2018 . 2 . 7

口周りの手術は定番ですが、口囲は様々な要素が重なります。

口周りの手術のブログ掲示が引き続いています。口周りの手術は最終兵器ですと申し上げてきましたが、考えが変わりました。患者さんにとって、口周りの手術が最終兵器なのではなくて、私が患者さんにとっての最終兵器として使われてきました。言ってみれば、私は駆け込み寺みたいな所です。そこでブログ提示症例だけでなく、口周りの手術症例を見直してみました。するとあるわあるわ、約半数の症例は予め他院で手術されていて、その目的は様々ですが、二次修正も兼ねての症例でした。いくつかの例を挙げますと、創跡の問題や、創跡の位置の問題。不適切な手術選択に対する適正な手術の要望。デザインミスに対する修正。不適切な医師に依る治療の結果の後戻りや創跡が\目立つ等々です。更に他院での手術後の修正の中の二例は、私の先輩の跡と私の北里大学時代の教え子の跡でした。世の中は狭いのです。アッといけない。私の初療後に切除不足で追加手術した例もありました。その症例は満足されましたし、今やSNSの世界では評判の好例となりました。

そうです。またぞろ二次的な手術です。今回は口囲と言っても、鼻唇溝(法令線とは人相学用語です。)を切除されて創跡が目立つから、同術術野で創跡修正することです。口周りの手術は適切に手術法の適応を見出し、丁寧に巧く手術しないと良い結果が得られないのです。

症例は42歳、女性。白唇長(鼻柱基部〜Cupidの弓):22mm。鼻唇溝を他院で切除した創跡が谷になり却って目立つ。内眼角間36㎜:鼻翼幅36㎜:口唇幅49㎜と5:8より口が小さい。上顔面72㎜:中顔面:60㎜:下顔面62㎜と下顔面が冗長で、上口唇(鼻柱〜交連)25㎜:下口唇(交連〜頤)39㎜と5:8より上口唇が長い。鼻唇角が喰い込んでいて、鼻翼よりも低いから鼻唇角にプロテーシスまたは軟骨移植の適応でもある。

現在私は、白唇部は5mm切除を最大限にしています。人中部だけ6mmにして弓を強調したい希望。外反は術前より少し欲しく、それに対して口輪筋の上で切除する手術を示唆しました。口角は目尻と頬骨隆起の中間に向けて約30度方向に5×10㎜の皮膚切除で、口角を横V字に口輪筋ごと外して引き上げるデザインとしました。鼻唇溝は創跡をスピンドルに切除し、頬筋との癒着を剥離して平坦に縫合するプランとしました。

先ずは術前とデザイン後の正面像を供覧します。上に述べたデザインです。

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下に術前の右側面像と左斜位像も載せます。

IMG_0284IMG_0283IMG_0290左は手術直後の正面像。下に斜位像と側面像。

IMG_0294IMG_0293IMG_0442術後1週間の抜糸直後の正面像と下に斜位と側面像

IMG_0445IMG_0446抜糸時に引っ掻いてしまい赤みが強くなります。腫脹はかなり引いていて、ピーク時の40%以下に成っています。まだ静的にも動的にも評価する段階では無い様です。創跡修正は谷が浅くなりましたから、目立たなくなるでしょう

毎回手術直後の画像はすごいことになります。口周りは血行が良い部位なので後出血も完全に止まりません。腫脹の強い部位であり、形態変化も見出せません。運動機能の低下のため静的形態も動的形態も出来上がりが見えません。でも必ず、意図した形態に変遷していきます。数多くの経験から判明しています。だからこの手術は、私の様に熟練した形成外科医の技術を丁寧に駆使して、口周りを多く手術してきた美容外科医の経験と診断技術を持ってするべきです。

