2019 . 12 . 4

口周りは口から鼻まで。骨、口、鼻翼の順に来て今回は鼻尖。素敵な口周りを造り上げます。

これまでの経過を簡単に説明しようと思いましたが、やはり経緯を知っていなければ改善点が判らないので説明だけコピペします。面倒なら上段の説明文は読み省いてください。 口周りの手術3点セットも適応ですが、前々回は白唇部切除術と口角挙上術に専念しました。現在症例の患者さんは35歳女性。術後3ヶ月の完成を宣言する間もなく、鼻翼縮小術を希望されました。人中部白唇短縮術の結果は21㎜だったのを5㎜切除して術後3ヶ月で16㎜と後戻りゼロで満足されています。実は前々回手術の直前に鼻翼縮小術を併施する3点セットを希望されたのですが、予約時には迷っていた為に時間が取れなくて見合わせたのです。鼻翼幅は37㎜です。両側鼻翼内側の壁から内側へ幅2㎜の皮弁を造る事を計画しました。鼻翼縮小術を後日追加可能な症例です。症例は34歳女性。上下歯槽骨切り術(セットバック)後の口周りの余剰が気になって来院。歯科口腔外科で手術を受けた。もちろん4抜き(両側の前から3本ずつの歯が植わる歯槽骨を後退させる際邪魔になる両側の4本目を抜歯すること)。結果的に歯槽弓が角張り、両サイド(3−3間)が平面的になり長い白唇が余計に長く見える。白唇長21㎜と確かに長い。骨切りの結果口は出ていないからE-ラインは直線上にある。5㎜切除。セットバックの結果もあって人中が浅くなった。弓もなだらかになった。上口唇結節(赤唇中央の膨らみ)がなくなった。両側鼻柱基部の部位で白唇を1㎜寄せて作製しましょう。内眼角間29㎜:鼻翼幅40㎜:口唇幅50㎜で口角は横に3㎜上の3㎜を求めて45度方向に5㎜挙上する予定。上にある様に鼻翼幅は40㎜なので適応で、両側鼻孔底に幅2.5㎜の皮弁を作り6㎜縮めたい。でも予約時間内には不可能でした。セットバックしているから鼻翼縮小しても白唇が膨隆しないと考えられた。用手的にシミュレーションしてみてももっこりしません。セットバック後の症例だからです。

デザインを詳しく説明します。白唇短縮術:両側鼻翼基部の間に切開線。鼻孔の下の土手,Nostril sillが鼻翼に続きますから、土手の麓に上の線。両側鼻翼間はすべて同じ(あくまでも人中部だけではありません!)5mmの切除幅として下の切開線を書きます。そこから鼻翼に向かっては鎌型に切除幅を減らしていきます。つまり鼻翼基部間しか挙がりません。口角挙上術:まず口角の交点を決めます。その点から上下赤唇縁に沿って横V字(く)に書きます。上8mm、下10㎜程度です。口角点から斜め45度に5mmの線を引きます。先端に口角が移動します。頂点から上口唇に向けてもう一線引きます。囲まれた三角形の皮膚、皮下脂肪を切除します。 口角はまず三角形の皮膚と皮下脂肪を全層切除し、白唇部の口輪筋を露出させます。その傷に沿って下方向に剥離するのですが、そのまま白唇部の赤唇部の口輪筋の境界を分けます。口角部の赤唇を粘膜と口輪筋を一緒にV字型に分離します。この際口角の角を見出して、それを三角形の頂点に縫い付けます。これで挙上されます。その後上下の赤唇縁を縫合していきますが、各辺ともそれぞれの長さが違うので上手くつじつまを合わせなくてはなりません。

