先日新聞を読んでいたら、特集記事が載っていました。中国は30年前には途上国で、日本政府が積極的に経済援助をしました。安全保障分野は脇に置いておきました。その結果現在の中国は、日本の領土や台湾を巡って紛争も辞さない姿勢を取っています。
私の世代は覚えています。30年前の天安門事件後欧米の先進国は中国と外交を断ったのに対して、日本政府は経済援助をしました。当時の中国は鄧小平に因る開放政策で、やっと何とか暮らせる国になりつつあったのですが、GDPは日本の六分の一でした。今や日本のGDPガ揚がらないからでもありますが、2014年には日本を越えて中国は世界二位です。
経済浮揚効果は文明を発達させる筈ですが、彼の国は中華思想とかいう自己中心主義国で、国際的には孤立して、国民への経済効果も偏り、貧富の差はますます広がりつつあります。文明の柱である科学的進化は経済発展に伴っていません。何しろ彼の国では毛沢東時代に何億人単位でブルジョワを弾圧、迫害した国家です。人命を尊重しないし、知性を破却したので、本来の科学的進歩は止まりました。科学は経済効果でなく、生命の為にある筈です。
今回の患者さんは中華人民共和国出身で、留学して日本在住です。日本語も堪能。とは言っても、彼の国はやはり、危ない。科学的文明が発達していないが、解放政策以降は、格差は開いても経済的に向上して、平等を旨とする社会主義など無視して、美容医療が広がりました。日本もそうですが、医療科学は専門的ですから、国家の管理が難しく、エビデンスが無視されることがあります。こうして時には、本症例の如くどう考えても危ない物質が注入されてしまいます。中長期的結果がどうなっても知らないとのことです。
症例は28歳女性。注入物はアルテコールという製剤で、今から20年以上前に、開発されました。PMMA、ポリメタメチルアクリルは、要するにアクリル剤やセメダインの様な異物です。実は日本にも紹介され、日本美容外科学会JSAPSで議論しました。大学病院の教授が調べて、生体親和性はないこと、吸収されないが、異物反応を惹起し、炎症所見を呈する可能性が高いことなどを発表しました。したがって臨床的には使用されませんでした。中国だから安易に使われたとは言いませんが、実際に外鼻に注入されて炎症所見を呈している症例を診る機会は初めての経験です。
昨年末に私に回ってきました。まずは注入以来頻繁に鼻尖が発赤するとの訴えです。とにかく鼻尖だけ治したいと希望されます。鼻翼幅37:鼻尖幅19㎜で半分より大きいです。TDP=側面像で鼻背の延長線上から曲がり始める点が、鼻翼よりも上方にある所謂上を向いた鼻です。しかも鼻尖下方が平坦と診ます。画像で判りますね。実はこの形態は異物反応に因る炎症で収縮した可能性も考えられます。今入っている物は掻き出すとして、再建法は、軟骨2枚でダイヤモンド型+帯状に斜め下向きにしたら形態は改善されます。静脈麻酔も希望されました。患者さんの希望で、X線写真も撮りました。白い物質が見えました。
その後ダイエットに勤しんでいましたが、2ヶ月後再診しました。前は時々発赤していたが、先週から常に赤かったり、青く透けることがあるそうでした。私困って、流れでないかな?。掻き出そうかな?。触れると、どうも鼻背にもある様だ?。などと言って様子診ていたら、1週間後に本年に入って再来されました。
その時点では、鼻尖の下、鼻翼軟骨(鼻尖の骨組み)中間脚の前にブヨブヨが降りてきた。一度穿刺吸引をトライしてみるか?。ただしコンタミネーションのリスクがあるので、抗菌剤を服用させながら穿刺しました。粘液状の排出がありました。残念ながら物質の定性は見合わせました。翌日診ると収縮傾向が診られ、炎症所見も軽くなりました。
なんとか落ち着いたので数ヶ月は経過を診ました。PMMAの炎症は穿刺後安定したが、ブヨブヨはなくなりはしないし、発赤も時折あるそうで、特に毎年春になると悪化するそうです。とにかく鼻尖を治したい希望。異物除去と形態の改善を希望されます。術式は軟骨3枚を希望されました。1枚目のダイヤモンド型は45度下向き+2枚目は帯状に鼻柱に+粒状に鼻尖をツンっとさせたいと考えました。なお鼻背にプロテーシスが入っているが問題ないと考えました。
