2017 . 8 . 12

4点セットを解消して目力アップした症例。術後3か月で完成!

症例は、典型的な一重瞼の先天性眼瞼下垂症。蒙古襞の拘縮も強く、Puffy eye で腫れぼったい。眼窩脂肪ヘルニアです。前頭筋が常時収縮して眉毛が挙がっていました。

まず下の術前の画像をご覧ください。キツい目元と感じます。何がそう感じさせるかと言うと、開瞼に際して前頭筋に力が入って眉が挙がるからです。開瞼に際して眉が挙がる運動は脳が指令しているのですが、自律神経系の一方である交感神経がコントロールしています。交感神経は興奮状態とか戦闘状態を司る神経系ですから、精神的にキツい状態の時に亢進します。だから眉が挙がっていると怒っている表情に見えます。ちなみに形態的にも蒙古襞の被さりは目を隠していて吊り目に見せる為、キツい感じを増長させています。まずは術前画像と術後3か月を比較してください。OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

それでは画像で経過を診ていきましょう。

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上左が術直後、上右が術後1週間、下左は術後3週間、下右は術後3か月です。

症例は24歳、女性。1、先天性の一重瞼=先天性の皮膚性眼瞼下垂症。2、挙筋機能=挙筋滑動距離が11mmと低下がみられる軽度の先天性筋性眼瞼下垂症。3、眼窩脂肪ヘルニアであるPuffy eye。4、角膜中心間距離58mm(平均60mm)と離れていないのに、眼裂横径24mmで内眼角間距離36mmと目が離れている。つまり蒙古襞の被さりが多い。その結果蒙古襞が斜めに突っ張っている。この組み合わせは東アジア人特有の遺伝子型です。4点セットです。

診察時には、用手的な下眼瞼圧迫で上眼瞼全体が膨らむので眼窩脂肪ヘルニアが判ります。フェニレフリンテストでは充分に開く。数字的に筋力の低下=先天性眼瞼下垂なのは横径が小さいからです。眼瞼下垂症手術&重瞼術切開法と4mmのZ-形成法での目頭切開の適応です。デザイン:ラインは3.5mm幅で3.5mm幅の切除としました。狭い二重=所謂奥二重のデザインです。でも第一眼位で瞼縁が露出する幅です。眼窩脂肪は処理しました。一辺4mmの60度のZ-形成を蒙古襞の下端から稜線に沿ってしました。

近接画像で術前と術後3か月の出来上がりを比較しましょう。両側眼瞼がまったく同じ開きにはならないのは、挙筋筋力の向上度がピッタリにはならないからですが、とにかく良く開きました。

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手術は、皮膚眼輪筋を切除し、眼瞼挙筋を修復してから眼窩脂肪を処理した後に、眼瞼挙筋と皮膚を連結して重瞼を固定します。目頭は拘縮を剥離してZ-形成術の二枚の三角皮弁を入れ替えます。

上の画像を見て術後経過を説明します。1週間ではパッチリ開き、腫れぼったさも解消中です。眼窩脂肪は軟らかい組織ですから、浮腫むと軽快に時間がかかります。ただし、開瞼が良好化し、皮膚も持ち上がり、瞼縁が露出しました。前頭筋が収縮しなくなり、眉を挙げなくなりました。少なくとも、見た目にはよく目が開いていて、眠そうな、怖い表情ではなくなっています。3週間目では無駄な力が入っていないで自然な表情です。力が入らないと優しい精神状態を表現している様に見えるのです。腫脹はこの2週間で更に軽減しました。結果重瞼幅が予定の奥二重になりました。瞼縁と皮膚が同高なのが奥二重です。

では術後3か月では如何でしょう。完成です。予定通りというかデザイン通りに奥二重に出来上がりました。第一眼位で瞼縁の前に皮膚が被さらない、または睫毛の根元がギリギリ見えるのが奥二重です。開瞼は良好で正常高です。見事です。目頭の形は吊り目ではなく自然で、しかも傷跡は見えません。縦の傷跡が無いからです。Puffy eyeの改善はちょうどいいと思います。眉を挙げなくなりましたから、重瞼線上の組織が増えましたから、膨らみは見られますが、重瞼線下にはヘルニアしていないから、重瞼が固定された訳です。

#一重瞼で瞼縁が隠れている。#眼瞼挙筋が弱い。#蒙古襞が被さり拘縮している。という形態と機能は異常です。その中で、蒙古襞については誤解が残るので、もう一度説明します。

蒙古襞は日本人なら皆持っています。日本列島には弥生時代に大陸から蒙古系人種(天皇家を始めとした渡来系)の遺伝子が入って来て先住民と交配しました。でも日本は島国なので、明治維新までは他民族の遺伝子との交配が皆無に等しかったため、日本人のほとんどが蒙古襞を持っています。蒙古襞の程度には交配に依ってピンからキリまであります。一重瞼症例は強く、対して二重瞼症例は軽いのです。眼裂横径のサイズを計ると、(私は全例計っています。)平均1.5㎜の差があります。

蒙古襞の悪影響には、被さりによる眼裂横径の狭小という形態的損失と、上下が突っ張っている拘縮により開瞼を阻害し、皮膚性下垂(≒一重瞼)に連続するという機能的損失があります。形態的には一重瞼を二瞼にしたのに、蒙古襞が被さったままだと、不自然な形態になる場合が多いです。機能的には眼瞼下垂症を改善したのに、眼瞼の内側が突っ張って挙がらない事があります。この場合形態的にも吊り目になるから不自然です。アジア人の中では半数に起こる異常なので機能的損失が認識されず、形態的(美容的)目的と捉えられます。そのため美容外科手術と考えられていて自費となります。大まちがいです。蒙古襞の拘縮は眼瞼下垂症に伴います。自費手術ですが、修正術です。本来美容整形屋には手を出して欲しくない手術です。

私は、ブログを参考にすることをお奨めします。私は最終結果だけでなく逐次経過を提示していますから、みなさんの参考になると思います。また、私自身はモニターサービス患者を選びません。こちらからお願いする事もありますが、基本的には患者さんの申し出に従います。したがって、私のブログ内にはバリエーションの広い患者さんの標準的な経過が載っています。しかも定期的に経過を載せますから、参考になると思います。今後も皆さんお楽しみに!