2017 . 11 . 15

口周りの手術の印象は3次元で診たい!

口周りの手術を行なう際には周囲の形態とのバランスが重要です。本症例では正面画像ではいい感じの経過が見られます。そして側面像ではどうでしょうか?。誰もが認識出来る様に下顎後退症です。白唇部切除と口角挙上術がどれだけの影響を及ぼすかが面白い症例です。この点は結果を診ていきましょう。

症例は30歳の女性。白唇長(鼻柱基部〜弓の底)21㎜と長い。内眼角間距離31㎜、鼻翼幅31㎜、口唇幅41㎜と横幅のバランスは取れている。顔面縦比は上顔面(生え際〜眉下)60㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜頤先)65㎜と下顔面が長い。下顎長は無いので口唇(白唇+赤唇)が長い為に違いない。歯は下げたが歯槽の前突は残り、上口唇の前傾も残る。ただし歯を下げて歯槽が突なため、口唇は前屈形となっている。この場合、歯槽前の白唇を切除して、赤唇を上に歯科も歯槽前にして前突を無くす形が求められる。切除深は皮下脂肪全層として、外反は軽くする方が傾斜が綺麗になる。口角は当然挙上が必要だが、小顔なので目尻に向けて5㎜とし、口唇幅の増大を目論まない。

経過順に画像を並べます。

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上の列は術前。左から正面像、左側面像、左斜位像です。白唇部が長いしもっこりしています。頤が後退し鼻が高くないので、エステティックラインマイナスです。

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上の列は術直後です。白唇部はすっきりしましたが、Rest Position では閉じません。また下口唇にも力が入らないので頤が後退していません。

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上の列に術後1週間です。もうほとんど閉じています。Rest Position で頤の後退が減りました。

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上の列に術後2週間。左から正面像、左側面像、左斜位像です。

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上の列は術後4週間です。正面像、左斜位像、下面像です。

正面像での鼻下から頤の感じは各段に改善しています。白唇部切除が下1/3顔面の雰囲気を良くする典型例です。口角挙上術を併施していますから、口角から下顎の距離も長く見えて、下顎が長く見えます。もちろん口角が挙がって表情が柔らかく見えるのも好印象の所以です。

術後2週間で、ほぼトーヌスが戻ってきました。Rest Sceneでの開口は僅かです。もちろん力を入れれば閉じます。Rest Position でも口輪筋にトーヌスが戻ってきたからです。また鼻翼と鼻柱の位置も挙がってきました。鼻翼挙筋等の挙筋群にトーヌスが戻ってきたからです。

トーヌスとは、覚醒時に微弱な電気信号が流れ続けて身体も顔面も張りを保っていることです。術後は電気信号の伝達が落ちます。トーヌスが落ちるのです。術後の腫脹等で神経伝達が落ちる際には、軽快時間と程度には個体差が大きいのですが、本症例は比較的早い方です。

エステティックラインは鼻尖と口唇と頤の前後的位置関係で3点を結ぶ線が直線を基準に前屈か後屈かで判断されます。私は最近口周りの手術を頻繁に施行してきて、エステティックラインは前後的位置関係だけでなく、上下の比率に影響されることが判りました。

本症例では少なくとも見た目には違いが見られます。診察時には可愛くなっていました。上口唇を短縮すると、下口唇が挙がります。上口唇:下口唇〜頤の比率として相対的に下が長くなったので後退の傾斜が緩くなったのです。相対的角度が変わると見た目が良くなるのでしょう。頤が後退している人でも長く見えれば後退が目立たなくなると考えられます。

解明されたことは、上口唇の上下長と下口唇から頤の上下長の比率はエステティックラインに影響することです。上が短くなると下が長く見え、頤の後退が隠されるのです。少なくとも口元が締まって見えます。

今回Rest Position との洋語を頻用しました。またぞろ、勉強し直したからです。ずっと前にも転載した論文”The upper lip lift using the ‘bull’s horn’ approach.”を読み直すと、at rest で3㎜口が開いているのを目標にすると書いてありました。力を入れたら締まるけど、at rest では開いていて良いのです。本症例患者さんは「開いていてもいいです。」って言ってました。それより印象が可愛くなれば良いということです。それに口元の印象も締まりました。

口元の変化は明瞭です。なお本症例患者さんは、頤形成術と鼻唇角増大術と鼻尖の改善の余地があります。今回の手術後3か月の経過中に検討していきたいと思います。それらの手術もブログ提示症例の中にあります。