E-ラインより口が後ろにあるので、白唇のモッコリ内反が除去されるとすっきりします。品の良さを感じられます。術後1か月に診察、画像は割愛します。鼻翼の横の皮膚の余りに依る膨隆は縮小中です。上の抜糸時と比べれば判ります。鼻の下の線は幅ゼロで谷線がNostril sill 鼻孔の底の土手に沿っているので赤色が消えれば隠れます。意識してか笑顔が写っています。優しく品が感じられます。人中と弓の強調も表情を魅せています。鼻の位置は戻りましたが何故か鼻翼幅は縮小しました。ただしサイズは縮小術の適応です。ということで術後3ヶ月に来院されました。決して白唇短縮術の結果として鼻翼が広がっているわけではありません。計測すると37㎜です。あくまでも白唇部短縮術と口角挙上術の術後3ヶ月で経過良好だと言えることが前提で次に進むのです。傷跡は全く拡がっていませんし、鼻翼横の余剰皮膚の膨隆も縮小して気にならない様です。口元の美しさは見事です。しかしそれは患者さんの骨格と動的形態、つまり内面性が素敵なのによる効果です。外面的な向上は内面性に影響するのはいつも言ってきた通りです。そこで考えたことは、鼻翼を寄せたらこの膨隆も引かれて縮小するメカニズムが働く可能性もあるのではないでしょうか?。

とにかく本症例は白唇部短縮術と口角挙上術の併施の術後3ヶ月の経過は良好で、お待ちかねの鼻翼縮小術皮弁法に進めると考えました。 上に書いた様に鼻翼縮小術内側皮弁法は鼻翼の付け根を寄せるためにその下の白唇も両側から寄せられて膨らむのです。だから出来れば同時に施行して白唇側の傷と鼻翼側の傷をずらして縫合していき膨らみを予防する手術をお勧めしてきました。 でも本症例は特殊です。上に書いた様にセットバックを受けているからです。セットバックとは上下の歯牙の前から3本ずつの植わっている歯槽骨をコの字型に切って後ろに下げる手術です。口が出ている人に適応します。結果的に画像でご覧になれる様に本症例は口が出ていませんし、E-ラインが綺麗で側面から見て鼻尖、口唇、頤が直線状に並んでいます。しかももう一つ、骨を下げた結果白唇が平坦になっています。だから後から鼻翼縮小術をして膨らんで丁度良く普通になることが予想されました。両側の鼻翼の内側に浅く(表皮だけ)縦に切開を約1㎝、そこから内側に幅約2.5㎜の台形の真皮弁を起こして、両側の切開ないから鼻中核の下を通してトンネルを作成し、そこを通して両側の皮弁を引き出して縫い合わせます。傷は自然に寄せられるのでゆるく5針ずつ縫合しました。 鼻翼縮小術の術後3ヶ月、白唇短縮術と口角挙上術の術後7か月で画像提示は終了にします。計測値が重要です。人中部の白唇長16㎜で後戻りゼロです。鼻翼幅は35㎜と定着しました。

ところでそこで、鼻翼幅35:鼻尖幅20㎜です。2対1が適切です。鼻尖の下ももっと下げたいし、矢印鼻にすれば更に白唇がすっきりします。当初から念頭にありました。

ここまでの経過はこれまでにご紹介しました。鼻尖の手術に到りましたから新たな板を作ります。こうして3ヶ月空けて鼻尖の手術をすることになりました。耳甲介から10×13㎜の軟骨を採取し、10×8㎜のダイヤモンド型と10×2〜4㎜の台形の2枚に切り分けて重ねます。ダイアモンド型のは鼻尖に、台形で帯状のもう一枚は鼻尖の頂点から鼻柱へ入れます。

画像はいろいろな方向から。

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上は中下顔面の正面像の術前と術直後。口の手術と頤の位置から締まりがあります。術直後は鼻尖が腫れて形が判りません。

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上に右斜位と左側面の術前と術直後。鼻尖が高くなっているのは判ります。E-ライン上にある口が術後は後退しています。ここが目的です。

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正面近接画像の術前と術直後。腫れて判りにくいのですが、鼻尖の頂点が下方移動しています。鼻柱と鼻翼の上下位置関係も鼻柱が下がりました。 下に手術翌日の画像。テープ固定のまま撮りましたが、形は見えます。

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正面像では、鼻柱が鼻翼より下にあるのが分ります。鼻尖の形はU字型のテープで包まれた形になります。

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翌日の斜位像と側面像。 テープで隠れていますが鼻の稜線の延長線上にある鼻尖の頂点が下に移動しました。

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下面像の術前と翌日。鼻尖の高さが造り上げられたのは明白です!。鼻柱の創は消えます。 IMG_1884

