同時に複数の手術をする機会が続きました。同時期に複数部位の手術をすることでも、これまでに同一部位に多くの手術を重ねて来たことでも、Poly surgery呼ぶと思います。Multi surgery というかも知れません。その定義は難しいと思います。Poly surgeryとは読んで字の如く多手術ですから、どちらに対しても言えるのではないでしょうか。これまで形成外科分野では、再手術としてのPoly surgery症例を好ましくないとされて来ました。その理由の一つには、同一部位を手術する場合には、それまでの治療法(手術に限らない凡ゆる侵襲)が少なからず影響するからです。深部も含む瘢痕(傷跡)が硬くて切りにくかったり、剥離(皮膚ならず内部の組織を剥がす事)の際に引っ掛かって力加減が難しかったりで、術者の手間が増え、その為手術の結果の良否に影響する可能性さえ、あり得ると言えます。もう一つの理由として前医が不明だったり、覚えていなかったり、少なくとも前の治療法が解らないことが多く、私が手術時に、[開けてびっくり玉手箱状態〕のことも少なからずあり、私は術中に”どうしよう?!”と悩むことになることもあるからです。
ですが、私も今や美容形成外科医として37年、当院では15年診療して来ましたので、複数回手術症例と言っても、定期的に診療しつつ前回私が手術した症例に対して、経年変化に対してもう一度私がやり直したり、方法を変えて効果を増強したりすることを要求されることが増えて来ました。最近は患者さんによく訊かれます。「私の顔は先生に長く診てもらっているので、経年変化で崩れたら、又治して欲しいんだけど・・。」「先生お幾つでしたっけ?、”私正直に64歳と答える”、えっ、もうそんなですか。先生にもう一回お願いすることになると思うので、まだまだやって欲しいわあ!。」私「まだまだ5年以上は頑張ります。」とやる気を見せます。美容医療は個人と医師の人間関係が求められます。私は患者さんの人格(=内面と外面)の一部として美容医学的に外面を捉えますから、永らく診て来た患者さんとの信頼関係が醸成します。結果的に私が診る複数回手術症例は、私が前回に、何をどうしたかを、私も患者さんも理解出来ています。したがって上に書いた様なPoly surgeryを好まない理由が当てはまりません。頑張って引き続き、70歳前後までは美容形成外科医として、美容医療に邁進していきまます。
本症例の患者さんは十年単位の美容医療の経験者ですが、経年的に変化が起きるのは理解しています。一つ目の頤はそれで、私が長年美容医療に携わって来たからこそ、患者さんも私の経験を利用できると思っています。また現在の美容医療=美容形成外科は、昔の美容整形とは違うことも知っての修正手術になります。二つ目の鼻尖もその点で、形成外科を基本としての治療が美容外科に応用できることから、昔とは違う方法で追加手術ができることをブログで視て理解しているからです。三つ目のこめかみリフトはこの数年私が頻用して、ブログにも載せて、もちろん観たら受けたくなる手術です。広範囲剥離ですからそんじょそこらの美容屋には出来ないし、経験値が高くないと綺麗に挙げられません。患者さんに個体差に応じて、方向や挙げたい部位を使い分ける必要があるので、診察を疎かにするビジネス的なチェーン店系美容屋にはもっての外の手術です。
イントロはここまでで、細かい内容は下に書いていきます。何しろ経年変化に対しての複数回手術なだけでなく、休みが取れたので、短期間に3箇所の手術を施行します。内容の説明も多岐に亘ります。前部一つの版に載せるのは大変でしたが、読むのも大変でしょうが、それぞれに興味ある部分を視て下さい。
症例は47歳女性。約3年前から当院に通われて来ました。私がいくつかの手術をさせてもらっています。その際、当院よりも前に他院で受けた手術の件についても時折り触れて来ましたが、今回修正をする機会を得ました。本年に入って、都合が就いたので、短期間で集中的に、続けて手術をすることになりました。
内容は次の通りです。
1、頤プロテーシスを27年前に入れたのですが、20年前にX線写真を撮ったら、、骨に喰い混んでいました。有りがちです。硬い材料を骨膜下に入れると起きるのです。当然に前突も減って来て、物足りなくなって来たそうです。修正は入れ替えて孔の前に橋渡しでしれること、触れると横長棒状で頤の先端に水平線があるので、三角型で現在よりも3㎜前突を目論み厚さも増やすプランを立てました。とは言っても出してみないとデザインは決められません。
2、こめかみリフトは最近私がよく施行しているのをブログも視てご存じです。定番の手術となりました。眉尻の後から生え際を3㎝切開して、ゴルゴ線まで剥離して、45度方向へ挙げる。目尻は挙げない方向です。
3、20年前に鼻稜にI型プロテーシスを入れました。同時に鼻尖と鼻柱の間に右耳珠から、小軟骨を入れました。でも鼻尖には何も入っていません。見ても触れても解ります。鼻尖にも入れましょうと薦めました。左耳甲介から、ダイヤモンド型+粒状の2枚重ねで鼻綾の延長線上に高さを合わせるプランを立てました。
