表題に書く度に困惑しています。富士山型人中短縮術が横行しています。何故かと考えました。傷跡が短くしたいからか?、鼻翼横のドッグイヤー,dog earによるプリーツ,pleats;ひだを作らない技に欠けるからか?、単純に手術時間短縮を図りたいのか?、いくつもの要素が重なっていると思います。一番の原因は、その結果として富士山型になった症例はホームページやSNSに載せないからだと思います。因みに私に関係の近い医師も作っていて、質問してきましたが、解っていませんでした。大事な事は傷跡の長さではなく、精緻な技で丁寧な縫合をして傷跡を目立たなくすればいいということです。もちろんそれには経験を要しますが、形成外科のトレーニングを受けているかどうかも見分ける方法の一つです。
また説明しますが、形成外科医は創傷(表面の傷)治癒に於いて特別な経験値を持ち、特殊な技術を身に付けます。真皮縫合法です。医師は大学では技術的修練を受けません。国家試験に受かったばかりの医師は技術を身に付けていません。大学病院や大病院で研修して(現在は制度化されています。)、各科に特化したカリキュラムで研修していく過程で、技術を手に入れます。形成外科とは体表とそれに関連する部位の創傷治癒を担当する科目です。綺麗に治すには真皮縫合が欠かせませんから、若い医師は念入りに練習します。私のモットーですが「糸切り3年、真皮縫合6年、美容外科は13年。」と考えて学んできました。
他科の外科的医療に於いては体表を切開しても、それより内部(内臓や骨等)の疾患を治すことが目的なので、体表の縫合に手間と時間を掛けません。手術時間を長くすると身体機能が疲弊するからです。したがって体表の縫合法の修練も受けません。ところで美容外科のチェーン店の医師は卒後すぐに新人として入職するか、他科の研修を受けてから転科する医師がほとんどです。当然に縫合法の修練を受ける機会はありません。
私達当院の医師は、形成外科の認定専門医です。認定には最低7年の形成外科診療の経験を要しますから、私の唱える「真皮縫合6年!。」をクリアーしています。中でも私は15年間大学病院の形成外科に在籍していました。多岐に渉る形成外科疾患に対応していました。でもその間にも縫合法の研鑽は欠かしませんでした。なおみなさん知っての通り、私は銀座美容外科医院の息子ですから、卒後すぐにアルバイトとして美容外科診療も研鑽してきました。日本では数少ない(Tクリニックの長男くらい)両刀使いです。
とにかく、チェーン店に限らず美容外科領域で、形成外科のトレーニングを受けずに美容外科だけしか携わってきた医師が増えてきていますが、そのような医療機関で白唇短縮術(人中だけ短縮するから富士山になります。)を受けるとこのようになる典型的な症例です。何例も私は診てきました。そして少なくとも10例は治してきました。一度切っているので難しいのですが、不足部分を治して良い形態を作ろうと努力してきました。今回も頑張るぞ〜!。
症例は、47歳女性。約4ヶ月前に他院で人中短縮術!を受けた。中央の人中部だけを挙げた模様。後戻りはまだない。同時に赤唇のM字切除を受けた。結果赤唇は貧弱化した。歯牙は前突し大きく、抜いて矯正したが、まだ歯牙は膨隆していて歯槽は前に突。いわゆるもっこりした口元である。赤唇縁は弓が平坦化してもちろん赤唇結節はなくなっている。人中も浅く幅がある。鼻柱部で人中を1㎜ずつ寄せる必要がある。シミュレーションするまでもなく当然口角は下がるから、挙上が必要。内眼角間34㎜:鼻翼幅37㎜:口唇横径47㎜で45度5㎜。鼻翼基部の下は少量切除された模様で切除量は減らす。
手術直前にもう一度診察します。鼻柱部は切除ゼロとし鼻翼部を2.5㎜切除。口角は挙上が主とし、35度方向に右5㎜、左6㎜とする。寄せるのは1㎜ずつ。
画像を診ていきましょう。
上列は術前、デザイン、術直後。
上に近接像。
術前と術直後の左側面像。腫脹でE-ラインより口が前になります。
術後1週間で、大部分抜糸しました。
鼻翼の横の糸は残していますが、見えません。鼻の下の傷跡は赤い線ですが、幅は出てこなければ白い線になって目立たなくなります。
なお、鼻翼は引っ張られて拡がっていますが、筋力の回復と共に、さらに鼻の下の傷跡が線状に拘縮しますから必ず元のサイズに戻ります。
口角の位置は揃いました。上口唇の傷跡は見えなくなります。下口唇の傷跡が拘縮する可能性がありますが、目立ちません。
斜位像でも側面像でも1週間でスッキリしました。polysurgery, 複数回手術では瘢痕を切るので創傷治癒が遷延する可能性がありますが、本症例は影響ないようで、むしろ早いようです。
何しろ1週間で形態的には、少なくとも富士山型ではありません。患者さんもお喜びです。あとは経過を楽しみにください。次週鼻翼の抜糸に来院されますから、できれば画像を頂きたいと存じます。お楽しみに!
術後1ヶ月で診せて下さいました。
富士山型ではなくて、弓形の自然な赤唇のカーブです。ですが、前医で赤唇切除も受けているため、なんとも貧弱です。
E-ラインとの問題は出過ぎていません。側貌でも赤唇を減量した結果内反しているためC-カールができませんでした。もちろん術前よりはいいのです。
術後3ヶ月で完成と言いたいところです。
富士山型を予防、両側鼻翼基部を鼻柱基部と同じ幅で切除しなければなりません。また富士山型を修正するには推測して鼻柱基部と切除幅と同じ幅で鼻翼基部の下を切り足します。どちらにしても鼻翼下の外側に余剰な皮膚軟部組織ができますから、鼻翼の横の切除をしなければなりません。
ただ、追加切除の2回目の手術の場合、創傷治癒の経過に影響します。本症例では両側の鼻翼の横に点状のふくらみが残りました。術後経過で収縮していくのですが、3ヶ月経ても残ったら焼き潰します。傷跡が強固に着く3ヶ月まで待ちます。そうでないと傷跡が開いてしまいます。早速CO2LASERで焼くことにしました。ところが本症例ではなぜか左鼻翼横のそうの治癒が不良でした。これまでの画像では気が付きませんでしたが、頬を横に引いていると谷線が見えます。
と言っても、左斜位像では判りません。引いてみないと判りません。そこでこれも、谷の両側の裾野を線状に焼いてもう一度生傷にしてから縫合しました。
さらに左口角の下口唇側に一部、余剰の皮膚ができました。これも焼き潰します。
このように術後3ヶ月経てば一部修正できます。経過を診てみましょう。次回画像提示させて下さい。みなさんにも参考になるでしょう。お楽しみに!
当院では、厚生労働省により施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
本年6月から費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税ですが、今回は切除量を減らしたので税込21万円としました。口角挙上術は25万円 +消費税。局所のブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。