鼻唇角とは何?。一般人は知りえないと思いますが、美容外科医でも知らない輩が多い。形成外科医でも鼻柱基部という言葉しか知らない者がほとんどでしょう。一般人は鼻翼基部も知らないでしょう。
鼻柱とは、鼻尖(鼻の頭)から後ろの鼻の穴の間の柱みたいな部分(読んで字の如くです。)です。ところで唇とは赤い部分だけではありません。そう思っているのは日本人だけです。赤い唇:赤唇と書いて、せきしんと読み、白い唇:白唇と書いてはくしんと読みます。その白唇の中央にある溝が人中です。読んで字の如く人の顔の真ん中という意味ですが、大事な事は胎児に際に顔が出来上がる際に両側から寄ってきて合わさる線です。合わさらなかったら口唇裂になるのです。
側面から見て、鼻柱と白唇の角が鼻唇角です。鋭角だと喰い込んでいて魔法使いのおばあさん状態の意地悪顔に見られます。最低90度以上が可愛く見えます。白人では90〜115度が理想とされますが、日本人では白唇が前傾している人が多いので鋭角な人も多いのですし、100度以上にする必要はありません。
鼻唇角が鋭角だと相対的に鼻線が上を向くように思うかもしれませんがそんなことはありません。鼻線の位置そのものは変わりませんから。また巷間ではアップノーズを好ましくないと噂されていますが、アップノーズとは鼻の頭が高いツンとした白人の美人のような鼻を言うのであって、鼻尖が情報にあるのはアップノーズではなく、ショートノーズです。ちなみに鼻唇角増大術は少々アップノーズに見えますが、少なくともショートノーズになりません。
ところで鼻唇角プロテーシスを施行する美容外科医を時折見かけるようになりました。この手術法は私の父が考案して明かさなかったのですが、もう一人古川先生が似たものを考案して学会報告しました。徐々に真似る医師が出てきたようです。
何しろ鼻唇角プロテーシスは安全です。微妙な変化ですが人格まで変えて魅せます。本症例は患者さんが認識して手術を希望されました。よく知っていましたね!。嬉しい限りです。そうであれば頑張って綺麗に仕上げましょう!。
症例は25歳女性。昨年9月に韓国で鼻尖に耳介軟骨移植を受けて当院で抜糸はしてあげた。その際口唇も検討していた。12月に再来。鼻尖は下がっているが鼻柱から鼻唇角は余計に喰い込んだ。鼻柱の創跡に段差。数か月おいて治したい。人中部白唇長17mm。
鼻唇角から鼻柱基部のプロテーシスの適応だが、耳介軟骨3枚なら可能とも示唆しておいた。口角下がっている。鼻翼幅35㎜:口唇幅49㎜で横にも拡大したい。45度5mmが適応と考えられた。
本年1月に再診。鼻柱基部は軟骨3枚でも足りないと感じる。結局患者さんはプロテーシスを希望。鼻尖は後日にするが、軟骨3枚重ねを予定しておく。足りなくなったら耳珠からも追加出来る。および鼻翼軟骨縫合も。眼瞼も検討中と訴えられた。まずは私のオリジナルである鼻唇角プロテーシスを施行することとした。
画像を各方向別に術前と術直後で比較します。
正面像から。
術前とデザイン後。といっても曲がらない様に両側鼻柱基部に線を書いただけです。
入れたプロテーシスの像と術直後の正面像。正面から鼻唇角が見える程は下げません。かといって腫れも見えません。
術前と比べてわずかに鼻唇角が見える様になりました。
側面像では明らかに鼻唇角の見え方が変わりました。ほぼ90度の直角となりました。しかも僅かに鼻尖が前に押し出されました。腫脹が影響しているのかも知れません。この点は経過を診ましょう。
下方からの画像では変化が見えません。でも創も見えません。鼻孔内の創は見えないのです。
術後1週間で抜糸しました。
術直後の状態が保たれています。この手術は術後の経過が早いのです。通常は結構腫れるのですが、本性例はほとんど腫れが見えませんでした。
術後1ヶ月で更に落ち着きました。
人中部の白唇を測ったら、術前より1㎜短縮していました。ということは鼻唇角が1㎜下がったということです。控えめのプロテーシスを入れたので、数字的にはこれだけです。見た目にはどうかと診察時に話していたら鼻翼との位置関係が変わったそうです。患者さんに、「鼻翼挙上術や鼻翼縮小術はどうですか?」と訊かれて測ると、鼻翼幅は35㎜で縮小術の適応ですが、ご覧の様に右鼻翼〜鼻柱〜左鼻翼がほぼ水平線状に並んでいます。術前は鼻翼の方が鼻柱より下にありました。鼻唇角下術(プロテーシス)の結果鼻翼挙上術は不要となりました。
側面像や斜位像でも鼻唇角が鋭角でなくなったので可愛いでしょ?。
見てきてお分かりの様に、鼻唇角下性術はダウンタイムが短い楽な手術です。傷も見えません。その割にちゃんと効果が得られる手術です。副次効果も周囲に波及します。後はサイズの問題です。この程度が安全です。なおこのサイズまでなら耳介軟骨3枚重ねで可能ですが、採取する手間と細工する(積み重ねて縫合)手間が掛かるので費用は倍化します。
まだわずかに腫れがあるかも知れません。術後3ヶ月の完成を診ましょう!
