2019 . 8 . 4

人中部中心の白唇短縮術で人中とCupidの弓と口唇結節を造りましょう。定番の口角挙上術は進化して綺麗。

これまでに幾つかの美容外科手術を受けている。現在最大のチェーン店で鼻プロテーシスを入れたり抜いたり。眼瞼も切開時に目頭を三日月型切除をされて形がよく無い。もう一方のチェーン店で鼻翼外側切除を受けたら、傷跡が凹凸。鼻尖は縮小術だけ再施行。これらの問題は眼瞼以外は画像で見えます。眼瞼は蒙古襞が突っ張っていてZ−形成術の適応です。

このところ同様の症例が増えました。昨今何とかミクスのお陰様で、国家的に経済効果が高揚しているように思わされていて、美容医療が賑わっています。決して美容医療に対する忌避観念が払拭されたわけではありません。なぜなら未だに宣伝広告を見て来院する患者さんが大多数だからです。私はこのブログを症例紹介としていますが、学術的に診察から手術法、手術経過を供覧して、皆さんに教育的配慮を載せている積もりです。ただし良好な結果を見せると患者酸が殺到するのでそれは広告と言えるかも知れません。最近でも症例の半数以上はブログ掲載を承諾されます。

こうして私だけが真面目に美容医療に取り組んでいるのに(そりゃあそうです。私は生まれながらに美容外科医でキャリアー31年です。)、経済的浮揚効果に乗って美容外科医が増え、クリニックもにわかに増えています。結果的に経験の多寡により乱雑な美容外科クリニックが増加しているのでしょう。上に書いたように不良な結果を抱えて来院する患者さんが増えてきました。やはり広告宣伝の多寡を信じて受診する患者さんが多数だからです。口コミを頼りに受診する患者さんは僅かだからです。

症例は29歳女性。人中部の白唇長が19㎜。C−カールがあるのはヒアルロン酸で赤唇を前突しているため。上顔面(生え際〜眉下)70㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜頤尖)67㎜と中顔面に比べて下顔面が長い。その下顔面は上口唇(白唇+赤唇)26㎜:下口唇(赤唇〜頤尖)41㎜と黄金比率に合致している。口唇はE-ライン上にあり口元は出ていない。下顔面の長い中で頤の長いは骨格の問題であり検討の余地はあるが、まず上白唇部4㎜切除を受けたい希望。

内眼角間(すでに切開済み)32㎜:鼻翼幅(すでに切開済み)33㎜:口唇幅45㎜で他の部品の横サイズを小さくしているが口はさらに小さく、黄金分割比率で計算すると49㎜目標となる。口角は30度方向に5㎜引き上げて、横に2、5×2=5㎜拡大、上に5÷2×√3(ひとなみにおごれや1、7320508)=4.3㎜挙がるデザインとした。

術直前に白唇部5㎜短縮を希望され可能とした。白唇部は直線的だが、赤唇にヒアルロン酸が入っているので外反C−カールは軽くて良い。人中は深いが幅広で、Cupidの弓も形ははっきりしているが幅広で口唇結節(上赤唇部中央の前突)が無い。両側鼻柱基部の縫合時に1、25㎜ずつ寄せて人中の幅を狭くして弓を急にして、口唇結節を造りセクシーにする。口角は30度方向に5×10㎜の三角を切除し口角を鼻翼下までなだらかに引き上げる。

今回は術前から画像を載せながら説明します。

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下顔面(鼻下〜頤尖)67㎜と長く人中部の白唇長が19㎜。鼻翼幅33㎜:口唇幅45㎜。鼻翼切除の傷跡が凹凸です。

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口唇はE-ライン上にあり口元は出ていない。鼻翼切除の傷跡の凹凸が目立ちます。口角は下がっています。

デザインを説明します。

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白唇部短縮術は人中部だけでなく両側鼻翼下間を同じ幅で切除しなければ富士山型になります。また、鼻孔の底の土手状の膨らみ,Nostril sillを切除すると鼻の孔の中が丸見えになります。本症例は土手がはっきりしているので土手のすぐ下を切れば傷跡が消えます。

