2020 . 3 . 14

口周りと眼瞼、鼻と来て、懸案の頤。

本症例の患者さんには嬉しいお言葉を戴きました。「森川先生は顔面のバランスを診ていって、トータルに治して下さるから、その様な美容形成外科医に巡り会えてよかったです。だから御任せできるのです。」と、私の出自とこれまでの経験から来る美容医療の素養を認めてくれたのでしょう。有り難いお言葉です。ですから幾つかの手術を計画を立てて施行してきました。一遍にはしません。何故なら第一に私の体力の問題。知的集中力もです。第二に大阪院では局所麻酔手術しか出来ないからです。第三には手術時間枠も大阪院では最長で3時間30分だからです。そもそも私は手術を丁寧に時間をかけて行います。切開縫合手術は特に時間をかけて細かく縫い合わせないと後々で傷跡の幅が出来て目立ってしますうからです。

今回は頤プロテーシス挿入術です。頤は口の下です。口周りです。頤は下顎の先端のことを言いますが、時の成り立ちを見ても解る様に、大臣の臣を偏,へんに、頁,おおがいは顔の部品を示す旁,つくりですから、偉そうな顔という意味です。おとがいと読みますがあごとも読み得ます。よく頤,あごで使うなど言いますが、偉い人が下々のものを使うことですよね。逆に頤,あごを挙げるのは疲れて参った時です。その意味では、頤はなくては貧相になるし、対する人に地位と経済性を貶めて感じさせます。また頤,あごを引くのは態度として真面目さを感じさせます。胸を張って立つか座ると、頤,あごは自然と後ろに引かれます。そういう姿勢は好ましいし、品性と威厳と自信を感じさせます。ですから頤は長さはバランスとして欲しいし、前後位置は口との関係です。

その意味でE-ラインが注目されます。側方視で鼻尖と唇と頤を結んだ線は一直線上にありたいとされています。言い換えれば口が出ているかどうかです。前後位置関係ですが人は立体視出来ますから、そこから見ても認識出来ます。いつも言う様に、人間だけが口で啄ばまない動物なので、口が出ていない形態に進化しました。だから口が出ていると食いしん坊みたいで品性に欠けます。口の位置関係は骨格が決定しますから治しにくいし、アジア人は鼻が低いから相対的に口が出ている人が多くなります。頤はプロテーシス等で前へ移動することが出来るのでE-ラインの改善に有用なのです。

そこでやはり、口周りのこれまでの手術の経過を見てから今回の頤の手術の提示を致します。

症例は56歳女性。当初5月に来院。長いでしょう?と言われて測ると、人中部の白唇は長さ23㎜です。E-ラインより唇が10㎜前方。側方から診ると白唇が内反している。加齢とともに赤唇が薄くなった。上顔面(生え際〜眉下)55㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜顎尖)60㎜と縦のバランスは取れているが、上口唇(鼻下〜赤唇交連)29㎜:下口唇(赤唇交連)31㎜と黄金分割比率より上が9㎜長い。人中と弓ははっきりしている。6㎜以上は切除しないよう説得しました。ただししっかり外反させます。

顔面横部品費は、内眼角間33㎜:鼻翼幅37㎜:口唇幅43㎜で、黄金分割比で計算すると口角を6㎜横にも引きたいが、顔が小さいので30度方向に5㎜引き上げ、口角を上に5÷√3(1.7…人並みに奢れや)≒3㎜、横に2.5×2=5㎜拡大するデザインを予定した。鼻は経過中に検討する。

6月に再来。眼瞼の相談を受けた。内眼角間33㎜:眼裂横径24㎜:角膜中心間54㎜で、顔の幅の割に目が小さく、その因は蒙古襞の狗縮強いからと考えられ、4㎜のZ法による目頭形成術の適応です。他医による眉下切除は切除量は不明なれど不足と思われ、眼瞼で切開し、挙筋縫縮し、ライン変えないで4㎜切除の適応です。当初は口周りの手術後1週間で眼瞼かと考えたが、11月に延期した。それまで撮影中に診察することとした。