左耳介です。耳甲介とは外耳道(耳の孔)の外側の指が嵌る大きさの、お椀型の窪みです。これが鼻尖のカーブにマッチするのですよ!。 耳介の後ろの頭との境目の溝を切開します。溝ですから創跡は見えなくなります。皮下組織を剥離して軟骨膜を切開して、軟骨を切り出します。前面は軟骨膜を残して皮膚を傷つけない様に気をつけます。 軟骨を抜き取ったら、前の皮膚、軟骨膜と後ろの軟部組織、筋?(*脚注1参照)、皮膚の間に薄い隙間が出来る訳です。死腔をそのままにすると、血が溜まるスペースになり、グシャグシャした膨らみになってしまいます。相撲、レスラー、柔道家、ラグビーのフォワード等の格闘技選手に多く見られます。別に彼等は軟骨を採取されたのではありませんが、耳介に対する強い摩擦により、軟骨と周囲の軟部組織が剥がれて血が溜まった結果です。 ですから耳介軟骨採取後に私は、必ずボルスター,Bolster(脚注2参照)固定をします。耳介の前と後ろに綿を詰めて、前後を糸で繋いで圧迫すれば、空洞が潰されて前の軟骨膜と後ろの軟部組織が癒着します。これで血が溜まる心配は払拭されます。実は昔先輩医がボルスター固定を忘れた為に格闘技家の耳にしてしまった事があります。患者さんは当然若い女性ですから怒りましたが、何回も血を吸い出して治しました。この様な目に遭いたくありません。また、あくまでも植皮後に行なうタイオーバー,Tie overとは違いますから間違えない様にしましょう。こんな事は形成外科・美容外科専門医しか知り得ません。チェーン店系の医師は知りもしませんから、たまに格闘技家を作っちゃいます。私もたまに診る事があります。

ところで、空洞は無くても軟骨の厚さ分の約1㎜は薄くなっている訳です。でも前からは見えません。前には軟骨膜を残していますから凹まないのです。ただし、触れば判ります。耳介の軟骨は弾性軟骨といって柔軟で弾力があるのですが、欠損部は皮膚と軟部組織だけですから指で挟むとペタットしています。他医で耳介軟骨を採取された患者さんが不足を訴え、私が二度目に採取したい際には、どちら側を取られたかや残りがどれだけかを調べます。

今回こまごまと説明を加えましたが、上段にはこれまでの経過を載せましたから、今回の鼻の画像に到るまでもどかしかったかも知れません。

こうして術後1週間の画像を戴きました。先ずテープ固定を外して抜糸して撮影しました。患者さんはブログを視て、それどころか出演機会も多いので術後経過と治癒機転をよく理解しているのでしばらくはテープ固定を続けて下さるそうです。

IMG_2014IMG_2015IMG_2024 正面像で鼻尖の形と位置が見えます。約1.5㎜下に移動し、約1.5㎜高くなりました。もう既に前から見ての鼻尖のダイヤモンド型が見えます。近接像では移植軟骨の縁取り,Contourが判ります。下面像では高くなった鼻尖の中央が若干平坦です。これがダイヤモンド型の鼻尖の特徴です。鼻の高い白人を見れば判りますが鼻尖の屋根のカーブは緩くなっています。綺麗で自然でしょ?。 IMG_2020IMG_2018

斜位像では美しい口元に誇りが感じられます。鼻が高くツンッとしたからです。側面像では鼻陵線の延長線上よりも鼻尖が前にあり、最高点が下に移動しました。

これが本当のアップノーズです。いいですか?。間違えないで下さい。アップノーズは鼻尖が鼻陵線より前にあり最高点TDP,Tip Difining Pointから級に鼻柱に曲がっていく鼻です。昔の北欧出身の美人女優の多くはこのような鼻で、売りにしていました。『キスをするとぶつかるのごめんなさい!」との映画のセリフを覚えている人もいるでしょう。もう一度書きますが、間違えない様に、鼻尖の位置TPDが上にあり(所謂鼻が上を向いている人)、結果として鼻が短いのはショートノーズと称します。アップノーズとは逆です。

