2021 . 4 . 16

ターキーネック:日本語で七面鳥の首は顎下切開が必要です。広頚筋のZ−形成術が効果的です。

今回のブログは、ボウストリングス,Bow Stringsといきなり難しい言葉から始まります。直訳すれば弓の弦です。この部位を側面から見て、頤からのど仏(甲状)から鎖骨と胸骨までの弧を弓としますと、正面下から見て紐バンド状に二本の弦が張っています。だからボウストリングスと呼びます。他の部位でも局面にひも状に橋渡しが出来ると、ボウストリングスと称します。

鳥類は頚が長く、顔が小さく啄む為に頤が前形している為に、生来バンドを呈しています。欧米では白人は頤が長く、前突しているがためにバンドが出来易く、これをターキーネック,Turkey neckと呼びます。鶏でもいいのかも知れませんが、チキンは臆病の意味なので使いません。

実は広頚筋の狗縮が皮膚に反映しています。頤が長いと弓の弧が長い為に加齢で狗縮した広頚筋がバンドになるのです。「イー!」と言ったら出来ますから日本では意地悪顔と称する事もあります。ただし日本人では頤が前突している人は多く無いのでターキーネックはたまにしか見ません。ご覧の様に本症例の患者さんは頤が前突しています。

広頚筋の狗縮が本態ならば、当然形成外科医の出番です。拘縮とは読んで字のごとく拘り縮まることですが、広頚筋は長年生きてきた間に収縮を繰り返してきたので、短縮したのです。特にこの様なBow sting な場所は拘縮しやすいのです。その本態を知ったなら拘縮解除の治療が求められます。そこで形成外科医の出番です。傷跡などの体表面の拘縮の解除は専門中の得意分野です。そして形成外科医は、広頚筋の様な一方向への線状の拘縮には、Z-形成術が最適なのを知っています。

皮下で、筋を縦方向に延長します。Z-形成術の理論は   これまで目頭形成術の際に、机上で図を書いて、計算して、何度も説明してきました。60度の三角皮弁を入れ替えると、縦に7/4倍伸びて拘縮が解除されます。

症例は66歳の女性。8年前に当院で受けた眼瞼が経年的に伸びてきて再治療を希望され、同時にクマに対するPRP治療もすることとなりました。その際幾つかのアンチエイジング治療についても相談を受けました。鼻は昔の美容医療治療で改善の余地がるが結論は出ていません。顔面の輪郭に関してはたるみに対するリフト手術も検討しつつ、Jowlに目を移しながらさらに内側、中央部で顎下のたるみも気にされました。眼瞼手術の際に七面鳥の頚の治療法について説明しました。

リフト手術に先行してターキーネックの治療をしておくべきだと示唆し、顎下から広頚筋のZ−形成術を予定しました。写真を見比べてみましょう。解りやすい画と解りにくい画があります。

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まず上左図の正面像で首の両側に逆八の字のひだはターキーではありません。胸鎖乳突筋,SCM:Sterno Claido Mastod muscleで首を傾ける時に支える筋です。上右図は顎を挙げてもらった際の正面像ですがSCMの内側に二本の縦のひだがあります。これがターキーネックで、広頚筋,Platysma muscle です。下顎骨縁と鎖骨を板状に繫いでいます。正中にはなく、両側の前縁がひだになります。

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上左図の様に、頚部を強く後屈してもらいやや下方から見ると紐状に見えます。上右図はデザイン。切開線は、頤下の正面視では見えない部位にシワに沿って水平に約3㎝です。

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上左図はデザイン追加。広頚筋の前縁の襞を皮膚上にマーキングしました。上右図は術直後の正面像。創は見えません。

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上二葉と下一葉は術直後の画像です。

IMG_8037幾つかの体位を撮ってもらいましたが、ターキーネックは見られません。傷跡は下から見ればあります。

下列からは四方向の比較。

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上二図は術前の両側面像。横からではSCMは見えますが、広頚筋のターキーはよく見えません。

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上二図は術直後の両側面像。やはりターキーネックは見えません。

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上二図は術前の両側斜位像。斜めだと広頚筋がボウストリングに前方にありテーキーネックが見えます。

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上二図は術直後の両側斜位像。ターキーネックは見事に消失しています。縫合創は斜位像でも見えません。この後剥離腔をつけるために圧迫してもらいました。

術後1週間で抜糸しました。圧迫は継続してもらいます。

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上左図は「イーッ!」て言ってもらいながら下方から撮りましたが、ターキーネックは見られません。傷跡は赤い線です。数週間で白い幅の無い線になれば見えません。上右図のごとく正面像では傷跡は見えません。なお内出血は一部に透けて見えますが、次週には吸収されます。

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やはり側面像ではどちらにしてもターキーネックは見えません。今回お願いして、まず頤下のリフトを施行しました。内側を引いて、その後外側を引く順番が挙げやすいからです。したがって早くもリフトの話に移り始めました。その説もまたブログ提示をいただけそうです。その前にターキーネックの手術経過をみましょう。次回術後1ヶ月をお楽しみに!。

下には術後1ヶ月の画像群です。

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やはり「イーッ!」と言ってくれました。広頚筋を収縮させる運動行為だと知っていらっしゃる。正面像では顎下に隠れていて判りませんが、頸部後屈して写すと、頤の直下には弦状,bow stringsが見えません。つまりターキーネックではないのです。

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斜位像や側面像では頤の直下は見えませんが、広頚筋を収縮してもらってもターキーにはなりません。なお、傷痕ですがまだ赤い線だから見えるので、白い線になれば見えなくなります。その様に縫合しています。

もう次の話に至りました。そもそも頤下リフト=ターキーネック改善手術は、Jowl lift から下顎下リフト=耳後部生え際切開と併用して、前から寄せて後ろから引き上げる作用反作用で張りを造る手術です。今回時間の関係とダウンタイムの関係で頤下リフトを先行しました。本来は別に3ヶ月待たなくても出来ますが、遠方なので次回以降スケジュールを立てることになりました。