2020 . 1 . 22

口周り:赤唇が富士山型になった症例の解消手術が流行っています。こうして修正には複数回手術を要し得ます。

私は口周りの手術の専門家ではありません。眼瞼も外鼻も、リフトも含めて顔面の美容形成外科全般を取り扱います。ただし簡単な重瞼術埋没法や出来合いのシリコンプロテーシス等は若い経験の浅い美容形成外科医が多いチェーン店でも取り扱いますから、私の出番は少ない様です。

昨今なんとかミクスの好影響か、美容医療の患者さんは増えました。何度も書いて来ましたが、口周りの手術は形成外科の技術と知識を要し、同時に美容外科のセンスが重要だし、美容外科学の知識が無ければ美しい顔を作れません。

だから私に罹る患者さんが多いと自負していても、コマーシャリズムとSNSには敵いません。当院はTVCMは打っていませんし、SNS上は私のこのブログが優勢でも、他も”やらせ”を載せるから”いたちごっこ”になり上下動が激しいのです。

今回はまた、SNS対策で患者さんを呼ぶクリニックで、口周りならずいろいろな美容外科手術を受けていて、まあまあの結果も呈していても口周りの手術はイマイチの結果=いつもの富士山型が気になる患者さんです。複数回の切る手術は限界がありますが、形態的な改善が求められ、医学的に可能なら治して差し上げたくなります。

では巧く行ったでしょうか?。読者の皆さんの評価を待ちますが、患者さんの満足感が最重要項目です。患者さん自身は、手術後当初のダウンタイムをやり過ごすまで形態が見えません。ですから長い目で見て最終結果を得ようではありませんか?。その意味でブログ掲載の有用性が高いとも言えます。まず最低3か月の経過を診て行きましょう。

症例は44歳女性。幾つかの手術を受けている。半年前白唇短縮術を他院で受けた。口角挙上術も2ヶ月前に追加した。目頭、下眼瞼。頤と鼻にはプロテーシス。鼻尖部の軟骨縫合による縮小術も受けた。

本年7月に来院。人中部の白唇の長さはまだ18㎜ある。しかも富士山型を呈している。E−ラインよりは口唇が3㎜後ろで口が出ていないが、骨がない分白唇がストンと垂直に垂れている。鼻翼基部下を5㎜、人中部を3㎜切除の適応。外反,C-カール作製は必要。Cupidの弓も人中も形が良いので作成の必要はない。

目頭は他院で2㎜戻す予定だが、現時点で顔面横部品の比率は内眼角間32㎜:鼻翼幅33㎜:口唇幅53㎜で口角挙上術は斜め30度方向に5㎜引き上げの適応。鼻翼下まで緩やかに挙げる。

手術時にもう一度診察。人中部5㎜、鼻翼下2㎜とし、口角は30度6㎜に増やした。

画像を見ていきましょう。術前から。

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前医が人中部主体に白唇を切除短縮したのでしょう。鼻翼基部の下を同じ幅切除したらこの様な形にはなりません。その証拠に鼻翼を廻る創跡が有りません。尚前回、鼻孔底は鼻孔内を切開していますが、その結果Nostril sill、土手が切り取られています。その結果鼻の孔の底が見えます。鼻孔内は影で黒く見えますが、土手があれば隠れるのに堤がないと丸く見えます。

前回の口角挙上術は全くと言っていい程効果が得られていません。ゼーンゼン挙がっていない!。口角部の上口唇も内側にまくれ込んでいて水平です。創跡だけ作られたのですが、上口唇縁が内側にある為に画像では見えません。こういうのを”やらずぼったくり”というのではないでしょうか?。

IMG_2284IMG_2281斜位像でも側面像でも鼻翼の付け根に創跡が有りません。鼻翼基部を切除していない証拠です。

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デザインを書きました。上に記載した様に切除量を調節して富士山型を治します。鼻翼基部から鼻翼を廻ってDog earを切除します。口角挙上術は三角形の皮膚切除をして口角を頂点に挙げます。上口唇がまくれ込んでいるから三角形が潰れて見えます。

術直後の画像は2回目だと特にすごい事になります。

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富士山型は切除幅で治しましたが、腫脹で特に人中部が引かれるので解消していない様に見えています。

IMG_2292IMG_2289本症例はE-ラインより口が下がっていますが、頤も後ろにあります。斜位像では寂しい口元です。側面像ではすっきりしています。

本症例は長い経過になるのは予想されました。富士山型の解消手術は結果は直ぐ出ません。

そこで術後3ヶ月まで診察をして、追加手術の検討を始めました。富士山型は口角部の三角切除を鼻翼まで追加。鼻翼下をU字切除との案がまとまりました。本症例では目頭や上下口唇の傷跡が見えなくなっている。早い時期に追加できそうと患者さんと二人で納得しあいました。

