2024 . 10 . 11

上(白)口唇短縮術が再び増加中。毎日です。今回はなんと、久し振りに鼻唇角プロテーシスの併施も。

”最近美容医療が流行ってきた”。と感じている国民が増えてきました。聴く度に私「エ〜!、そんなあ〜?!。」と叫びます。私は37年間美容形成外科医として邁進してきました。長男として美容整形屋の父に仕込まれた65年間も知っています。昔小学生時に、祖母は音楽教師だったのに逆に反発して音楽に縁がない父が、突然大きなステレオセットを購入しました。しかもその後毎日の様にシングルレコードをお土産に持って帰りました。”ブルーライトヨコハマ”など流行りの曲でした。今思えば患者さん自身から貰ったのだったのでしょう。父は流行っていたのです。

本邦では、戦後直ぐから美容医療が興隆しました。当初はGI相手のパンパンさんが、対象患者さんでした。高度成長期に入ると、銀座のホステスを代表とする水商売の女性が、こぞって来院されました。同時にそこから輩出された歌手やタレントさんも皆、デビュー前に治しました。その後一経済的に優位となった一般国民の受診者もどんどん増えました。美容整形のクリニックも増えて、例えば昭和40年には、山手線の各駅に医院がある程となりました。つまり30店以上です。

転換期は昭和50年代です。51年(1976年)に形成外科が、53年(1978年)に美容外科が標榜科目とされました。標榜科目とは、医療機関(病院,医院,診療所,クリニック,Clinic)の広告や看板に書いてよい診療科目名です。その結果”〇〇美容外科”としての広告が流せるようになりました。そして全国的にTVCMや雑誌広告を流し、チェーン店として全国展開すれば、元が取れる仕組みです。こうして、美容医療に限っては資本主義的な姿勢が採られ始めました。

チェーン店の嚆矢はT.クリニックでした。形成外科でも美容外科出身でもないのですが、美容外科を標榜して雑誌広告とTVCMを垂れ流し、患者さんを集め、形成外科の標榜に力を入れたO,教授に手術させてこなす。その後数県に展開していきました。医者が名古屋と大阪と東京を行き来するので”新幹線整形”と呼ばれました。昭和60年代からチェーン店は更に増えて、J.病院出身のS.や神奈川Cl.が広告を増やして、チェーン店を全国展開します。しかもそこでは、医師は新人や他科(非形成外科)からの転科医を雇って、教育システムもなく、数をこなさせるビジネスモデルを成立させます。そこから独立した医師がビジネスモデルを更に集約したのが、現時点で最多のCMを撒くもう一つのS.です。その後21世紀に入ると、IT時代ですから、SNSを多用します。画像が視られるのは患者さんに取って好いのですが、改竄が横行しました。数年前にやっと規制する政令が成立しましたが、逆にTVCMが増えました。資本主義の権化と化しました。

チェーン店系では、複合する問題点が生じました。まず広告料は意外と高いのです。製造業なら大量生産すれば元が取れますが、人が手を下す医療では、時間単価は知れています。どのチェーン店クリニックでも、売上の半分程を広告に費やしています。なお、私たちも今や5店舗持っていますが、SNSが主体でTVCMは売っていないので、広告費用は掛かっていません。私など広告(誘引を目的とした宣伝ではない)としては、頭と手と時間を使ったブログに限っています。さて広告費用が半分掛かるなら二つの方法論が使われます。料金を釣り上げるトッピング法と、手術を始めとした診療時間の短縮法です。どっちにしても、人である医師が概ね半分の時間で治療(手術)するわけですから、丁寧には出来ません。もちろん診察時間も短縮しますから、それぞれの患者さんに適合した治療法を選択できません。そもそも広告を見て来院する患者さんには、その方法を押し付けます。

また苦言ばかり呈してしまいました。そこで皆さん、本症例の診療に対する知識は、画像に添える説明で学んで下さい。詳しく時間を追って書きます。有用ですよ。

症例は36歳女性。いきなり診て「鼻翼の横が膨らんでいるよね・。」と問う。患者さん「よく笑うんです。」私「だから、上唇鼻翼挙筋が発達しているんですかね?。」と話が飛んでさらに「頬骨筋群と言って、笑う時に使う表情筋達の一部です。」と、”だからなんだ!”と思いながら「たぶん上白唇短縮術時にはこの筋群もやっつけられますよ。」と一応提言しました。

本題です。人中部の上白唇長は22㎜。自分でも測ったそうです。「あたり!。」と云われました。縦の長さを測ると、上顔面72㎜:中顔面62㎜:下顔面70㎜=顔面長204㎜と長い中でも下が長い。上口唇28㎜:下口唇42㎜と黄金分割比(5:8)よりも上が3㎜長い。下が持ち上がるから5㎜切除可能と考えた。人中幅は8㎜、Cupidの弓が明瞭、口唇結節(赤唇中央の膨らみ)は画像の様にぷくっと可愛く前向き。鼻柱部で人中綾を寄せる必要はないタイプ。ちなみに歯列矯正中で歯牙にデバイスが着いているが、上白唇短縮術は影響しないと考えられる。

