口周りの手術が引っ切り無しです。どうも最近形成外科系の医者が切除縫合をする機会が増えたようです。若しかして、このブログで「切開手術は形成外科出身の美容外科医で受けるべきです。」と提唱してきたのが伝わっているのかも知れません。逆にまだ、形成外科医の中には怖がって切らない医師も多く居ます。もっとも、通常チェーン店系の非形成外科医の美容整形屋は縫合法を習熟してないので、手を出してもらいたくないのです。
ところが中途半端な形成外科経験者が、中途半端なデザインで中途半端に縫合すると、今一きれいにならないケースが見られ始めました。しかも残念ながら、本症例の前医は医局の先輩で今でも仲が良いのです。彼は形成外科医局に4年間在籍したのに突然退局して、麻酔科医局に転科した後に、麻酔科の標榜医として、チェーン店系美容外科(私も一時アルバイトに行っていました。歴史編にあります。)に就職した後に、さらに見よう見まねで美容外科医も兼ねるようになったという不思議な経歴です。いい人だったのに経験値が中途半端なのです。
したがって、本症例はご覧のとおり傷跡がまずい。しかも位置が違う。そして効果も足りないと症例患者さんは訴えました。別に前医に義理はないのですが、私が治さないと患者さんは悩むし、前医に伝えるよりも、まずは治しましょうということになりました。
症例は39歳、女性。口がもこっとしているので、歯科で矯正治療をして歯を後退させた。その結果歯は下がったが上歯槽は下がらないので赤唇部は下がって白唇部が前突した形態を呈した。下の画像を見れば判ります。
約1年前に白唇部切除を前医出受けた。何ミリ切除かは不明だが、効果が見られなかった。気になる赤唇の厚さの不足はヒアルロン酸で補ってみたが、もちろん減量して現在の形状に戻った。そして、術後数週間から傷跡が幅が出てきて、後戻りをしてきた。線の位置が下がったように感じる。縫合糸の跡、Suture markも見られる。
現在鼻柱基部~Cupid’s bow の底の長さは16mmで長い感じが残る。切り足したい。線の位置を変えて目立たなくしたい。切開線を鼻翼基部~鼻柱基部~鼻翼基部に変えて、幅を3mm切除可能と考えた。シミュレーションでは、口唇(口輪筋)に力を入れないと閉口しないが、力を入れれば閉じる切除幅とした。外反は適度に、皮下脂肪層中間層までの切除が望ましいと考えた。口角は挙上と大きくしたいかは、シミュレーションで挙上は必要と考えた。内眼角間=鼻翼幅=33mmで、口唇幅40mmと小さい。1.5倍の45mmは欲しい。ので、口角挙上時に頬骨隆起方向つまり約40度の挙上と増大を求めて、5×5mmの三角形の切除をシミュレーションして決定した。よく見ると図の如く、口角の位置に左右差があるため、右6mm:左5mmの切除でデザインした。
画像を並べます。上段が術前、下段が術直後です。左から正面、右斜位、左側面像です。
術前の評価は上に書きました。
上の画像は術直後ですから、腫れているため形態が評価出来ません。口角とのカーブは良さそうです。側面像では外反の程度は丁度良さそうです。何れにしても次週の抜糸時以降に診ましょう。
これまで口唇短縮術について、毎回書いて来ましたが、この手術は丁寧にピッタリ縫合しないと、創跡の幅が出て目立つ様になり、結果的に後戻りします。技術の問題ですが、形成外科の研修歴と経験値に左右されます。美容外科しか経験していない医師には出来ません。
ブログで口唇短縮術を乗せる機会が増えてから、他院での後戻り症例や、創跡の幅が出た症例が散見され、来院されます。でも今の今まで修正術をしませんでした。何故なら、通常一度切った症例は、追加切除が難しいからです。シミュレーションすると口が閉じなくなると予想されるからです。はっきり言って手を拱いていました。
でも今回の症例は1、切り足りない。患者さんは効果不足を認識している。後戻りもある。2、一応先輩で知り合いの術後なのでなんとかしてあげたい。それに彼がどういう経歴だからこうなったか推測が付く。3、口角もするならより良い形態が得られる。口角挙上術はまだ普及していないから、前医はしていない。以上の3点から、遂に手を出しました。
もしや取り過ぎに見えませんか?。私がこれまで述べて来た中では、口唇(白唇部)長=鼻柱〜Cupid’s bow の再下点の長さは15㎜以下が求められます。では何㎜まで取れるかは?、要するにケースバイケースです。留意点は1、口が閉じるか?ですが、術前に力を入れて閉じる幅までは出来ます。2、口輪筋を使って口を閉じる際に下口唇を挙げる人は、その際に頤にしわが寄るのは綺麗でないと感じます。これも解剖的に個人差が有ります。3、笑う際に歯がどれだけ出るか?。出ない人は出したがるし、歯茎まで出る程を求めるかは好み次第です。
上記の観点で術前にシミュレーションしました。結果3㎜の追加切除が可能と診断しました。患者さんも鏡で観察してもらいながら、動かしてもらいます。大丈夫な量を決めたら、その量でデザインすれば安全です。
術直後は腫脹と麻酔とダメージで口輪筋が働きません。評価が不能です。外反の程度も術直後にはオーバーに見えます。上の画像でもやり過ぎ感が感じられます。でも私は多くの症例を経験してきて、術後経過は理解しています。患者さん側も本ブログの読者なら私の手術の術後経過を知っています。その結果として医療者(術者側)と被医療者(患者さん)と信頼関係が醸成されています。本ブログはその為にも経過を定期的に提示しているのです。皆さんに役立つ事を祈っています。
次回の抜糸時には結構出来上がりに近づいているでしょう。でも完成には数ヶ月を要します。微妙な変遷が有ります。読者の皆さんは、その面もブログに載せて来た症例からご理解されているでしょうね?!。次回をお楽しみに!