2015 . 9 . 25

日本美容外科学会の第38回総会に参加して。−興味のあったトピックスⅠ−

9月22日火曜日と9月23日水曜日は日本美容外科学会の第38回総会が開催されました。ここでの為になった話題をピックップします。と言っても、やっぱり眼瞼ですか?。と辟易されるかもしれません。

他の分野も聴講したかったのですが、学会のプログラムがそうはいかないのです。学会は予めプログラムと抄録が配布されますが、三列の配列で、見たいものが重なるため、偏ってみることになってしまいます。鼻やリフト等は聴講できませんでした。

眼瞼のうち;目頭切開、眼瞼下垂、下眼瞼のシンポジウムをじっくり見ました。そこでまず、ブログを書く前に、もう一度前抄録を読み返してみました。

その前に学会とは何をするところかを説明します。まず学会とは、学術的提示と議論の場所です。ある学術分野の世界的な知識を持った有志が集まって発足します。法人格をもつことが多いですが、あくまでも任意団体です。医学に限らず、科学的知識を発表して、定説を作り上げることが目的です。医学界では、各科目ごとに学会があります。美本美容外科学会が二つあるのはこれまでにも説明してきましたが、形成外科出身の日本美容外科学会であるJSAPSは特定領域と言って形成外科学会の一分野になるでしょう。 通常の学会は年1回の学術総会を開催します。日本美容外科学会JSAPSは2~3日間です。各部位ごとに数題の演題が発表されますし、いくつかのシンポジウムもあります。演題発表はもちろん画像提示され、発表者は講演で説明します。たいていはその後にディスカッションの時間があります。ここが大事なのですが、時間の関係で飛ばされることもあります。

これが学会ですが、為になることもあれば、面白くない時間の無駄ともいえる内容もあり、いい演題を探すギャンブルみたいです。私は医師になる前から日本美容外科学会に加入していましたから、38回のうち28回は出席してきましたが、ほとんどが為になりました。

今回のテーマ1:目頭切開の概念は、我々の年配の重鎮と呼ばれる美容形成外科医と私達の年代の美容形成外科医とではかなり遷移しています。言うなれば、父の時代から目頭切開は定番の手術でした。外人顔に近づける手段です。これまでにも歴史に記述して来た通り戦後のUSA崇拝の副産物です。日本人を始めとした東アジア人の特徴である蒙古襞を無くせば、白人に近づける(本当にお近づきになる為でもあります。)と言う考え方です。父はがばっと開いて「いいねえ!」と言っていました。今でも患者をフォローしていますがメイクをすれば確かに綺麗ですが、ノーメイクでは創跡は目立つしばればれです。バレバレでない手術結果を意図して、形成外科出身の美容外科医が目頭切開をModifyしました。いくつかの方法が開発されました。でもやはり、結局は蒙古襞を除去することを目的としていました。デザインを縮小して目立たなくしただけです。

その中で、蒙古襞は拘縮でもあると見たのか、拘縮に敏感な形成外科医のうちの一人が、その為の手術法を発表しました。面白い話ですが、その先生はUSAで開業しているので、アジア人と白人を比較していて判ったのでしょう。今から30年前にZ−形成法による目頭切開術が発表されました。今年配の先生方より少し後の時代です。しかしこの手術のデザインは小さくて効果が少なくあまり顧みられないでいました。

その後韓国の医師がZ−形成法を発表したのが1996年です。この手術法は理論的に蒙古襞の拘縮を解除する効果を求めているのでした。私は飛びつきました。それまでは私も、旧い手術法で内田法という約40年前からの定番のW−形成術を主に行っていました。形態は作れるのですが創跡はやや大きい。そして蒙古襞の拘縮の解除の効果が不足です。実は理論的に延長効果はほとんどなく、再拘縮を予防するデザインです。時間軸が逆になりましたが、それより前に行われていた方法(父がModifyしたのもそれです。)三日月型切除法は縦の創跡が残り、それが術後拘縮する。蒙古襞は切除されても、蒙古襞の拘縮を再生産しているデザインです。しかも水かき状態の創跡が凹んで段差になります。今でもチェーン店系の美容整形では行う者がいて、術後修正を求められます。私の行うZ−形成法で修正出来ます。困ったもんです。

