昨年素敵な女性が来院しました。美くしい女性(ヒト)が最終兵器としての口周りの治療を希望されました。この部位の治療が評判だからです。美容外科医冥利に尽きます。何度も言いますが、美容医療の対象は美人です。人は外面的にはそれぞれでも、内面的な美人が外面をより向上することで好結果をもたらすのです。内面美人とは、美しさに誇りを持って、より向上したい心です。いつも私は美人度は内面と外面の調和だと考えてきました。
美人度に普遍的な基準はあります。そうでなければ美容医療は成り立ちません。実際に学術的な基準はあります。世界的な美容形成外科学会で議論される基準は計量的で具体的であり、美容や美術関係の学問では抽象的なれど、普遍的な考察がされてきました。もし、何も基準を考慮しないで美容医療をしたら、不可思議に思えてしまいます。その意味を込めて口周りの手術は計測から入り、比率を見ながら診察する必要があります。まずは症例をもながら説明します。
症例は37歳、女性。細面(ほそおもて)の患者さん。顔面輪郭は卵型で理想的ですが、上中下の比率は上顔面(生え際~眉の下)70㎜:中顔面(眉下~鼻下)60㎜:下顔面(鼻下~頤尖)65㎜です。中下のバランスが不満。中1/3が短いのは鼻尖が上方にあるためで、下1/3が長いのは上口唇(白唇部)が長いためです。
診察すると、鼻唇角が(側面で鼻柱と口唇の角度)110度を超え、つまり鼻尖が上方に向いている。鼻尖が上方で、しかも定規を当てると、鼻陵の延長線よりも低い。鼻柱基部〜Cupid‘s bowは20㎜です。15㎜以下が望ましいし、ANS,Anterior Nasal Spine=前鼻棘が前方にあるために外反が無い。いわゆる鼻の下が長くて、ノペっとしている白唇部です。
まず外鼻の評価をします。鼻尖の手術:鼻尖部隆鼻&下制術は耳介軟骨の2~3枚重ね:onlay がきれいです。但し軟骨移植はオープン法が好ましいです。鼻翼幅は34㎜と大きくないが、細面なので比べると大きいし、よく笑うので拡がらない様にしたいとの希望でした。でも縮めすぎると、逆に鼻尖との比率が崩れるので33㎜を予定しました。
下顔面が長いのに対しては、上口唇(白唇)短縮と口角挙上術の併施が求められます。二次的に取り組む事を承諾されました。患者さんは既に理解していて希望されました。どちらも何回もブログで提示している手術ですから。でも優先順位と日程の決定が難しいのでした。本症例では今回鼻の手術を優先します。鼻の手術はテープ固定を1週間要しますが、その後は夜間だけです。隠す必要はあまりありません。口の手術は1週間で抜糸したらメイクで隠せますが、動的(しゃべる、食べる)な形態に於いては2~3週間異常感を伴いますから、カムフラージュを要する場合があります。
まずは外鼻の画像と説明から。下に術前と術後2か月の正面像を提示します。
13×10㎜の耳甲介軟骨を三つに分けて重ねてOnlay graft しました。鼻尖の形はダイアモンド型に作れました。鼻尖の両サイドのシャドーがダイアモンド型に見られ、小さくなっています。これがきれいな鼻尖の条件です。
術前と術後3か月のの側面画像を比較しました。鼻尖が鼻稜の延長線よりわずかに前にあるのが美しい鼻です。アップノーズとはこの形を言います。アジア人で鼻が短いのに鼻尖が前にあったら豚鼻に見えて×です。本症例では見事に鼻が長くなり、理想的なアップノースになりました。
下面像では 術前と術後で鼻翼の差と鼻孔の大きさが変わりました。術後の画像では鼻尖の両サイドのくびれも見られます。創をご覧いただくと目立ちましたが3か月で傷跡は平らにはなりました。患者さんも気にならないとの言です。
この様な経過で3か月を経ました。
口周りの手術に於いてはエステティックライン(鼻尖と頤を結んだ線と口唇の前後位置)が基準です。ゼロが美しさの条件です。そして、白唇部は長くない方が綺麗です。”鼻の下を伸ばして”いる様に見えるからです。本症例は口が出ていないエステティックラインマイナスですが、白唇部の長さが影響しています。そこでいよいよ白唇部切除術をしたいと思います。本症例は鼻の長さと高さを要しました。鼻尖の位置を下げてから、唇の見える長さを短くします。理想に近づけていきます。
面長の美人輪郭の本症例では、これらの問題が解消すれば、かなりの美人度のアップが得られます。昨年第一段階として鼻の手術をしました。鼻尖の手術は出来上がりまで時間が掛かりました。3か月の経過を楽しみにしてきました。これまでの症例でも数週間後には見事な鼻尖が見えてきました。
これまでにも順を追って手術してきた症例はありました。同時手術も少なからず施行してきました。口周りは鼻と唇をバランスを取って治したいからです。
鼻翼を小さくしたい症例で白唇部短縮術を同時に施行する症例が増えてきています。創が繋げられて(フォーク型になりますが・・。)デザインをし易いからです。別にも行なえますが、人中の膨らみをずらせない事があります。
鼻尖を高くしたいし、下げたい症例は多いです。鼻唇角だけ下げるなら、白唇部短縮術の切開から併施出来ますが、鼻尖に軟骨移植する際には鼻柱中央部を切開しますから、鼻柱基部を切開する白唇部短縮術は併施出来ません。間の皮膚が壊死しかねないからです。