口角は上下の赤唇縁が交差する点をまずマーキングし、垂直よりも30度斜め下向きに5㎜の線をデザインし、口角から上赤唇縁に沿って10㎜をマーキングし繋げて三角形を描きます。下赤唇縁は約10㎜のマーキング。

手術中の画像はありませんが、簡単に説明します。

まず手術室でデザインします。細かいのでペンはイラストドローイング用の先の径が0.1㎜の細い水性ペンです。上の画像がその直後の画像です。消毒後紙シーツでドレーピングし、いよいよ開始。まず局所麻酔を白唇部の切開線と口角に注射します。合わせて5CC以下ですが、口周りは注射が痛いのです。でも逆に良く効いて手術は痛くなく、口も動かせるのでお話しも出来ます。

私はまず口角を浅く切開しておきます。局麻を注入するとし血管収縮剤を含有しているために白くなり、デザインが消えたら赤唇縁が不明となるのでその前にトレースするためです。浅く切開すれば出血は微々たるものです。

次に白唇上方、つまり鼻の下を切開します。いきなり口輪筋のすぐ上まで#15knife(英語ではメスと言いません。メスはドイツ語です。)で切開し、直ちに帯状の皮膚皮下脂肪を切除します。口輪筋の上からは出血点が何箇所かあります。解剖構造的に大体知っています。バイポーラー電気メスで念入りに止血します。

まず口輪筋をPlication(スカートのプリーツと同じ語源でシワを寄せる意味),折り畳みます。両側鼻翼の下に四角くく糸を掛けて、糸の間に介在する口輪筋を後方に押し付けて、口輪筋を潰しながら結紮します。この技で白唇の外反C-カールが為されます。更に両側の鼻翼基部だけ真皮縫合します。次に鼻翼横の創内を剥離とトリミングします。両側鼻翼間を切除縫合した分、鼻翼横に皮膚皮下組織が余るので、そこが膨らまない様にするためです。

その後細かく縫合に入ります。三層縫合します。既に一層目の口輪筋を縫合して5㎜の半分は引き上がっています。2層目は真皮縫合です。皮膚の裏側を縫合してピッタリ合わせます。平均18針は縫います。真皮縫合が終わった時点の創の隙間分が最終的な創跡の幅になります。私は引っ張っても隙間が出来ない様に丁寧に縫いますから、創跡が日本一目立たないとの評判を得ています。逆にその評判がプレッシャーになっていますから、頑張って時間をかけて細かく縫うのです。

ここでもう一つ、真皮縫合時に鼻柱基部の部分で上下をずらして縫合する技です。私が開発したオリジナルの方法です。上辺の鼻柱基部に糸を掛ける点より、下辺の白唇部の点は何㎜か外側に掛けて結ぶと、白唇が人中部でその分寄せられます。その結果人中が狭く深くなり、Cupidの弓が急峻になり、口唇結節(赤唇中央の前への膨らみ)が強調されます。術前の形態と希望により症例ごとに使い分けています。約半数の症例には適応し、現在までに両側0.5〜1.5㎜寄せて来ました。弓の形がはっきりして、上赤唇の中央が尖っているとセクシーで、いつも私が言う様にキスしたくなる唇になります。でも私は患者さんとキスした事はありません??。

その後皮膚表面を4カ所結節縫合した後に間は連続縫合します。細かく結節縫合すると糸の後が残るからです。真皮縫合でピッタリ寄せていてもミリ単位以下のわずかな段差がありますから、皮膚連続縫合で細かくズレが無い様に合わせていきます。

手術直後の画像群は出来上がりではありませんが、形態変化は判ります。

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今回は術前とデザイン、術直後の画像を並べました。形態的にはまだまだ分らないでしょう?。

