症例;21歳女性 眼裂横径25㎜/内眼角間距離36㎜ 重瞼はこれまでに埋没法を受けているが、弱って来ているし、狭いのがつまらないとの事。これまでのラインより1.5㎜挙げる希望。
こうなると単なる埋没法=当院ではMT法や、スクエアー法を使い分けていますが、それだけではまた取れますよね。広い重瞼設定では、持ち上げる量が増えるので、負け易いのです。
埋没法とは、糸で眼瞼の裏側と表を繋ぐ事で、開瞼時の挙上力を皮膚に伝える手術です。二重まぶたと一重まぶたは構造が違うので、一重まぶたや狭い二重まぶたを適切な二重まぶたに、構造改革する手術です。筋力の伝達を行うには糸で充分です。半永久的に糸はあります。
しかし、皮膚側が弱いのです。よく、「糸が切れたりしないんですか?」と聴かれますが、「私は取れた人の切開を何十例として来ましたが、1本も切れていませんでした。」と答えます。「糸は切れませんが、皮膚や軟部組織が切れて行って、糸が潜り込んでしまうのです。」と説明しても、ポカーンとしてピンと来ていない患者さんがほとんどです。「焼豚を作る時、肉を強く縛ったら喰い込んで行くでしょう。」と例えたり、「ここにボタンがあるでしょ、強く引っ張るとボタンが取れますが、糸が切れる事もあれば、布が切れる事もありますよね。」と引っ張って実演してみたりします。
要するに、埋没法が戻る際に糸は切れません。もしほどけたら、術者が下手くそなだけです。糸が皮膚のすぐ裏にあって皮膚を持ち上げて欲しいのに、潜り込んで行ってしまウから、持ち上げられなくなるのです。まぶたの厚さは5㎜程度、厚ぼったい人でも1㎝はありません。目を閉じた時にこの長さのループを作り、目を開く際には一緒に持ち上げて行く様にすればいいのです。長さは私の勉強として、医学博士研究の際に計りました。皮膚の裏から奥に潜り込んだら、例えば3㎜の距離を5㎜の糸で引いてもたわんでしまって持ち上げられません。この仕組みで埋没法は戻る事があるのです。
まぶたは上眼瞼挙筋という、目を開く筋肉が収縮して持ち上げます。この力が皮膚に伝達するのが二重まぶたの構造です。自然では挙筋腱膜は瞼板の上縁から皮膚に向かって枝分かれしています。これは私の博士論文にて証明しました。では埋没法の際、裏側は糸をどこに掛けるのが適切かと言えば、瞼板の上縁です。アジア人では瞼縁から7㎜前後です。ですから、瞼板の上縁つまり挙筋に掛けるべきだと思います。しかも、挙筋腱膜から、前方へ枝分かれする繊維(コラーゲン繊維の束)は遊びがあります。糸は遊びがないのですが、挙筋に掛ければ遊びが作れるので、自然の二重まぶたの動きが作れます。もし瞼板に掛けると遊びがないので糸が強く皮膚側を引くので、糸が潜り込み易いのです。チェーン店ではよく行われていて、すぐ戻ったという患者さんが、よく当院に駆け込んできます。
そして、広い二重(今回の症例では7,5㎜)では、筋力が強くないと重くて開かなくなります。一重まぶたや、狭い二重まぶたの人は、筋力の弱い、つまり眼瞼下垂状態の人がほとんどです。そりゃあそうです。皮膚が被さっている状態で育って来たら、目を開く筋力は無駄な事だから、筋力は不要な構造だから。
ですから、広い二重を作る際には、筋力を強化しておかないと、眠そうな目付きが露呈してしまいます。そこで、切らない眼瞼下垂手術=NILT法の出番です。上記の画像をご覧いただければお判りでしょう。瞼縁がちゃんと挙がっています。黒目が大きく露出しています。これで黒目整形の出来上がりです。
術直後ですと、筋力が強化され過ぎています。麻酔の影響と、糸の喰い込みのためです。必ず丁度良くなります。これまで週単位での経過を何例も提示してきましたので、ご覧ください。来週の画像提示が楽しみです。