口周りの手術3点セットも適応ですが、前々回は白唇部切除術と口角挙上術に専念しました。現在症例の患者さんは35歳女性。術後3ヶ月の完成を宣言する間もなく、鼻翼縮小術を希望されました。人中部白唇短縮術の結果は21㎜だったのを5㎜切除して術後3ヶ月で16㎜と後戻りゼロで満足されています。実は前々回手術の直前に鼻翼縮小術を併施する3点セットを希望されたのですが、予約時には迷っていた為に時間が取れなくて見合わせたのです。早速予約をされました。
鼻翼幅は37㎜です。両側鼻翼内側の壁から内側へ幅2㎜の皮弁を造る事を計画しました。鼻翼縮小術を後日追加可能な症例です。
前々回の説明から書きます。症例は34歳女性。上下歯槽骨切り術(セットバック)後の口周りの余剰が気になって来院。歯科口腔外科で手術を受けた。もちろん4抜き(両側の前から3本ずつの歯が植わる歯槽骨を後退させる際邪魔になる両側の4本目を抜歯すること)。結果的に歯槽弓が角張り、両サイド(3−3間)が平面的になり長い白唇が余計に長く見える。白唇長21㎜と確かに長い。骨切りの結果口は出ていないからE-ラインは直線上にある。5㎜切除。セットバックの結果もあって人中が浅くなった。弓もなだらかになった。上口唇結節(赤唇中央の膨らみ)がなくなった。両側鼻柱基部の部位で白唇を1㎜寄せて作製しましょう。
内眼角間29㎜:鼻翼幅40㎜:口唇幅50㎜で口角は横に3㎜上の3㎜を求めて45度方向に5㎜挙上する予定。
実は術前日になって鼻翼縮小術の併施も希望された。上にある様に40㎜なので適応で、両側鼻孔底に幅2.5㎜の皮弁を作り6㎜縮めたい。でも予約時間内には不可能でした。患者さんも予定を立て直すのは困難でした。敢えてその目で診ると、セットバックしているから鼻翼縮小しても白唇が膨隆しないと考えられた。用手的にシミュレーションしてみてももっこりしません。セットバック後の症例だからです。
画像を見ましょう。術前像から。
正面像と近接像。白唇が長い。しかも平面的。赤唇が薄い。人中が浅く、Cupidの弓が緩やか。口唇結節(赤唇中央の膨らみ)がない。口角は表情で挙げている。鼻柱基部が鼻翼基部より上にある。
デザイン画は上記の計画の通り書きました。
デザインを詳しく説明します。白唇短縮術:両側鼻翼基部の間に切開線。鼻孔の下の土手,Nostril sillが鼻翼に続きますから、土手の麓に上の線。両側鼻翼間はすべて同じ(あくまでも人中部だけではありません!)5mmの切除幅として下の切開線を書きます。そこから鼻翼に向かっては鎌型に切除幅を減らしていきます。つまり鼻翼基部間しか挙がりません。口角挙上術:まず口角の交点を決めます。その点から上下赤唇縁に沿って横V字(く)に書きます。上8mm、下10㎜程度です。口角点から斜め45度に5mmの線を引きます。先端に口角が移動します。頂点から上口唇に向けてもう一線引きます。囲まれた三角形の皮膚、皮下脂肪を切除します。
下に術直後の画像。
白唇は切開線の間の皮膚皮下脂肪を全層全長を帯状に切除します。口輪筋が露出します。口輪筋を縫合後、約3㎝の創に真皮縫合を細かく18針が標準となりました。その後皮膚表面縫合は白ナイロンで連続縫合し、創縁の段差をなくします。
口角はまず三角形の皮膚と皮下脂肪を全層切除し、白唇部の口輪筋を露出させます。その傷に沿って下方向に剥離するのですが、そのまま白唇部の赤唇部の口輪筋の境界を分けます。口角部の赤唇を粘膜と口輪筋を一緒にV字型に分離します。この際口角の角を見出して、それを三角形の頂点に縫い付けます。これで挙上されます。その後上下の赤唇縁を縫合していきますが、各辺ともそれぞれの長さが違うので上手くつじつまを合わせなくてはなりません。
側面と斜位像では白唇のモッコリ感が解消しています。外反C-カールになるのは腫脹が軽快してからでしょう。赤唇の突は可愛いでしょ?。
いつもの様に抜糸直後は創の線が赤くなり目立ちます。笑顔の様な口角が気持ち良い感性を魅せます。口はもう閉じられ、頤の梅干しも気になりません。