もう一度苦言を呈します。真皮縫合は形成外科医の独壇場で、真皮縫合を細かく縫えない医者は顔を切開縫合する手術はしてはいけません。ほとんどの美容外科チェーン店の医者は形成外科を研修していませんから、創跡が拡がります。そもそも創は皮膚縫合が架かっている間はピッタリ合っていて、抜糸後に約3か月までに、徐々に幅が拡がるのです。ホームページなどに長期経過を載せなければ分りません。そういうクリニックがほとんどですし、そういうクリニックは真皮縫合を細かくしていない証拠です。

つまり「後戻りが起きませんか?。」とよく訊かれますが、それは創跡が拡がった分です。創跡の幅が段々出来て、その幅の分後戻りします。他院での手術後計測して教えてくれた患者さんが何人も来ました。「18㎜を4㎜切除して14㎜にしたのに、今16㎜ですウ〜!。」とか云われて、私は「ええっ〜、半分後戻りしたの?。もう一度私が4㎜追加切除しましょうか?。私は毎回測っていますが後戻りは最大1㎜です。」「なんか皆さんに、日本一綺麗に手術する美容形成外科医として知れ渡っているみたいなので、私もプライドがありますから一生賢明手術しますよ!。」とかいうと、「やってえ〜、お願いしますよお〜。」と懇願される毎日です。

でも実は、同じ線を二回目に切開すると、どんなに時間を経ていても創跡は固い為、力加減が難しいんです。固い部分を切る方が繊細なのです。でもやるしかないのです。それに前回の手術法が変法を使っていて解剖学的構造が変わっている事があるので注意を要します。

ゴチャゴチャ書いている間に術後1週間が来ました。次に抜糸直後の画像を載せます。IMG_2302IMG_2303

そんな腫脹が強くなかったので、もう形態の良さが見えています。短縮効果はもちろんですが、赤唇縁のカーブがはっきりして綺麗でしょう。先日他の患者さんと話していて理解してもらえたのですが、セクシーはワイルドとプリティーを備え、ビューティフルは進化人です。本症例はセクシーでワイルドでプリティーです。さらに話していて気がついたのですが擬態です。その話はまた?。実は本症例の患者さんはおまかせムードだったのですが、私は患者さんの言動をよく診て、合っている手術を勧めました。正解じゃあないでしょうか?。まだ1週間ですがなんと赤唇の形がセクシーなんでしょう。

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E-ラインが綺麗なので口唇を外反しても下品になりません。上白唇の傾斜(C−カール)と赤唇の形が気持ち良いです。まだ上口輪筋の働きが弱いため下口唇を挙げて口を閉じなければなりませんから、下口唇が前突しています。でも上赤唇が厚くなった分比率は良くなっています。

今後まだ機能的に形態的に変遷します。間違いなく更によくなります。お楽しみに!

今回術後1週間以降の画像を紛失してしまい、術後3ヶ月をいきなり載せます。

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鼻翼の傷跡は目立ちません。本症例は鼻翼縮小術後ですが、最上段の今回の術前の傷跡は酷いもんです。私は一部切除しましたから、現在の方がずっときれいです。でも口角の傷跡は目立ちます。

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右口角の傷跡は創傷治癒が遷延しました。術後1週間の抜糸後の下口唇部の傷跡には隙間が診られます。赤唇には真皮がないので得意の真皮縫合が出来ません。だから稀に癒合不良の事があります。でも抜糸を遅らせるとかえって後になります。こうして幅がある傷はどの幅で肥厚性瘢痕になり得ます。

そうなればステロイド注射しかありません。ケナコルトは肥厚性瘢痕に対して保険適応します。赤く帯状に膨隆した肥厚性瘢痕を平らになれば目立たなくなります。一回目は硬いので薬が入りにくいのですが微量(0.1CC)でも入れば柔らかくなります。したがって効果が足りなければ二回目を入れれば充分に効果が得られ、目立たなくなるでしょう。だから、もう一回診せてもらえます。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

ガイドライン上費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。