ですが私の予定も加味して、1、火曜→2、金曜→3、月曜と1週間に3ヶ所の手術を立て続けにさせて頂くことになりました。これをPoly SurgeryというのかMulti Sugeryというのか解りませんが、ブログ提示は一つの版にまとめて載せていきます。
まず1、頤プロテーシスの修正術から施行しました。手術中の画像は撮りませんでした。
術直後の画像では、既にバンデージしてしまいました。顎を長くはしていません。
側面像での比較してみると前突が増えてE-ラインが直線上に近づいています。
斜位像でも、手術直後は局所麻酔で口が閉じられませんから、E-ラインは測れません。
口は局所麻酔の影響で閉じられません。
2、頤形成術の3日後にこめかみリフトを行いました。1、ちなみに上の画像では、頤のバンデージは外していますが、腫脹で長くなっています。
2、上二葉は術前の側面像。1、頤形成術後3日後でまだ口は閉じにくいのですがE-ラインは直線上です。
こめかみリフトのデザインはゴルゴ線まで剥離して45度方向に挙げます。下には右側面での手術中画像を順に載せていきます。
手術中画像です。切開後皮下脂肪層を一層皮膚に付けて、剥離しました。筋鉤という板で持ち上げながら、剪刀で剥がしていきます。
引き上げになります。45度方向に1.5㎝切開して一針縫合(Key Suture)しています。上左図が前の皮膚に、上右図が後の皮膚に針が掛かっています。
上左二図は糸結び中です。
上左図は、確認のためにもう一度メジャーを当てて測りました。最大1.5㎝です。上右図は皮膚切除をマーキングしました。
上左図は、マーキングに沿って皮膚切除しました。上右図は約3.5㎝長の傷に対して真皮縫合を13針後、皮膚は連続縫合しました。
術後の側面像です。黄色く内出血が透けてみられます。目尻は腫脹で横に引かれています。
斜位像の上列が術前、下列が術直後。Malarならず鼻唇溝も浅くなり,Jowlまで挙がっています。
下からはさらに3日後に3、鼻尖形成です。
各方向の術前像を観ましょう。正面像では立体的形態は判りにくいのですが、鼻綾にハイライトがあるのに鼻尖には無いのは低いからです。近接画像でも同様ですし、鼻尖が平板なのは判ります。下面像では鼻尖の上にハイライトがあり、鼻柱側にはありません。
4方向で観ると、鼻綾線の延長線よりも鼻尖が低いが明らかです。
これに対してデザインは、鼻尖だけを高くする為に、軟骨2枚移植します。1枚1㎜×2≒2㎜で鼻陵の延長線上に鼻尖まで真っ直ぐにします。マーキングの位置に入れたいと思います。下方からの煽り画像では切開のデザインも描いてあります。次からは手術中の画像です。
いきなりデザイン画の通りの切開後に皮膚を持ち上げた画です。20年前に入れた菱形の小さい軟骨が鼻柱方向にあり写っています。上右図は私が軟骨を加工している画像です。
採取した軟骨はメジャーで見る通り10×8㎜です。上右図は二つに切り分けました。
これを上左図の如くダイヤモンド型と粒型に縁取りします。さらに2枚を上右図の様に重ね合わせて糸を通して合体させました。
採取後作成した耳介軟骨を上左図は鼻尖皮膚上に載せて合っているか見ました。次に皮膚を持ち上げて入れてみます。
上左図は、軟骨を入れたまま(固定していいない)、皮膚を戻してみます。ちょうどよく高くなっています。上右図は移植(耳介)軟骨を糸で固定して、皮膚を戻して置く位置を確認した図。
予定した形態と確認できたので創を縫合し始めます。上左図は真皮縫合2針後で、上右図は皮膚縫合で創を全長を縫合した後です。移植した場所を知ってもらう為にもう一度マーキングしました。
直ちにテーピングします。皮膚の上から軟骨の周囲を囲んでいます。目的は二つ。万が一ずれない為と剥離した皮下を圧迫して、腫れを早く引かせるためと癒着促進して血腫や漿液腫を起こさないようにする為です。
術後の4方向です。側面像と斜位像では、鼻尖と口吻と頤の前後位置=E-ラインが、一直線上に並んでして品のある口元です。鼻綾線の延長線上に鼻尖があり鼻柱への曲線も自然です。
下からは術後経過です。画像はありませんが、鼻の手術翌日は診ています。3鼻、出血は止まっていました。テープは貼り替えました。翌々日からは患者さんが貼り替えたいと仰います。ブログに載っているから貼り方は判るそうですが、念のため私が実演して動画に撮ってもらいました。2こめかみ、4日後で腫れが引いて来ました。1頤7日後、口腔内の糸が歯磨きで抜けたそうですが、診ると傷は開いていません。溶ける糸ですが、邪魔なら10日以降抜糸しましょうとなりました。
下には1、頤プロテーシス修正術後10日。2、こめかみリフト後7日。3、鼻尖増高術後4日の画像です。
3、鼻は形態的に適切です。鼻尖が発赤しているのは術後炎症でしょう。と、申し上げました。1、口腔内の糸が抜けた中央部に癒合不全部が見られました。食物が嵌まったそうです。膿状の滲出がありました。1針再縫合しました。
