眉下切開(切除)は眼瞼下垂症の改善のための手術です。したがって保険診療です。但しいつも書いてきた事ですが、適応患者さんを選ばなくてはなりません。前葉性と後葉性。先天性と後天性を鑑別診断する必要があります。眉下切開は後天性前葉性眼瞼下垂症には最適で、時に先天性前葉性(=一重瞼)にも使えますが、後葉性眼瞼下垂には適応しません。私は医者ですから!、この点を重要視しています。逆に巷間の美容外科クリニックはビジネスマンですから、医学に基づいた診断根拠に基づいた診療なんか出来ません。
毎回書いてきましたが、医師は大学医学部で学んでも、最低限の知識しか得られません。教わるのはは国家試験が求める程度の深さです。もし各専門面の細かい知識を国家試験に出したら、程度によりますが、ベテランの医師か大学医学部の教授しか医師になれませんよね。ですから逆に、専門科目の診療に必要な知識と、手術や検査の技術の修得には、大学卒業後の研修が必要です。それも、大学病院を始めとした大病院で、体系的なプラグラムに基づいた卒後教育の出来る施設でなければ無理です。少なくとも市井のクリニックでは不可能です。
最近まで、チェーン店系の美容外科グループでは、大学卒業直後の新人を雇ったり、他科で研修した医師を金で釣って雇ったりしていました。当然に美容医療の学問的な研修は受けられないので、診断法も身に付けられません。最近では、大学等の形成外科(美容医療は形成外科と美容外科が両輪と捉えられています)で研修した経歴を載せているクリニックがありますが、たったの2年程度だったり、ただ見学しただけだったりして、全く意味を成していないのをHPに載せて、いかにも”まとも”なふりをして騙しているやり口が使われています。
他院はどうこうあれ、私にかかる患者さんは、ブログを視て、私の姿勢を知って来院されますから、時にはいきなり「どの治療が合っているか教てください。」と訊かれることもあります。その場合私「そう言われても。」と言いつつ、”順を追っていきましょう”と心の中で叫びながら「診察しましょう。」と顔をじっくり舐め回す様に診てから、計測を始めます。記憶ははっきりしないのですが、本症例の患者さんもそのように進めたと思います。
こうして診断の下に治療に至るのですが、その前に患者さんと擦り合わせます。ただしその内容は、全人格と関係します。例えば、遺伝的な人種の差異、同じ日本人でも、地域によりある程度のグループ化がされます。その差異によって似合う顔貌が微妙に違います。例えば南方系の人は〔パッチリお目目〕なので、後天性に被さったら元の〔パッチリ目〕にしたくなります。話すと印象として南方系の人は可愛い系ですから、美容医療にも積極的です。本症例の患者さんもその一人です。逆に一重瞼で生きてきた、所謂モンゴル系の人は諦めます。先ほど他の患者さんにも教えてもらいました。他に社会的な態様もさまざまな面で影響します。例えば主婦と水商売の人では、誰に魅せるかが違うために、美容医療に対して求める高さと方向性が変わります。方向性とは例えば、可愛い系と綺麗系のちがいです。評価対照も変わります。ですから患者さんが求める美容医療が、その患者さんに合っているかを、私が素直に教えて差し上げることもありますが、その点も含めて、細かく診察した後です。
何を言いたいのか解りにくい前振りでした。言いたいことは、”患者さんを真剣に診察して、治療の適応を診断して、最適な治療を施し、一人ひとりの患者さんに取って良好な結果を与えることが、美容医療の医師の務め”と考えます。この点を医師としての矜持と捉えてきました。
症例は63歳女性。7年前に初診されています。カルテを見直すと、いきなり眉下切開の診療をしていました。ご覧の様に眼瞼横径が大きく、開瞼も眼瞼挙筋はよく効いているつまり後葉性ではないで、前葉を眉を挙げる6㎜幅の切除をしています。重瞼線が乱れていたので埋没法も併施しました。スッキリしてお喜びでした。その後も定期的に、主にアンチエイジングの美容医療を受ける為に、やや遠方から私に罹っていました。
昨年に中顔面(眉下〜鼻下)のたるみが気になり始め、こめかみリフトも検討しましたが、よく診たら、上眼瞼のたるみが見えて、さらに考えてみたら、前回の眉下から年月を経て、前葉の伸展が再燃したからであると、患者さんも認識しました。特に目尻部が落ちて三角目になっているのが、な下顔面の加齢顔貌を感じさせる所以だと見て取れます。
画像を視ましょう。まず術前の両側眼瞼部ですが・・。
四葉並べました。実は、既に手術直前の診察時に「ここからここまでを同じ幅切除して引き上げます。」と言った際に目頭の上と目尻の上の眉下に早まってマーキングしてしまいました。消さないでそのまま撮りました。
上左図は開瞼時に眉を挙げているので二重瞼=瞼縁よりも皮膚が上ですが、上右図は力を抜いてもらい、下左図の様に軽く下方視してもらうと、瞼縁に皮膚が乗ってきます。だから眉を上げる分の皮膚を眉下で切除すれば、眉を上げなくても眉を上げた程度に、皮膚が持ち上がるという仕組みです。下右図の様に閉瞼するとちゃんと元々の重瞼線の折れ返り線が診られます。
下に近接画像。
実は目頭の真上までがっつり取ると眉頭を越えてデザインすることになるので少しずらしています。それにしても瞼の外側は被さっています。
いよいよ手術室に入ってデザインを描きました。上左図は半目で上右図は閉瞼ですが、眉と瞼縁の距離が変わります。デザインはまず、眉下ギリギリに、上方の第一切開線を描きます。予め描いた目頭の上の点で5㎜、目尻の上の点で6㎜をマーキングして、その間に第二切開線を描きます。目頭の上より内側と目尻の上より外側は三角形にテーパーしていきます。ほぼ切り取る幅くらいの長さを延長させています。
