鼻唇溝は目立つ。人相学でも法令線は凶相とされるそうです。占い師もこれを観て悲劇を予想します。二つのポイントがあります。１、解剖的成り立ち。２、その溝の向きです。
鼻唇溝は溝です。しわとして刻まれているかは別で、表情筋に引き込まれているのと頬脂肪体の下垂が造ります。時折手術で診るのですが、鼻唇溝の皮膚の深部は皮下脂肪が薄く、その深部に表情筋の中でも頬骨筋群が付着(停止)しています。上から上唇鼻翼挙筋が鼻翼の横に、下に大頬骨筋、小頬骨筋、口角の横に笑筋が上下に並んで付着しています。筋体は皮下脂肪下に付着して、そこから皮膚に向かってすだれ状にコラーゲン繊維が真皮層(これもコラーゲン繊維)に繫がっています。笑う時や口角を拡げる表情時に、上や横に引かれると皮膚が深部に引き込まれて溝が出来、皮膚がいつも折れ返っているから、折り紙の様にしわが刻まれていきます。また、鼻唇溝の外側の皮下には頬脂肪体があり一塊になっていますが、加齢で皮膚が伸びて来ると重力で落ちて来て、鼻唇溝に伸し掛かってきます。更に鼻唇溝を引き上げるのは頬骨筋群ですが、加齢で弱くなるので溝も落ちてきて窄まってきます。
だから鼻唇溝は、その傾斜に個体差があります。鼻翼から口角の横にある溝だから鼻唇溝と称しますが、口の大きさにも個体差があるし、鼻翼の幅にも個体差があり、頬脂肪体の量や下垂度にも個体差があるからです。鼻唇溝が窄まっていると暗い顔に見えます。造り笑いをしても笑顔に見えないし、やつれて見えるからです。表情筋は、情動が脳に働きかけて、脳が指令して動かしますが、笑う機会が少なければ頬骨筋群は弱くなり、暗い顔立ちになるのです。私はいつも思うのですが、前の首相が典型例ですね。やはり顔立ちは性格を表わすと言えます。
そこで鼻唇溝を浅くして、加齢顔貌を若返らせる。または明るい表情にする為に、鼻唇溝を埋める治療法が美容医療(昭和５３年までは美容整形と称し、その後は美容外科と標榜する。また昭和３０年代から形成外科は存在した)の分野では、昔から行なわれました。ただしそこで問題は、持続性と安全性です。
１９６０年代にシリコン注射が横行しました。持続性はありますが、経年変化で肉芽を生じます。ぼこぼこになるのです。まともな美容医療医や形成外科医が糾弾し、半ば禁止されましたが、除去は困難です。父は取ろうとして顔面神経と耳下腺管損傷を起こし私が一生懸命治した事があります。シリコン注入は豊胸術でも多用されましたが、私は摘出手術を何例もさせられました。
１９７０年代に脂肪吸引法が開発され、捨てないで注入する案が出て、一時は鼻唇溝にも注入されました。でも定着率が不安定で多過ぎたり、部分的に吸収されたり、脂肪は粒つぶですから凹凸が生じたりして、学会でも推奨されない治療法とされました。乳房ならぼこぼこになりませんが、顔はちょっとでもボコると見えるからいけません。
その後、次々に吸収材料が試されました。現在でも多くが使われています。あくまでも吸収材料のはずですが、非吸収物を混ぜたものもありました。やはり患者さんに売りつけるためには長持ちが求められるのです。今でもよく使われるヒアルロン酸注入は、鼻唇溝はよく動かす部位なので、半年から１年で吸収されます。これも表情の程度や骨格で個体差があります。また、ゴアテックス等の固体の非吸収材料も試されました。帯状のものを入れるしかないので見えました。
とにかく、鼻唇溝に脂肪注入を入れて、それもオーバードーズ,Over dose：過量だと、こうなるという典型です。しかも脂肪注入は除去や溶解が難しいので、治しにくい。切開して、皮下剥離して、削り取ることは不可能ではありませんがm無理すると皮膚を痛めて孔が開く可能性があります。ただし皮膚皮下脂肪ごと、一部を切除することは可能です。さらにもう一つ脂肪注入で変形した形態を手術で修正することは方法次第です。今回の患者さんは、私を見つけて、いきなり口角挙上術で治してくださいと希望しました。もちろんブログを視て思いついたのです。詳しく診察し、続いてシミュレーションしてみたら私も患者さんも「いける！。」と見えました。そう考えてみれば、口角挙上術はアンチエイジング手術だし、生来の機能と形態に応じた手術ですが、変形に対する修正手術にも応用できるということが解りました。そうそう見かけない変形ですから、教えて下さったのは患者さんです。一つまた勉強になりました。患者さんに感謝します。いや逆に感謝しては申し訳ないかも知れません。