こう考えてみると、50歳代中頃で、眼瞼は4㎜+@伸びたと考えられ、白唇も5㎜前後伸びたとしたら生来長かった要素と半々だと考えられます。

今回は各方向の画像を日時別に並べます。まず術前。

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口唇がE-ラインより前方にあり、上白唇が長く、上下赤唇とも薄い。口角はへの字ほどではないが挙がってはいない。下にデザイン画。

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上に記載した診察時の所見を利用して検討したデザインを描きます。この通り切除して時間をかけて縫合しました。下の画像はその通りに形態は変化しています。

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術後3ヶ月で完成の声を聞きました。

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下赤唇が薄いよりも頤までの短いのが判ります。しかも本症例は頤が後退しています。側面像で診ると、E-ラインを引けます。鼻尖〜口唇〜頤を結んだ線ですが、口唇が前方に有るのは頤が後方にあるからです。そうして正面像を診ると、頤の先端が後方にあるから余計に短く見えるのです。頤形成術の適応です。

左鼻翼基部に軽度肥厚性瘢痕があります。でも創跡は拡がっていません。幅はありません。白唇中央の長さ=鼻唇角〜Cupidの弓の底は、予定通り18㎜です。ただしこれでもまだ上下口唇の比率は5:8とはなりません。白唇中央の長さ=鼻唇角〜Cupidの弓の底は、予定通り18㎜です。ただしこれでもまだ上下口唇の比率は5:8とはなりません。正面像で鼻翼幅と口唇幅の比率を診ると、口角挙上術時に口唇幅を5㎜拡大したのに、37:48ですからまだ5:8にはなっていません。鼻翼縮小術の適応があります。

こうして口周り、眼瞼と加齢顔貌に対処して来て、次に残りの鼻翼の拡がりと頤の後退に対する手術を予定した。

鼻翼の最大幅は37㎜です。顔面の横部品の比率からして、34㎜にしたい。術後早期の後戻りは約1週間以内に半分起きますから、34㎜目標なら、手術直後には31㎜にしておきましょうとなりました。ところが手術を初めて仰臥位で測ると、重力の影響で更に拡がっていました。38㎜でしたから、やはり追加して30㎜まで寄せる事にしました。
手術前と手術直後の各方向の画像を並べて比較しましょう。数字通りにしました。

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上二列の画像は正面像と下面像の左術前、右術直後です。オーバーコレクション,over correctionしました。

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切らない鼻翼縮小術は両側の鼻翼を糸で引き寄せるだけです。いわゆる埋没法です。ですから後戻りが必ず起きます。数週間がヤマで、約3ヶ月で糸の周囲が瘢痕化して定着していきます。今後の経過をお見せしていきますから皆さんも評価してください。

お願いしたら術後1週間でも診せて下さいました。

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35㎜に後戻りしました。「まあ数字的にはお許しを。次も出来ます。」患者さんも返します。「その前に他に進みましょう。」頤を改良するのは前々からの課題です。鼻翼縮小術埋没法の術後1週間までの画像と数字を提示しました。今後の経過中にも必ず計測し、画像も見ていきたいと思います。

そして鼻翼縮小術から1か月経て後戻りが落ち着いたので、懸案事項であったE-ラインの改善に到りました。部位が離れているので可能です。頤プロテーシスで頤を前に出します。診察所見をもう一度書きます。E-ラインより唇が10㎜前方。上顔面(生え際〜眉下)55㎜:中顔面(眉下〜鼻下)60㎜:下顔面(鼻下〜顎尖)60㎜と縦のバランスは取れているが、上口唇(鼻下〜赤唇交連)29㎜:下口唇(赤唇交連)31㎜と黄金分割比率より上が9㎜長い。6㎜以上は切除しないよう説得しましたので、現在上白唇長は15㎜です。上口唇と下口唇の比率はまだ5:8になっていませんが、今回は長さを作らない事としました。

