加齢性変化は皮膚の菲薄化と伸展が本態で、部位別に形態変形を来します。深部組織の加齢性変化も当然ありますが、顔面では上眼瞼挙筋の伸展弱化と歯牙歯槽の退縮が動的な形態変化を来すくらいです。
皮膚皮下組織の伸展は、やはり顔面の中でも薄い部位に起きやすいのですが、皮膚皮下組織は一定の区画ごとに深部組織(骨格、表情筋や咀嚼筋群、筋膜)に固定されています。例えば眼瞼は眼窩縁に、口周りは歯槽骨や表情筋群に上方が固定され、延びた皮膚皮下組織は下に垂れ下がります。
例えば眼瞼は浅葉が皮膚皮下組織で、深葉が挙筋群と眼窩脂肪で、どちらも伸展することがあるから眼瞼下垂症のメカニズムは精彩です。本題の口周りでは、鼻の下が固定され、伸展します。口角部は挙上筋群に引き上げられているのに弱化しますから下垂しますし、口角部の皮膚伸展は白唇の皮膚皮下組織の伸展と同時進行します。なお眼瞼の皮膚と口周りの皮膚は、成人後は平均的に10年で1㎜ずつ伸びていきます。
私は常に眼瞼と口周りの加齢変化に注目してきました。顔面のの中でも静的な形態と動的な形態の調和が求められる部位だからです。動的な形態は機能の面で顔面の解剖学の知識が重要されるからです。私はこの点でみっちりと16年間も研鑽してきました。美容外科医としての実力を身に付けるために形成外科を修練した半面、形成外科医療が面白くて診療に邁進したのが半面です。でも今や、美容形成外科医としては最も有用性の高い能力を誇っています。
何度も記載してきましたが、医師は医学部在学中には精密な顔面解剖の教育を受けません。卒後の専門科目の研修中に学んでいきますし、場合によって研究して医学博士号を取得します。形成外科の医局に在籍しなければ学べません。美容外科医の中でも、他科からの参入者や新人からの雇用者や、最近では形成外科を6年以下かじった程度の医者は系統的な教育を受けていません。チェーン店の雇用者はほとんど全員これです。それに技術的修練も受ける暇がありません。こんな連中はコマーシャリズム誘引しているだけです。こんな輩に捕まっ美容医療を受けるのは止めましょう!。
口周りの手術は私にとって定番化していますが、加齢変形が主体なのか生来長いのかは個体差がありますが、どちらにしても短縮効果が求められますし、下がった口角は挙上したくなります。本症例はどうも、両方の目的がありそうです。それは計測した数字が現わします。
症例は56歳女性。当初5月に来院。長いでしょう?と言われて測ると、人中部の白唇は長さ23㎜です。E-ラインより唇が10㎜前方。側方から診ると白唇が内反している。加齢とともに赤唇が薄くなった。上顔面(生え際〜眉下)55㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜顎尖)60㎜と縦のバランスは取れているが、上口唇(鼻下〜赤唇交連)29㎜:下口唇(赤唇交連)31㎜と黄金分割比率より上が9㎜長い。人中と弓ははっきりしている。6㎜以上は切除しないよう説得しました。ただししっかり外反させます。
顔面横部品費は、内眼角間33㎜:鼻翼幅37㎜:口唇幅43㎜で、黄金分割比で計算すると口角を6㎜横にも引きたいが、顔が小さいので30度方向に5㎜引き上げ、口角を上に5÷√3(1.7…人並みに奢れや)≒3㎜、横に2.5×2=5㎜拡大するデザインを予定した。鼻は経過中に検討する。
6月に再来。眼瞼の相談を受けた。内眼角間33㎜:眼裂横径24㎜:角膜中心間54㎜で、顔の幅の割に目が小さく、その因は蒙古襞の狗縮強いからと考えられ、4㎜のZ法による目頭形成術の適応です。他医(仲良しのDr.一瀬)の眉下切除は切除量は不明なれど不足と思われ、眼瞼で切開し、挙筋縫縮し、ライン変えないで4㎜切除の適応です。当初は口周りの手術後1週間で眼瞼かと考えたが、11月に延期した。それまで撮影中に診察することとした。
こう考えてみると、50歳代中頃で、眼瞼は4㎜+@伸びたと考えられ、白唇も5㎜前後伸びたとしたら生来長かった要素と半々だと考えられます。
今回は各方向の画像を日時別に並べます。まず術前。
口唇がE-ラインより前方にあり、上白唇が長く、上下赤唇とも薄い。口角はへの字ほどではないが挙がってはいない。下にデザイン画。
上に記載した診察時の所見を利用して検討したデザインを描きます。この通り切除して時間をかけて縫合しました。下の画像はその通りに形態は変化しています。
この時点で赤唇が薄紫色なのは局所麻酔薬に添加してある血管収縮剤の作用によります。寒いと唇が紫になるのと同じです。
斜位像や側面像では、視覚的に短縮効果が認識されます。
手術法と手順:局麻約6CC。切開はデザインが消えないうちに線画通りに。白唇の切除深は、皮下脂肪全層=口輪筋上。筋層を折り畳むように縫合6針(皆さんが筋肉処理という技)。鼻翼外側の皮膚は余剰を生じるので剥離してつじつまを合わせる。バイポーラー電気メスで止血、拍出がないこと確認(ここが後で問題になります)。鼻翼基部、鼻翼横、鼻柱基部の順に2〜3㎜間隔で約18針の真皮縫合。皮膚縫合は6箇所の結紮と連続縫合。その後続けて口角挙上術。右は<、左は>型に赤唇を粘膜と口輪筋を一体に外します。口角の上の三角形は皮膚皮下脂肪全層を切除し、白唇部の口輪筋を露出し、頂点に口角の角の赤唇を2層縫合。筋層は計8針縫合して皮膚は連続縫合。この二つの手術で平均手術時間は約2時間15分です。
