2013 . 8 . 26

まぶたの機能と美容医療Ⅶ 眼瞼下垂その5 -診断:自己診断をしましょう-

これまで、眼瞼下垂症診療の歴史、症状、分類、原因等について述べ、治療法について分類してきました。

それぞれに機能と形態が違う患者さんにとっては、自分はどのような程度の機能なのか、形態的にどうしたいかが違うわけです。その前にもう一度、まず医療の発展に伴う目的の段階を述べます。第一次:生命維持・第二次:機能保持・第三次:形態良好化。形成外科医療は保険診療で第二次の目的ですが、第三次目的も加味して差し上げます。眼瞼下垂症はまぶたという目立つ部位なので、その最たるものですから、機能と形態、そして治療の経過のバランスが重視されます。そして、その限りにおいては、性格、人格や人間関係を含めた社会性も、重視されるわけです。

こう考えてみると、治療の適応は、人それぞれによって違います。診断とは、治療の適応を決めることですから、重要です。そこで、手抜きするわけではありませんが、みなさんに予め、ある程度の診断をしていただいて、貴方なりの眼瞼下垂治療の適応を検討してみていただこうと考えました。

  1. 眼裂縦径測定:まず、正面視をします。正面視とは、顔を垂直に立てて、水平方向を見ることです。顎を挙げないでください。細かいことを言うと、医学的には、耳の穴の上縁と下瞼の骨の縁を結ぶ線(フランクフルト・ラインといいます。)が顔の水平線です。この時の。瞼の開きの大きさが、眼裂縦経です。瞳孔中心の垂線を測ってください。皮膚の被さりがあればそれも窓です。8mmはないと上方視で邪魔になります。10mmある人もいます。目の横幅との比でも考えなければなりません。要するに目が普通に開いているかの基準です。普通以下でもいいという人には手術適応とはならないのですが、視界が狭いのは視機能的に無駄遣いをしていることになりますから、社会機能的には手術適応になることが多いようです。
  2. MRD(Margin Reflex Distance):上記眼裂縦径を写真で計測する方法です。瞳孔中心にフラッシュが当たるカメラを使い、そこから瞼縁までの距離を測るのです。物差しを目の前において写真を撮る方法もありますが、より正確には、画像計測ソフトで計算する方法です。MRDは2.5mm以上が正常と考えられ、上方視、正面視、下方視などで計測比較すると、先天性眼瞼下垂か、腱膜性眼瞼下垂かが鑑別できます。先天性眼瞼下垂では上方視で等に開かないのに対し、代償期の腱膜性眼瞼下垂では、結構開くからです。
  3. FMST(Frontal Muscle Stress Test)他:代償期の眼瞼下垂で瞼を開くときに、眼瞼下垂症に対して代償しているか?。①眉を挙げて(前頭筋収縮)いるか?。目を閉じているときから目を開いた瞬間に眉毛が動く代償機能は、ご自分では見えません。誰かに見てもらえば教えてもらえます。でも面倒でしたら、一人で調べる方法はあります。まず目をギュッと強く閉じます。すぐ力を抜いてリラックス状態で目をとじたまま、眉毛を指で(人差し指の親指側の面で)軽く触れます。そこからゆっくり目を開いて、正面視します。かなり動きますか?。または片側が動きますか?。そうであれば、眼瞼下垂症の代償症状です。②顎を挙げているか?。上記の様に、顔面が正面を向いていては前が見にくいとしたら、眼瞼下垂の代償症状です。→二つの眼瞼下垂症に対する代償症状は、前にも述べましたが、頭痛、肩こりの主病因となっていることが多く、痛みでやってられないとしたら、生活機能的には手術適応と考えられます。ほんとですよ!。私の経験では、頭痛肩こりが、眼瞼下垂症の代償症状だと診断した患者さんのうち大部分は生活が楽になったと言いますよ!。しかもほかの代償症状=不眠、うつ状態、食欲不振なども治った人がいらっしゃることは前回述べました。
