長らく当院での診療を受けてきた患者さんです。私も手術に携わってきましたし、他の医師も診療してきました。お馴染みになったいい患者さんです。当初から面長の特徴は良い点と捉えてきたが、やはりそのうちでも下顔面が長くしかも上下口唇の比率的に上が長くなってきたので、熟慮の末に短縮術を実行しました。
敢えて言えば、上白唇短縮術は傷跡が顔の前面に出来る数少ない美容外科手術ですから、リスクベネフィットバランスを充分に検討するべき手術です。本症例の患者さんも長年悩んできました。
ベネフィットとしては、面長の人は上口唇が長くなると(10年で1㎜伸びます。)比率が崩れてきたのが目立つのです。短縮の効果が高いのです。赤唇の形や厚みの強調も症例ごとに求められます。ヒアルロン酸などで造っていってもキリがないのです。私は夫々の症例を計測して、また社会的な態度に合わせて擬態としての赤唇の態様も話し合って検討します。ここが私に罹るメリットです。そんじょそこらのチェーン店の若造には知る由もない診察手段です。
リスクは当然傷跡ですが、第一に綿密な真皮縫合に尽きます。傷跡は真皮縫合をしなければ数ヶ月で幅が出来ます。真皮縫合は創の深部が強固になる数ヶ月間コラーゲンを寄せ続けます。しかも表皮直下の真皮最浅層を寄せて真皮縫合を終えた時点で引っ張っても隙間がない程に縫合しなければなりません。形成外科医の常識です。思い出しました。私が北里大学形成外科に入局して1年目に上級指導医が私が初めて執刀する手術に立ち会っていました。黒子の切除手術だったと記憶しています。真皮縫合が終わった時点で彼が傷跡を引っ張って「数ヶ月後にはこの幅になるぞ。」と脅かしました。0.5㎜の幅がありました。数ヶ月後診るとその通りになりました。その後は念入りに真皮縫合しています。私は白唇短縮術の際に最低18針の真皮縫合を密に掛けます。ブログを見れば判るように、創の長さは約4㎝ですから約2㎜おきに掛けます。実はこの細かい技の習得には6年以上掛かります。形成外科医は糸切り3年真皮縫合8年(桃栗3年柿8年のもじり)と唱えます。もちろんチェーン店の医師は形成外科の研修を受けていないので唱えませんし出来ません。上白唇短縮術のリスクは他に、鼻翼の横の余剰皮膚の膨隆ですが、そこは回避出来ないとしても術後経過で平坦化しますし、3ヶ月経ても治らなければ焼き潰せます。もう一つ富士山型はシミュレーションで回避出来ますし、縫合が面倒だから鼻翼の下の切除を減らすと起きます。もちろん切除量を減らせば真皮縫合の本数を減らせますが、人中部だけつまり白唇の中央だけを挙げれば必然的に富士山型になります。要は両側鼻翼間を同じ量とるデザインに尽きます。
症例は50歳女性。5年前にも口周りを診ています。当時のカルテには白唇19㎜と長い。4㎜切除の適応。鼻翼が36㎜:内眼角間32㎜で縮小の適応あり。結局切らない鼻翼縮小術から施行しました。経過中他の面も治して来ました。
先月久しぶりに私に罹り、口周りの診察を希望されました。白唇長19㎜は5年経ても(短くなるはずはない。赤唇にヒアルロン酸入れても)変わらない。鼻翼幅は37㎜と後戻りしました。上顔面(何度も書きますが生え際から眉下)70㎜:中顔面(眉下〜鼻下)68㎜:下顔面(鼻下〜頤尖)69㎜と比率は適切だが下顔面の中で上口唇(白+赤)28㎜:下口唇(赤〜頤尖)41㎜で黄金分割比の5:8を当てると上が3㎜長い。E-ラインより口が+3㎜でも外反している。C−カールは軽く。人中と弓と結節はヒアルロン酸で作られているが、吸収されたら寂しくなり得ます。実際当初入れる前の画像では形がはっきりしなくて貧弱な赤唇でした。オリジナルの手技:人中部で両側1㎜寄せて赤唇の形態を明確にしましょうと提案しました。口角は313752ですが、リフトを検討しているから口唇の横径に影響する可能性があるために、その後の計測でデザインが変わります。今回は口角挙上術は見合わせることにしました。
画像は各方向の術前と術直後から。
両側鼻翼間の下の赤唇が引き上げられて、素敵です。
赤唇縁の弓型(山では有りません。)がはっきりして綺麗です。人中も深くなりました。寄せて良かったです。
斜位像や側面像で立体的に診ると、間延びした白唇がスッキリして優しい雰囲気です。口唇結節(上赤唇中央の膨らみ)も前を向いて可愛いですね。私がいつも言うキスしたくなる唇です。
翌日診ると、デザイン調節が功を奏していて経過が順調でした。
術後1週間で鼻の下(Nostril sill)の下を抜糸しました。
確かに上下の口唇の比率が黄金分割比率です。結果面長感が改善されました。ただし白唇が短くなって口唇横径が相対的に小さく見えます。いやもう一つ鼻翼がまだ広がっているから比率的に余計に小さく見えます。この点は解消しますが、口角をどうするか?、私の口角挙上術は口唇横径の拡大も調整出来ます。だから〜、リフトの後に検討するんだってばあ〜!
C−カールを軽度にしたので腫脹が目立たない。「スッキリしました。」と一言おっしゃいます。スッキリとは手術の経過が良くてスッキリしたのか白唇(鼻の下)が短くなってスッキリしたのか不明sです。開口1.5横指。閉口時に下口唇をあげていると自覚しているが、他の症例は開いているのに閉じている。でも!頤に梅干しが出来ない。若しかして赤唇を厚くしているのが効を奏しているのかも知れません。E-ラインがほぼ直線上なのも関係していると考えられます。
術後2週間で鼻翼の横の抜糸した際にも画像を頂きました
鼻翼の位置が半分戻ってきました。傷跡の赤い線は順調に薄らいでいます。
斜位像と側面像で立体視すると腫張が引いてきて可愛さ倍増しています。
なんといっても術後経過は順調です。術後1ヶ月が楽しみです。
創跡はまだ赤い線ですが、幅はありません。ですから後戻りもゼロです。赤唇の形はヒアルロン酸で造るよりも綺麗です。見事に弓が見られ、結節も優しい。人中も深く白唇にアクセントが、前突した赤唇と合わせて口唇のバランスが取れました。
E-ラインが整っているから赤唇が少々前突しても品があります。ご覧の様に鼻の位置はまだ戻り切っていません。必ず戻りますから、術後3ヶ月をお楽しみに!
早くも術後3ヶ月です。一部がまだ赤いのですが、メイクで隠せます。完成!
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。