だから、重瞼が引き込まれていません。この後重瞼固定して、皮膚縫合をして終了です。

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その目でもう一度術直後の画像を視ますと、角膜の内外はLT法ですから、瞼縁がカクッと挙がっています。でもこれは後戻りします。前回もそうでしたから計算済みです。中央付近は丁度良く挙がっています。第一眼位(正面視)で、角膜の上が1〜2㎜隠れているのが正常です。前転修復部は後戻りしません。そして重瞼の深さはLT法の糸を前に出して固定しましたが深過ぎず浅過ぎず、綺麗に入りそうです。さすがに腫れていて結果は出ていません。でも、ハム状態の一因である強過ぎる重瞼の引き込みではないのは確かです。

目尻方面の創が長いのは前回残っていたたるみを切除するためです。腫脹が取れて行くと折れ込んで見えなくなります。

こうしてハム状態の改善を切開法を行なう際にトッピング出来るだけの手技を駆使して行ないました。ハム状態は医原性眼瞼下垂症を伴っていますから、保険診療が適応になりますので費用は国定ですから、トッピング治療しても時間対価が下がるだけです。でも一回結果が得られれば患者さんとは信頼関係が構築されるので、今回は症例提示に協力していただきました。

とはいっても結果は中期的(数ヶ月単位)、長期的(年以上)に診て行かなければなりません。特にこの様な様々な手技を駆使すると、短期的にはダウンタイムが激しく、形態的にも機能的にもかなり変化して行きます。切開法ですから機能的に後戻りは無いに等しいでしょうが、腫脹等が激しい為に形態的な結果はなかなか見られないでしょう。

本症例は最も煩雑な眼瞼手術の一つです。その目で見ると、今後の経過の画像提示とその説明が読者の皆様にも参考になると思います。