21世紀に入って私達の世代の美容形成外科医がメインストリームに登場してから、目頭切開の術式は概念の新鮮化と共に変遷していきました。前段に記載したZ−形成法です。目頭切開は1、内眼角間距離を近づける手術ではある。2、内眼角間距離を離しているのは、蒙古襞の為である。そして二重のラインが平行型になりにくいのも蒙古襞の程度による。3、蒙古襞は内眼角を縦に跨いだ皮膚と眼輪筋の拘縮が構造的原因となっている。この3点が判ってきました。形成外科医の審美眼=形態感と機能的改善の両輪がもたらした3点であると思います。

学会では1の点を強調する古参の美容形成外科医が多かったのですが、我々の世代ではさらに、眼裂横径と内眼角間距離と眼球位置=眼窩間距離をも加味して計算して、目頭切開の適応を検討しています。ただし距離は好みであり、白人の様な1;1;1の横幅にすることはあり得ないし難しい。距離をデザインの第一条件にするのは古い考え方だといえる。2の蒙古襞は東アジア人に特有の構造だが、被さり程度の個体差は大きい。美容整形の時代から、平行型の二重まぶたを望む患者さんは多く、目頭に蒙古襞が被さっていると、これを取らないと出来ないと言われて来ました。しかし取るのではなく、突っ張っているのを解除することが、平行型にするポイントです。それが、3の蒙古襞の拘縮に着目した結果です。内眼角から丸く水かき状に被さった蒙古襞や、まぶたの窓の内側が斜めに直線的なのは、蒙古襞の拘縮によると考えられます。皮膚だけでなく眼輪筋の伸縮性が低下している為です。二重まぶたで眼瞼下垂状態になると内側が挙がらない。二重まぶたにしても内側が挙がらないのは蒙古襞の拘縮によるので、拘縮を解除しないと綺麗な眼瞼の窓にならず、吊り目になる。

この観点から、拘縮の解除を第一目的とすると、やはりZ−形成術の登場となるのです。形成外科医の舞台です。ここで、我々の世代は形成外科を理論から解剖的構造、神経生理学的知識まで体系的に学んでいます。年配者はそう言う教育システムを経ていませんから、判っている医師と新しい知見を理解できないまたは判ろうとしない医師がいらっしゃいます。敢えて言えば美容外科と形成外科と美容整形を混同している人と同じ精神構造でしょう。

学会の議論でも、上記の様な考え方を理解している発表がありました。そしてやはり、その結果は良好で、開瞼にも寄与しています。F先生の症例は私達と同様なコンセプトで手術が施行されていて、他の5名の年配の医師が提示した結果と比べて圧倒的な差がありました。あたかも、私がいつもこのブログで提示する症例と同レベルです。やはり、私達の考え方とコンセプトの優位性が証明された様な学会でした。シンポジウム直後に仲のいいF先生とお互いに褒め合っておきました。その後当院の池田先生とも「やっぱり私達が優位だね!」と顔を見合わせました。そうです。私と池田先生は10年前の学会でこの話で意気投合してから、一緒に診療するきっかけになったのでした。ようやくその面での同志が増えて来たのです。いい治療法を広めるにも、理解できない医師が多いのです。非形成外科医の美容整形チェーン店に巣喰っています。患者さんも引っかからないようにしましょう。今回の学会で聴講して私達はより患者さんに貢献したいと思った所存です。

やはりテーマ一つだけで長々と記述していまいましたので、もう二つのテーマ、上眼瞼下垂手術と下眼瞼手術の学会での勉強の結果は次回説明したいと思います。