「慣れました。」と書くと、これまでは上手くなかった様に捉えられるかも知れません。違います。言い訳になりますが、広範囲隔離リフトは他では余りされていません。いや、剥離範囲を患者さんにお示しして教える様な親切で真面目な美容形成外科医は、他には聞いた事が無いというだけかも知れません。少なくともチェーン店系では出来ません。
何れにしても広範囲剥離リフトの効能は余り知られていません。私は今から２５年程前に先輩医に教えてもらいました。「靭帯法が一番だが、大変だし危ないし難しい！。次に効いて長持ちするのは広範囲剥離皮下リフトだ。しかも比較的容易だ！。SMAS法よりもいいよ！。」それ以来たまに、”適度”な広範囲剥離リフトをしていました。その後試行錯誤して、剥離範囲を拡大して、今から５年前からは、定番の手術法としています。その点で結果が得られて、５年単位の中長期的経過を診て来て、持続性が証明されました。つまり慣れは結果が見えると言う事です。
しかもこの２年間程はブログを診て希望患者さんが増えました。標準的経過が判っています。しかもやはり、手術時のポイント、コツが、手術中にピンッと閃きます。症例を重ねると、切開部に近い剥離腔は剥がしながら念入りに止血して、切開線から５㎝以上奥は無理に突っ込んでごそごそしない方が良いと判って来ました。何故なら特にこめかみからの剥離は、曲面なので、奥に行けばいく程、緊張が強く剥離した皮膚をベースの皮下脂肪に押し付ける力が働くので、圧迫止血作用が自動的に働くからです。経験で判って来たし実際に術中に自然に止まっているし、術後にも再出血は少ないと判って来たからです。
こめかみリフトの多くの症例はゴルゴ線を消したい目的です。先日はたこ焼きを吊り上げたい症例もいらっしゃいました。他に目の窓を引き上げたい患者さんもいらっしゃいました。ですから、実際の引き上げ方向も症例ごとに違います。本症例はゴルゴ線も、注入物を潰す作用も、目の窓の若干の引き上げ効果も希望されました。いや、私とのコミュニケーションが深いので、説明と同意が細かく為されるから出来る事です。患者さんは求めた事がそれぞれ得られてお悦びになります。もちろんダウンタイムはゼロでは有りませんが、術後早期から患者さんは判ります。それは画像を視れば判るでしょう。患者さんはいつも、診察時にも楽しんで下さいます。
症例は、５２歳女性。これまで私に口周りの手術を受けました。その後広範囲剥離Jowl lift を検討していました。その後診察していて、他院でのゴルゴ線から頬骨隆起部に架けて脂肪注入を受けた後の、しこり感と段差が気になることを訴えられました。脂肪溶解ではゴルゴ線の分が減って結果的に瞼頬溝と目袋が目立つこととなり、まずは”本当の”Hamra法を私が昨年施行しました。結果は良好で、すごい効果にお喜びでした。少なくとも、今回の術前画像上まぶた頬溝と目袋は写っていません。満足されましたが、Hamra法ではゴルゴ線は埋められないのです。
患者さんはリフトの予定を立てようかと考えていたそうです。GWに予定を立てるため本年に入ってから相談していましたが、Hamra法の結果目袋と熊が改善されたら、ゴルゴ線が余計に気になると患者さんは見立てました。因みにJowlは無くはないが現在はマスクで隠しているから先延ばしで考えていらっしゃいました。もう一度３月にHamra法の経過診察とこめかみリフトの再検討に来院されました。
カルテを転記します。【Hamra法で目袋と瞼頬溝(クマ)は消失。注入脂肪は見えるが目立たなくなっている。涙袋はhamram法の際に眼輪筋を折り畳んで造ったが萎縮傾向。涙袋をヒアルロン酸で追加。】【こめかみリフト：目の窓が近い。眼球も近い。〔内眼角間２９㎜：眼裂横径２５㎜：角膜中心間５５㎜で頬骨間最大幅１３０㎜と小さい〕頬骨隆起は標準的なので、水平から３０度斜め上が適切。若干目尻が上がって良い。
画像は術前とデザインから。
術直前の確認診察でやはり４５度方向で、目が上がっても良いと云われた。ゴルゴ線は診えます。因みに正面からは側面にある切開線が見えません。そこからこの範囲を剥離するのですから、かなり湾曲面だと言えます。
側面像でもゴルゴ線は診えます。
斜位像ではゴルゴ線が正面視されるので影は見えません。
デザインは手術室で描きます。手術ライトは強力なのでゴルゴ線の影が見えません。切開線は見えます。約３㎝です。
斜位像では剥離範囲がよく判ります。一番前の下奥の線はゴルゴ線です。
