2020 . 6 . 22

鼻尖増高及び下制には軟骨移植。前に一枚入っているけれど酌んでいない。目的を達していないから不自然。診断が不備なんです。

鼻の手術の画像提示が続いています。口周りの手術の派生として鼻唇角プロテーシス(韓国ではネコ手術と呼んでいます)が復活していました。でも鼻尖形成術も得意分野です。鼻尖は鼻の中心ですが鼻の他の部分とのバランスを取っての形態改良が求められます。ですから鼻尖形成術といっても高くするのか?、下に伸ばすのか?、鼻柱まで下げたいのか、鼻陵線(鼻スジ)の延長線との前後関係をどこにするか?、更に鼻唇溝(鼻柱基部)が喰い込んでいるなら必要性を検討しなければならないのか?、周囲の鼻陵は?、鼻翼との関係は?。とにかくいろいろな面を考慮しなければなりません。しかもこれまで触られている場合、内部構造がどうなっているのかは推測の域を出ませんから、開けてビックリな事さえあり、手術プランが意味をなさない事さえあります。

私はこの様な面を、口を酸っぱくして強弁して来ました。美容経験50年、形成外科歴32年、美容外科歴25年ですが、患者さんの希望を酌んで、豊富な経験を持ってして似合うかどうかも推測する。多くは計測に依ってバランスを診る。その様に念入りに診察行為をして始めて、治療行為=手術に到るのです。巷間の美容外科医はこの手順を省きます。二つの理由があります。

一つは時間対価を重視するからです。ご存知の様にチェーン店系はTVCMを増やしています。何とかミクスの効果です。ただし一部のクリニックは残念ながらCOVID19の対処で時短しているので、これも困った事です。何れにしても、手術前にはカウンセリング(面接助言)と称して非医療スタッフが治療方法を決定し、医師の診察(コンサルト)はトラブル回避の為のありきたりの応答に終始します。一人ひとり違う術前形態を吟味しませんし、希望を汲むコミュニケーション力もありません。

もう一つは学術的知性と本当の意味での症例経験値の低下です。医師は医学生の卒前教育では美容医療の学問は学びません。私達は卒後に大学病院の形成外科・美容外科医局で勉強しながら診療(=診察と治療)を学びました。上級医に教えを請います。学会は初年生から毎年参加しして学びました。美容外科や形成外科の教科書は何十冊も読み通しました。日本やアジアはもちろんですが、欧米の美容外科や形成外科の論文を読みまくりました。主に美容外科は先進国のUSAが多く、形成外科は戦傷医療から発しましたからヨーロッパも先進国です。論文も教科書も専門領域しか使わない単語や言い回しがありますから、読み続けないと読み取れません。若い時からの知識の蓄積が無ければ新しい知識も取り入れられません。チェーン店系では学術的に利用する時間を与えられません。それこそ最近の夜間外出自粛なのに、彼等は相変わらず、夜毎繁華街に繰り出し続けていますから、勉強時間は皆無です。

美容医療=美容外科・形成外科(最近は美容皮膚科も)に於いても診察所見に基づいた治療方法=私が携わるのは主に手術方法の選択が求められます。今回も難しい手術でした。何故なら前に手を着けられていて簡単にプランを立てられない、それに周囲との関係をどう造り上げていくかは費用と時間が影響します。何カ所かの診療を順を追って施行して来ました。自然で普通で綺麗な鼻尖を造り上げたい希望を酌んで頑張りました。

本症例は年齢に見えない様に美容的に磨かれています。でも、必ずしも希望に沿って造られていません。今回此の様な難しい形態的改良手術に対処する機会を与えて頂き感謝致します。

症例は45歳女性。とてもこの年齢には見えない女性です。昨年来幾つかの診療を続けてきましたが、当初から鼻尖の形態が不自然な印象を呈していて、今回治す事になりました。実はすでに他院で耳珠軟骨が移植されていて、当院でなぜか糸を追加されていて、その後私に罹りました。さらに実は、その糸が出てしまったので私が抜いて差し上げました。本年に入ってからは、他の手術時にも診療してきました。鼻に軟骨を追加して鼻尖から鼻柱を下げたい希望と鼻尖を高くしたい希望がありました。そこで私は、耳甲介からの軟骨移植を鼻尖の前方に一枚、下向きに一枚を提案しました。そして、鼻柱基部が鼻翼基部よりも上にある、いわゆる上向き三角鼻(要するに逆矢印鼻、または喰い込み)なので、鼻柱を下げる鼻唇角下制術の併施も提案しました。もちろん患者さんは知っていて、鼻唇角プロテーシスは鼻柱内まで長いものを入れて、鼻尖を高くするように要望提案されました。

