2017 . 10 . 28

口周りの手術変法。順次治していきましょう。

口周りの手術として、毎回白唇部短縮術と口角挙上術の組み合わせを提示してきました。確かにその手術が効を奏する患者さんが殺到しています。本症例もこれまでの症例を視てきて受けたくなりました。

毎回書いて来た様に、この手術は形成外科医のそれもベテランが、そして美容外科の素養も備えている美容形成外科医で受けるべきです。創の縫合法(真皮縫合)がまったく違うからなのと、症例ごとにデザインの微妙な違いを術前に良く検討しないと求める形態を得られないから、チェーン店では時間が取れないから不可能なのです。

その意味で、本症例は定番の手術から入りませんでした。何故かを説明するには、計測と素材の印象を理解しなければなりません。

症例は32歳、女性。顔面縦比は、上顔面(生え際~眉下)62mm:中顔面(眉下~鼻下)65mm:下顔面(鼻下~頤先)65mmと中顔面と下顔面が長め。顔面部品の横比は、内眼角間29mm:鼻翼幅33mm:口唇幅41mmと口唇が鼻の1.5倍欲しいところ小さ目。本題の白唇長(鼻柱基部~弓の底)16mmと長い。白唇部の外反(反り返り)は軽いが、歯牙が出ているために傾斜が強い。したがって白唇部短縮しても赤唇がこれ以上厚くなりたくない。また口角が亢進中央より下にあり、つまり下がっている。

白唇短縮術はしたいが、赤唇をこれ以上外反させたくないし、厚くしないためには赤唇切除術も要する。つまり、白唇短縮術と口角挙上術と赤唇切除の3手術を行う必要がある。

私は頭を悩ませました。それにいくらなんでも3時間45分の手術時間では難しい。患者さんも時間の取り方で迷いました。それに局所麻酔量も多くなる。手術シーンを頭の中に巡らせた結果、いつもの様に白唇短縮術と口角挙上術をすると赤唇部がわずかでも外反するのが嫌とのこと。では白唇短縮術と赤唇切除術を併施すると間の組織がブラブラになり血行不良低下を起こし創傷治癒遷延を起こし得ること。口角挙上術と赤唇切除部は術野が近いが切開は重ならないこと。などを検討した結果、赤唇部切除術と口角挙上術を先行することになりました。

予定のデザインは、赤唇を4mm切除。口角は6mm頬骨隆起方向に引き上げることになりました。手術当日、もう一度確認しようとすると、患者さんは画像を取り出しました。それによると、とにかく厚い赤唇は嫌だけれど平板なのは嫌で、上唇結節がぷくっとしていた方が望ましいとの修正点が申告されました。そこで私は、鼻翼基部の垂線の間を4mm切除するが、上唇結節部の下方だけ切除幅を2mmに減らすデザインを示しました。さらに唇を閉じている際に傷跡が見えない様にを切開線を座位でデザインします。

画像を提示します。各列左が術前、右が術直後です。尚、赤唇切除の傷跡はその方向でも見えないのを確認して下さい。でも赤唇は腫れます。まずは正面像。

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赤唇が薄くなっているのは判りますし、上唇結節がチョコンとあるのは可愛いです。ヒアルロン酸で作ることもありますが、いつも私は「キスしたくなる唇?」と表現します。口角だけ挙げると、カーブがわざとらしいですね。それは当然です。鼻の下(白唇部)が長く見えます。さすがにこれは湯長が影響しているのでしょう。次に側面像

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横から診ると、上唇結節は一番前にあるので突が強調されて見えますが、良く見たら撮影角度が違いました。白唇の傾斜修代見えるのもそうです。口角位置は側面像でも挙がったのが見えます。次は斜位像。

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口角の挙上はもちろん見えます。やはり術前はなかった上唇結節が術後は出来て可愛い。傾斜はやはり腫脹です。ダウンタイム期間での変遷が見ものです。

そしてでは白唇部短縮術の時期が問題です。見た目にはやっぱり早く治したいし、でも腫脹等のダウンタイムをすぎないとサイズが違っている訳だし、血行が回復しないと創傷治癒が不安だし、運動が回復しないとデザインの検討が難しいしで、時期が早いか日数を要するか不明確です。しばらく何回か来院してもらいます毎回に検討していきたいと考えます。

今回これまで見せていない診療のいくつかの点を説明します。

上下の合わさる線を口交連線と書きますが、上赤唇縁と同じく弓の様に波型が美しいとされます。上唇結節は中央だけ厚みが残り下に膨らみ、そこだけの突が強調されます。尖がったようでもあるからセクシーでもあります。一時流行ったアヒル口も実は上唇結節の強調が鍵でした。そうです。女優さんでもここが好感のポイントとなっている人が多いのです。本症例の患者さんも大喜びですが、48時間は腫脹が亢進して全体が厚くなるからよい形態が見られなくなります。

上下口唇の合わさる線を交連をいいますが、同時にこの線を境に表面は乾いていて皮膚の延長です。赤いのは細胞層と角質が薄くて皮下脂肪層が無いからで、内部の口輪筋や毛細血管が透けて見えるからです。交連より後ろは粘膜層で、角質がないので口唇腺で常に湿っています。赤唇を切開する際には交連線より後ろを切れば傷跡が見えません。そしてその目安には上記の組織学的構造の違いから乾湿境界:Dry-Wet  borderを利用します。しかも粘膜側の方が創傷治癒が豊富なので助かりますが、粘膜は柔らかいので腫脹が顕在化しやすく、腫れている間は押し出されて傷も前にでてきてしまいます。結局ダウンタイムは長くなります。

今回の手術はいつものやつ→口角挙上術と、白唇短縮術の前段階としての赤唇部の切除を先行しました。さらに赤唇部切除のデザインを工夫して、上唇結節を作り出しました。赤唇は腫脹が強い部位なので術直後の形態が再現して評価に耐えるのはしばらく先になります。でも若年者は意外と速く治ります。口唇は腫脹が強い部位ですが、軽快も早い部位なのはこれまでの経験が示します。本ブログでもこれまで提示してきたから間違いありません。