日本美容外科学会での話題の続きです。私達が力を入れている眼瞼のセッション。2回目は眼瞼下垂手術のお直しの議論です。私共のテーマです。このブログでも、池田先生のブログでも、ホームページでも多くの部分を占めていますよね。
それどころか、私達形成外科出身の美容外科医に取っては、まぶたの治療は得意分野の筈です。その為には現下の医療的水準を保つ為に、学会で勉強し続けていくことが必要です。というか、そうすることがビジネスに染まらない美容形成外科医の、医師としての矜持。チェーン店の美容整形屋とは違う点です。
私は、28年前に医師になってすぐに、日本形成外科学会と日本美容学会に加入しました。私の父は美容整形医として、外人顔を目指して重瞼術を沢山していましたから、私にとっても眼瞼が一番興味がある分野となっていたのですが、形成外科学会で眼瞼下垂症の診療に精通している者は少なく、いつも同じ数名が議論していまいた。美容外科学会では眼瞼下垂の疾病概念がまだ認知されていませんが、眼瞼の診療つまり一重瞼を二重まぶたにする重瞼術や、弛んだまぶたに対するしわ取り術が良く行われていました。
実際大学病院形成外科では、眼瞼形成術を経験する機会はありませんでした。5年目に眼瞼のあざを切除する際に、その後教授になる内沼栄樹先生に指導してもらいながら、「これは将来お前が沢山することになる重瞼術の応用だ。」といわれながら、手術をさせてもらった記憶があります。6年目に出向病院で眼瞼下垂症の手術を指導してもらいながら手術しました。その後私は出向病院の一つをまかされて、眼瞼形成術を積極的に行いました。実はその前に、父の医院で一緒に眼瞼形成術を数多くしていました。
話がそれました。私は眼瞼形成術の成書(教科書的本)や、洋書を購入し勉強していきました。形成、美容の両学会でも徐々に演題が増えてきました。そして今から約20年前、革命が起きました。丁度その頃学会で「形成外科医は積極的に美容外科を診療しよう!」との塩谷教授の宣言がありました。同時期に信州大学形成外科教授である松尾清先生が、眼瞼下垂症の研究発表を毎年何題も学会発表し始めました。しかも塩谷名誉教授がマスコミとの関係を取り持ち、眼瞼下垂症診療の記事を新聞に書き始め、話題になりました。
美容外科(美容整形)領域のしわ取り手術は加齢者が対象ですから、後天性腱膜性眼瞼下垂症を併発している率が70%はあります。重瞼術を希望する一重瞼の人は先天性眼瞼下垂症を伴っていることが多いです。(蒙古襞の為でもあります。)従来の眼瞼下垂症の診療は、欧米の眼形成外科から学んだため、アジア人特有の重瞼や腫れまぶたとの関連が考慮されていませんでした。逆に美容整形医は眼瞼下垂症を知りもしませんでした。父もそうでした。
20年前から松尾清教授は、後天性腱膜性 眼瞼下垂症のメカニズム、診断法、神経生理学的研究を次々に発表してきました。このブログで`お勉強シリーズ`で書いた1980年代のAponeurotic Surgeryを本邦に紹介したのも彼です。 彼は人を見るたびに「あなたも眼瞼下垂です。」と指摘し、概念を広めると同時に、肩こり頭痛などの合併する症状の神経生理学的機序を研究発表していき、学会発表していきました。同時にマスコミに投稿していき、TV出演もして啓蒙活動を行ったことは画期的でした。形成外科医が美容外科を診療していく際に、眼瞼下垂症の診療の知識が有用であったのはいうまでもありませんが、そうはいっても形成外科学会や、美容外科学会JSAPSで勉強していなければ、使い物になりません。
今更いうのもなんですが、平成8年に父が日本美容外科学会JSASを開催した際に、私は眼瞼下垂症の講演をしました。それまで眼瞼下垂症と、重瞼術や眼瞼しわ取り術といった眼瞼形成術の関連を考慮していなかった、美容整形出身の非形成外科医に教えてしまったのです。その後、チェーン店系が眼瞼下垂をメニューに入れたのはこの結果だろうと、後悔しています。だって彼等は今でもまともにできもしないのですよ。
今回の日本美容外科学会までに、眼瞼下垂症の診療は年々進歩し、合併症も含めて国民に啓蒙されてきました。でも、これまでの学術的知見を年次理解し、頭に入れていなければ、今回の議論にも加われません。実際、年配の医師の中にはまだ理解していない者が多いようで、議論がかみ合いませんでした。昨年の松尾先生の講演で、開瞼のメカニズムがまとめられています。そして、強化法もまとめられています。細かいことはまたの機会にしますが、一つだけ:眼瞼結膜とその深部のミューラー筋の短縮も開瞼を強化するとの知見は、私達のオリジナルの切らない眼瞼下垂手術=黒目整形=NILT法の原理を理論的に説明しています。言って見れば学会からの科学的なお墨付きです。腱膜性眼瞼下垂は加齢に伴い悪化しますから、高齢化社会の日本では年々増えています。美容整形でテキトーに治療されている患者さんも多いのですが、学会単位で広報して、私達にお任せいただくと、安心だと思います。過去20数年の医学的知識のを集約していますからね。
またまた、長くなりました。何しろ私達の得意とする眼瞼形成術の分野ですから、これからも発表していきたいと思います。
下眼瞼の分野は次回説明致します。