現今の美容外科医療は医学に基づいていないで、ビジネスが深化してしまっています。形成外科と美容外科は政府が認めた標榜科目です。ちゃんとした医療です。ですが、昭和53年(42年前)に美容外科が標榜されてから、さらにビジネス化が進んだのです。その前から、美容整形と称して医学部卒業後の医学的トレーニングを受けないで開業する者、他科からの転向する医師が横行していました。彼らの多くは美容医療を食い物にしていました。
形成外科、美容外科、美容皮膚科等の標榜科目は、法律上広告が認められる科目名ですが、インターネット上のSNSは広告とみなされなかったために縛りがかかりませんでした。例えば美容整形などと称するのは違法ですが、横行しています。一昨年法律が改正され、インターネットも広告と認定されましたが、現在でも厚労省はSNSすべてには手が回らない様です。したがって医学的根拠に欠ける医療広告がかなり流れています。
そもそも口唇周囲の診療は形成外科医の独壇場です。口唇裂の手術を学ぶからです。口周りの解剖学的構造は意外と細かいだけでなく、形態的に変異と差異が大きい部分であり、また周囲の構造つまり鼻や顎、骨格とのバランスを考慮しなければならない部位です。いつも書きますが、医師は国家試験に合格して医師になった時点では、最低限の医学知識を持つだけです。学生時代の解剖学実習は1年間近く毎日切りますが、逆に体表はいきなり切りますからよく観察できません。少なくとも私は北里大学形成外科に入局してから初めて顔面の詳しい勉強を日夜邁進しました。
その面で、口周りの手術は医学的根拠に基づくべきです。形成外科でトレーニングを受けた医師が、論文を漁るなどして更なる学術的研鑽を積んで、症例を重ねながらより美容外科学に基づいたより美しい形態を造り上げ、機能的解剖に配慮して表情筋の解剖まで考慮して手術をしなければならないと考えます。
いろいろ書いて来ましたが、口周りの手術に於いて私の言いたい事は沢山あります。先ず用語ですが、人中だけ短縮したら当然に富士山型になります。その意味で人中短縮術等を売り物にしているクリニックは間違いなく危ないです。韓国では口角挙上術を外側人中短縮術と誤称していますが、それはハングルしか読み書き出来なくて、漢字が使われない国だからです。そしてデザインの問題となりますが、上(白)唇短縮術は、両側鼻翼間を全て同じ幅で引き上げる必要があります。もちろん両側に余剰が出来ますから、鼻翼の横まで廻ってずらしてつじつまを合わせる必要も生じます。元々の口唇形態によりますが、シミュレーションで口角が下がる可能性が高い症例では口角挙上術を同時に施行する様お奨めします。
もう一つ大事なのは鼻孔底隆起,Nostril sillです。鼻の孔のそこの下には土手があり、これがあるがために前から見て鼻の孔の下半分は見えません。ですから、創を見え難くする為と銘打って、鼻の中を切ると、鼻孔底隆起を切り取りますから、鼻の孔が前から見て丸見えになります。そもそも鼻の中を切っても鼻翼の下と鼻柱の下はどうせ切らなければならないので創は短くてもあります。
だ〜から〜!。真皮縫合を丁寧にして創跡を目立たなくするしかありません。形成外科では真皮縫合のトレーニングに明け暮れますが、チェーン店系の美容外科ではトレーニングの機会がありません。また真皮縫合は時間が掛かります。広告費用の元を取らなければならないビジネス的チェーン店系美容クリニックでは、コストパフォーマンスを求められますから、丁寧な真皮縫合をする時間を与えられません。聴くところに依るとSクリニックでは30分で手術する様に要求されます。私は上(白)唇短縮術に最低1時間半かけて丁寧に縫い合わせますから、いつまでも創跡が拡がらず、後戻りがないのです。私は診察の度に測っているから証明出来ます。
症例は29歳女性。人中部の白唇長19㎜。E-ラインより口唇が4㎜前方。歯牙矯正中もなかなか動かない。頤を前に出す方法も説明したがプロテーシスは後に検討することとなった。顔面縦比は上顔面73㎜:中顔面53㎜:下顔面63㎜と下が長く、上白赤唇長27㎜:下赤唇〜頤尖までは36㎜と黄金分割比率の5:8よりも上が5㎜長い。Cupidの弓は明瞭、口唇結節(今流行りのとんがり口)はある。人中は浅い。1㎜寄せて結節を強化したい。歯槽中央が突ですから、C-カールを造る為に、口輪筋を折り畳んで白唇を外反させる。まずは歯科の治療を優先する事とし、もう一度診察してデザインを決定する予定とした。
約1ヶ月後に再診。歯科矯正医は前に器械を着けないから、邪魔にならないから、上白唇短縮術も口角挙上術も可能とした。近く骨孔を開けるそう。これも問題なく1ヶ月後から口周りの手術は可能と云われた。上白唇5㎜短縮希望は変わらない。ただし歯科矯正が進んで、前回から一部の形態が微妙に変わりました。C-カールはやはりしっかり造りたい。人中は前よりも狭く深くなり、弓は綺麗で口唇結節はあるが膨らみが少なくなった。両側鼻柱基部と白唇を縫合する際に0.75㎜ずつ寄せる事で口唇結節を尖らせたい。私は「キスシーンの口」と説明します。顔面は細面で、口唇横径は5㎜拡大で充分なので、口角は垂直より30度斜め方向に5㎜位置変えのデザイン=上には2.5×√3≒4.3㎜挙がる。
約1か月後に手術。当日デザインは確認した。画像は各方向の術前から術後まで並べます。
正面像の術前、デザイン、術直後。術後1週間。術後2週間。術直後は外出血も残り、腫脹し始めて、周囲も発赤しています。今後の経過を診ましょう。術後1週間で鼻翼横以外は抜糸しました。腫脹は引きつつあります。赤唇の口唇結節が前を向いてセクシーです。術後2週間で全抜糸しました。傷跡はまだ赤い線です。その後術後1ヶ月では傷跡がさらに目立たなくなりつつあります。口角の上の真皮縫合の凹みはまだありますが次回には消えるでしょう
近接像の術前の形態に対して、デザイン画の様に切って挙げると、術直後の形態になるのは判ります。術直後は局麻が周囲まで効いているがために、口角は挙がらないのですが、術後1週間経ると、頬骨筋群(口角挙上筋群)が回復して、トーヌス(覚醒時には表情筋には常に弱く信号が流れて軽く収縮している事)を持ちます。だから口角挙上術の効果は後から出てきます。術後2週間で口角の傷跡は薄くなり始めています。鼻の下の傷跡はまだです。術後1ヶ月ではさらに傷跡が目だがなくなってきています。
斜位像の術前、術直後。腫脹でブックりします。術後1週間でもかなり腫脹は軽減してきました。まだ人中部付近の挙がりが多く見えるのは口輪筋(口を閉じる筋=上口唇を下す作用もある)のダメージの影響です。術後2週間では口は閉じています。顎の梅干しは目立たなくなりました。術後1ヶ月では腫脹が軽減しました。
側面像の術前と術直後。赤唇まで腫脹しますから、E-ラインから更に前に出ています。両側鼻翼と鼻柱も引っ張られて鼻尖が上を向いています。治ります。術後1週間で鼻の位置は複してきました。下口唇との位置関係が整いスッキリした印象です。術後1ヶ月で腫脹が軽減して、白唇のC−カールが綺麗にみえてきました。
先ず術前と手術直後の画像を載せて公開します。今回は更新法を変えて、各方向の画像を来院の度に順次追加して加筆しようと思います。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円 +消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。