アジア人は外鼻の特に軟骨の発達が足りない遺伝子を持っている人が多く、要するに子供っぽく、野暮ったく、田舎っぽい鼻に見られます。貧乏臭いとも見られがちです。経済力は生体の発達に影響しますから、鼻も短くて低いとその様に感じられるのです。因みに鼻の発達要素は骨と軟骨が主体ですから、農耕民族のアジア人は低く、肉食民族の欧米人が高いのかも知れません。実は気候が影響しているという説が主流です。

実はその面では日本人の鼻は高くなってきました。平均身長が伸びたのに伴っている様です。ただし鼻骨が高くなっても鼻尖の軟骨は伴わないケースがほとんどです。つまりダウンノーズまたは洋語でDroopig noseというか、ショートでなければ魔女鼻が増えています。白人でも、北欧人はアップノーズが存在しているのに対して、南欧の特にラテン系やユダヤ人は鷲鼻が典型的です。スペイン人やヒスパニックもそうです。だからこそハリウッドでも美しいアップノーズが映えるのです。 日本人を始めとしてアジア人は鼻が低いのですが、やはり本当の意味のアップノーズが好まれます。少なくとも鼻稜戦より鼻尖が後ろにあるのは好まれませんし、鼻尖が上にあるために鼻唇角が100度以上あると野暮ったいので、本症例の様な手術法が自然で、美しい鼻を造り上げられるのです。

本症例の患者さんはよく出来ています。形態的にはバランスをとって部分部分を自然に改良してきました。実は上顔面も優しい自然な形態と機能を魅せています。そして内面的によく出来た女性で、誇りに満ちているのに優しい人です。 今後の経過中に完成を見ると思います。3ヶ月後に終了かは分かりませんが、いつまでもお付き合いしていたい患者さんです。次回をおたのしみに!。 今回術後2週間でも画像を戴きました。

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何と美しい口元なのでしょう。バランスが取れています。実は顔面全体の比率も理想的です。ブログではパーツだけの提示を約していますが、本症例は口周りと鼻の治療をしましたから、中下顔面を掲示させてもらっています。でも上顔面は流石に出していません。眼瞼や額のバランスも取れています。顔面全体が理想的な女性像になりつつあります。その点では内面的にも美しい患者さんです。 術後1か月で完成に近いと思います。

IMG_2647IMG_2652 鼻尖=鼻の頭と鼻翼=小鼻?のバランスが最適になりました。しかも、鼻尖の形がはっきりしました。鼻尖の位置を2㎜は下方移動しました。術前には両側鼻翼基部より上にあった鼻尖が鼻翼より下にあります。ところが鼻柱から鼻柱基部は正面から見えません。つまり鼻柱の下方移動が少ないのです。鼻柱途中までしか入れていませんから。近接像ではかろうじて鼻柱基部が見えます。下面像では鼻柱の傷跡は目立ちませんが、実はまだ線状(実はW字型)に陥凹しています。実はそこが問題点で、線上陥凹が鼻柱の下方移動を邪魔しています。通常3〜6週間は凹んでいて徐々に平坦化します。術後経過を診ていきましょう。

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斜位像では鼻柱は鼻尖に隠れています。側面像では鼻柱は鼻翼に隠れています。つまり鼻尖は下方移動して鼻柱は下方移動が少ないのです。いきなり患者さんに「鼻柱は下がりましたか?。」と訊かれて私は「途中までは1㎜程。」と断言しました。すると患者さんに「鼻柱から鼻唇角に入れた方がいいですか?。」と訊かれれば、私は身を乗り出し「ええプロテーシスなら可能です。」「最近流行りの様で、ブログに何例か載っています。」と押し売りすれば患者さん「見ました。」「いいですね。」と乗り気です。でも考えてみたら、鼻柱の傷跡がが落ち着くまでは鼻唇角プロテーシスは出来ません。もう一度白唇短縮術の傷跡を切りたくもありません。

本症例の患者さんはなんと美容的素養に溢れているのでしょう。言動も優しく美しい。しかも勉強しています。私のありったけの美容的経験(実際30年以上)を利用してもらい、悦びを与えたくなる美人の患者さんです。いや、彼女との診療は私にも悦びを下さいます。次回術後3ヶ月で検討する事を約し、「お楽しみに!。」と言いました。