こうして、次回3ヶ月に検討しましょう。と言っていたら早くも術後3ヶ月です。さて約束通り、富士山型の解消度の評価をしました。実は他院(私の大学医局時代の教え子で仲良し)にも罹っていて聞いてみたそうです。「やはり、治す余地がある。」とのセカンドオピニオンを頂きました。ありがとう!。「赤唇縁で切除するべきでしょう。」この点は一瞬迷いました。

ちょっと間をおいて考え、「私の行う口角挙上術では上下赤唇縁を切開し、上赤唇の上の白唇を切除しますが、それを内側までたくさん切除するという意味でしょ?。」と患者さんに訊くと「そうでしょう。」と納得されました。でもまずは白唇の鼻翼基部を中心に切除してから、その結果を診て口角を挙げた方が形が解りやすい。

そして画像を診ますと、同様の富士山型の症例と比べて、鼻翼下からの落ち具合が強いと思います。鼻翼下直下からストンと落ちています。今回の術前の画像では鼻翼の直下から外側の上赤唇は見えません。今回の術後画像では、鼻翼下には上赤唇が露出しています。効果はありました。でもまだ足りないということです。鼻翼下から鼻翼横まで多めに切除すると、鼻翼横に余剰皮膚が増えてドッグイヤーで膨らみます。今回でもそうです。患者さんは理解していて二回目の手術を希望されました。ちなみに今回の傷跡の余剰皮膚も切除できますが、再び膨隆する可能性は高いです。

口角の追加挙上術はその後検討していきましょう。教え子のDr. Iも上手ですが、私に遠慮するでしょう。とにかく、このシリーズのブログ画像提示は継続して、来月に2回目の手術を予定します。

こうしてやはり追加手術をすることになりました。二つ提案しました。一つは鼻翼下の切除を追加する方法。もう一つは通常の口角挙上術を鼻翼の内側の下まで挙げる、しかも台形に切除して鼻翼の下を多く挙げる。

後者の手術デザインは外国、チリ!の医師が発表しています。当地にはモンゴロイド(マヤ文明)が残っていて皮膚色が濃いので傷跡が目立つのに、上白唇部を多めに切除して綺麗に挙がります。応用して台形に切除するのを閃きました。でもさすがに「赤唇縁の傷跡が長くなるのでどうでしょう?」「もっとも〇〇さんは見たとおり、(さらに言えば上の画像の口角の傷跡は見えない。)赤唇縁の傷跡が見えなくなったでしょう。だから内側まで切ってもいいのでは?。」と訊きました。患者さんは「でも長くなるのはどうか・・?」と一瞬迷いました。その瞬間逆に、私は「では二次的に検討しましょう。」と言って前者からすることになりました。実は時間の関係もありますし、上下で引き上げると引き合って傷が不安だし、引き合ってデザインがこんがらかるからでもあります。まず鼻翼下をU字型に切除して挙げてみて、その後口角の台形切除を追加するかどうかを検討することになりました。

鼻翼下をU字型に切除するデザインは前に一例ブログにも載っています。やはり富士山型にされた症例をまず上白唇短縮術と口角挙上術で改善したのですが、追加した症例です。外側(鼻翼下または口角)を、一回でたっぷり切除してあげれば(挙げれば)いいのにと思われるかもしれませんが、鼻翼下だけたくさん取ると鼻翼横の余剰の膨らみが解消しません。初回は最大6㎜以下の切除に留めています。軽度の膨らみは皮膚が収縮して目立たなくなっていきますから、2度目の手術時にずらして縫合していけば膨らみがなく挙げられます。それはこれからお見せします。

画像は今回の術前、前回の術後4ヶ月から。

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鼻翼横の膨らみは前回術後3ヶ月と比べて小さくなりました。鼻翼の直下から外側の口角に掛けての赤唇はまだ見えません。

IMG_5601IMG_5596斜位像や側面像での口角部の上の赤唇も見えません。

デザインは図のごとく。

IMG_5650鼻翼基部を最大3㎜切除します。鼻翼基部を囲むU字と下のU字はかなり長さに差があります。このまま合わせたら、下の皮膚が膨らむのは必定ですが、どうでしょう?。下に術直後の画像ですが、鼻翼基部付近にはプリーツがありません。

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切除はデザインの通りにしました。縫合時に、鼻翼簿外側から合わせて縫っていき始めて、つまり鼻翼基部は上下をずらして縫い、鼻翼の内側では下の皮膚が余る様にしました。余った皮膚は鼻孔の中で横向きの三角形に切除して縫合しました。つまり上下の創縁の長さをほとんど同じに出来て、しかも鼻孔内の創は見えません。事実画像でも見えません。鼻翼の外側の膨隆はありますが、これは腫脹も伴うので消えるでしょう。

IMG_5655IMG_5652術前より口角付近の赤唇が露出しました。富士山型の唇になった際にここが問題点なので、かなり改善されています。

上口唇短縮術の結果、富士山型の赤唇縁になった症例が存在します。私の様に両側鼻翼間を全て同じ幅に切れば、先ず起きません。また元々が富士山型の赤唇縁のCupid’s bow,弓が急なら、シミュレーションしてみて、鼻翼下を鼻柱下より多く切除して富士山型から弓型に変えた症例もあります。赤唇縁は山ではなく弓です。日本人は山だと思っているので、騙されるのです。口角が下がっていると富士山型が強調されますから、シミュレーションして必要な場合は口角挙上術を併施します。