口角を評価します。顔面部品の横長は、内眼角間36㎜:鼻翼幅36㎜:口唇横径49㎜で黄金分割比で計算すると、垂直から30度斜め外方向へ6㎜挙上が適応と考えた。

もう一つ、鼻翼基部よりも鼻柱が4㎜上方で、鼻唇角下制術(プロテーシス)が適応ではある。後日か?、創内から同時施行か?、検討課題としましょう。

1ヶ月後に再診されました。もう一度ブログを視てきました。白唇短縮術時に創内から同時に鼻唇角プロテーシス挿入術を希望されました。ただし看護師が診ただけでした。彼女とは予め検討しておきました。よく解っていて、信頼できる女子です。現時点で歯列矯正中で、口を横に引っ張るので口角は後日にするべきなこと。鼻唇角プロテーシス挿入を、私も創内からの経験はあり、可能であるとしてあったので、手術内容が決定しました。

もちろん手術当日に、私も確認して開始します。

画像は術前、術後の正面像と4方向から載せて、下段に近接画像で術中画像があります。

術前の正面像とデザイン後。鼻翼基部の位置と鼻柱基部の上下関係は明らかに差があります。デザインは、両側鼻翼間を5㎜切除です。

術前の4方向では、Eーラインは直線上ですが両顎は前傾しています。頤があるのに上口唇は長い。

術直後は上下の口唇(白+赤)のバランスが黄金分割比になります。

4方向では、特に斜位像では、バランスが良くなっています。

術後1週間で両側鼻翼感を抜糸しました。創は癒合良好ですが、プロテーシスを入れた鼻柱基部が押し出されて、創縁が膨らんでいます。

4方向では腫脹が軽い為E-ラインが綺麗でスッキリしています。なお口は閉じていますが、まだ下口唇を挙げています。でも頤の梅干状態は目立ちません。表情筋の使い方は上手いのでしょう。

上下の列は術後2週間で全抜糸後です。傷跡の線はまだ赤いのですが形は良い。

4方向は口元が綺麗な印象です。

とは言っても、今回の術中近接画像は、創内からのプロテーシス挿入術を主に撮りました。

鼻柱基部と鼻翼基部の高さは、測ると上下に4㎜の差がありました。下方から診ても、凹んでいるから影になっています。

デザインは両側鼻翼間を平行に5㎜ですから、鼻翼の横に向かってテーパーしていきます。その為その部分の鼻側の丸い切開線の長さと、頬側の丸い切開線の長さはかなり差があります。上右図は切開後に皮膚、皮下脂肪を全層切除した後で、口輪筋が全面的に露出しています。ただし口輪筋は切除しません。筋は縫縮に使い、半量引き上げて、外反効果にも利用します。もう一度書きますが、鼻翼基部から横の切開線の長さは明らかに差がありますよね。

上左図は皮膚側から切除物を写しました。サイズはデザイン通りですね。上右図は裏側から写しました。皮下脂肪が全てここにあり、筋はくっ付いていません。切除層が合っています。

この度、鼻唇溝プロテーシスを創内から入れました。単なる思いつきではなく、やったこともあるし、予め解剖学図譜をじっくり読んで、入れ方を頭に入れてから手術に臨みました。まず上左図の様に鼻柱基部の下の口輪筋を小さく切開してみます。この後ろには歯槽骨が有りますから、指で触れて、その前に入ります。上右図の如くここから鼻柱の皮下に向かってポケットを作りました。筋鉤が入っています。これと同じサイズのポケットです。

サイズを合わせて、プロテーシスを作成しました。上左図の上の細い方が鼻柱の皮下に入ります。青い印は前を示しています。上右図の様に底はほどんど円形で、径はメジャーで示す様に6㎜としました。これなら入ります。

入れました。細い方から入れていって、丸い部分まで突っ込みました。上右図の如く前から見ると、鼻柱と鼻翼が水平線上になっています。

そして、その入り口の口輪筋を縫合して、閉じて、 プロテーシスを納めました。もう見えません。上右図の如く、鼻柱基部と鼻翼基部は一直線上です。

上白唇短縮術に戻って終えました。真皮縫合18針後皮膚連続縫合しました。

術後1週間で両側鼻翼感を抜糸しました。傷跡は赤いですがピッタリ合わさっています。

術後2週間で両側鼻翼の抜糸をしました。線の幅は広がりません。鼻柱が上に喰い込んでいるのは、プロテーシスで改善されました。

当院では、厚生労働省より改定され施行された省令「医療機関ホームページガイドライン」に遵守しホームページに加筆を行っています。

施術のリスク・副作用について・麻酔薬にて、アレルギー反応を起こす場合があります。その場合は適切な処置を行います。・腫れは個人差がありますが、手術直後から少し腫れがあり、翌日がピークで徐々に引いていきます。目立つほどの大きな腫れは1~2週間程度です。・術後のむくみや細かな左右差の改善には、3ヶ月程度かかります。・内出血が起こった場合は完全にひくまでに2週間程度かかることがあります。・感染予防のため、抗生剤を内服していただきます。・抜糸までの間、鼻下を伸ばす表情はお控え下さい。・口唇部の違和感は、2~4週間程度かかります。・手術後2週間は、口を大きく開けることはお控え下さい。・手術直後は、つっぱりを感じることがありますが、2週間程度で改善していきます。・手術当日は、洗顔をお控え下さい。・手術後3日間は、飲酒・激しい運動・サウナ・入浴など、血流が良くなることはお控え下さい。・手術後1週間(抜糸まで)は、鼻孔部位のお化粧はお控え下さい。・ケロイド体質の方は傷跡が残りやすい場合があります。

費用の提示です。上口唇短縮術は28万円+消費税。鼻柱部下制のための鼻唇角プロテーシス挿入は、20万円+消費税。ブログ掲載の契約を受けてもらえたら、20%オフとなります。