症例は51歳女性。約2年前に来院。いきなりBull’s hornをしたいと述べられた。鼻尖は二分軟骨。PRPや3D Liftなども検討しました。話を上白唇に戻すと、赤唇が薄く、外反C-カールが軽度。ヒアルロン酸でリッジは作り続けています。白唇長20㎜で5㎜切除の適応でした。口輪筋上まで切除。口角は40度5㎜が適応でした。1ヶ月後に手術し、経過良好でした。その1ヶ月後に診察時、口角の傷跡が肥厚性となり後戻りで矢印型を呈しました。白唇は良い形態。鼻翼縮小等はしばらく待つこととなりました。
本年に入って再来し、鼻の手術を希望されました。鼻翼幅38㎜を皮弁法(*脚注)で34㎜に縮小を目論みます。白唇は15㎜で後戻りはゼロですが・・、追加切除を希望されます。上下のバランスを測ると4㎜可能。なおCupidの弓がだるいのですが、前回は考慮しませんでした。今回は両側鼻柱基部を縫合時に1㎜ずつ寄せるプランを立てました。口角は白唇短縮の結果として相対的に下がったら追加手術を検討することとしました。
直前の診察で33㎜目標とした。また静脈麻酔下での手術を希望されました。今回の手術前の画像から見ましょう。
前回の手術の結果充分に短縮されていて、後戻りもゼロでした。口角もキュッと挙がっています。なお、鼻の下の傷跡は目立たないです。だから二回目手術を希望されるのでもあります。
ご覧の様に斜位像や側面像では頤が前で下顎が前提しているのですが、決して長くは有りません。残念ながら計測値は記載がありませんが、上白唇短縮を追加すれば上下の比率上から相対的に頤が強くなく出来る症例です。追加の意味が有ります。下面像でも、前回の傷跡はよく判らないくらいです。下にデザインを記した直後の画像です。
両側鼻翼間を4㎜切除します。両側鼻翼の内側の壁から幅2.5㎜のNostril sill:鼻孔底の堤は切除します。堤の向こう側に皮弁を造ります。デザインは孔の中ですから暗くて見えません。”なおこれがNostril sillを切除してはいけない証拠です。”Nostril sillが有るから鼻孔の下半分は影になって見えないのです。
他院で人中短縮術との間違った術式名を受ける際に(人中部だけ切ったら富士山になります)創跡を減らす為に鼻孔内で切除して、Nostril sillを無くしてしまわれ、鼻の穴の中が丸見えになった症例が続出しています。鼻翼基部には創跡が有るのだから、Nostril sillの下を切っても同じです。いかに丁寧に綺麗に縫合するかが結果の善し悪しを左右します。非形成外科医のチェーン店では、時間をかけて真皮縫合を密にするのは出来ない相談なのです。
実は手術直後の画像を撮り忘れました。静脈麻酔からの覚醒に専念して、起きたらリカバリールームに移動して、すっきりしたら帰ってしましました。仕方ないので翌日診察時の画像で比較しましょう。
鼻翼縮小術皮弁法は鼻中隔の下にトンネルを造ります。そこは上歯槽骨の上ですし、上口唇の後ろですから口唇の腫脹は必発ですが、本症例は2回目手術で静脈麻酔下ですから更にすごい方でした。上赤唇が下赤唇の3倍の厚さに腫れています。
一つ気がついたのですが、上赤唇が重度腫脹をして捲れ上がっているのに、前回の口角挙上術の効果は温存されています。もっとも腫脹の軽快次第でどう変遷していくかは検討の余地があります。
鼻翼幅34㎜。33㎜にしたのにい〜・・。開口1.5横指。腫脹は軽度亢進状態ですかね。いや術直後が重度だったので、あまり変わって見えません。
下に術後1週間での鼻翼横以外を抜糸後の画像。患者さんは一目見てお悦びです。
腫脹はかなり軽減しました。上赤唇が下赤唇の1.5倍くらいまでに治りました。あんなに腫れたのに結構治りが早く、私もホッとしています。患者さんは理解しています。
上下赤口唇の縦の幅は理想的にはやはり黄金比の5:8ですが、日本人を初めとするアジア人は口が出ている場合が多く、下口唇が厚いと品が無くなるので1:1なら良しです。
鼻翼幅は35㎜で定着しつつあります。毎週測ります。この手術は後戻りが少ないのですが、術後数週間は若干の後戻りが診られます。次回術後2週間で全抜糸します。診察と計測、その際の画像をお楽しみに!