翌日は右口角の下口唇に内出血。左上口唇に腫脹が顕れました。
薄紫から黒紫になりました。
そうでなくても白唇が腫れてブスッとした表情になります。術後48時間までは後出血の可能性があり、腫脹等は亢進します。
術後1週間の抜糸時には内出血が周囲の白唇に黄色く浸潤していました。右下と左上の赤唇に内出血が黒紫に残りメイク(口紅)では隠せないそうです。
術中には精神的に落ち着いていて、ドキドキしないから血圧が上がらず、出血が今までで最も少ない症例のひとつでした。油断した訳ではないですが、小出血点の止血の要がほとんど無く、じわじわ出ているままに縫合したのだと思います。
創傷治癒機転からして術後24時間は出血凝固期で約3日までは炎症期です。術中の血管断裂は電気メスで焼き潰して止めますが、蓋をするのは血小板です。出血凝固期に働きます。血管収縮剤の作用で一度は出血が止まっても効果が切れて数時間後に創内に出血するのが内出血です。腫脹は炎症期の血管拡張作用により毛細血管壁か細胞間隙に血漿が漏出して組織の容積が増えて起きます。約3日間は48時間後です。この機転は多くの生物で、少なくとも人がダメージを受けた際にはほぼ一定です。
なお腫脹の吸収は浸透圧の逆転から血管内に水分が戻ることですが、勾配の変遷は2週間迄続きます。リフィリングフェイズと言います。内出血は組織内で凝固した血液を溶血させる線溶系という作用が消していきます。溶けた血球中の血色中のビリルビンが残り約1週間で黄色くなり、その後1週間で吸収されます。
上の説明通りに、来週には内出血もなくなっていると考えられます。いやそうだといいですね!。加齢により線維素溶解系は低下するようで、年齢ととも平均期間は長引く様です。でも黄色なら隠せますよね?。お楽しみに!
そしてそれから1週間後、手術後2週間がやって参りました。
いや〜、参りました。赤唇の内出血はまだ吸収されていませんでした。リップクリームでは隠せないそうです。やはり赤唇は柔らかく粘膜は薄く、粘膜下組織に浸潤した血液は溶け難いのです。加齢の為とは言いたくても言いませんでした。ただし内出血の影響としての腫脹はもうRefilling されています。従って形態は見えています。
優しい感じの横顔です。もちろんE-ラインより口が前にあるのは変わりませんが、上白唇が短縮すると、口が出ていても文句言っていない顔立ちになります。実は頤にボトックス注射をしているから下口唇を閉じようとしても梅干しにならないのも関係しています。でも患者さんはいつか頤形成をしようと考えている様です。近々他の部位の相談も展開していきたいと思いました。
術後1ヶ月で画像を戴きました。
やっとなんとか、内出血が吸収されました。形態的には満足でしょう。傷跡の経過中です。1ヶ月で幅がなく、肥厚していません。今後白くなれば見えなくなりますよ。
E-ラインよりも口が前凸しているのに頤の梅干しが目立ちません。
じっくり診ていきましょう。次回をお楽しみに。
術後3ヶ月が参りました。
左鼻翼基部に軽度肥厚性瘢痕があります。でも創跡は拡がっていません。幅はありません。白唇中央の長さ=鼻唇角〜Cupidの弓の底は、予定通り18㎜です。ただしこれでもまだ上下口唇の比率は5:8とはなりません。
立体的に診ますと、やはり下顔面の中では上下口唇の比率が見て取れます。レオナルドダビンチが黄金分割比率(約5:8)を用いて細かく分析しています。下顔面を口交連で分けても5:8が美しいをしています。口周りは口唇から入りますが、診察所見に示した様に、上下とのバランスも重視します。
すると下赤唇が薄いよりも頤までの短いのが判ります。しかも本症例は頤が後退しています。側面像で診ると、E-ラインを引けます。鼻尖〜口唇〜頤を結んだ線ですが、口唇が前方に有るのは頤が後方にあるからです。そうして正面像を診ると、頤の先端が後方にあるから余計に短く見えるのです。頤形成術の適応です。
更に正面像で鼻翼幅と口唇幅の比率を診ると、口角挙上術時に口唇幅を5㎜拡大したのに、37:48ですからまだ5:8にはなっていません。鼻翼縮小術の適応があります。
帰り際に嬉しいお言葉を戴きました。「森川先生の様に顔面のバランスを診ていって、トータルに治して下さる美容形成外科医に巡り会えてよかったです。だから御任せできるのです。」と、私の出自とこれまでの経験から来る美容医療の素養を認めてくれたのでしょう。有り難いお言葉です。「これからも宜しくお願いします。」とこちらがお願いしたい患者さんです。
当院は、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。