2021 . 5 . 11

3年前に切開法も落ちてきた。もう一度短縮術と目頭Z-形成で今度こそ!。

眼瞼下垂症は前葉性と後葉性。先天性と後天性に大別されます。鑑別診断が大事です。手術法の適応も変わります。そうしないとやってみただけになり、中期的に結果が得られなかったり、後戻りが起きたりします。美容医療(形成外科と美容外科)の医療では、診察後直ぐに手術をするクリニックが多いのです。特にチェーン店では広告費が売り上げの半分近くを費やしているので、手術数をこなさないとならないので、診察には時間を費やしません。受付嬢が電話応対して、手術の予定を立てて、来院後もその受付嬢がカウンセラーと称して応対して、医師が術直前診察する際には、手術法も料金も決まっていて診断の余地がなくなっていて、医師は言われた通りに手術するだけ、という様な手順となっている事さえあります。私は約15年前まで、いくつもの美容外科クリニックを手伝っていましたから、その様なビジネスモデルを数多く経験しました。

なんて偉そうな事を言っても、結果が全てと云われそうです。当院でも診察を疎かにして、手術適応を検討しないで、丁寧な説明を省く事がある様です。初診医師と手術時の医師が変わる事もまれにあります。本症例の初診時がそうだったかも知れません。初診時の医師がカルテに記載して置けば判りますが、まれに記載不備も起きます。先天性なのにLT法をしたり、適度に短縮したりの調節とさじ加減は、医師と患者さんのやり取りの結果、頭の中で検討して決めていく事なので、初診時からの積み重ねが必要です。短期的結果は得られても、中長期的結果は予想が着いても、説明していなければ、患者さんにとっては経過不良になってしまいます。

いつも言いますが、先天性後葉性眼瞼下垂症にLT法をすると、後戻りが起きます。短縮術でも起きる事があります。診断の下にきちんと説明しておかなければなりません。また先天性前葉性眼瞼下垂症には、大部分に蒙古襞の狗縮が影響しています。目頭切開といっても蒙古襞切除では無く、目頭Z−形成術が適応します。術前にその説明が必要です。本症例にどれだけの診察をしたかは覚えていませんが、長期的な結果的に二回めの手術をさせてもらう事になったのは診療不足だったと考えられます。ご免なさい!。今回は中長期的にも結果を得たいと思います。

ところで本年遂に、二つの日本美容外科学会のうちのJSASで、目頭Z−形成術の演題を発表する事になりました。目頭切開術には過去15年間はZ−形成法だけしてきました。学会で発表して、間違った目頭切除術を行なわない様に釘を刺そうと思っていましたが、症例が多過ぎてまとめられないので手を拱いていたのです。大学の後輩が会長をするので指名され、いい機会なので、一肌脱いであげる事になりました。やっと重い腰を挙げたのです。

症例は26歳女性。3年以上前に初診。先天性二重まぶたも前頭筋は収縮。LF右11:左12と右が弱かった。前転が必要。重瞼は右の上にすると蒙古襞が目立つから上から2番目の線。フェニレフリンテストで半分挙がった。術当日。平行型希望なので目頭切開が必要と説明すると、当日は予定が立てられないので、6ヶ月以内なら同時施行扱いですることになった。左のラインで2㎜幅切除し、1点ずつ挙上前転し、2点ずつLT法で重瞼固定した。前頭筋使わなくなって喜んでいた。その1週間後に抜糸時には、開瞼が良好で、腫脹で幅が1.5倍以上でも重瞼がくっきりしていた。その後来院をされずいつ出来上がったかは不明。いつ頃か後戻りが起きてきた。

今回、LF右13㎜:左14㎜で右が再発した。右は先天性後は性眼瞼下垂症を伴っていたからでしょう。再切開法で短縮を強固に留めようと提案した。とその時患者さんは「今回はやはり目頭も治したいのです。」と依頼された。そこで私は”それは良かった”と思いながら診ると、患者さん「蒙古襞に左右差があるでしょう?。」と申告して下さるので、細かく診ると、確かに蒙古襞の被さり量に左右差があった。右は斜めでつっぱりが少なく、左は縦でつっぱりが強い。目頭Z-形成術は、一辺を右3㎜、左4㎜とデザインを変えることにした。

画像を視ましょう。

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術前の眼瞼部の遠近二図。右眉が挙がっています。患者さんもこれで気付いたのです。3年前の術前もそうでした。3年前の術後は1週間までしか画像がありませんが、眉は挙がっていませんでした。年単位で重さを感じる様になり、頭痛、肩こり等の代償性随伴症状も伴う様になったのです。

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近接画像では三白眼です。これも眼瞼下垂症の代償性随伴症状です。目を開きにくいから下眼瞼にも力が入り(最大でも3㎜)引き下げます。しかもそれは対側にも起きます。Herring現象です。また蒙古襞のカーブは左右差が診られます。右眼瞼は斜めで、左眼瞼は縦です。軽度の差ですが、Z−形成の辺の長さに差を付ける事にしました。実はそこは術直前に患者さんが提案して来た事です。Z−形成法に依る目頭形成(切開)術の仕組みを理解しているからです。ブログを視て頂いているからでしょう。いや患者さんが知的理解力に富んでいるからでしょう。