術後3ヶ月で完成!と宣言しようと思ったのですが、患者さんに「もっと下げたかったかな?。」と訴えられました。実は私も前回までにブログでも書いてきたので、足りないと言われかねないと危惧していました。
でもその目で側面画像を見比べていくと、下がっています。上左が術前、上右が術後3ヶ月です。上白唇と鼻柱が作る角度が鼻唇角ですが、鋭角から直角に変わりました。そのために唇が出ているのが解消しました。それに横から見て鼻柱が見える様になりました。
でも足りないと言われれば、認めます。日本人では平均的に口が骨ごとに出ているので(アジア人が出っ歯と表現されるのはそのためです。)鼻唇角は鋭角が多く、だから直角90度以上にしたいのです。白人は鈍角が標準です。本症例の患者さんは鼻唇角が鋭角だったので、両側鼻翼基部と鼻柱基部を結ぶ三角が上向きだったのも治したかったし、鼻柱も下げたかったのでしょう。だからさらに鼻柱までの長いプロテーシスを入れたい考えは汲めます。約1.5㎜追加を希望されました。もっとも顔幅の手術も検討中でその後変わるかもしれないので待つことになりました。
実は鼻は伸ばせます。いきなり大きいプロテーシスを入れたら傷が治らないし後々皮膚が破ける可能性さえもあります。でも一回危なくない大きさのプロテーシスを入れてポケットの皮膚、皮下組織を伸ばせば、約3か月で皮膚は強くなります。これをエクスパンジョン,Expansion効果と言います。また新しい用語ですが、形成外科医の得意な独自分野です。美容整形屋は知らない言葉です。
ティシューエクスパンダー,Tissue Expanderと言う道具を使った手術法があります。皮下にシリコンの風船を入れて、バルブ(ゴムまりの臍みたい)が付いていますから、定期的に(約1週間毎)生理食塩水を注入して皮膚を引き伸していき、欠損を被覆する為に利用する手術法です。皮膚は伸ばすと薄くなりますし、血流が減少しますが、徐々に反応して毛細血管が増生して、皮膚も厚みを取り戻します。これがエクスパンジョン効果です。
因みに美容外科手術で何か入れたり引き伸した時、例えば鼻のプロテーシスで鼻尖の皮膚を引き伸した時やフェイスリフトを繰り返して耳の前の皮膚を引き伸した時等に皮内の毛細血管が網状に透けて見える事がありますがこれもエクスパンジョン効果です。別に問題はありませんし、そうなれば皮膚は厚みを取り戻しますから危なくなくなります。
今回鼻唇角プロテーシスの増加を希望されましたが、エクスパンジョン効果があるから、一回り大きな者に変えられます。縫合が出来る大きさまで可能です。因みに父は「鼻は伸びる。育てるんだ。少しずつ大きな物に変えれば出来る。」とかよく強言して鼻プロテーシスを入れ替え増大していましたが、そのうちの1例では4回目に大き過ぎて露出しました。だって鼻に厚さ11㎜のプロテーシスを入れたんだから!?。ただしその患者さんはSchizo.統合失調症で、仕方なく手術したのです。もちろん相手は(本人でなく周囲)は納得していました。
怖い話しは終了して、次回増大の際にはブログを書き直します。お楽しみに!