この様に術前の念入りな診察が、適切な結果を造ります。私は真面目な形成外科医ですから、細かい診断をしてから治療(この場合手術)します。日本の医療費は保険診療で安いので、数をこなす為に診療時間が短くなります。当然診断力が向上しません。ミスるとまずいのでやたらに薬を出すので要らない薬が増えます。ましてや美容外科は自費ですが、チェーン店は平均的に売り上げの半額を費やす広告料の元を取らないとならないので、診察に時間を掛けませんし、若造はその能力も備えません。結果的にこの様な求めない形態を造ってしまうのです。

また、形成外科のトレーニングを受けていないチェーン店の美容外科屋は、創の縫合が拙いので、上口唇短縮術の際に鼻翼の下の切除を減らす医師が多かったり、創を減らす為に鼻の孔の中を切って鼻の孔が丸(く)見える様ににします。鼻孔底に見える創跡線を減らしても、鼻翼下と鼻柱下には見える訳で、意味がありません。どちらも要するに、創跡を丁寧に目立たなくする技術が無いから、または丁寧に縫合すると時間が掛かるから、その様なデザインを使うのでしょう。創跡を目立たなくする為の真皮縫合を出来ない非形成外科医は、切って縫う手術をすべきではありません。

そして一度切除したら二次的に治す際に取り過ぎの懸念が生じます。今回の症例も先ず白唇短縮術を調整して少々、口角は前医では挙がらなかったのでまともな手術を追加しました。でもやや控えめの手術にしました。口が閉じなくなる危険があったからです。患者さんも理解していてもらえて二次的に部分的な追加手術をしました。ある程度の効果は診られそうです。もう一つの口角挙上の拡大手術をすれば満足戴けそうです。

二回目(前医から数えると4回目)の手術まで、術前と術直後まで前回に続けて載せました。今回ダイジェスト版の様に1回目の手術の画像を減らして書き直します。

術後1週間で抜糸しました。

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創は凹凸があります。外からずらして縫合して来たからですが、だから鼻翼の横の余剰に因る膨隆は診られません。そして手術の効果はどうでしょう。下に今回の術前の画像を比較対象に。

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鼻翼下の赤唇の厚さは明らかに増量しました。私は毎週新幹線で大阪入りしていますが、当然富士山は右側に見えます。じっくり見たら、富士山は頂上から裾野に架けてなだらかになっていながら、裾野が広い。その目で上の画像を診れば、逆に裾野が低いのはその辺の小山みたいで鼻翼の下まで高い方が富士山に近いかも?。ならば、更に裾野を拡げて口角まで挙げれば、富士山型が解消するのかも知れません。もう一度患者さんと相談しましょう。

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斜位像でも側面像でも、外側の赤唇が増えてはいますが、まだ挙がっていない。挙がっていれば富士山型で無くなるのでしょう。

下からの画像を見ると鼻翼基部の傷跡は右の方が凹凸ですが、目立たなくなるでしょう。外からすらして縫合して来たので、鼻孔の中に余剰が出来て切除したのですが、中の創は見えません。鼻翼の内側と鼻孔の折れ返りに創があるのですよ。

今回術後1週間でも形態的変化が見えます。求めていた事が出来ています。でも今後経過を診ていって次に進む予定です。もちろん診察所見次第です。

今回術後1ヶ月の画像を紛失してしまいました。よって下列には術後3ヶ月の画像です。

 

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やはりまだ鼻翼基部の直下から外側口角に懸けては上がっていませんが、口角挙上術はいずれ追加することになっています。

IMG_7644IMG_7640斜位像や側面像では改善性が明らかに視られます。それはそうです。鼻翼基部の下を3㎜挙げましたから・・。

ところで今回、術後1ヶ月から既に他の面についての診療が進んでいます。頤プロテーシスの改良、鼻尖軟骨再縫合。軟骨移植。口角今日絵はやはり台形でなく丸くたっぷり挙げる。術後3ヶ月には反芻して、頤プロテ、鼻翼は33ミリで不要。鼻栓の鼻翼軟骨が分かれている。鼻稜の延長線より1.5㎜後ろにある鼻尖は軟骨二枚で本当のアップノーズにしたい。さらに新しく鼻孔縁の前方が楔形に三角系に喰い込んでいるために複合組織移植が適応と考えた。

これらの所見は画像でも判ります。そこで患者さんは次の計画を立てたくなりました。順番ですが、耳輪からの複合組織移植による鼻孔縁下制術と頤プロテーシスの改良は同時に施行できます。耳甲介から鼻尖への軟骨移植は鼻孔縁の傷が安定してから口角と同時に可能です。

これからの手術経過も載せさせてもらえそうです。お楽しみに!

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。半分の切除デザインなら半額にします。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。