実は今回の計測値が記載されていません。口周り:上白唇短縮術+口角挙上術を施行してきたら、最上段の口周りの手術前の比率とは変わっている筈です。その後の鼻翼縮小術の術前は白唇短縮術+口角挙上術の術後ですが、ここにも顔面上下の計測値がありません。今回の術前は上白唇は切除量に合致して静止時には23−6=17㎜だったのは確かです。ですが、その際下口唇をどれだけ挙げているか、また既に上口輪筋が回復している筈ですから口を閉める動作時には上口唇も降りているのではないでしょうか?。もう一度近々計測してみます。

それでは今回の術前の画像から診ましょう。

DSC02717DSC02718DSC02721顔面の上下の比率としては、上白唇を短縮してもまだ下口唇から下が短く感じます。でも術前に長くしない希望でした。変わりすぎるのを避けたいからです。斜位像や側面像ではE-ラインの配置上明らかに口が前です。

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挿入した直後です。決して長くしていませんが、腫脹で長くなります。頤の先端に糸を出して中心に固定しています。上方に移動して口の中に出ない様にするためでもあります。シャイ像や側面像ではE-ラインが一直線上になりました。ただし局所麻酔と腫脹のために下口唇が挙げにくくなっています。斜位像では口を開いています。側面像では閉じようとして上口唇に力が入っています。そのため内反しています。

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手術直後にテープ固定をします。プロテーシスを包み込む様に貼り、周囲を圧迫してこれ以上腫脹が亢進しない様にします。特に上辺は口の中ですから、移動を防ぐ作用もあります。

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翌日同僚がテープを貼り替えてえてくれました。上辺のテープの意味が違います。ただし腫脹は直後より増えていません。なんでも侵襲に対して48時間は亢進しますがこの様い防ぐ方法はあります。下が骨なので圧迫が効くのです。

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術嗣ご1週間で診せてもらいました。糸は吸収糸ですが、約3週間で外れてきます。嚥下しても毒性はありませんが、就寝時に起動に落ちてはいけませんから2週間で抜糸する予定です。糸は撚り糸ですからチクチクはないとのことです。ちなみに下口唇は動ける様になり上口唇ばかりが働いていませんから、内反していません。

DSC02999テープ固定は上辺にマイクロポアースキントーンテープだけとしました。誘導糸は見た目に目立つし、長く置くと凹んだ痕になるので抜きます。ご覧の様にプロテーシスは中央にあります。頤先端はまだ腫れています。これが結構長いのがこの手術の難点です。

今回術後1週間までを画像提示しました。今後変遷しますからお楽しみに!。次回からは版を変えて頤形成術だけの画像提示しようかと考えています。アッ、また手術そのものの説明を忘れました。次週以降説明します。実は簡便です。幾つかの注意点があります。それにむしろプロテーシスの形態が重要です。

 

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。」

医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

本年6月から費用の説明も加えなければなりません。切らない鼻翼縮小術は18万円+消費税です。頤プロテーシス挿入術は25万円+消費税です。出演料として20%オフとなります。

何度も記載してきましたが、医師は医学部在学中には精密な顔面解剖の教育を受けません。卒後の専門科目の研修中に学んでいきますし、人に依っては研究して医学博士号を取得します。形成外科の医局に在籍しなければ学べません。美容外科医の中でも、他科からの参入者や新人からの雇用者や、最近では形成外科を6年以下かじった程度の医者は系統的な卒後教育を受けていません。チェーン店の雇用者はほとんど全員そうです。それに技術的修練も受ける暇がありません。こんな連中はコマーシャリズムで誘引しているだけです。その斯界で、私達は形成外科の技術と知識に基づいた美容外科”医療”を遂行して参りました。