2018 . 4 . 12

お待ちかねの眼瞼手術。開瞼不足あり!

これまで何年間か私が手術をしてきた患者さん。当初から眼瞼をもっとパッチリクッキリにしたいとの希望がありましたが、鼻から入ってやっと眼瞼手術に到ったのです。ところが開瞼に不足が生じました。

本症例の患者さんとはこれまでの診療経過中に信頼関係が深化しているため、手術中は安定して進行しました。でも術前の診察に於いては何回か検討を重ねました。患者さんの希望を汲み取りながら、自然にあり得る良好な形態と機能を得る為に時間をかけました。

そうです。重瞼術&眼瞼下垂手術と目頭の拘縮解除の為のZ−形成術は自然界にあり得る,、最高に良好な形態と機能を作り上げる手術です。

画像は両眼瞼部を術前、術直後、術後1週間、術後3週間の順に。

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術後5週間の画像は視線を変えて二葉

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本症例では左の開瞼力が右に比べ不足となりました。手術前はむしろ右眼瞼が小さかったのですが・・。私は手術に臨んで認識がありましたから、右眼瞼の眼瞼挙筋を力一杯縫縮しました。先ず両側の挙筋を縫縮した段階で見ると、良く挙がっていました。ところが手術直後には、最後の皮膚縫合の段階で左眼瞼に血管刺入をしてしまい腫脹を生じた為に、右眼瞼に比べて左眼瞼の開きが悪くなりました。術直後は疼痛が生じてきます。この後消炎鎮痛剤を服用して治まりました。術直後は疲労と疼痛で撮影時に開いてくれません。

術後1週間では、まあまあ対称性が得られていました。術後3週間まではメイクで左右差を隠していたそうです。でも、術後5週間で来院された際には、明らかな左右差があり、患者さんも「目頭の形は気に入っているのですが、やはり、追加した方がいいですかねえ〜?」と問うてきました。

今回は後天性眼瞼下垂症の治療として、LT法を適用しました。眼瞼結膜側から、結膜とミューラー筋と挙筋腱膜を糸で縫縮します。糸を掛けて折り畳むので、喰い込んでいって緩みが生じます。右眼瞼も少し落ちました。しかし左眼瞼との差が大きくなりました。その差は何かは難しい判断ですが、LT法では緩みが起き得ます。通常は術後2週間くらいで止まりますが、本症例では5週間で左右差が大きくなりました。

挙筋の縫縮は緩みが起き得るのですが、何本も掛ければ少なく出来る筈です。本数が増えれば糸一本図つの負担が減るので、緩みが減るからです。術後3ヶ月まで待ってみて切らない眼瞼下垂手術=黒目整形非切開法を追加してみる方法を提示しました。

もしもそれでも緩むようなら、縫い止める方法があります。表側から眼瞼挙筋腱膜を露出させて、瞼板に縫い着けると流石に緩みません。でも侵襲が強いので必要時以外は行ないません。それに開き過ぎたらその分閉じ難くなりますから、寝ている時に2㎜以上開いていたら角膜が乾いて大変なことになります。ですから、後天性腱膜性眼瞼下垂症に対する挙筋短縮術は適応が狭く、原則的に修復術が行なわれます。修復術は剥がれた挙筋腱膜を縫い止めるか眼瞼結膜側からの縫縮術(LT法)です。後天性腱膜性眼瞼下垂症に対する挙筋短縮術は最終手段と考えています。

当院では真摯にフォローアップしますから、必要な追加修正は行ないます。しかも切らないで出来るならダウンタイムは皆無に等しいので、患者さんは楽に取り組めます。いわゆるチェーン店系では広告宣伝費に私達の倍額以上費やしていますから、診療時間+手術時間を半分しか費やせません。結果的に追加手術に到らないで、追い返すクリニックが横行しています。その結果当院に駆け込む患者さんが絶えません。

しかし、後天性眼瞼下垂に対する手術法として、未だに旧い方法しかできない医師が、形成外科医の中にも沢山います。1979年にUKのAnderson が腱膜手術の論文を発表しています。なのに、未だに挙筋短縮術の概念と腱膜修復術の概念を理解していない形成外科医、ましてや非形成外科の美容整形屋が多く、学会でも論議が噛み合いません。この辺にも日本の美容形成外科の斯界の反知性主義的姿勢が垣間見えます。

一重瞼を二重瞼にする際に蒙古襞を解除すると自然な形態になります。たとえ末広型の二重瞼を望む場合でも、一重瞼の人の蒙古襞の拘縮を温存していると、やはり奇異な印象になります。目頭切開の目的は末広型を平行型の二重瞼にするためではありません。あくまでも拘縮の解除です。一重瞼に伴う蒙古襞の拘縮のままで二重瞼にすると不自然な形態になります。

何度も書いてきましたが、蒙古襞は被さりと拘縮の二面性があり、切除すると被さりを除去できますが、縦の傷跡は術後に必ず拘縮してしかも陥凹するので、球面である眼瞼に谷線があると目立ちます。三日月形切除の傷跡が目立つのはこのためです。形成外科医にとってはZ-形成の術式と幾何学的な理論的なデザインはお手の物です。一辺4mmの60度のZ-形成は横方向に1.5mm開いて、縦方向に3mm伸びます。図示します。

DSC_0077左図の如くのデザインを、蒙古襞の稜線に沿って縦辺を引いて正三角形の皮弁を入れ替えると上記のような形態変化が得られます。症例の画像でもメジャーは当てていませんが、幾何学的に数字通りの変化が見られます。これも何度も書いてきましたが、このようにパッチリクッキリの二重瞼には目頭が被さっていないのが自然な形態と機能を呈します。

患者さんはZ−形成法に基づく目頭切開手術の形態的変化に満足されています。眼瞼下垂手術の経過は、真摯に今後の経過(追加修正術も)を掲示していきます。