題名にある様に、口周りの手術はセットがお勧めです。ただし何度も書いて来ましたが、幾つもの間違いが生じています。
まず口唇は、赤い部位だけではありません。鼻の下の皮膚の部分も口唇です。赤唇と白唇と呼びます。なぜなら一緒に動く部位だから、また、胎内の発達段階での原基は一体だからです。少なくとも口唇裂では両方が割れています。残念ながら、日本人やアジア人だけが理解が間違っています。その原因は、赤唇は性器ですから、東アジア人は特別扱いしてきたからと考えられます。
次に、人中短縮術との術式名が横行していますが、大間違いです。人中だけ短縮する手術なんてあり得ません。人中とは読んで字の如く”人の真ん中”です。白唇の中心の溝を”人中”といいます。ちなみにここも、胎児の初期に口が両側から合体する部位です。何人かの患者さんに、意味を訊いてみました。半数程度の人は知っていましたが、それでも人中短縮術と呼ぶ人が多いので、私「それじゃあ富士山になりますよ!。」と言ったら患者さんやっと「そうですね。解りました。」と膝を打ちます。どうも、韓国で流行らせた手術名の様です。当地では、ハングル語しか読み書き出来ない人が増えたので、漢字の意味を正しく理解できないので適当に命名したのでしょう。
ところで、間違って人中短縮術を受けたのではないのに、富士山型赤唇を造ってしまう美容整形屋がまだ存じます。人中の上を多く切り取って、両側鼻翼部付近の切除幅を減らすデザインを使う医師が、まだまだ居るからです。両側鼻翼間を同じ幅で切除すると、ドッグイヤー予防の為に鼻翼の横まで切開しなければならず、つまり切開縫合線が約1.5倍は必要になるからです。傷が短いのを売り物にするのは否定しませんが、それよりも縫合に時間を掛けたくないからなら、好結果が得られず本末転倒です。そもそもチェーン店の非形成外科医は、ちゃんと真皮縫合ができない医師がほとんどですから、私は口を酸っぱくして「手を出すな!。」って言ってるのです。
両側鼻翼間を同じ幅で切除するべきなのは、私は20篇以上読みましたが、すべての国際的な論文に記載されています。富士山型予防の為ですが、何故日本では短く切るのか解りました。日本人は富士山を誇りと捉えるからです。本当?。逆に欧米人からはフジヤマゲイシャとステレオタイプに捉えられます。富士山型くちびる(赤唇)を造るのも、白と赤の口唇を知らないのも、欧米人から揶揄されているのではないのでしょうか?。
ところで鼻孔底隆起とは、鼻の孔の下にある土手状の膨らみです。鼻孔の後半分を隠す作用があります。未だに、これを切り取ってしまう美容外科医が居ます。その術式では、確かにその部分の傷は鼻の中にできるので見えないのですが、鼻孔底隆起が無くなると、今度は鼻孔が丸見えになります。それに結局鼻柱基部(真ん中ではなく鼻柱の両サイド)間には傷跡が出来るので、傷跡が無い訳ではありません。短ければいいなんて、半ば誤魔かしですね。
結局傷跡は、長さが問題なのでなく、縫合法次第です。とにかく目立たなくする為には、真皮縫合の量と質に拠ります。しかし形成外科を研修していない医師は、真皮縫合という言葉さえ知らない者がほとんどです。彼らは中縫いと呼んで、テキトーな層を縫います。皮膚は、表皮が厚さ0.4㎜以下で、その深部の真皮の厚さは、部位により差があり、また個体差がありますが、約2㎜前後です。真皮はコラーゲンの塊りで強固ですから、真皮全層にしっかり掛ければ、傷跡の線の幅がいつまでも拡がらないのです。傷跡は3ヶ月間は弱いので、真皮縫合を強固にしないと、術後に幅が拡がってしまうのです。真皮縫合を丁寧に細かく終えた時点で隙間が無ければ、3ヶ月以上寄せ支え続けるので、傷跡は永遠に拡がらないのです。この知識と技術は、形成外科で上級医からみっちり鍛えられます。最低6年は研修しないと満足な結果が得られません。チェーン店で学ぶことは無理難題な話しです。最近ホームページなどの経歴に形成外科出身と載せている医師が居ますが、よく見ると在籍は6年以下です。これではまともに研鑽出来ません。なお、”上口唇短縮術は後戻りする”との風評は、真皮縫合が稚拙、または手抜きされた結果傷痕が拡がったからで、チェーン店系の非形成外科医が施行した手術の結果の多くが呈しています。私はブログで何ヶ月も提示して、測って後戻りがゼロであることを証明しています。