症例は３２歳女性。２年前他院で鼻唇溝に対する脂肪注入と口角挙上術を受けた。他で上口唇赤唇縁での切除術を受けた。結果、赤唇縁の畝が無くなって貧弱感を呈する。これに対して、私は父がしてしまった同様の好ましくない結果をたくさん診ていると教えた。でも治せないとも告げた。また鼻唇溝上三角に脂肪注入は禁忌とされている。結果的に現在も上唇鼻翼挙筋が動かない。つまり笑顔の表情を作れない。口角が注入皮下脂肪組織に埋もれている。ご覧のように鼻唇溝上にも脂肪。この状態に対して口角挙上術で改善を図れないかと来院された。
内眼角間３４㎜：鼻翼幅３９㎜：口唇幅５５㎜で口唇横径は黄金比率によって計算するまでもなく、画像でも判るように拡大する必要はない。真上はジョーカーリップになるため、わずかに斜めの、垂直から２０度傾けて５㎜挙上する口角挙上術で改善を図れることを、シミュレーションした。切除する白唇の深部の皮下脂肪も当然取れる。他の部位の脂肪は後日に検討することとした。例えば、鼻翼横のボコっている脂肪は、鼻翼の付け根の切開で削れると示唆した。
先ず術前の画像二葉；正面像と近接画像を診ましょう。
鼻唇溝(法令線：私は医師です。占い師ではありませんから医学用語を述べます)が埋まっているのですが、多過ぎるから膨隆しています。左鼻翼の横の赤い粒は何でしょう？。取ろうとしたのでしょう？。近接画像では溝が無いだけでなくイモ状にふくらんでいます。また赤唇縁の口角から内側に掛けて白い創跡がありますが、畝がありません。口角部は畝がなくても自然ですが、前方は畝がないと貧弱な口唇になってしまいます。
さて口角の角が見えないのはその上の白唇に脂肪注入があるからです。触診で判明しました。口角挙上術で治せるでしょう。
デザインはいつものやつですが、上向きです。
定型的に手術しました。白唇部の三角形の切除部は皮膚比か組織だけでなく、注入脂肪も切除しました。白唇部の口輪筋を露出するまで取りました。
下に、この結果術直後の画像を診ましょう。
少なくとも口角部が見えます。その上の膨隆も減らせました。ご覧の様に上赤唇縁の私が切った創は後にあるから目立たないのです。
右斜位像で術前と術直後を比較すると、きれいに挙がっています。「への字。」から笑顔になりました。脂肪注入で上唇鼻翼挙筋を駄目にしている分挙げたのが効果的です。
側面像で視ても、形態的に一つクリアーして御喜び！。ただし横から視ると、口角の横に脂肪は残っているから下に段差が見える。
下列は術後１週間。
患者さんは診る度にお悦び！。上唇鼻翼挙筋は動かないのに、笑顔に見えるのですが、挙げたからです。最も笑筋や頬骨筋群は動きますから、口角を横には動かせます。
斜位像や側面像でも口角が見えます。
下に１か月後の画像群。
笑顔を造って下さった訳ではないのですよね？！。とにかくこんなに変わりました。やはり口角の横に段差が診られます。注入脂肪の除去は創跡が増えるので難しいのですが、皮膚上から焼いて収縮出来ます。もちろん術後３ヶ月以降です。
注入脂肪の膨隆は腫れを伴っていたから余計に膨らんでいたのです。減っては来ました。経過を診ましょう。
形態的にかなり改善した。患者さんは一つ一つ治していく計画に同意しています。今後とも診ていきましょう。宜しく御願いします。次回術後３ヶ月で診ましょう。私も楽しみにしています。
こうして一回目の手術から３か月経たので、次の段階に進みました。超音波脂肪吸引です。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは１～２週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、３ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに２週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2～４週間程度かかります。・手術後２週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、２週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後３日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後１週間（抜糸まで）は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。上口唇短縮術は２８万円＋消費税。口角挙上術は２５万円 ＋消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として２０％オフとなります。
