2017 . 11 . 1

やはり口唇短縮術は最終兵器です。

口周りの手術が続いています。当初から述べてきた様に口唇の手術に到る患者さんは、他部位の治療を経てきた人が多い様です。口周りの印象は骨格に影響されるし、動く部位なので手術に逡巡する。目周りは手術すべきアジア人は多く、だから医療者も多いので登竜門です。鼻は難しく、下手な医者に受けるとセンスわりーになっちゃうし、ダウンタイムは長いのですが、ここを治さないと話にならない人はまずします。鼻は口周りの印象と関連しますから、先攻しておいた方が次に行けます。また、骨系は簡単ではないしリスクも高いので上手い医者は数が限られます。

そのような訳で、口周りの手術は最終兵器になりがちです。今回の症例も順番通りですが、実は眼瞼は取り逃がしてしまいました。鼻は出来ています。骨格は軟部組織で改造しようとしています。そして今回、白唇短縮術に到りました。口角は二次的にするでしょう。鼻柱も検討の余地があります。アレッ、口周りが最終兵器ではなかったみたいですが、いくつかの点については今回の術前診察中にも話しました。術後の診療中にも検討していきましょう。今回は第二か第三段階というところでしょう。

症例は26歳の女性。鼻中隔延長術と鼻プロテーシス挿入術は受けている。他にも改善する希望点がある。だが相談してもこちらの手術時間が限られるので、今回は白唇部短縮術単独をすることとなったのです。眼瞼は診察時にプランは立てたし、鼻の改良点もある。ダウンタイムが取れる機関に何とかしたいと手配したが、同時施行は手術時間的に難しい。

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上の画像が術前の正面像と側面像、斜位像です。理学所見(計測)を取ると、口唇長は17mmだが、歯槽が出ている割に歯牙は出ていない為に、白唇から赤唇に掛けてべたっとしている。縦の比率は、上顔面72mm!と額が広いのは珍しいが髪を上げるといくらなんでも面長間を助長している。:中顔面62mm:下顔面65mmで下がやはり長いので間延びしている感は亢進にある典型例です。鼻翼幅36mmに対して口唇幅46mmと5:8の黄金比率にするためには口唇幅を50mm以上は欲しいし面長間の緩和にもなる。口角を斜め上に挙上する必要がある。診察の結果スケデュールを立てるも、今回は白唇部短縮術の単独施行となりました。確かに時間が取れるなら、段階を踏んでいく方が形態と機能を把握し易いので、賛成しました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA手術は定式のデザインです。鼻翼~鼻柱に駆けては鼻孔底の堤を損ねない様にその麓を切開します。鼻孔の中に逃がすと堤が無くなって鼻の中が見えてしまいます。このデザインは世界的美容外科医のオスカーラミレスが2003年に発表している”Bull’s horn”:雄牛の角という形を踏襲しています。切除幅は5mm以内に抑えます。これ以上取ると傷跡が拡がり、つまり後戻りするリスクが高くなります。外反を求めたいので切除深は皮下脂肪層を半層残します。もちろんその下層の口輪筋と皮下脂肪層も縫い寄せて、真皮縫合を密にしてその時点で傷に隙間がない様にすれば後戻りしません。下の画像は手術直後です。

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白唇部切除の単独症例はこれまで5人に一人くらいでしょうか?。今度数えてみます。やはり相対的に口角が下がります。術中に聴いたことですが、予め赤唇部切除術を受けていました。下はもう一枚術直後の画像ですが、力を抜くと全く口が閉じません。上の画像は随意的に閉じてもらいましたが、局麻の影響で上手くいきません。なんか曲がっています。

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今回まだ術直後の画像では短くなったというだけで、まだ他の面は評価不能です。そこで、今回患者さんに依頼して、顔面の印象の画像を提示させてもらいます。眼瞼部付近は隠します。

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上左の術前の画像像と上右の手術直後の画像を比べてみると、確かに術前は面長で間延びした下顔面の印象で、本症例は縦サイズが長いのですが、少なくとも術後は下顔面が短くなった為に顔面全体が短く見えます。逆に上顔面も長いのが強調された感がありますが、それは髪を挙げて撮影したからでもあります。実は額にもMalar portion(上顎から頬の前=目の下から鼻の横の三角形の部)にも脂肪注入が為されているそうです。額が綺麗なのはその為です。

顔は前に出ていた方がバランスが良くて美しい。例えば顔の横幅があるつまり顔が大きい人は前に増大すると、顔が小さく見えるし、面長の人も前に増大するとフラットな面が減るので少なくとも中顔面は短く見えるのでは無いでしょうか?。本症例患者さんは美的観点(所謂美的センス)が豊富であるのは確かで、一歩ずつ進んでいると見られます。今回私が施行した白唇部短縮術もその一貫となり、しかもこれは直接的に面長を解消することになり患者さんもお悦びです。

今後まだ改良点を検討していますが、先ずは今回の経過を診ながらタイミングをを図っていきましょう。何より白唇部短縮術は静的形態だけでなく、動的形態つまり機能的なダウンタイムが過ぎないと、次へ進めません。ただし私はこの手術のベテランとなりましたので、標準的な経過は予想されています。次回術後1週間の診察時には話しをしていきたいと思っています。