早くも術後3ヶ月が参りました。

DSC00121DSC00121DSC00128 何と素敵な口元=鼻〜口(歯槽と口唇)〜頤でしょう。

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これまでの手術の結果に大変お悦び!。鼻尖は見事に綺麗に下方移動し、ツンッと高くなったのですが、自然状態にもあり得る形態的変化は”いかにも感”が全く無く、普通の美人鼻になりました。患者さんには「下顔面は先生の名作ですから。」と言われました。私は骨は治していません。でも手術に経験がありますからその内容を知っているから、軟部組織の手術のデザインを検討出来るのです。とにかく斜位像でも側面像でも、美しくも優しい口元です。

ですがやはり、鼻尖だけ下方移動して鼻柱を下げていないし、白唇を短縮した為に創跡がわずかに谷線になった結果、鼻唇角が鋭角です。患者さん自身は「鼻翼との位置関係が・・・。」「鼻唇角の角度そのものと言うよりは・・・。」と的を得た希望を述べられます。私が横から見て「鋭角です。少なくとも直角までしたいですよね。」と示唆するも「鼻唇角に丸みが欲しいのです。」とこれも的を得た希望を述べられる。鼻唇角プロテーシスの診断を単純化して、角度だけで見て来た私の観点よりも、精細な観点を持った患者さんです。これまでも何度も記して来た様に、美人は美的観点が豊富で詳しいのです。その点は私の見立て通りです。

続けてサイズを検討します。私も最近では”入る物”と言うだけでは飽き足りないのです。実は韓国で流行らせてくれたもんだから、私に罹る患者さんも増えました。そうなると、より複雑な診療をしないと気が済まなくなるのが私の性分です。まず鼻中隔の先端から鼻柱基部=鼻唇角までの距離を触診で探します。平均で3㎜です。ここから何㎜下げるかは希望に応じますし、鼻翼基部との上下位置関係も計測して、少なくとも水平まで持っていきたいと言っておきます。矢印度は希望に依りますが、本症例は鼻尖を下げているので、水平で良しとすると考えます。

3㎜で鼻中隔に突っ返させて、最低2㎜下げ、喰い込むのを計算してプラス1㎜、合わせて最低6㎜以上の物を用意しましょう。結局は術中に入るサイズを決めます。もう一つ患者さんは知っていました。「下の方が反っている様な形がいいんですか?。」私は一瞬答えを探して「ANS(脚注3参照)に乗せるので、底は載せられる様に大きくします。潜り込む部分なので形に影響しません。」と言いながら「アッ、骨どうなっているんだっけ。」とカルテをめくって確認し、「分節骨切りならANSは触っていない筈です。」と言うと、患者さんは「3番から3番までを後退しました。骨は動かしました。」と詳しい!。私も負けずと「分節骨切り術はケーラー法と言って、歯槽骨から歯肉を剥離して骨を動かしますが、ANSまでは剥離しませんから大丈夫ですね。」と説明します。「もしそこに瘢痕が在るとプロテーシスを入れるポケットを作り難い訳です。ルフォー,Le-Fort の後にしたときは大変でした。」

もう一つ「切開は上口唇短縮術のも使えますが、やはり創跡が拡がるといやなので、鼻孔底から行きましょう。鼻柱の傷跡より下だけで出来ます。」とこれまでの傷跡を視認しました。これまでに上口唇短縮術時に同時に鼻唇角プロテーシスを入れた症例をブログで見た様ですが、今回は別々の手術なので別ルートが適切です。

何か授業というか医学部の講義というか、思い出したのですが、形成外科医局に在籍していた頃に、術前カンファレンスで上級医(教授〜講師陣)に説明していて、更に質問攻めにされて自分が到らなかったので、悔しい気持ちが蘇りました。その後講師陣に加わり今度は教える方になった時は、却って詳しい知識を要し勉学に励んだ事も。あの頃は毎日知識と技術が向上してやりがいがあったし、有意義で楽しかった。でもこうして還暦を過ぎても知的作業を繰り返している私は幸せです。患者さんが知性的な美人で、私を知的に喚起してくれるから、楽しい診療時間を過ごしました。

