2023 . 6 . 28

上口唇短縮術を鼻唇溝まで切ってもやはり口角は挙がらないのです。私も経験があります。その場合口角挙上術が適応ですよね。

昨今美容外科医療は隆盛です。経済事情からしてコマーシャリズムが定番化したからです。SNSで画像や動画が横行して、見た目を重視する風潮も関与していますが、先年に規制ができてから、ホームページ上で改ざんが禁止されて、チェーン店はTVCMへ注力したからでもあります。

ちなみにチェーン店とは、地方へ開設することですが、売上は都会の半分以下でも、医師は安く配置すれば可能で、全国的に広告経費を掛ければ地方が受け皿になり、チェーン店としては採算が取れます。昔は単独開業だけで、全国からの来院は稀ですから、全国的な広告経費の元が取れなかったのです。もっともチェーン店では医師の質がピンキリで、経験値の低い医師も横行しています。そもそも美容医療に於いては、医師と患者さんは一対一の個人的な関係性が信頼関係に繋がります。その点で、何人もの医師が入れ替わるチェーン店系の地方のクリニックでは望むべくもないのは仕方ないとは言え、美容医療の道を外れています。

もっとも美容医療は戦後から行われてきました。いや戦前から眼瞼形成術は行われていました。戦後駐留する米軍(連合国)に喰わしてもらうために、またはモテるために多くの女性が外人っぽくする手術を受けました。米軍が医療団を連れて戦傷者を治しながら、形成外科を指導しました。その後も多くの芸能人は美容医療を受けました。昭和40年代には外人的な顔立ちにしなければ売れなかった時代でした。カタカナの芸名にして、ハーフのふりをしている彼女たちはその結果です。ちなみにD夫人は誰が治したか私たち美容外科医は知っています。更にその後、昭和51年に形成外科、昭和53年に美容外科が標榜科目(広告に載せられる科目名)となってから以降は、雑誌広告が急激に増えてチェーン店展開が横行し始めました。

科目名は変遷しますし、医師の出自も変遷しました。そもそも整形外科とは顔以外の骨や筋等の運動器を診療する科目です。そこで戦後美容医療を行う医師がテキトーに美容整形と称しました。父は胸部外科医出身で昭和36年に開業した際に〔銀座整形医院〕と看板を出しました。横に一回り小さい字で〔美容整形〕と書きました。他にも雨後の筍の様に立ち、昭和40年には、山手線の各駅に美容整形医院がありました。実はその頃、昭和31年には東大に形成外科診療班が出来ました。警察病院にもです。徐々に大学病院にも開設され、形成外科医出身の美容外科医と他科出身の美容整形医が、シリコン禍を種として反目しました。昭和50年代になると、標榜科目となるべくの機運が立ち上がり、国会で承認されました。ところが学会は、二つのグループに分かれたままでした。その後何度も合併の話が持ち上がり、私も父も力を入れましたが、毎回T.先生が壊しました。彼は一方のお山の大将で居たいからです。合併しないと厚労省は専門医を認めません。二代目のT.先生は形成外科医ですから、合併は次代への宿題です。

何が問題かと言えば、チェーン店系の医師は学術的勉強をしませんし、徒弟制度的な先輩後輩関係でのトレーニングを受けません。大学病院では勉強しないと手術をさせてもらえません。それも先端的学術は欧米が先行していますから、洋語の論文を読みまくる必要があります。勉強の環境は大学病院が整っていますから、形成外科医出身の美容外科医と、形成外科を経ないでチェーン店系に就職した若輩医師では知識に格段に差があります。今回のお題は、鼻唇溝まで上白唇短縮術で切開された患者さんですが、インターネットで探してもその論文はありません。学術的には間違いです。逆にこの修正に口角挙上術が有用ですが、口角挙上術の論文は多々あります。やはり学術的研鑽が優位だと考えられます。

