2021 . 6 . 1

下眼瞼からのMid Face Liftは難しいのですが、広範囲剥離なら効果があります。

幾つかの手術をしてきた患者さんで、信頼関係が深く、しかも結果が得られてきました。しかも比較的根治的な手術をしてきました。患者さんの好意により今までのブログ記事では顔面の大部分を提示してきましたから、見直せば判ります。

今回はMid Face lift を希望されました。これまで3点リフトをしてきて、眼瞼や外鼻や口周りの部品も治してきましたから、残るは中顔面の前方です。また他院で左瞼頬溝に入れた注入物がボコってしまい、そのつもりで診ると見えます。これもどうにかしたく、引いて平坦化しながら、削れたら取ろうとなりました。

Mid Face lift とは読んで字の如くです。中顔面の前方はこめかみ〜耳前部〜耳後部のコンベンショナルなリフトでは牽引力が届きません。またフルフェイスリフトの引き上げ方向は斜め後しか出来ませんから、中顔面前方まで引き上げたら目の窓が吊り上がってしまいます。吊り目になります。ですから、中顔面前部は、下眼瞼縁に向かって上方に引き上げるべきです。余った皮膚は下眼瞼縁で切除出来ます。

またぞろ苦言を呈しますが、Sam Hamra の提唱したハムラ法を曲解というかもじって下眼瞼形成術を何でもハムラ法と呼んでいる不勉強な美容外科医が横行しています。患者さんも本当の意味を知る由もなく騙されています。Sam Hamra のコンポジットリフトはコンセプトです。耳前からのリフトは斜め上後方向に引き上げ、下眼瞼からのMid Face lift の剥離腔と連続させて、ここは上に引きます。眼窩脂肪を引き出して、瞼頬溝に引き詰めるRepositiohing, 移動法はついでに行なう方法です。もちろんリポジショニングもハムラが考案した方法ですからこれをハムラ変法と読んでも構わないのですが、只の切開下眼瞼形成術をハムラ法と称するのは間違いです。ただし手術中に患者さんは何をしてもらっているかを知り様がありませんから、仕方の無いことです。

との事で、下眼瞼から下眼窩骨縁を越えて剥離して引き上げる事をMid Face liftと称します。今回の症例は眼窩脂肪は除去されているし、瞼頬溝には過量な半非吸収性の注入物が入っている様なので、下眼瞼から筋皮弁法で引き上げます。また難しい言葉です。術式を説明します。下眼瞼の切開は瞼縁の睫毛の並んだ下1㎜です。直下には瞼板がありますから、瞼板前は皮下剥離し、3㎜下から眼輪筋の下に剥離層を変えて、皮膚と眼輪筋を一体に剥離していきます。だから筋皮弁法と称します。本来形成外科医が褥瘡等の大きな筋まで達する様な組織欠損を再建する(埋める)為に使う手術法です。顔面でも皮膚皮下組織と筋膜や筋体を使う手術はいくつかありますが、下眼瞼では筋皮弁法が有用です。

ただし実は、下眼瞼形成術は何種類かの方法が使い分けられます。皮膚の小じわが主体なら、皮下剥離だけで、筋は縫縮だけで皮膚を引っ張ります。眼窩脂肪を包む眼窩隔膜が緩んでバギーアイ(目袋),Baggy eyeとなったら、眼窩脂肪摘出が必要となり、目袋の下に半月状の溝が出来たなら、上に挙げたHamra の変法=Repositioning が適応です。私の様な加齢顔貌には適応です。IMG_0129残念ながら本当のHamraのRepositioning法を出来る医師は少ないので手術を受けません。いきなり私が登場して戸惑ったでしょう。本症例の患者さんは、バギーアイでも無く、しわも軽度ですが、下垂が見られ、溝に入った過量の注入物を見えなくしたいので、筋皮弁法が適応となりました。

症例は41歳女性。永らく診せて下さっている患者さんですが、昨年末に3点リフトの経過中に、どちらから言うともなく、「残るのは次にMid Face Liftですね?。」と話に出ました。私は「広範囲剥離でMalar Fat Padを釣り上げることですね。」と答えています。翌月診た際に、瞼頬溝に入れた脂肪注入が目立つと知り得ます。私は筋皮弁を眼窩骨膜下縁より1.5㎝下まで(眼窩下神経の手前)剥離し、裏で吊り上げも、骨膜に固定しようと考えました。