  4. LF(Levator Function or Excuision)挙筋機能(挙筋収縮距離):この測定は相手が必要です。もちろん、病院では医師が測ってくれますが、今から述べるようにすれば、誰かに測ってもらえばできます。挙筋機能とは、上眼瞼挙筋の最大収縮距離です。目を閉じたときの瞼縁から、最大上方視した際(見えなくても)までの瞼縁の動く距離を計測します。但し、眼瞼下垂症に対す代償性の前頭筋収縮がある場合、瞼縁は1ミリ程度代償されますから、本来は眉毛を抑えて動かないようにして計測しなければなりません。しかし、皮膚が被さっていては瞼縁が見えませんから、上方視をした時点で眉毛を上げてみてください。私が検査する際は、下から見て瞼縁を覗いて計測します。LFが10mm以下であると、先天性眼瞼下垂が主体です。腱膜性では12mmを越えます。
  5. Fenireflin Test:これは薬剤を使うので、病院で行われます。薬剤名はネオシネジンといい、点眼すると数分後にはミューラー筋を収縮させます。約1時間で戻りますが、散瞳して眩しくなるので、その間自動車の運転等には注意が必要です。このテストはミューラー筋を収縮させるので、腱膜性眼瞼下垂症の患者さんに対しては一時的に正常開瞼にでき、腱膜性眼瞼下垂症に対する腱膜修復術や切らない眼瞼下垂症手術LT法ではテスト結果通りの開きを作り出せます。つまり、シミュレーションになるのです。診察室でテスト直後によく開き、鏡で見せ、「ここまでは開きますよ!」と言うと、患者さんは期待しちゃって「楽しみイ~!」といって、手術日を心待ちにされます。こちらは、その通りの結果を出さなくてはならないのでプレッシャーがかかるのですが・・、気合が入るというものでもあります。逆に、先天性眼瞼下垂症では、フェニレフリンテストで開きません。不変の人は、先天性主体なので、挙筋短縮術をトライして、不足ならつり上げ術をお勧めします。最近では、中等度以上の先天性眼瞼下垂症の患者さんは、幼少時に手術されている人がほとんどですので、それでも戻った方に、ゴアテックスや自家移植での吊り上げ法をお勧めする症例がほとんどです。軽度の先天性眼瞼下垂症に腱膜性眼瞼下垂症の合併している人では、フェニレフリンテストでそれなりに開きます。やはり「ここまでは開きますよ!」と言うと、「まあまあこれでもいいね!」というケースと「もの足りない!」という人がいて、手術適応の選択の一助になります。腱膜修復術をまずすべきか?、つり上げ術を加えるべきか?の選択となります。

今回は、診断法のうち自己診断可能な方法も提示しました。もっとも、これで正確な診断をお願いしたい訳ではありません。でも、もし興味を持って、やってみたら眼瞼下垂症を気が付く人がいたら、当院を受診してください。私が正確無比だとは自負するわけではありませんが、手術結果については、形態(美容的)と機能(症状の解消)をバランスよく治療できる自信があります。何分、形成外科と美容外科の専門医を両方取得した医者は、日本には69人しかいませんので。当院のDr.Morikawa ,M.D., Ph.D とDr.Ikeda ,M.D.はそのうちの二人ですから、安心です。余り大きな声ではいえませんが、69人のうち、年配者で勉強不能者。自称美容外科医but偽形成外科医。形成外科医not but 美容外科医など意味の無い人たちが多いのです。形成外科を利用した美容外科医は私の見る限り…。当院=東京皮膚科形成外科と敢えていえばリッツとベリテ+金儲けの経営者を外せばシロモト高須くらいでしょう。20人はいないかな?。

次回からは眼瞼下垂症を念頭に入れた、重瞼術、目頭切開、眉下切開などの手術を説明していきたいと思います。

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