アッ、書いていて気が付いたのですが、こんなにたくさんの事考えていたんですね。と言う事はそれだけの時間をかけて診療していたんですね。真摯に答えていたら30分以上掛かっていました。でも私にとっても、たぶん患者さんに取っても有意義でした。鼻唇角プロテーシスの手術の診療がまた奥深くなりました。更に言うならブログに記す内容もふんだんに得られました。有り難う御座います。

敢えて言えば、鼻尖を下げたのに鼻柱が下げ足りないから鼻唇角プロテーシスを必要としたのですから、私の治療行為の不足に対する追加だろうと言われても反駁出来ませんが、別々に、しかも鼻唇角はプロテーシスを追加した方が、より良い結果が得られるのです。たぶん本症例の患者さんは理解しているし、当初に説明したかも知れません。

何はともあれ、近々鼻唇角プロテーシスを施行する事になります。その際もブログ提示をさせていただく事が出来るとお思います。お楽しみに!

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。鼻翼縮小術皮弁法は28万円+消費税。鼻尖軟骨移植3枚で35万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。

脚注1;耳介には筋肉がありました。人間以外の多くの哺乳類は耳が動かせます。人の顔面の層構造は特殊で、皮膚、浅い皮下脂肪の下にSMAS,Superficial Musculo Aponeurotic Systemがあり、その下に深い脂肪層と表情筋層があります。表情筋がバラバラに動くから人は表情が豊かなのです。猿までの哺乳類は、SMASが一層の被り物の様になって適当に動きますが、SMASは耳介も包みますから耳が動くことが多いのです。 人間では耳介の周りにある筋肉があっても動かない者がほとんどです。人間は正面視して遠近感が鋭敏な上に、両側の二つの耳介も方向を知るために正面を向いて固定されています。耳介を動かさない方がいいので、脳が指令しませんから、神経信号が来ないので筋肉は退化していきました。実は私は動かせます。中学生時に練習してみました。すると動かせる様になりました。多分私の耳介筋群は退化していません。よく覚えていませんが、私は美容外科医になるべく幼少時から勉強してきたのでできたことなのでしょう?!。

だから必ず、耳介軟骨採取する際にも患者さんに「耳は動かせますか?。」と尋ねてから手術します。耳甲介の軟骨を採取するためには後耳介筋を切断しなければ到達できないからです。後耳介筋は耳を後ろに引く筋です。耳が動く人の多くは、象のみたいに耳を後ろにバタつかせることができるだけなので後耳介筋は一芸のために大事なのです。だって片側だけ動くのも変でしょ?。

脚注2;ボルスター,Bolsterとは二つの物体を繋げる分銅の様な形。電車の車体と台車を繋げるのがこれで、周りをバネが支えます。ちなみに自動車はボディーとホイール&タイヤをサスペンションだけでつないでいてボルスターを持ちません。耳介軟骨を採取して前後に綿を当てて、糸で挟み込むのをボルスターというのは形が似ているからで、圧迫作用という違う目的で使われます。尚、タイオーバー,Tie overとは、植皮(自家皮膚移植)をずれない様にまた血腫(空間に血が溜まること)を生じない様に上から綿などを当てて周囲に沢山かけた糸を結びあわせて抑え込む手技です。挟みませんからこの場合使えません。

脚注3;ANS, Anterior Nasal Spine、直訳して前鼻棘は鼻柱の基部の中にある重要構造です。外鼻の下方は軟骨がアーチを作っていますが、中央には鼻中隔があり支えています。鼻柱部には両側の鼻翼軟骨内側脚が鼻柱基部まで達していますが、丁度鼻唇角までの長さです。奥には皮下組織しか無く、鼻柱下制筋という薄い筋があります。イーと鼻唇角を喰い込ませる筋です。いやな表情なので要りません。筋はANSにから起始します。構造からしてANSは鼻柱基部の上下位置を決めますし、鼻柱を支えて鼻尖までを前に支えます。その意味で、鼻プロテーシスには三つの作用があります。ANSと鼻翼軟骨の間の軟部組織で支えている部分に介在して支えます。鼻柱を下方に増大します。鼻柱下制筋をANSから切離する事になるから、喰い込み作用が減弱します。わざわざANSを説明したのは、ANSを意識するといろいろな利点があるからです。韓国人には出来ません。この構造は形成外科医にか知りえません。