こうして術後2週間が参りました。
開口は3横指でADL,Activity of Day Life、訳すと日常生活の質ですが、口が開くかどうかは摂食という動物の生命維持機能と、話す際の構音や表情という人間特有の高次機能に影響しますから、術後経過中で改善の判りやすい指標ですね。本症例は二次的追加手術であるにも関わらず機能回復が早い患者さんです。もちろん二回目ですし、個体差はかなりばらつきがありますが、性格的に安定して痛みにも強く、さらに医療者との信頼関係が醸成されている(そもそも二回目手術を受ける人はだから希望するわけです。)患者さんは自律神経系の交感神経が安定しているから血行が良好なので創傷治癒機転がスムースで早く治るのです。
次回術後1ヶ月には更に軽快が進んでいることでしょう。アッもう一つ大事なことは鼻翼の定着度です。お願いですから後戻りが止まって欲しいです。そこも含めてお楽しみに!
次回術後3ヶ月までも定着しているでしょう。その際は画像でも比較しましょう。お楽しみに!
当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。鼻翼縮小術内側皮弁法は28万円+消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。
*脚注はRクリニックのDr. H. との仲を書こうと思ったのですが、今回の鼻翼縮小術の版に廻しました。なおもう一人の友人VクリニックのDr. F.とも仲良しです。
鼻翼縮小術皮弁法を、USAの厚生省に相当する期間が運営する世界中の過去から再診の医学論文が全て掲載されているネット図書館:PubMedで調べてみたら、初出の論文はエジプト人が書いていました。そりゃあそうだ!。アラブ人は鼻が大きい!。熱くて息張るからでしょう?。他にはアジア人が何通か書いています。アジア人は鼻が低いだけでなく鼻翼が大きいからです。
ところで私が鼻翼縮小術を学んだのは約5年前にハワイの解剖セミナーに参加した際です。仲良しのDr.Hが御遺体で手術の実演をしました。そう言えばハワイ人もモンゴロイドが混ざっているから鼻翼が大きいですね。熱いし。Dr.HはR美容外科の開設者です。私やVクリニックの開設者であるDr.Fと同年代です。T大形成外科医局出身で、その後今は無きやばい白金Clc.に在籍した後に、約10年前にK美容外科に移籍しました。その頃私もK美容外科等でアルバイトしました。Dr.F.もです。その後私も一時は銀座美容外科と連携して開業し、Dr.HもDr.Fも開業してK美容外科は潰れかけました。その後は毎年何回も学会で会う度に情報交換して来ました。
鼻翼縮小術はこれまで様々な方法が考案され発表されてきました。上記の様にニーズが多く、それでいて後戻りが必発だからです。侵襲の強い手術でも少し戻ります。糸で寄せるだけではかなり戻ります。その時皮弁法が考案されました。私は約10年前に皮弁法の論文を見た様な気がしますが、侵襲が強く果たして本当に戻らないか判らなかったので使っていませんでした。多くの症例に対しては昔ながらの埋没法で、一部に内側切除法を利用していました。因みに外側切除法は適応が違います。チェーン店に騙されない様に!。
5年前にDr.Hの実演を視て、その後長々と議論しました。彼は自信家ですから、「戻らないよ!。」と豪語していました。私はまだ、にわかに信用できないで利用しませんでした。ところがその後、私は白唇短縮術の大家となり、その時!。鼻翼縮小術の適応症例が多く、同時にする機会に遭遇する様になりました。それでは折角だから、どうせ侵襲も強いのだし、戻りの少ない皮弁法をしようと考えました。
そこでもう一つ、鼻翼を寄せる手術は洋語ではNasl base reduction,鼻の底の縮小と著されますが、同時に鼻の下=私達形成外科医にとっては白唇部(口唇裂はここも割れているから、唇の一部だと認識している。)も寄せられます。結果的に白唇が前に膨らみます。鏡を視ながら手指でシミュレーションしてみれば判りますよね。ですが白唇短縮術と併施すれば、ずらして縫合出来るので白唇が膨らみません。
約4年前から白唇短縮術を多用し、約3年前から鼻翼縮小術皮弁法の併施を始めました。その後学会で、Dr.Hと議論しました。いや自慢しました。私吹っかけます。「先生さあ、鼻翼縮小術って唇がとんがるじゃない?。僕さあ、白唇短縮術沢山やっているんだけど、先生に教わった鼻翼縮小術皮弁法を併施しても、ずらして縫合出来るから白唇が膨らまないぜ!。」Hは「何だそれ、やった事無いな。」「それで困った事は無いけれどな!。」実は学会発表の準備で忙しそうなのに立て続けに私は念を押して「でも最初から膨らまないし、ただしぶち腫れるけれどね。」と偉そうにいうとHは「でも理論上はそうだな。」「僕はやった事無いから判らない。」とまるで国会の様な噛み合ない議論に終始しました。その後も学会で会うのですが、この件での議論は蒸し返していません。でも聴くところに依ると(患者さんからの情報)、今でもDr.Hは鼻翼縮小術は皮弁法だけしかしていなくて、確かに後戻りは少ないそうです。ある患者さんには白唇が膨らんでしまったら私に罹れば治せるとも云われました。私は白唇短縮術と鼻翼縮小術皮弁法の併施に励んでいます。
そう言えば次いで、Dr.Fとの楽しい話しも次回書きます。