さて手術ですが、皮膚皮下脂肪を全層切除します。主にモノポーラー(単極)電気メスで止血しながら切ります。電気メスだと皮下脂肪が焼け焦げて、筋層から剥がれ取れます。層の確実性が高い方法です。結果、約5㎜の深さの帯状の穴が開きます。その深部の眼輪筋は全層残りました。バイポーラー(双極)電気メスでさらに止血します。この時点で出血はほとんどありません。さて三層縫合します。第一に筋層を折りたたむ様に縫い寄せます。この時点で3㎜の約半分寄っています。第二層は真皮縫合です。皮膚の裏側をしっかり寄せます。約12針掛けたら隙間なく寄っています。創の長さは約4㎝ですから、約3㎜間隔で真皮縫合しています。こんなに丁寧に細かく真皮縫合できるのは、日本中で私だけでしょう。いい年こいてまだ頑張っています。最後は皮膚縫合です。もう既に隙間なく合わさっているのにまだ縫うの?って言われたこともありました。実は眉下切開では上の眉側の皮膚と下の眼瞼側の皮膚の厚さが違う為、縫合線が段差になり得るので、皮膚縫合で合わせるべきなのです。ただし結び目が凹みにならない様に連続縫合します。糸は透明です。
上には、切除した皮膚皮下脂肪の画像です。皮膚面はデザイン通りに取れています。皮下脂肪は一部ばらけて散っています。
上には、手術直後の眼瞼部遠近画像。近見時でも眼球が露出しています。二重瞼は術前の眉を挙げた際よりも広くなります。
近接画像では二重幅が丁度よく広がり若年時に戻りました。二重瞼とは、瞼縁よりも皮膚が上にあるという形態で開瞼が損していないという機能的状態です。
創にはまだ血液が付着していますから赤いのですが、翌日には消えています。そうなれば糸は透明ですから創そのものも目立ちません。ただし腫脹は48時間までは亢進します。内出血も起き得ます。どちらも程度問題ですが、個体差はあります。
ここからは患者さんが撮って送って下さった画像も使わせてもらいます。上に書いた通り48時間後、つまり2日目は腫脹が亢進して、内出血も露見しました。
さらにコメントも添えて下さいました。◆3日目 – 切開部分にギャザーが寄っているのが目立つ。術中に先生がおっしゃていたのは ”切開の上下のライン 実は長さが違う。下の方が長いのでギャザーを寄せながら縫いますよ。” って、それがこの状態なのね。平になるのが楽しみに。
下には術後1週間での抜糸後。
なんとも目元が若々しい。キラキラしています。とてもこの年齢には見えません。よく開いてお喜びです。
近接画像撮影時には力を抜いています。視線が避けるからです。傷跡は抜糸時に引っ掻くので赤くなってしまいます。内出血はいつも起きる患者さんです。
実は上の来院しての抜糸時の画像では、メイクで隠されていたのです。帰ってからノーメイクで撮って送って下さった画像とコメントを載せます。◆1W – 前回より腫れ、内出血が少ないが、他の方より多い。内服薬も終わり、僅かな痛みが有る。2回目で状況が掴めている為、全く不安は無い。腫れが少ないので、形状も理想形が見えてきた。
◆2W – 内出血も薄くなる。傷口が痛痒い。傷口が治る時の症状で、傷口付近の皮膚の突っ張りにより、数時間事に目の表情が変化するので、遠近両用眼鏡でカバーする。
◆3W -右目下の内出血が僅かに残ってます。この程度ですと、コンシーラーで隠せます。受付カウンターで購入しました。まぶたに僅かな赤みと感覚が鈍い部分が有ります。目頭のつっぱりもだいぶ緩和されました。傷口の修復段階での突っ張りや引きつりも日毎、時間毎に変わります。
◆4W -1ヶ月、切開部のギャザーは消えて、綺麗になりました。スッピンでの目頭の傷跡は目立つものの、化粧すれば解らない。この傷跡の辺りの突っ張り感と、寒い日は僅かな痛みが有る。身体の手術した人が良く口にする、”寒くなると傷口が痛む” あ〜、こう言う事なのね って思う。
三角目が消えて、はっきりした優しい二重になり、気持ちも華やぐ。
これで、70歳迄は、オメメぱっちりなお顔が維持出来ます(笑)
有難うございました、感謝。森川先生。とのコメントも添えられて、私も嬉しい!、楽しい!患者さんです。
術後2ヶ月で来院されました。画像を頂きました。
上左図は近景です。キリッと開いて下さいました。これがこの患者さんの若い雰囲気を魅せています。上右図は遠景撮影時に力を抜いて写りました。これがこの患者さんの優しい感じです。
各眼瞼近接像共に、パッチリ開いて下さいました。もう一度来月画像を載せますが、他の部位の美容医療の話題が上がっています。その節にも魅せて下さるでしょう。
当院では、厚生労働省より改定され施行された「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しブログを掲載しています。
医療法を遵守した情報を詳しくお知らせするために、症例写真・ブログに関しましても随時修正を行っていきます。症例写真の条件を一定とし、効果だけでなく、料金・生じうるリスクや副作用も記載していきます。ブログにも表現や補足の説明を付け加えさせていただきます。
施術のリスク・副作用について:・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間(48時間)は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、切開部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えます。眉下切開術は眼瞼下垂手術の一種ですから、保険診療です。点数で6000点×2=12000点。出来高請求で薬剤代等込みですから、3割負担で約4万円です。保険診療では、モニターでも費用を下げてはいけないとの厚労省からのお達しですが、個人情報提供のための同意書は頂いています。つまりこのブログ提示はご厚意です。ありがとうございます。