手術は今月に予定しました。鼻背にもあったら掻き出してみる。鼻尖にある異物は見て削るか?。軟骨3枚は尖るよりも、可愛くしたい希望。左耳甲介から軟骨を10×12㎜採取して、ダイヤモンド型は一辺8㎜。鼻尖は鼻翼軟骨を縫合して2㎜縮めて土台を造ります。
画像は術前から。
TDPはハイライトの最上点です。理想的には鼻翼の張り出し部と同じ高さに欲しいです。ブヨブヨは視認出来ませんが触診では判ります。
4方向では鼻背の延長線から鼻尖がストンっと落ちています。しかも鼻柱に懸けては平板です。
デザインしました。平板な鼻尖にダイヤモンド型で小さく下に向けて膨らまし、鼻柱に帯型に1㎜下げます。粒はその上に足します。
耳甲介から10×12㎜の軟骨を採取しました。上左図は一辺8㎜に切り分けるデザイン。上右は切り分けました。
撮影するナースが私が細工しているシーンを撮ってくれました。20分以上は係るので待機中は暇だからです。その際手術アシスタントのナースは、細かい技を手伝うので緊張しています。
ナースと二人で巧く造りました。説明にある通りの3段重ねです。「親亀の上に子亀を乗せて、そのまた上に孫亀乗せて〜。」と唄いながら丁寧に合体させます。耳介軟骨は1枚が厚さ約1㎜です。3枚だと3㎜で斜め45度下に鼻尖が延長します。
ところで異物ですが、鼻背内には、覗いても組織に侵入している為削れる物は無かったです。鼻尖の皮下のポケット内には肉芽化した異物があり摘除しました。
今回は皮膚上に乗せた画は撮り忘れました。術直後の画像には軟骨が入っています。
まだデザイン画が消えていませんが、その部の皮下の鼻翼軟骨の上に移植した耳介軟骨があり、鼻尖が下に有ります。丁度テープで囲んだ中です。かなり皮膚が赤いです。異物削除したので当然です。下方からの図では鼻柱部の創まで赤いです。
4方向をみると鼻尖の位置が見事に下がっています。患者さんも通訳の女性もお悦びでした。
翌日は腫脹軽減を目的として高濃度VC+H2点滴しました。LEDで血行の改善も図りました。テープの張り替えもしました。
術後1週間で抜糸しました。
発赤はかなり軽快しています。耳介の傷跡は赤いですが、折れ返り線ですから見えなくなります。耳介血腫は予防されました。Bolsterが効きました。
4方向でもテープ無しで撮ると綺麗に形が見えます。術前と比べてむしろ自然です。
術後1ヶ月でフルメイクして再来されました。明日一度中国へ戻るそうです。
鼻尖はツンっとして綺麗です。傷跡も目立たなくなりました。
4方向では鼻尖が本当のアップノーズです。
術後3ヶ月を経ましたが、外国から戻れなかったので、術後4ヶ月半で見せに来て下さいました。
鼻尖の形態が見事ではないでしょうか?。4方向で観ると綺麗です。鼻尖と鼻の位置が、適度に下方移動しています。ただし、鼻尖が小さくなったので、鼻翼が、最大幅は37㎜ですが、相対的に大きくなりました。
本題の余計な注入物は触れるとないのが確認できます。それは患者さん自身も判り、喜んでいます。嬉しそうな顔を見せてくれました。
4方向では鼻尖が鼻稜線(鼻すじ)よりもわずかに前にある本当のアップノーズです。可愛い外人なので似合います。
傷跡はまだ赤いのですが、見えないに等しいです。下面像でも鼻尖がツンっとしています。患者さんの嬉しそうな表情を送りました。多分近々鼻翼縮小術へ進みます。また診れるので楽しみです。
当院は、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログに加筆しています。もちろん画像操作はありません。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。今回の手術は異物除去手技に10万円+税。鼻尖軟骨移植3枚で35万円+消費税です。2枚では30万円+消費税です。鼻尖縮小術は本来25万円ですが、軟骨移植の際の土台造りの為には15万円+税をなります。ブログ提示の契約を頂いたら出演料として20%オフとなります。