症例は28歳女性。ブログを見て私に治してほしい点があるという主訴です。聴くと、3ヶ月前に私も何回か名前を聴いたことがある、S.系のT医師という美容整形屋に上口唇短縮術を受けたのです。鼻唇溝まで切開切除したのですが、口角は上がらなかったどころか余計に下がったそうです。前医では受けてくれない口角挙上術を、私ならうまく施行してくれると考えた末に来院されました。私「ちなみに私も昔(7年前かな?)2例切ったことがあります。でもやはり、いまいち挙がらなかったし、傷跡が目立ち修正を要しましたから、それ以来しません。」「どうでした?。」と訊かれ「だから口角が下がっている症例には口角挙上術をお薦めするのです。」患者さん我が意を得たりの納得の様子です。

そこで通常の手術と同じく、まず計測します。内眼角間37㎜:鼻翼幅30㎜:口唇横径44㎜で口唇横径が小さい。黄金分割比率(5:8)を適用して、54㎜目標と考え、45度方向に8㎜で、sin45×8≒5.6㎜、両側で約11㎜拡大するプランとしました。

術直前の確認ですが、「筋は?。」と訊かれます。「白唇下の口輪筋と赤唇下の口輪筋を分けて、筋ごと移動させます。」といつものように答えます。「口をできるだけ大きくしたいのですが・・。」と要望され「45度以上だと口裂けになりますよ。」「8㎜以上は無理ですか?。」「鼻唇溝⦅ほうれい線⦆が内側に引っ張られて窄まってやぼったくなりますよ。」と難しいことを言われて納得させました。とにかく口角挙上術をしないと変な口唇です。

とにかく術前の画像を視ましょう。

久しぶりに見る鼻唇溝の瘢痕。見ての通り、口角は鼻唇溝の傷跡の直下にありますが、最外部は取れないので挙がらないのです。

デザインは口角の45度方向に8㎜の位置に挙げるデザイン。丁度鼻唇溝との中間部までです。これ以上だと鼻唇溝が引き下ろされます。

あえて書かなかったのですが、E-ラインよりも口吻が前突し、おとがいが後退しているから口角の下垂が目立つのです。梅干しも目立ちます。ちなみに創は鼻唇溝から外れています。

術直後はご覧の通り。

確かに格段にまともに見えます。患者さんの選択が正しかったと言えます。

4方向でも格段に良い形態です。下に近接画像で手術の手順を載せます。

デザインは口角から45度斜め上に向かって8㎜の線を描いてから、上下赤唇縁に鼻翼の直下までの切開線。上は三角形で繋ぎ切除部。

まず切開します。次いでデザイン上の三角形の皮膚皮下脂肪全層を切除します。

三角形を切除後、上下赤唇縁の切開線の深部の口輪筋を鈍的に剥離して分けていきます。

上左図は右の口角を吊り上げて角を2層縫合しました。口角の位置の左右差が観られます。上右図は左の口角も吊り上げて縫合しました。

この後口輪筋を縫い合わせてから赤唇と白唇を一層縫合します。

上赤唇縁は連続縫合。下赤唇縁は8針結紮縫合しました。波なみは糸のためです。

術後1週間で抜糸しました。

よく挙がっているのに患者さんは「もっと挙げたかった。」と無い物ねだりします。「もう少しで鼻唇溝を超えますよそんな顔ありえないです。」と返します。結果を見てください。上口唇口角が水平で、横径54㎜と計算通りです。

4方向でも口唇の形はまともです。

術後3ヶ月で完成を観られますでしょうか?。

私は完成だと思っています。ところが患者さんいきなり「もっと挙げたい!。」とおっしゃる。「横にも。」と付け加えます。”やっぱり”私実は心の中でそう思っていました。私に対する信頼を感じていたのです。

確かに今回の術前にやりとりしました。結果的に45度8㎜としました。私直ちに測ります。少なくとも横径は54㎜と、手術で造ったサイズは保たれています。でも私も追加したくなりました。

と言う訳で、次回2回目の手術後も連続して、版を変えてブログ提示させてもらいます。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。口角挙上術は25万円+税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。