今回手術中に、切開、剥離した後に引き上げ、切開線の中央に皮膚に割を入れて、キースーチャー(縫える幅を決める縫合)後撮影しました。更に皮膚を切除するデザインもしました。頭皮も前へ引かれますから、抑えながら縫うのです。
左右の切除した皮膚。最大１．５㎝です。二つの三角を合わせるとスピンドル(紡錘形)になります。
術直後は腫脹します。ゴルゴ線は見えません。
術直後でも側面像では腫れが見えませんが、内出血は起きました。
斜位像では剥離腔範囲の下縁に内出血が診られます。そう言うものです。重力です。
下には術後１種間です。法事で私は診られませんでした。抜糸してもらいました。
１週間でこんなに治りが早い！。
しかも内出血も黄色くなりました。ゴルゴ線は診えません。
斜位像でもスッキリしてきました。創跡も目立たなくなります。
次回経過画像と診察の所見をお届けします。
術後１ヶ月で見せて下さいました。
診察室に入るなり、お互いにびっくり。
頬骨隆起部が膨隆して、その内側にゴルゴ線。お互いに困りながら、考えます。
側面像ではよく判らないかもしれません。でも色がついています。
斜位像では凸と下の折れ返りが見えます。右には陥凹点さえ見えます。患者さんを診ながら、慌てて過去の画像を見直します。
術前には、ゴルゴ線はあれど頬骨隆起部の突は骨格でした。術直後は内出血はあれどゴルゴ線は消失しています。若干の血腫はありそうな画でした。術後1週間では、内出血の跡の色は残っていても、形態的にはスッキリしています。右の陥凹点もありませんでした。
さらに実は、３ヶ月ほど前にブログに載せた他の症例でも、同様のコースが軽く起きていました。本症例の患者さんも観たそうです。その際も術後１ヶ月に発生して、術後３ヶ月に来院されるなり、「治りました！。」と、私をほっとさせて下さいました。
前回も考えた通り、剥離範囲は”ベース”(剥離は皮膚と皮下脂肪一層だけで下に皮下脂肪層の大部分は残す)にコラーゲンが析出して膨隆し、膨れて、剥離の先端から癒着していく際に、析出したコラーゲンが拘縮して凹むのです。コラーゲンが３か月程度で成熟して軟らかくなれば、通常の硬さに戻っていき、凹みが消え、段差が無くなります。
術後３ヶ月ですが、「完成！」の声は上げません。
もちろん段差はかなり解消しました。その上効果は後戻りしていません。患者さんも認めて下さいました。
斜位像でもですが、頬骨隆起部がまだテカっています。ゴルゴ線は溝ではなくなっても色素沈着が診られます。溝だった皮膚は、拘縮していたので、血行が低下していたので、色素沈着し得るのでしょう。さらに時間がかかり、真皮層のコラーゲンが置き換われば消えていくでしょう。
側面像では頬骨隆起部の膨隆もゴルゴ線の溝も見えませんが、色素沈着は見られます。
その様なわけでできれば来月以降、完成を見せていただければ助かります。実は他の部位の治療のため来院していただける予定です。
当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守し、ホームページの修正を行っています。
施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは１～２週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、３ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに２週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2～４週間程度かかります。・手術後２週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、２週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後３日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後１週間（抜糸まで）は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。
費用の説明も加えなければなりません。こめかみリフトは４０万円＋消費税です。こめかみリフト手術後は、上中顔面全体を載せますから、ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、出演料として２０％オフとなります。