そこで、蒙古襞の左右差を診る為に右眼瞼の近接画像を横方向に反転して並べてみました。

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確かに蒙古襞の角度に差があるし、開瞼にも差があります。反転した右眼瞼は眉を挙げているから皮膚が吊り上げられて重瞼が広く丸くなっていますが瞼縁は被さっています。三白眼の程度にも差があります。

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いつもの図ですが、眼瞼の拡大図と照合しましょう。

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術前の左眼瞼のデザインの線を切開して、三角形の皮弁を入れ替えて、術直後の傷跡の線になりました。机上の図での術前に蒙古襞の稜線にあるabが、術後は1.75倍延長したa’b’になり狗縮が解除され、目頭の向きは下向き三角形abdが横向き三角形a’c’dになります。術前の’cdが1/1.75のc’d’になり理論上3㎜短縮しています。

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術直後の画像は腫脹が強くて開瞼不良となりました。でも私は、術中に挙筋短縮合した時点で開瞼してもらい左右対称以上に開いているのは確認しましたから、「安心して下さい。」と言いました

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近接画像では何故か右眼がカメラを凝視していません。その為か三白眼が改善して見えます。いや眼瞼下垂が治ったからですかね?!。

術後1週間で抜糸しました。私「待ってました。開いたでしょう?。そうでないとブログ書けないもん!。」と自己中な言葉を叫んでしまいました。

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まだ腫れていますが、ちゃんと開いてきました。眉も挙げていません。

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近接画像ではまだ開瞼が対称的に診えません。血行の影響で重瞼線の下の皮膚が腫脹が強く残ります。瞼縁に皮膚が覆い被さっています。ところでZ−形成術の辺を変えてデザインした結果、蒙古襞の改善した形態は左右差が解消しましたかね?。まだ眼瞼全体の腫脹により右眼瞼の蒙古襞も被さっていますが、また反転画像を並べてみましょう。

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残念ながら左眼瞼の画像がデフォーカスでしたが蒙古襞のカーブは揃った様に診えます。ところが患者さんは「この目の(左眼瞼を指差す)目頭の凸凹はどうなるの?。」と気付きました。私「そうです。右眼瞼は下垂手術に繋げて目頭形成した際眼瞼全体の皮膚を1.5㎜だっけ切除したでしょうだからラインも繫がっています。左眼瞼はZ−形成で取った(本当は取ったのでなくZ−形成で動いただけですが言い間違い)蒙古襞と眼瞼の被さりに差が生じますから、凹凸になります。所謂Z−形成の三角皮弁の茎部のDog earです。皮膚のドッグイヤーは徐々収縮します。」とゴチャゴチャ説明しますと患者さんは理解していました。いや、本当に治るのはしばらく先でしょう。次回術後1か月で診ます。その際開瞼も対称的に診られる事を楽しみにしましょう。

下列に術後3週間です。

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眉を上げる程度はまだ、若干の差がありますが、術前のように吊り上げていません。目は開いていますが腫れが完全に引いていないからです。ちなみに重瞼の幅がまだ広いのは腫脹が残っているのでもありますが、眉を上げるからでもあります。つまりまだ経過中です。

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近接画像では、目頭の傷跡がまだ見えます。左眼瞼は埋没法で、重瞼を作り目頭をZ-形成法で切開したので、その上の皮膚が余りたるみとして見えます。徐々に収縮しますが、膨らみが消えなかったら焼き潰せます。と言っていたら、前回の重瞼の糸の結紮を除去した部分の上に皮膚のあまりが生じました。まずこちらから焼き潰しました。切開した右眼瞼は皮膚を2㎜切除しています。目頭の上まで切除していますから、Z−形成の上の余り(Dog ear)も、切除されていますから、膨らんでいません。結果的に重瞼が目頭から目尻まで平行になるのです。実はこれが私のデザインの有用性なのです。

寝起きはまだ腫れるそうです。昼間は引く程度だそうです。開瞼は良好で左右対称です。カメラのフラッシュの見え方で判ります。重瞼はまだです。片側の切開では腫脹が全部引かないと重瞼がそろわないのです。

術後6週間でも診せてくださいました。

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上には眼瞼部の遠近二葉です。左の遠景より右の近景の方が輻輳により寄り目になっているはずですが、内側の白眼が隠れていません。

ただし右眉を挙げる癖はまだ治りません。軽微の腫脹が残っているからでしょうか?。スクアンクトも画像上重瞼線の下がまだ膨らんでいます。もちろん軽快しますから、前頭筋へのボトックスは次回まで待ってから考えることとしました。

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眼瞼の目頭部の手術は肥厚性瘢痕が起きる部位です。だから、術後6週間に悪化していないか診るために来院してもらいます。「術後3週間と比べて悪化していなければ軽快に向かいます。」と私が述べたら、患者さんは「小さくなってきています。」と言ってくださいました。ステロイド注射は見合わせました。術後3ヶ月でも消えなかったら局所にステロイド注入しれば消えるでしょう。本症例の患者さんはよく理解していて助かります。

次回術後3ヶ月をお楽しみに!

