口周りの手術は減りました。多くの患者さんが受け終えたのか、それとも他院が増えたのか、他医が手を出しているのか解りません。最近”直美”が増えて真似されているのかも知れません。いずれにしても、今から10年以上前からコロナ間までは、私が日本一多くの口周りの手術をしていたかと思われます。学会発表の為に症例数を数えたら、確かに一番でした。そこには美容形成外科医出身の、私の優位性があるからです。
口周りの手術の重要点は二つあります。
一つは口周りの解剖学的構造を熟知している事。口唇は口腔の入り口で、摂食や咀嚼、構語の為に運動が激しい部位です。従って深部の筋、血管や神経の走行も複雑です。ですから口唇は赤い部分だけでなく、上下の皮膚にも構造が連続しているので、いつも強調している様に、赤い部位を赤唇、白い部位を白唇との用語を使います。欧米人は知っていますが、アジア人はおちょぼ口や薄い赤唇を良しとしてきて、口唇を無視してきましたから、日本人は赤唇と白唇の用語を知りません。なお韓国では術式を人中短縮と言って、日本の非形成外科の美容整形屋も使います。これなどまさに用語が間違っています。人中とは読んで字の如く人の真ん中で、溝と稜線を言います。人中だけ短縮したら富士山型になります。さらに言えば形成外科医は必ず、口唇裂の診療を勉強します。その際口唇の解剖を細かく学びます。ですから”上(白)唇短縮術”は形成外科医が施行するべきです。
二つ目は縫合法です。また書きますが、医師は国家試験に通っても手術法は知りません。縫合の内で真皮縫合は形成外科医しか学べません。顔面を繊細に切開し、組織を切除して、創を縫合したら通常は表面は1週間以内に綺麗に癒合します。しかし深部の真皮層はまだグズグズに軟らかく、断面が引っ張られるとコラーゲンは切れて数ヶ月間は拡がってしまいます。結果表面の傷跡も帯状に幅が出てきます。上に書いた様に口周りは構造的に運動が激しいので尚更です。そこで、真皮縫合が必要です!。真皮層を細かく密に、合わせていくのです。真皮層の創の面を接着するコラーゲンは、約3ヶ月で成熟して、強固になります。真皮縫合を密に懸けて、隙間なく寄せれば、その3ヶ月間はコラーゲンが強固になるまで寄せ続けますから、拡がりません。ちなみに私は上白口唇短縮術の際18針以上真皮縫合しています。創の長さは約45㎜ですから、3㎜間隔以上に密に、真皮縫合しています。真皮縫合後には隙間がありません。一般的に手術中には患者さんに見せませんが、たまに患者さんの希望で見せます。ブログにも載せることがあります。もっとも私は手術に集中していて撮り忘れることがあります。見たら解る様に、真皮縫合直後にはピッタリ合わさっています。そこでもう一度書きますが、真皮縫合は形成外科で研修しなければ、手に着きません。したがって非形成外科医である大手(使いたくない言葉です)のチェーン店の”直美”医には真皮縫合の技術を持ちません。また、これだけ細かく真皮縫合をすると時間が掛かるので、S.などのビジネス系のチェーン店では禁じられるのです。
この様に私の施行する上白唇短縮術には、いくつもの優位性があります。ただし、切開切除と3層の縫合には、繊細な技術と、手間と時間を掛けます。ですから、私の体力と精神力が必要です。やる気は患者さんへの思い入れです。そして術前には、気合いを入れて集中力を高めます。ですから手術直前は、いつもの私の様に患者さんにニコニコしたりしません。でも手術が終わったら、”集中できて巧く出来た!”とホッとして、患者さんにも見せて「どう?、巧く出来たでしょう。綺麗?。嬉しいね?。お互いに手術中には頑張ったからね。」と言います。ただし患者さんはニコッと笑おうとしてもまだ麻酔が効いていて動かせないか、痛くて笑えないかで残念です。