今年に入ってからの診察時には、Mid Face Liftは兎眼や外反や三白眼のリスクがあると説明し、眼輪筋吊り上げと注入脂肪除去を主とするプランを提示しました。次には下眼瞼リフトで、眼輪筋を折り畳み涙袋を温存すること、剥離は2㎝程度に留めるプランを提示しました。

2月にもう一度相談し、下眼瞼の眼窩脂肪は術中の判断とし、眼輪筋吊り上げが重要と考え、注入脂肪は可及的除去を決めた。画像を見ていきましょう。

IMG_7560正面像ではシワは見えません。左の瞼頬溝が白く膨らんでいます。触ると硬いものが入っています。

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四方向で立体的に観ると、左斜位像で、注入物が見えます。

下左図はデザインです。切開線は下眼瞼縁のまつげの下1㎜です。目尻の外側にも繋げます。点線で囲んだ範囲が剥離予定部です。左の眼窩縁には注入物が点線で示してあります。

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上右図は術直後です。手術法を説明します。切開線から約3㎜は皮下剥離します。瞼板の前です。瞼板の下縁から眼輪筋下に剥離層を変えます。眼窩脂肪を包む眼窩隔膜の前です。そのまま下に剥離していくと眼窩骨に到ります。今回はそこから骨の前まで剥離しました。そこに眼輪筋内に脂肪がありました。裏側から削りました。確かにしこりは消失しました。続きは⬇︎

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剥離はバラす作業、続けて引き上げは組み立て作業です。眼輪筋と皮膚を一体に剥離して深層から外していますから、伸ばして顔の前に置けば平らになります。すると特に、目尻側で余りが多くなります。筋を目尻の眼窩骨に縫い付けます。目尻の眼窩骨は後方にありますから、そのままでは皮膚も凹んでしまいますから、ここだけ皮膚を筋から剥がします。眼窩縁より上に余った筋皮弁は剥離し、筋はロール状に丸めて眼窩縁の下に置きます。これが涙袋になります。その上で余った皮膚を切除します。まずマーキングしてから、座位でもちょうど良い幅を決めます。今回は5㎜幅でした。縫合後も外反のないことを確認します。

もし下眼瞼形成術で外反したら、直ちに切除した皮膚を植皮します。あくまでも、もしもですよ。下眼瞼に同部位からの植皮はほぼ全く後が見えなく、継接ぎにもなりません。私は経験しました。父が取り過ぎて外反のままにしていたのを耳後ろ部からの植皮で治したことが二回あり、患者さんに喜ばれました。

術後1週間で抜糸しました。

IMG_7918眼輪筋も吊り上げた線の陥没は消えました。

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涙袋は温存どころかはっきりしました。瞼頬溝部の脂肪注入は見えなくなりました。触れても判りません。主たる目的も達しています。

今回は術後1週間までの画像を見てきましたが、内出血は必発で、画が完成していません。今後の経過をお楽しみに!

術後1ヶ月で診ました。

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遠近(上左図が遠景、上右図が近景)二葉を見比べても眼球の位置と目の窓とのバランスに違和感がありません。 いくつかコメントを戴きました。⬇︎

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注入物は見えなくなりました。画像でも見えません。触れればありますが、皮膚を引き上げて張りを出したのでに見えないのです。Dynamic,動的(表情で動かして押し上げてみて)にも見えない。リフトの効果は充分で良好ですし、かといって外反も呈していないのでお悦び。涙袋はちょうど良いサイズです。腫れも涙袋を増強しているのでまだ変わることを言い含めました。

下には術後3ヶ月の完成を診たいところです。

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涙袋は温存されています。下眼瞼のたるみ取りをすると、わずかに下眼瞼の瞼縁の湾曲が強くなり、下がった結果眼裂(目の窓)が大きくなります。目が大きく見えます。

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近接画像で診ても、傷跡は目立たなくなってきてます。まつ毛の生えたラインの部分は本来線状に陥凹しているので、傷跡の色さえ消えてくれば見えなくなります。

下眼瞼そのものの陥凹は治ったので、凹凸の凹がなくなったので凸も目立たなくなりました。