そして数多くの症例提示をご覧になった患者さんが引っ切りなしに来院されます。平均で週に三例は施行しています。残りは眼瞼や鼻の手術やスレッドリフト術です。口周りの手術が多くなったのはここ数年来の傾向ですが、これらの分野は私の好きな手術で、過去50年間父の時代から多いもので、父はよく「目、鼻、胸、リフトの順かな?。」と言っていました。今も変わらないと思います。でも最近私は、口周りの手術に最も多く携わっています。ブログの御陰さまです。

そこで、口周りの手術の症例提示は術後1〜2週間からのブログが見物です。術直後から載せなくてもいいのかも知れませんが、経過を見せていけば、今後の患者さんにとり、おおいに参考になると考えます。標準的な経過を知れば手術に臨む日程を立て易いからです。本症例患者さんもその次第で手術に臨み、とても参考になったと仰っていました。もっとも口周りの手術はマスクでカムフラージュしているなら出歩ける手術です。今が旬の季節ですかね?。

今回は口周りの説明をします。何と言っても周囲とのバランスを診なければなりません。エステティックライン;(A)Esthetic line は側面図で鼻尖と頤前縁を結んだ直線で、線と唇の前後の位置関係が、唇が前ならE-ラインプラス(+)、線状ならゼロ、唇が後ろならE-ラインマイナス(ー)と評価します。要するに口が出ているかそうでないかですが、鼻が高いか?、頤がシャクっているかも関与します。

白人ではE-ラインマイナスの人が少なくないのに対して、アジア人では滅多に見ません。鼻尖が高くないからです。相対的に歯槽骨が出ているからでもあります。頤が前にあるためE-ラインマイナスなアジア人は”シャクレ”と称されます。要するに白人から見ると、アジア人は出っ歯、細目吊り目が典型的とされていて、差別用語としても使われます。対米隷従していてもバカにされているだけなのです。そう言えば、その旗を振っている総理はE-ラインマイナスですが、目は細くて垂れ目ですね。

E-ラインと白唇部長は相関します。これまでの症例の60%程度はE-ラインゼロか稀にマイナスですが、長いものは長いか、口が出ていないのにもこっと内反している場合に短縮を図る希望が生じていました。残りの多くはE-ラインプラスでしたし、口が出ていると距離も長くなるのです。多くは白唇部が内反(前屈)してもこっとしています。その場合やはり短縮の適応になります。本症例は適応症例です。

要素的に、E-ラインプラスの場合歯槽骨が前突していることが多く、(本症例も典型です。)白唇が内反する傾向にあります。話しは飛びますが、日本人では歯牙は2タイプに分けられます。形がシャベル型とへら型ですが、それは大きいタイプと小さいタイプに分けられます。実は歯槽の前突は幅が無い為に前に出ているのですから、歯牙が大きければ尚更です。その場合歯牙も出ているので(つまり出っ歯)、内反は相殺されますが、口唇(白唇+赤唇)全体が前に出ます。この場合は長さが問題で、やはり長い傾向にあります。本症例は典型例です。

過日新書を読みました。人類の進化の最新の知見をまとめた売れている本です。口周りの進化は脳の発達に伴い、脳が前に出るから口が下がったのです。あくまでも変異の範囲ですが、口が出ていると原資的に見られるのです。私はいつも言いますが、人間だけが口で啄まないで食べます。口で啄む動物は口が長い。嘴が典型です。もういい!、余計な話しは止めます。

本症例は前医で不適切な手術を受けた為に、二次修正を追加する必要が出来た症例です。鼻唇溝は溝ですから、ヒアルロン酸等による充填が第一選択です。鼻唇溝の外側の弛みをリフトしても浅くなります。鼻翼を寄せても浅くなります。切り取るのは最終手段です。それもこれまで再三再四述べてきた様に、見える部位の美容形成外科手術は、形成外科専門医が行なうべきです。

口唇短縮術(白唇部切除術)と口角挙上術の組み合わせ手術=いつものやつですが、今回は鼻唇溝の創跡の修正手術を併施しました。