IMG_0369敢えて言えば左右の開瞼は揃って見えても、重瞼幅は揃ってきません。訊くと「朝晩で変わります。夕方は同じです。」と教えてくれました。私は「そうです。」「日内変動ですね?!。」「つまり浮腫みがまだ残るのです。」「何しろ二回目以降は重瞼線で血行、いやリンパ行が遮断されているので浮腫みが長引くのです。」「だって、眼瞼は縦方向の流れしかないのですもの。解剖学的に私は知っています。」と畳み掛ける様に説明します。いやむしろ言い訳というか待つ様にお願いをしました。

患者さんは納得して頂けましたが更に、「目頭の形は?。」と訊いてきます。

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と云われ、近づいて診ると私「微妙に違いますね。」と返すと患者さん「左は予定の形ですが、右は丸い感じ。」その通りです。そこでカルテを見返して私「だって左右のデザイン変えたから・・。」と言えば彼女は「でも目頭の赤肉の見え具合は揃いました。」と言うので「涙湖って呼びます。」と返し、「要するに肥厚性瘢痕で狗縮してbow string なのですかね?。」と説明し、「ケナコルトしてもいいかも?。」と話しが元にに戻りました。

患者さんとのやり取りは、書くと面倒がっている様に聴こえるかも知れませんが、むしろ細かく説明してあげると、患者さんがちゃんと理解してくれて安心してくれるからです。それにこの目元はキリッとして私としては上出来だと感じます。知的なムードを醸し出す患者さんにマッチしています。そうです。見た目に知的な女性にはこちらも知性を発揮して説明すれば、結果が高まるのです。ただし重瞼の差については今後も診て行きたい患者さんです。

余談ですが、予告を兼ねて:実は今月末に学会発表を依頼されました。ご存知の方も多いと思いますが、日本美容外科学会は二つあります。形成外科医出身の美容外科医の学会JSAPS,Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery と非形成外科医の美容外科医の学会JSAS,Japan Society of Aesthetic Surgery です。父は24年前のJSASを開催しましたし、JSAPSの理事もしていました。私も両方に加入していて、両方の専門医に認定されている数少ない美容外科医でした。最近JSASが専門医を乱造して、両方に加入している医師が急増したと同時に、JSAPSの医師をJSASで発表させる様になりました。考てみれば当然で、JSAPSの医師は学術的な研鑽が深いのに対して、JSASの医師はビジネスですから学術的講演は稚拙で、アカデミズムとは言えないからです。

その上今回のJSASでは初めて形成外科出身の医師を会長に選んだのですが、よりによって北里大学形成外科・美容外科医局で私の後輩が抜擢されました。それも私が医師6年次にチーフレジデントを勤めた際のフレッシュマンで2か月だけ指導した医師です。

しかもメールでいきなり、学会発表をお願いして来たのです。穿って考えれば、彼は懇意にしているJSASの医師が少ないのでしょうが、良い意味で考えれば、JSASをアカデミックな学会に昇格させたいからでしょう。何しろ先週送られて来たプログラムを見ると、講演者は北里大学形成外科・美容外科出身の医師が十名以上も並んでいてまるで同門会です。更に講演者の半分以上はJSAPSの医師です。私なんぞ二題も発表依頼を求められました。

前回のJSAPSの学術集会時に彼(酒井JSAS会長)を捕まえて、「二つも発表させるのかよお〜!。」と問いつめたら、「お願いしますよ先輩。」とかニヤニヤされたので「本来この演題はJSAPSで発表しようと思っていたんで二重投稿になっちゃうぜ!」とか拒否気味に言ったら、彼は開き直って「いや、一例でも症例数を変えたり、年代を変えれば問題ないですよ。僕はそうしています。」と教えて?くれました。仕様がないから受けました。

基、演題は二つ、《眼瞼:眼瞼形成術には目頭切開といっても目頭Z−形成術の併施が適切》《口周り:人中だけでない上白唇短縮術には口角挙上術を併施して富士山型予防》の二題です。ところで学会発表は、一般人を対象としませんが、一応個人情報保護法に則って、モニター制でブログ提示の承諾を得ている患者さんの画像を使わしてもらいます。本症例は判りやすいケースですから、最新の目頭Z−形成術として画像提示させてもらいます。著作権の成立した学会発表後には発表の内容をブログで視られる様にパワーポイントのファイルを貼付けたいと思います。

当院では、一昨年に厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」を遵守しブログを掲載しています。

医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。

施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・目頭の切開部位は、目やにがでる場所ですので、消毒にご来院下さい。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用は眼瞼下垂症の診断が得られれば保険診療で3割負担は約5万円(出来高請求)。角膜に掛かる程でないと保険は適用出来ません。目頭形成術は自費で28万円+消費税。