症例は19歳女性。来院していきなり、ブログ覧て、先生の手術したのが綺麗に出来ているから、切って下さいとお願いされました。私「待って待って、まず診察しましょう。」と言ってまず、約1mまで下がって遠目に診て、「長いね!。しかも形が寂しいね!。」と告げてから、近寄って計測に入ります。人中溝の白唇長19㎜。美容医学的計測値は上顔面(額生え際〜眉下)52㎜:中顔面(眉下〜鼻下)56㎜:下顔面(鼻下〜頤尖)65㎜と下が長い。下顔面の割合は上口唇(白+赤)縦長は27㎜:下口唇(赤〜頤尖)縦長は38㎜と、黄金分割比率の5:8よりも上がやはり4㎜長い。もう一度席に戻って約50㎝まで下がって、口元を診て、(下の画像も観ましょう)「Cupid’s bow,弓は明瞭にあります。口唇結節(=上赤唇中央の前への膨らみ)はあるにはありますが、ダルい感じでハッキリしません。人中は浅く、幅が11㎜と広いです。」と指摘しました。
結果「19㎜は4㎜切除して標準の15㎜にしましょう。両側鼻柱基部で、人中陵を内側に1.5㎜ずつ寄せて縫合して、可愛くしましょう。」と手術プランを伝えながらさらに「いや〇〇さんは元来可愛い系ですから、向上しますよ!。」と言いつつ、今度は社会歴を聴きました。生活歴は学生で見た目はおとなしい感じの女子ですが、ハッキリした口元にしたいそうです。長さは数字的にも見た目が長いので、早速手術したい由。社会的にはマスクで隠せるので、いつでも可能とのことで予定を立てます。
手術当日の直前に確認します。4㎜切除で、ドッグイヤーは目立たないでしょう。出来たら術後3ヶ月で焼きます。人中部で1.5㎜ずつ寄せます。
画像は各方向を経時的に観ましょう。
上左図は術前。上右図は術直後。短くなって明らかに可愛さアップしています。人中は狭くはっきりしました。弓が急峻で綺麗です。口唇結節は前に向きました。白唇のC-カールは強調されました。赤唇は腫れていますが、厚くなると女性的になります。
上左図は、術後1週間で抜糸しました。創の経過は良好で癒合も良好も。鼻翼の創はプリーツ状で待ちます。携帯的に満足頂けました。赤唇と人中も可愛さアップしました。
上右図は、術後2週間で全抜糸しました。形態はよく、「おとなしい、可愛いキャラクターに似合うね。」と告げたら、にこやかに笑顔を魅せて下さいました。
下には4方向の経時的画像
術前はとにかく口元が冗長です。
術直後では腫れていますが、口元がスッキリしました。
術後1週間で両側鼻翼感を抜糸しました。意外と腫脹の軽快が早い様です。
術後2週間では困るほどの腫れはなく、運動にも影響がありません。
術後1ヶ月の4方向でも口元がスッキリして観られます。
近接画像で簡単に手術の説明です。
術前のデザインです。切開線は両側鼻翼と白唇の折れ返り線〜鼻孔底隆起の下〜鼻柱と白唇の折れ返り線です。両側の鼻翼基部の間は全て4㎜切除します。
斜位像で見られる様に鼻翼基部から外側へ切除幅をテーパーしていきます。
いきなり切除物です。皮膚、皮下脂肪を全層切除します。上右図は縫合後です。実際には、口輪筋を折り畳んで縫合しC-カールを作成し、真皮縫合は密に全18針縫合した時点で隙間なく、面から段差をなくすべく縫合します。つまり三層縫合していますから、実に1時間以上かかります。
術直後の斜位像ですが、鼻翼横の切開線は内外で長さが違うので、ドッグイヤーにならない様に辻褄を合わせて、巧く合わせていくのがポイントです。
下左図は術後1週間で両側鼻翼感を抜糸した後の近接画像です。線は赤いですが幅はありません。
上右図は術後2週間で全抜糸した後の近接画像です。1週間前に抜糸した創痕は赤味が引いてきて目立たなくなり始めています。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として20%オフとなります。