本症例では鼻尖への軟骨移植を施行して3か月経て、鼻柱の創跡が安定したのを確認してから、白唇部短縮術に踏み切りました。患者さんの協力の御陰さまです。また前回鼻尖形成術と鼻翼縮小術を併施しましたが、糸で締めただけです。一カ所露出しました。白唇部の切開は下図の様にいつも鼻翼にまで延長しますから、創の中で糸を掛け直す事にします。そして、白唇部短縮術は両鼻翼間だけを引き上げますから、口角が相対的に下がります。従って口角挙上術を併施します。
先ず現在の口周りの画像を4葉。白唇部(鼻柱基部〜弓の中点)=20㎜。顔面縦比は上顔面70m:中顔面60㎜:下顔面65㎜と下が長く、その内訳は上口唇(白+赤)28㎜:下口唇(赤+頤尖)38㎜であり、黄金分割比の5:8を理想として、上を23.75㎜、つまり28㎜を5㎜短縮すると上下のバランスが合います。顔面部品比は内眼角間33㎜:鼻翼幅33〜35㎜?:口唇幅42㎜と口唇が小さい。黄金分割比の8:5を理想として口唇幅は52㎜あっても良いが顔の幅が小さいので不要と考え、口角は45度方向に挙上して口唇幅を求めた。
白唇の傾斜は内反し赤唇の裏返りも無く寂しい。人中と弓は明瞭です。
赤唇縁の土手も少ない。側面で鼻翼に糸が青く透けて見えます。
デザインは術前の評価に従って、個体差を考慮して行ないます。白唇部は両鼻翼間を5㎜切除。外反を求めて皮下脂肪層は半層残します。人中と弓を強調する必要は無い。口角は45度方向に5㎜引き上げる。(三角形の長辺) 鼻翼は糸を抜くなら入れ替える事を示唆しました。
下に術直後の画像4葉。
創は目立ちますが、形態は良く判りますよね。全く雰囲気が変わります。もちろん腫脹が強い手術ですから、白唇部が突になり、ゼーンゼン外反が得られていないじゃあ無い?、っていう感じです。(突然くだけてしまいました。参っているのです。) 毎回書いて来ましたが、必ず落ち着きます。過日口唇の皮膚腫瘍=黒子ですが、念のため切除しました。術中から術後48時間までは殴られた様に腫れました。ところが術後1週間で診ると、腫脹は軽快し、左右差も診られません。ただし内出血すると消失するまで2週間かかります。これは運です。私はこの数年口唇短縮術を数多く施行してきましたから、自信を持って経過を説明出来ます。
そこで今回満を持して手術したので、私も”1週間待ち”、術後1週間の画像を加えます。
抜糸した直後で引っ掻いた跡が有ります。血が滲んでいてご免なさい!。ところで御注目!、白唇の傾斜(外反度)が意図した通りに、見事に改善しています。術前の斜位像出は内反して見られます。側面像では直線的に見られます。術直後の画像では腫脹が強くてぼてっと内反しています。ところが術後1週間の斜位像と側面像を見ると、僅かに外反が得られています。想い通りに出来ました。見事な顔貌です。赤唇縁の露出も意図した通りに得られて色っぽいです。赤唇の前突は私がいつも言うのですが、「キスしたくなる唇!」と感じさせます。逆に言えば、間延びした上口唇はいわゆるスケベ顔をイメージさせ、女性では品性を貶めますが、口唇の前突だけでそこはかとない品のある色気を醸し出せます。実は本症例の患者さんは、そのような変化を可能な内面的人格でしょう。外面を改良することで、結果として内面と外面の一致を得られて、患者さんの人格を調和させることが出来たと言えます。美容外科医の冥利に尽きると思います。
もっともまだまだ腫脹は48時間のピーク時に比べて30%は残存しています。運動はかなり回復して(比較的早い方です。これも患者さんの人格からです。)力を入れれば閉口し、力を入れていないつもりでもトーヌスが戻り始めて、正面からは隙間は見られません。ただし赤唇の露出が増えて、本来ドライウェットボーダーより後ろにあった筈の粘膜が数㎜ドライサイドに出てきますから、ウェットリップが乾いた感じは自覚出来るそうです。別にそれで表皮が傷むことは有りませんが、冬場の乾燥する時期にはリップクリームとルージュが欠かせない事と思います。むしろリップメイクでカムフラージュして欲しいところです。
次週の来院時にはそんな患者さんを見られたらいいなと期待しています。色っぽ過ぎたら診療が進まないでしょう。ドキドキして来週を待ちます。私は美人に対するとすぐに惚れちゃうんです。でもそれが美容外科医の本質で、経済性が第一義でない証拠です。美人大好きな生涯一美容外科医ですから。
それにしても、鼻の経過から紹介しましたから2回分以上の長文になってしまいました。更に調子に乗って余計なことばかり書き連ねてしまいました。次回からまた、詳しい説明を加えます。本症例は私の行なってきた口周りの手術の集大成の一つです。エエッー、最近組み合わせ手術ばっかりじゃないか?、と思われるかも知れません。それはいわゆるモニター症例=ブログ掲載症例はコストオフが出来るからです。ですが、組み合わせ手術は私にとって面白いし、読者の皆さんに対しても大変為になりますし、何より患者さんの悦びが大きく、良好な結果が得られるから積極的にご紹介したいのです。
それでは今回は画像を載せた所で、来週の経過をお楽しみに〜!。術後2週間は随分出来上がりに近づきますよ〜!