口周りの患者さんは、周囲の形態と機能をバランスを取って、順を追って治療しなければなりません。単純に部分の部品を治していけば綺麗になるという事ではありません。しかも口周りの立体的構築を造り上げていかなければならないので、一カ所だけをオーバーに構造変化させると、不自然になります。
立体的とは3次元的です。数学的には1次元的に、所謂XYZの座標軸で表現されます。縦軸と横軸と前後軸です。画像は2次元で、医学的にはCTやMRIでも視られます。この場合断面は矢状断面と水平(横断)面と冠状断面で立体構造を表わします。断面の2次元画像を細かく組み合わせてみれば3次元構造を推測出来るのです。私のブログは大抵4方向の画像を載せてきました。
ですから記載は1次元と2次元を組み合わせています。先ず計測した数値を説明してきました。各部品の縦の計測数値は必須です。画像では冠状面でのバランスを正面像で表わしています。横方向の計測値も使います。画像では水平面でのバランスを組み合わせて表わしています。側面からは冠状面でのバランスを表わしますが、数学的には角度の計測を要する為、セファロ撮影(口腔外科領域での骨格撮影法)を診たくなる事もありますが、日常的に私は、E,Aesthetic-line,イーラインを重視してきました。
つまり口周りでは、骨格と口唇の位置と3次元的形態,E−ラインを考慮した鼻と頤の位置も重要なファクターです。やっと今回の本題に入りました。本症例では、骨格の改良後バランスが崩れて上口唇の改良を要しました。当初からE–ラインの為に鼻の改良も念頭に入っていましたが、3段階にしました。鼻は周囲との形態的なバランスを診て必要性を検討して来たのです。
既往と経過は下段に説明します。美容医療に於いては美容医学的診察を疎かにして、手術でも注入でも皆に同じ治療を奨める医師が横行しています。結局治療で稼ぐのが美容医療の性で、しかもレパートリが足りない若造が増えてきました。また診察技術や美容医学的素養が未熟でも、いつも同じ治療法なら可能な訳です。結果的に患者さんの希望を組んでいないばかりか患者さんの個性または個体差を考慮しない治療法で満足な結果を得られない患者さんが続出する昨今です。私のこのブログではいつもの事ながら、詳しく書いていきます。
症例は50歳女性。約1年前に来院。当初は白唇が長い点から相談されました。聴くと両顎骨切り術:Le-Fort Ⅰ&下顎分節骨切り術を受けていました。術後矯正中です。骨切りの結果白唇が垂直化して計測上19㎜でも長く見える様になりました。赤唇も貧弱化しました。口角も両顎が後退した結果下がりました。鼻背にはI型プロテーシスが入っていますが、骨切りの結果梨状口も後退したので鼻尖はより低くなりました。しかも鼻尖は上方にあり、鼻孔縁も上向きに丸いです。
鼻尖と鼻孔縁の治療は後日として、まずは4㎜の白唇短縮術で寄せて赤唇も強調しました。口角は横径も拡大しました。骨切り後に知覚障害と顔面神経の一部に左右差が見られました。
口唇の手術は3ヶ月後に完成を診て、まだ矯正中で骨切り手術後のプレート抜去を待つ事としました。本年に入って再来し、白唇と口角は経過順調と言って下さいました。近々プレート除去予定となり、術後歯科矯正も終了したと告げられました。そこでまず鼻尖について、正面視での位置を下げたい希望を述べました。前にはわずかにしたいと強調されます。私は「それならダイヤモンド型を45度下向きで、帯型(剣状)のを下向きに入れれば出来ます。」と診断しました。側面像での鼻孔の問題はその結果変化するかもしれないし、いずれにしても同時に複合組織移植はは可能だとしました。
その後プレート抜去が施行され、ダウンタイムも過ぎ、いよいよ鼻尖への耳介軟骨移植と土台作りのための鼻翼軟骨(鼻尖の軟骨なのに鼻翼軟骨)縫合の予定を立てました。
画像は各方向の術前と術直後と術後1週間を並べて比較しましょう。
上は正面像の術前とデザイン後。鼻尖の位置に注目。平坦で幅があり上方にあります。デザインはそれよりも下方を尖らせるつもりです。鼻柱の切開は中央に置く為に必要です。
上は術直後と術後1週間。術直後の鼻尖にはまだ4点が描いてありますが、その中に移植軟骨がありますから、鼻尖が下方移動しています。上の術前と比べてください。術後1週間ではまだ軟骨の位置は見えません。触れれば判ります。
鼻は眉間から鼻柱まで繋がっていますから、クローズアップしました。鼻背にはI型プロテーシスが入っていますが、最左の術前像では鼻尖だけが落ちています。2枚目の術直後の画像ではフラッシュで鼻尖がハイライトでダイヤモンド型に映っています。3枚目は術直後に直ちにテープ固定した後ですが、その前に鼻尖の軟骨を触れて4点マーキングしました。位置は予定通りです。最右の術後1週間の画像では予定通りの形態が得られています。
そこで手術の内容を画像で説明します。