E-ラインより口が後ろにあるので、白唇のモッコリ内反が除去されるとすっきりします。品の良さを感じられます。術後1か月に診察、画像は割愛します。鼻翼の横の皮膚の余りに依る膨隆は縮小中です。上の抜糸時と比べれば判ります。鼻の下の線は幅ゼロで谷線がNostril sill 鼻孔の底の土手に沿っているので赤色が消えれば隠れます。意識してか笑顔が写っています。優しく品が感じられます。人中と弓の強調も表情を魅せています。鼻の位置は戻りましたが何故か鼻翼幅は縮小しました。ただしサイズは縮小術の適応です。ということで術後3ヶ月に来院されました。決して白唇短縮術の結果として鼻翼が広がっているわけではありません。計測すると37㎜です。あくまでも白唇部短縮術と口角挙上術の術後3ヶ月で経過良好だと言えることが前提で次に進むのです。傷跡は全く拡がっていませんし、鼻翼横の余剰皮膚の膨隆も縮小して気にならない様です。口元の美しさは見事です。しかしそれは患者さんの骨格と動的形態、つまり内面性が素敵なのによる効果です。外面的な向上は内面性に影響するのはいつも言ってきた通りです。そこで考えたことは、鼻翼を寄せたらこの膨隆も引かれて縮小するメカニズムが働く可能性もあるのではないでしょうか?。
とにかく本症例は白唇部短縮術と口角挙上術の併施の術後3ヶ月の経過は良好で、お待ちかねの鼻翼縮小術皮弁法に進めると考えました。
上に書いた様に鼻翼縮小術内側皮弁法は鼻翼の付け根を寄せるためにその下の白唇も両側から寄せられて膨らむのです。だから出来れば同時に施行して白唇側の傷と鼻翼側の傷をずらして縫合していき膨らみを予防する手術をお勧めしてきました。
でも本症例は特殊です。上に書いた様にセットバックを受けているからです。セットバックとは上下の歯牙の前から3本ずつの植わっている歯槽骨をコの字型に切って後ろに下げる手術です。口が出ている人に適応します。結果的に画像でご覧になれる様に本症例は口が出ていませんし、E-ラインが綺麗で側面から見て鼻尖、口唇、頤が直線状に並んでいます。しかももう一つ、骨を下げた結果白唇が平坦になっています。だから後から鼻翼縮小術をして膨らんで丁度良く普通になることが予想されました。その点は画像の変遷を診ていきましょう。
それでは鼻翼縮小術直後の画像を診ていきます。
両側の鼻翼の内側に浅く(表皮だけ)縦に切開を約1㎝、そこから内側に幅約2.5㎜の台形の真皮弁を起こして、両側の切開ないから鼻中核の下を通してトンネルを作成し、そこを通して両側の皮弁を引き出して縫い合わせます。傷は自然に寄せられるのでゆるく5針ずつ縫合しました。
直後に鼻翼幅のサイズは33㎜でした。しかも両側の鼻翼を横に引っ張ってみても全く拡がりません。糸で縫い寄せただけでなく皮弁通しが癒着しますから後戻りしません。
斜位像や側面像では、わずかに白唇が膨隆しています。鼻尖も上方に向いています。鼻柱の下にトンネルを作るので剥離しますから、同部が強く腫脹しているからです。必ず治るのはこれまでの症例を見ていれば明白です。
今回は術直後までの画像提示でした。術後1週間の抜糸時の画像が見ものです。いやサイズの変遷はちゃんと記載していきます。測ると35㎜です。
でも白唇部と口角の御陰で口元はすっきり!。赤唇は可愛い!。その上やはりセットバックの副次的効果として白唇が膨隆していません。一番上の口周りの術前と比べて診ると、術前はセットバックの副作用で白唇が内反してモッコリしていたのですが、白唇部短縮時に外反したのですっきりしてC-カールが出来ました。その上で鼻翼縮小術を加えても内反が再発しません。
見直したら、今回の術前は鼻翼幅が39㎜でした。両側2㎜ずつの皮弁法ですから、35㎜が目標値です。後戻りが多かったのではありませんでした。とはいっても今後の計測が重要です。
笑うと鼻翼は笑筋や頬骨筋群によって両側に引かれるはずですが、鼻翼の組織は鼻筋で広がっても、付け根は広がっていません。それは皮弁がしっかり支えているからです。計測しました。35㎜です。後戻りは止まっています。
術後1か月がやって参りました。35㎜で留まっています。実は患者さんも毎日測って下さっていたそうです。有り難う御座います。こうして術後1か月は一つのヤマです。何故なら瘢痕が形成されて定着に近づいていると考えられます。
鼻翼縮小術の術後3ヶ月、白唇短縮術と口角挙上術の術後7か月で画像提示は終了にします。計測値が重要です。人中部の白唇長16㎜で後戻りゼロです。鼻翼幅は35㎜と定着しました。
