2018 . 2 . 1

鼻、口の順で口周りを数次的に治してきました。1~2週間の経過

口周りの手術は周囲とのバランスが重視されます。本症例は判りやすい例です。

口とは唇の間の腔ですね。唇の後ろには歯牙が有り、歯牙は歯槽骨に植わっていて、骨は歯齦に包まれています。一般人は唇を赤い部分だけだと思っている人が大多数でしょうが、赤い唇は赤唇部、その上下=上は鼻の下まで、下は頤までを白唇部と称します。欧米の言語では一般用語です。White lip & Vermilionです。そして赤唇や白唇前後の傾斜に個体差があり、縦の比率や顔の他の部品や横幅との比率が重要です。

口の上は鼻です。口の下は頤です。

顔面の縦の比率は、上は生え際から眉下まで、中は眉下から鼻下、下は鼻下から頤尖までを比較します。白人では60㎜と同値が理想的ですが、アジア人の多くは上顔面は短い=頭が小さい。中顔面が短いのは鼻が短く上顎の発達が不足しているからで、比して下顔面が長くなります。頤が長いアジア人は少ないが、中顔面が発達不足な為に下顎が相対的に大きい場合は咬合不全が併存し、それは疾病であります。そして下顔面の要素中、上口唇の特に白唇部が長いと、間延び感として容姿全体に影響します。

顔面の横の比率は顔面の幅が土台ですが、内眼角間と眼裂横径は顔の幅の5等分が理想です。内眼角間や鼻翼幅と、口唇幅が黄金分割比=5:8が理想とされます。レオナルドダビンチが提唱しました。アジア人では顔長に比して顔幅が大きいので、相対的に口唇幅が小さい人が多く、鼻翼が大きければ、やはり相対的に口唇が小さいのです。

顔面の部品の前後位置関係では、中高が良いとしても、鼻が口より前にあるのが理想です。ましてや、中顔面が後方にあるいわゆる三日月顔は上顎発達不全という疾患です。そしてエステティックラインは、鼻尖と口唇と頤尖が一直線上に有るのが理想とされます。アジア人では口が出ている人が多いのですが、鼻が低く、顎が短くて後ろに下がっているからです。その結果口が前だと、白唇の長さが余計に目立ちます。

周囲とのバランスを重視しなければ、口周りの美容外科手術は意味が無いからです。だから術前からの丁寧な診察と評価と、患者さんとのコミュニケーションが必要です。美的センスなんていう軽いものでなくて、もっと高度な美容学が必要です。これには経験を要しますし、たゆまぬ学術的研鑽の結晶でもあります。

更に口周りは創跡が見える部位なので、丁寧に手術しなければなりません。形成外科のトレーニングを積んだ医者でなければ上手に縫合出来ません。これまでご覧に入れてきましたが、私の症例では手術後創跡が拡がりません。だからも後戻りもしません。そして最終的には見えなくなります。形成外科医の巧みの技を駆使して、丁寧な手術を心掛けているからです。

症例はこれまでにも供覧してきました。27歳女性です。昨夏には鼻の手術をしました。口唇長16㎜で長いし、歯槽の形からして中央だけでなく両サイド2/3当たりまでが前に有り白唇がもこっと前に出ているタイプ。内眼角間31㎜:鼻翼幅36㎜:口唇幅46㎜と口唇が小さい。頤幅105㎜とエラの幅が小さくないので、口唇が余計に寂しい。

デザインは下右図の如くです。白唇部は両鼻翼間を5㎜切除とする。外反を求めて皮下脂肪層を半層残して、口輪筋と共に縫縮=Plication(プリーツ)して縫い寄せる。口唇の両外側は、口角の上の皮膚を三角形に口輪筋上で5×7mm切除。引き上げ方向は45度とし、5/√2≒3㎜上と横に引き、口唇幅を52㎜に拡大することとした。

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上は今回の術前とデザイン図。

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上の正面像は術直後と術翌々日の画像です。

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上の画像は術御1週間と術後2週間を並べました。1週間で抜糸した後に「次はメイクして来て下さい。」とお願いしたら、術後2週間ではコンシーラーが入ったファンデでカムフラージュしてきて、写真を撮らせてもらえました。鼻の下の傷跡は見えません。マスクは不要ですと。

下の2枚ずつ右斜位像と左側面像。順に術前、術直後、術翌々日、術後1週間、術後2週間です。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAIMG_0042IMG_0039IMG_0253IMG_02512週間の経過が判りますよね。

見事に間延び感が消失して、しかも中央を主に外反させたので、外のもたつきが診られなくなってすっきり感が強調されています。もちろん腫脹が強い部位なので、膨らんでいます。よく見てみると、術直後よりも、術翌々日つまり術後48時間の方が腫脹が強いのが判りますよね。毎回書いて来ました様に、48時間がヤマです。ぶつけても”青タン”が浮いてくるのは48時間ですよね。もちろん手術後の腫脹は術後48時間を過ぎたら確実に引き始めます。口の周囲は、食べる喋る為に常に運動する部位なので表情筋が発達していて、その為に血行が良好なので腫脹が強い部位なのですが、血行が良好な部位は逆に腫脹の吸収も早いのです。

これまでの症例を見て判る様に、術後1週間での画像ではかなり軽快してきます。ただし腫脹と筋のダメージが影響して、表情筋の運動は阻害されます。口が閉じ難い。鼻が引き下げられている等の静的形態にも反映します。表情筋を始めとした全身の筋肉は、覚醒時はトーヌスを保とうとして収縮しています。全身の筋に常に微弱な信号を送っています。身体の姿勢を保つ為と、顔は精気を見せるためです。ところが手術野は、腫脹等の侵襲の影響で神経信号も通り難く、また筋も収縮し難いために、口輪筋や口唇挙上筋や鼻翼挙上筋のトーヌスは働きません。従ってダメージが回復するまでは口が閉じ難かったり、鼻が引き下げられています。回復には2〜4週間掛かることが数多くの症例を診てきて判明しています。必ず回復して正しい位置に戻ります。

では本症例において鼻翼と鼻柱の位置を正面画像で見てみましょう。術直後から、術翌日、術後1週間、術後2週間と見ていくと、鼻の孔の見える大きさが確実に減っていってます。つまり鼻翼と鼻柱の位置が引き下げられていたのが術後2週間でちゃんと戻りました。術前の位置に一致しています。鼻翼の幅もちゃんと戻りました。これまでの症例の中でも10例のうち3番目くらいの早さです。同時に口囲の運動も正常化していました。話し方にも何ら異常感は呈していません。でも敢えて私は申し上げました「大口は開かないこと!。術後2週間まではビッグマックは食べないこと!。術後4週間は歯科治療は禁止。」術後2週間で通常の生活上は支障が無くなりますが、このくらいは無理しない方が良いと思います。

今回の症例は鼻に引き続き口囲の手術を施行しました。形態は良好に作れたと思います。ただし皆さんには、まだまだ経過を見ないと判らないと思います。次回更に2週間後をお楽しみに!