各方向の術前から術後1週間までを並べていって見比べていきましょう。正面像から。

IMG_7533IMG_7548

上左が術前、上右が術直後。鼻柱基部=鼻唇角が鼻翼基部より上方でした。鼻唇角プロテーシスの鼻柱ないへの延長と鼻柱内への軟骨移植が連繫して、鼻柱と鼻翼が同高になりました。

IMG_7550IMG_7672

上左は術直後にテープを貼った画。48時間後までの腫脹亢進を軽減するための圧迫と、移植軟骨がずれないようにする固定です。移植軟骨は縫合してあっても強い外力が加わると動いてしまう可能制があるのです。約4週間で癒着するまでは固定が求められます。ただし術後1週間からは夜間だけです。上右図は術後1週間で抜糸した直後です。

下列には下面像。

IMG_7532IMG_7547

上左が術前、上右が術直。撮影角度が違うため鼻尖の増高が認識できません。実は腫脹で太くなっているためでしょう。よく見ると鼻の孔ががまるから縦長になっています。なお鼻柱の傷は見えますが、消えます。鼻孔縁の傷はよく見えませんね。

IMG_7556IMG_7673

上左はテープ貼付後。鼻尖を囲むようにテープを貼り軟骨の周囲を早く癒着させます。正面像ではU字になっていますが、最近は移植軟骨を包むようにΩ型に貼っています。上右図は術後1週間で抜糸した直後です。まだ鼻柱の傷には痂皮(かさぶた)が付着していますが、綺麗な鼻尖です。

IMG_7545IMG_7546

上にはいつもの様に移植軟骨を近接画像で。左が正面像、右が側面像です。耳介後部を切開して耳甲介(耳の孔の後ろのお椀型の部)から10×10㎜採取しました。これを切り分けます。一枚目は対角線が7㎜のダイアモンド型。耳甲介の軟骨は、湾曲が鼻尖にぴったりなのです。二枚目は10×4㎜に帯状の軟骨。鼻栓の下から鼻柱を下げます。右図では倒れない様に鑷子(ピンセットの邦訳)で持っていますが、糸の断端も視られます。図の左側(前)から糸を二枚に通し、2㎜ずらして右側(裏)から通して前で結びます。これが入ると術後の形態になります。

下の斜位像で見ると変化が判ります。

IMG_7534IMG_7554

上左が術前、上右が術後テープ固定後。術前はペタンと平坦だった鼻尖の下半分が丸く下に延長してその上前がツンっと小さく高くなっています。この変化が自然です!。もちろんこの角度でも鼻柱が基部まで下へ移動して鼻唇角が喰い込んでいなくなったのが判ります。

下には典型的な鼻唇角プロテーシスの原型の画像。

IMG_7656IMG_7653

 

上左が正面像、上右は右からの画像。ここから大きさが合う様に削ります。下が鼻唇角の中に入り押し下げます。上は鼻柱ないに入り鼻柱を下げます。先端は二枚目の移植軟骨の下端の後ろ側に入り二段構えで鼻柱を下げます。

この結果は側面像でよく見えます。

IMG_7537IMG_7551

上左が術前、上右が術後テープ固定後。横から見て術前には見えなかった鼻柱が術後には見えます。そうしました。術前は鼻唇角の角度そのものは見えませんが、術後は直角です。鼻唇角は90度が理想的です。もちろん側面像で鼻尖も下がったのは明白です。鼻尖の湾曲も綺麗な弧になり、しかも鼻稜線よりも後ろにあったのがわずかに前になりました。

下には術後1週間の抜糸後の斜位像、側面像。耳介後部の傷跡も載せました。

IMG_7671IMG_7668IMG_7666

 

斜位像でツンっとした鼻尖が強調されて見えます。。側面で平坦だった鼻尖から鼻柱への移行部が丸く下へ可愛いです。横から鼻柱が見えるようになりました。

現在術後1ヶ月ですが、経過良好で求めた形態が得られています。術後3ヶ月で定着します。お楽しみに。

術後3ヶ月で画像を頂きました。

IMG_9743IMG_9744

ぺちゃんこな鼻尖が丸く、しかも下方に伸びて自然回にあり得る可愛い形です。お喜びです。ところが下方から見ると傷跡がズレている。鼻柱の右側の傷跡の前の皮膚が浮いている。

IMG_9758IMG_9757IMG_9751

その目で、右斜位像を見ると、段差がある。左側面像でも投影して切痕が見えます。そこで慌てて術後の画像を見直してみました。縫合時にずれていたのです。瘢痕治癒過程でさらに目立つ様になりました。

直ちに治すことを提案しました。その部分だけ再切開して再縫合します。もちろん費用はいただきません。近々予定します。その経過も載せます。

ところで耳介後面の傷跡は綺麗に治りました。画像の様に引っ張ってみないと見えません。これが普通です。

当院では、2018年6月に厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

6月から費用の説明も加えなければなりません。鼻尖軟骨移植2枚で35万円+消費税です。鼻唇角プロテーシス挿入術は15万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。