左鼻翼基部付近の発赤はメイクで隠せるそうです。
側面や斜位ではやはりおしとやかです。骨の形態と口唇、鼻のバランスが整いました。下方からの画像で鼻の形もすっきりしました。
ところでそこで、鼻翼幅35:鼻尖幅20㎜です。2対1が適切です。鼻尖の下ももっと下げたいし、矢印鼻にすれば更に白唇がすっきりします。当初から念頭にありました。その際にも画像を提示させて頂けます。でも作り直します。
こうして3ヶ月空けて鼻尖の手術をすることになりました。耳甲介から10×13㎜の軟骨を採取し、10×8㎜のダイヤモンド型と10×2〜4㎜の台形の2枚に切り分けて重ねます。ダイアのンド型は鼻尖に、帯状のは鼻尖の頂点から鼻柱へ入れます。
画像はいろいろな方向から。
上は中下顔面の正面像の術前と術直後。口の手術と頤の位置から締まりがあります。術直後は鼻尖が腫れて形が判りません。
上に右斜位と左側面の術前と術直後。鼻尖が高くなっているのは判ります。E-ライン上にある口が術後は後退しています。ここが目的です。
正面近接画像の術前と術直後。腫れて判りにくいのですが、鼻尖の頂点が下方移動しています。鼻柱と鼻翼の上下位置関係も鼻柱が下がりました。
下に手術翌日の画像。テープ固定のまま撮りましたが、形は見えます。
正面像では、鼻柱が鼻翼より下にあるのが分ります。鼻尖の形はU字型のテープで包まれた形になります。
テープで隠れていますが鼻の稜線の延長線上にある鼻尖の頂点が下に移動しました。
下面像の術前と翌日。鼻尖の高さが造り上げられたのは明白です!。鼻柱の創は消えます。
左耳介です。耳甲介とは外耳道(耳の孔)の外側の指が嵌る大きさの、お椀型の窪みです。これが鼻尖のカーブにマッチするのですよ!。
耳介の後ろの頭との境目の溝を切開します。溝ですから創跡は見えなくなります。皮下組織を剥離して軟骨膜を切開して、軟骨を切り出します。前面は軟骨膜を残して皮膚を傷つけない様に気をつけます。
軟骨を抜き取ったら、前の皮膚、軟骨膜と後ろの軟部組織、筋?(*脚注1参照)、皮膚の間に薄い隙間が出来る訳です。死腔をそのままにすると、血が溜まるスペースになり、グシャグシャした膨らみになってしまいます。相撲、レスラー、柔道家、ラグビーのフォワード等の格闘技選手に多く見られます。別に彼等は軟骨を採取されたのではありませんが、耳介に対する強い摩擦により、軟骨と周囲の軟部組織が剥がれて血が溜まった結果です。
ですから耳介軟骨採取後に私は、必ずボルスター,Bolster(脚注2参照)固定をします。耳介の前と後ろに綿を詰めて、前後を糸で繋いで圧迫すれば、空洞が潰されて前の軟骨膜と後ろの軟部組織が癒着します。これで血が溜まる心配は払拭されます。実は昔先輩医がボルスター固定を忘れた為に格闘技家の耳にしてしまった事があります。患者さんは当然若い女性ですから怒りましたが、何回も血を吸い出して治しました。この様な目に遭いたくありません。また、あくまでも植皮後に行なうタイオーバー,Tie overとは違いますから間違えない様にしましょう。こんな事は形成外科・美容外科専門医しか知り得ません。チェーン店系の医師は知りもしませんから、たまに格闘技家を作っちゃいます。私もたまに診る事があります。
ところで、空洞は無くても軟骨の厚さ分の約1㎜は薄くなっている訳です。でも前からは見えません。前には軟骨膜を残していますから凹まないのです。ただし、触れば判ります。耳介の軟骨は弾性軟骨といって柔軟で弾力があるのですが、欠損部は皮膚と軟部組織だけですから指で挟むとペタットしています。他医で耳介軟骨を採取された患者さんが不足を訴え、私が二度目に採取したい際には、どちら側を取られたかや残りがどれだけかを調べます。
今回細々と説明を加えましたが、上段にはこれまでの経過を載せましたから、今回の鼻の画像に到るまでもどかしかったかも知れません。次回更新時には鼻だけのスレッドを作ります。
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。鼻翼縮小術皮弁法は28万円+消費税。鼻尖軟骨移植3枚で35万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。