両側鼻翼間を同じ幅切除して、その下の部分の赤唇は挙がっても、口角付近の赤唇は挙がりません。その結果に対して口角挙上術が求められます。典型的な口角挙上術は、白唇を切除して、上下の赤唇縁を切開して口角を外して、白唇を切除した頂点に縫合する方法が、最も効果的です。他の手術法では、口角を移動できません。ましてや口内からでは挙がりませんし、周囲の組織から口角を引き上げても重さで後戻りします。なおZ-形成術法では計算上僅かしか挙がりません。目頭形成と同様に考えては間違いです。私はブログで、最低3ヶ月の画像を提示していますから、よく挙って後戻りが少ないのは証明されています。
これらの問題点は、形成外科診療を経験していない医師が起こします。何故なら、口唇の診療の機会は、形成外科医が口唇裂手術で、解剖学も技術も詳しく学びます。美容外科に当初から、又は他科から入った医師が知らない、知識と技術が沢山あります。これも何度も書いたことですが、医師は大学を出て国家試験に合格しても、最低限の知識しか持っていません。各専門科目で研修しなければ、その分野の知識と技術は身に付けられません。ましてや、美容外科チェーン店ではビジネスの為の知識は学べても、医学的知識を学びません。美容医療といってもそんな浅薄な話ではないのですよ。なのに未だにその様なチェーン店の非形成外科の医師が手を出すので、困ったものです。
症例は28歳女性。7年前眼瞼は私が手術しました。やはりブログをご覧になったからです。結果には大変お喜びでした。今回は1年前に、東京の歯科大学病院で咬合不全との診断の下にLe-Fort Ⅰ型骨切り手術で前に出して、SSRO術, Saggital Spliting Ramus Osteotomyも受けたら、上口唇が赤白共に、ストンっと落ちて長く見える様になったと訴えます。その意味で7年前の画像を診ると、骨格も変わったのはよいのですが、確かにその様な口唇の変化が解ります。
診察所見上、人中部の白唇長が15㎜でも、確かに長く見えます。上顔面64㎜:中顔面60㎜:下顔面60㎜と下顔面だけが長いのではなく、その割合としても上口唇(白+赤)縦長23㎜:下口唇(赤〜頤尖)37㎜で黄金比率に近い。でも前よりも長く見える様になったのです。最低線として4㎜短縮が可能と考えます。人中幅7㎜でも、弓明瞭でも、口唇結節=上赤唇中央のキスシーンの様な膨らみがなくなった模様です。両側鼻柱基部よりも両側人中稜を1.5㎜寄せて、赤唇に更に表情を造り上げる適応があります。
顔面横部品は内眼角間(私が7年前近づけました)31㎜:鼻翼幅35㎜:口唇横径38㎜と口が小さい。黄金分割比率で計算すると、50㎜を目標として、口角挙上術は45度方向に6㎜以上移動したいと考えます。
画像は各方向別に経過を追って載せます。正面像から。
上左図が術前、上右図がデザイン後。口の横幅が小さいのは見ての通り、その分横にも拡大したいデザインです。白唇はそれほど長くないのですが、ストンっとしてダランとしています。確かに短縮の適応です。
上左図は、まずは上口唇短縮術後です。口角は既に切ってはあります。上右図は口角挙上術後です。口唇横径も拡大していますが、術直後は鼻翼も広がっていますから比較が難しいです。
