本症例は面白い!。題名にある様に眼球の位置が近いので、内眼角間距離も大きくない。でも蒙古襞の拘縮と被さりがあり、目の窓が吊り目型です。本症例に目頭切開=蒙古襞の拘縮解除術をしても良いのかは、読者の皆さんもも迷うところでしょう。私も悩みました。でも、やはり画像を見れば結果は得られています。もちろん今後の経過を診ていかなければ、皆さんも評価が難しいでしょう。でも私には見えています。やってよかったと思います。実は、私のリピーターで、これまでにもブログ提示しています。あくまでも、提示部は手術部位に限る契約なので、教えられません。今回の眼瞼部の提示に際しても別人使いにしていきます。
症例は37歳、女性。実は昨年初診時から眼瞼部の修正を求められました。3年前に他院で挙筋短縮術を受けましたが、奥二重のままで皮膚の下垂が改善していないのを訴えました。しょうがないので来院時もアイプチしていました。重瞼の引き込みは弱く、他院で埋没法の重瞼術を受けてきました。その後眉下切開での皮膚除去をしました。皮膚は持ち上がりましたが開瞼は弱いままです。その後他の部位の手術を先行しました。
その他部位の経過を診ているうちに眼瞼下垂状態が再発してきました。皮膚の余剰も気になります。重瞼はやはり浅く、どう考えてもいつかは外れそうです。また画像を見ても判る様に蒙古襞が突っ張っていて内側の白目が隠れていて、吊り目状態です。そこで計測すると、眼裂横径26mm内眼角間30mm、角膜中心間54mmです。さあどうする?。目頭切開は何十年も前から蒙古襞を除去する術式が考案されてきました。そうして内眼角間距離を近づけるとさすがにおかしいのです。そして蒙古襞は拘縮がもう一つの問題なので、その解除を目的としているのに、これまでの術式では効果が得られません。それどころか縦の創跡が却って拘縮してしまうことが往々にしてあります。理論的にもそうです。
当院では(私が大部分ですが)目頭切開をZ-形成術で行ってきました。理論的には、一辺4mmのZ-形成を入れ替えると、横方向には1.25mm×2程開きます。そして縦に(蒙古襞の稜線に沿って)3mm皮膚が伸びます。すると突っ張ったひだが“和らぎます”。本来ひだとは折れ目という意味でプリーツのことです。そのうちの一枚に見るでしょう。だからこれまでは除去するだけの術式が横行してきました。それに対して、私達がこの10年来頻用しているZ-形成術に依る目頭切開術=蒙古襞の拘縮解除術は、形態と機能の改善を同時に満たすことが出来る術式です。そこでやはり、一辺4mmのZ‐形成術を併施した方がより形態的にも開瞼機能的にも有用性が高いとの結論に到り、患者さんも理解の上開園を求められました。
下の画像は。術前、術前のデザイン、術直後、手術翌日の順です。
本症例の患者さんはこれまでも、手術に精神的に安定して臨まれました。「信頼しています!」と仰いました。だから、手術中の出血や腫脹が少なく済みます。手術直後の画像でも血痂が着いていません。ただし右眼瞼には腫脹が生じてきました。開瞼が阻害されています。術中には確認していますからちゃんと開きます。比して左眼瞼の形態と機能は良好です。パッチリ開き蒙古襞の拘縮と被さりが消失してアーモンドアイになりました。でも手術翌日には両眼腱とも主張が亢進しました。アッそうだ!思い出した。過去の画像を見直しましたが、これまでも術後の経過中は軽くない患者さんなのでした。でも経過の解消スピードは比較的早い方です。心配しないでくださいね。下の欄で片側眼瞼の近接像を見てみましょう。
左眼瞼の術前と術直後の画像を比べてみると、まず第一に開瞼は明らかに向上しています。角膜の上に掛る眼瞼縁の形も水平化しています。内側が良く挙がったからです。目頭の向きは下向きから横向きになりました過日「私の目頭は鎌みたいでしょ?。治してください?」とある患者さんが訴えました。私は即座に「Z-形成術なら唯一治せます。」シミュレーションして見せると「これこれ、こうして下さい。」と患者さんはノリノリです。私は「この通りの目頭の向きにしましょう。任せて下さい。4mmのZの適応です。」その患者さんもよく理解していて、蒙古襞の拘縮の解除を主目的に行いました。本患者さんさんはもちろんその目的です。蒙古襞が斜めに突っ張っているのでZ-形成の縦辺を沿ってデザインすれば、それに直角方向に1.5mm開きますから、真横には1.25mm程度開きます。そして蒙古襞に沿って皮膚が3mm伸びますから、瞼縁のカーブが長くなり開瞼が向上しています。
右眼瞼は術直後に腫脹を生じました。内側の瞼縁に腫れた皮膚が圧し掛かっていて、開瞼の大きさが不明です。術中にはちゃんと開いていました。目頭の向きは下向きから横向きになっていて蒙古襞は緩んでいます。涙湖(目頭の赤肉)に着目してよく見ると、両眼瞼とも露出の大きさは僅かな拡大しかありません。ただ見える形と位置が変わっただけです。要するに目頭が鎌形から横向きになったのです。
本症例は物議を醸すかも知れません。目の間が離れていないのに目頭切開の適応性はあるのか?。Z‐形成法でも少しは開くので、異常感を見られないか?。少なくとも目頭切開を切除術をしてはいけないでしょ?。
答えは4mmのZ‐形成術は蒙古襞の拘縮があるどの症例にも適応すると判りました。一重瞼の標準的な蒙古襞と、二重瞼の標準的な蒙古襞は平均で3mm程です。本症例は術前の内眼角間距離が30mmですが、角膜中心間距離が54mmと平均:60mmに比べ6mmも近いからです。本症例は一重瞼に近い奥二重(瞼縁に皮膚が懸かる)だったので蒙古襞は普通に被さり拘縮していました。だから蒙古襞の拘縮解除を主目的とするZ‐形成法による目頭切開なら施行してよいと考えます。実際に画像を見ると、目の窓が寄り過ぎて変な印象はないです。もちろん開瞼が向上して、縦横のバランスが合ったからでもあります。所謂アーモンドアイに出来ましたからこれは自然な目の窓の形なのです。
本症例は手術中はやり易く、よく出来ました。と言っていたのに、術直後に見ると腫脹がいきなり亢進していました。それも右眼瞼が酷かったのですが、手術翌日は両眼瞼共が腫れました。腫れると組織量が増えて引き上げるのに力が伝わりません。蒙古襞は目頭で瞼縁が下眼瞼に連続しています。拘縮解除をしてもあくまでも下眼瞼についていますから腫れると内側方面が挙がりません。他の症例でも多くがそうなります。そして必ず、経過を診ていくと意図した様に挙がってきます。術後概ね2~4週間は掛かります。次回は術後1週間です。どうでしょうか?。お楽しみに!