まず左耳介から軟骨を採取します。耳甲介(耳の孔の後ろのお椀型の凹み)から13×10㎜の採取予定で、耳前には2点のマーキングが見えます。耳後部の折れ返りを切開して採取します。後ろから軟骨を露出したら、耳前のマーキングから針を刺して採取部をマーキングして、軟骨だけ抜き取ります。創の縫合後耳前の耳甲介に綿球を当てて後ろから糸を通して圧迫します。軟骨を抜い他部分は前後の皮膚だけですから空洞に血が溜まると血腫となって、柔道家や相撲取りの様なカリフラワー耳になってしまい、治せないから予防法す。これは大事です。
上に採取した軟骨です。目盛を見ると予定通り長辺13㎜、短編7㎜です。
この軟骨を三つに切り分けました。上から一辺7㎜のダイヤモンド型を楕円形に、その下に長さ7㎜の剣状に、その下に粒があります。左から2枚目はダイヤと剣を積んで、糸を通した後。右は横から写しました。厚さは1×2=2㎜あります。今回は粒を中央に乗せ加えました。
上左図は鼻尖のマーキング上の皮膚上に乗せて撮りました。下の鼻尖の最前点よりも5㎜下方が前に出る位置で、つまり鼻尖の位置が下に移動して長くなります。上中図は皮膚、皮下組織を持ち上げて、鼻翼軟骨の上に耳介軟骨を置いて撮りました。ここに固定します。その後土台作りとして両側の鼻翼軟骨を縫い合わせてから耳介軟骨を鼻翼軟骨に縫合します。上右図はその後皮膚も縫合した手術直後の画像です。見事に鼻尖の位置が下方移動しました。
実は4方向を見ると鼻尖の位置の移動がよく判ります。
右斜位像で上左図の術前と2枚目の術直後の鼻尖の位置を見比べてください。I型プロテーシスは鼻尖にはありませんから、ドロンと落ち、鼻尖が上方にあります。術後は鼻孔の前に鼻尖があり、鼻孔も下向きになりました。3枚目はテープ固定後移植軟骨を皮膚上から包んで圧迫します。術後1週間でも位置は適切です。
側面像では左から術前と2枚目の術直後を比べてみても、実は腫脹でよく判別できません。手術直後から48時間までは、腫れて鼻尖が上に押し上げられます。上右図で術後1週間経つと腫脹が軽減して鼻尖が下向きになってきました。患者さんもお喜びです。
移植軟骨は中央にあり、形態も良好です。
耳後ろの傷跡は頭側との折れ返りの溝にあるので見えません。まだ当たると痛いそうですが、耳介に変形はありません。
側面像、斜位像での鼻スジは綺麗で、鼻尖の頂点の位置も見事に下がっています。
術後1ヶ月で診ました。
「4週間で固定するでしょうから、出来ればその間はテープ固定を続けましょう!。」と指導したら、貼り続けてくださいました。患者さんは素直で、私を信頼してくれているから安心です。ご覧のように形態良好です。
「もう外してもいいですよ。」と告げるかは、剥がして触れてみてからです。鼻尖の念入りに触れて、移植軟骨の3段目の粒状のは中央にあり、2段目の帯状のは鼻柱内にあり、1段目のダイヤモンド型の土台のは縁が触れます。上の術中の移植前の軟骨の形の通りに入っています。患者さんも安心されました。
今回は4方向からも診ましょう。
どこから診ても、鼻尖は自然な形態で、鼻背に繋がっています。
今回鼻尖の位置を矢印で指し示してみました。鼻の稜線に青線、そこから鼻尖へカーブする変曲点に赤い矢印。上左図が術前、上右図が術後1ヶ月。実際にはそんなに下がっていません。もちろん鼻柱の向きは下がっていますし、鼻孔の見え方も少なくなりました。
でも正面視では、明らかな改善が見られます。上左図は術前、上右図は術後1ヶ月。鼻尖に平坦な面があったのが、”丸くドーム型”になって自然です。その様に造りました。鼻孔の見えるサイズも明らかに減りました。鼻尖から鼻柱へのカーブの違いも判ります。術前は鼻尖から鼻柱へ急に曲がり鼻柱に影(正面からライトが当たると下向きの部分は影になる)が見えます。術後は鼻尖から鼻柱へ緩やかに影になっていきます。これが自然で綺麗な形態ですよね!。
患者さんはお喜びです。詳しい説明よりも見た目の改善が嬉しいのです。私はこうして喜ばれてきました。鼻尖への軟骨移植は術後1ヶ月で固定し、今後はあまり変化が見られないと思いますが、術後3ヶ月に完成を診ましょう。下列に掲示します。
鼻尖の傷跡は目立たないし、下から見なければ判りません。耳介後部の軟骨採取部は耳と後頭部の折れ返り線で見えなくなりますが、マスクが擦れる部位で若干痛いそうです。まだ我慢の時です。
当院では厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログに加筆しています。もちろん画像操作はありません。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。今回の手術は鼻尖軟骨移植ですが、2枚重ねで35万円+消費税、3枚重ねで40万円+消費税です。最近では勿体無いから粒状の3枚目を追加する際はモニターの方にはサービスすることもあります。ブログ提示の契約を頂いたら出演料として20%オフとなります。