2、こめかみリフトの傷は癒合良好で抜糸しました。ご覧のように内出血は黄色くなり、腫脹はピーク時の約40%まで軽快して来ました。腫脹が全解消するまでは、瞼裂はまだ横に引かれていますよと告げました。吊り目になっているのもです。血腫は認めません。よく挙がっていると言って下さいました。瞼裂ははまだ横に引かれています。
近接画像で診ると、赤い線は白くなります。
下には頤術後13日、こめかみ術後10日、鼻術後7日の画像群です。
3、鼻尖の移植部の発赤が濃くなり、皮膚が張っています。圧出すると左鼻柱部の創から血膿が出ました。3日前に診た際も赤かったのですが、血腫が起きていて、その中に感染が拡がったと考えられます。この時点では出し切れたと思いました。移植軟骨の位置はずれていません。内服抗菌剤も処方しました。1、口腔内の孔はまだあります。
2、こめかみリフトの腫脹はさらに軽快し、瞼裂の位置も戻りつつあります。ご覧のように、傷跡は髪で隠せるとのことです。
その4日後3、鼻の創からは液が出続けました。抗菌剤は種類を変えました。創内に生理食塩水を注入して洗い出しました。液は出なくなりました。またテープをU字型だけでなく鼻尖の発赤部の上からも圧迫しました。
すると翌日には皮下の貯留が減って、皮膚が和らぎました。ただし逆にブヨブヨしていました。液はわずかに出たそうです。洗浄すると、排出液は透明になりました。
その翌々日=鼻術後2週間です。発赤は範囲が縮小して、炎症による皮膚の肥厚やブヨブヨは解消してきました。2、頤の糸は抜糸しました。
その翌日も診ました。鼻尖部をテープで圧迫したのが、功を奏して、発赤が軽快して来ました。抗菌剤も効果的だったので膿の浸出は診られません。出ないから創も自然に癒合してきました。ところが、2、頤の修正術後の口腔内の創が開放していて、治りませせん。再縫合しました。
下には頤術後24日、こめかみリフト後21日、鼻術後18日です。
ご覧の様に、鼻尖の発赤は軽快してきました。年のために残して置いた糸は全部抜糸しました。
2、こめかみリフトの経過は順調です。1、頤の位置も腫脹は引いて前に出過ぎていません。
下には頤術後27日、こめかみリフト後24日、鼻術後21日の画像群です。
3、鼻の発赤はピンクになりました。感染による炎症は治癒しています。移植軟骨に血行が再開して来たものと考えられ、免疫も働いて来たものと考えられます。1、頤の糸は吸収性ですから、残しておきます。
こめかみリフトの経過は順調で、目尻の位置は戻り、吊り目でもありません。
下には頤術後34日、こめかみ術後31日、鼻術後28日です。
3、鼻は落ち着いています。
2、周囲の人に「顔が小さくなって、豆みたいで可愛い。」と云われたそうです。3、鼻は鼻綾の延長線上に鼻尖があります。
実はこの際PRP療法も行いました。ブログ提示に入っていませんから比較対象にはなりませんが、画像で見えるかも知れません。
形態的には良好で求めた目的に叶っていると言えます。しかしブログも大作となりました。その上、幾つかのトラブルが起きました。言い訳になりますが、立て続けに手術すると創傷治癒機転に影響するものと考えられます。口腔内はまだ治り切っていません。鼻も全快とは言えません。これからも画像と経過の説明を続けたいと思いますのでお楽しみに!。!。
その後鼻尖は落ち着いて来ました。頤プロテーシスの挿入部の口腔内の傷の中央部に孔がありましたが、洗浄や掻爬を繰り返して、やっと閉じました。
3手術とも約3ヶ月を経て、やっとの事で完成を見たいと思います。
1、口腔内は傷がなんとか治ったのですが、その間頤プロテーシスには異常を来しませんでした。形態的に良好です。いや、一流の社会人に似合うノーブルな雰囲気です。
2、こめかみリフトの効果は中顔面のスッキリ感ですが、下顔面まで逆卵型の輪郭を呈しました。
3、鼻尖は赤いのですが、炎症性ではありません。Expand,伸展効果です。高くした事で皮膚が引き伸ばされます。そうすると面積に比して血行が減少するので、個体が反応して、毛細血管が増生して拡張して赤くなります。ただしやはり形態的には、一流の患者さんには似合う。ぺちゃんとした鼻尖から、スマートな鼻に出来ました。
側面像でも斜位像でも立体感が向上して素敵な顔立ちが引き立ちました。
3ヶ月で完成としましたが、今後ともメンテナンスに訪れる予定です。その際にも観たい患者さんです。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに説明を加筆しています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。頤プロテーシス挿入術は消費込みで22万円です。こめかみリフトは40万円+消費税です。鼻尖軟骨移植2枚は30万円+消費税です。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料としてさらに20%オフとなります。