上左図は翌日の画像。ご覧の通り手術直後よりも派手です。腫脹(特に赤唇)も何も48時間までは亢進します。その後ゆっくり軽快します。その通り上右図の術後1週間では、術直後と同等まで軽快してきてます。周囲が黄色くなった内出血も同様で、48時間までに露呈してきます。手術後2週間には吸収されるでしょう。
術後2週間で全抜糸しました。腫脹もピーク時の30%程度まで軽快しました。上右図は術後1ヶ月です。薄くなってきたとは言え、若干赤い線は見えます。
下に両側側面像と斜位像の4方向の画像群。
上は術前。白唇の情報が垂直で赤唇が尖って見えます。鼻の下から赤唇にかけてカーブを描いて前傾しているのがセクシーだと思います。
上には術直後。その通りに鼻の下から赤唇へのカーブが出来ました。もちろん腫脹でオーバーに前傾してます。横から見ると、口角の位置が変わっているのが明白です。
翌日の4方向では赤唇が腫脹して前突し外反しています。
術後1週間では今度は上口輪筋のダメージがに起こり、閉じる際に下口唇に力が入った表情になります。口輪筋は回復します。
術後2週間で全抜糸しました。傷跡はまだ赤いのですが、形態は良いと言ってくださいました。
上には術後1ヶ月の4方向。「気に入りました。」とおっしゃって下さいました。だらんとしていた口唇に形が出来て可愛くなったと認識されます。
4方向で見ても3ヶ月で完成です。
下からは近接画像ですが、術中の説明も加えます。
デザインですが、上に書いた通りに描きました。斜位像で見ると予定の口角の位置も解ります。
手術開始は口角のマーキングをトレースする様に浅く切開します。次は上右図の如く白唇の4㎜の皮膚、皮下脂肪を全層切除します。
上左図では、私が指で赤唇側を引き下ろして、下床を見せています。底に見えるのは口輪筋だけです。上右図では、その口輪筋を折り畳む様に縫縮しました。4㎜のうち2㎜は寄っています。
次に両側鼻翼基部だけ真皮縫合します。その部分はピッタリ寄っています。上右図はその後鼻翼横の創を真皮縫合して合わせました。上左図で見られる様に、鼻翼横の皮膚は曲線ですが、4㎜短縮したので、切開線の長さが外側と内側で4㎜の差があります。これを巧く辻褄を合わせてずらして、ご覧の様に3針ずつでピッタリ縫えました。
上左図は次に両側鼻柱基部を真皮縫合しました。鼻側に対して人中陵側を1.5㎜外側に糸を掛けています。結紮してますが、まだ切っていない糸が見えます。腫れて判り難いのですが、人中が狭くなり、口唇結節も前を向いています。上右図は全長を真皮縫合しました。両側鼻翼横6針+両側鼻翼基部2針+両側鼻柱基部2針+両側鼻孔底隆起部下6針で足すと16針です。創の全長は約4.5㎝ですから、3㎜以下の間隔で掛けています。全長に渡って全く隙間がありません。
その後皮膚全層を連続縫合しました。今回は口角挙上術の術中画像はありません。終えました。上右図は切除物です。口角の三角形の皮膚と皮下脂肪。白唇の皮膚と皮下脂肪です。
上左図の手術翌日では口が閉じません。上右図の術後1週間では下口唇に力が入っています。
術後2週間でのやや下からの煽り画像では傷跡の線がまだ見えます。白くなり見えなくなります。上右図は術後1ヶ月です。下口唇の傷跡の赤い線はまだ見られますが、消えていきます。尚、人中部の白唇の縦長を測ると、15㎜とデザイン上よりも短縮しています。術後1ヶ月前後には、拘縮によりこの様になりますが、残念ながら予定通りに戻ります。
近接画像では、口角の下の傷跡が軽度肥厚性瘢痕ですが、この程度なら白くなり、目立たなくなります。この後3ヶ月で診せてもらいましょう。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税。口角挙上術は25万円+税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。