2013 . 11 . 28

鼻の美くしさⅠ:アップノーズとショートノーズ。部分とバランス。

外鼻は形態だけでなく、量的な差異が美しさに繋がるものです。そして、鼻の中でも上から下まで各部位のバランスと周囲との調和が、顔全体の美しさと大きく関わる部品なのです。

上から眉骨(眼窩骨上内側縁)と眉間の隆起、鼻根(鼻骨上縁)へのYの字の連続性。鼻陵=鼻筋の通ったしかし斜めから見ればカーブを描くライン。鼻尖の上から鼻尖が立ち上がって鼻柱に向かって急激に落ちるカーブ=はっきりした鼻尖。鼻柱はスッと直線的で、鼻唇角ははっきりしている。

こんな美しい鼻の形を持っている人は日本人ではいないかも知れません。日本人をはじめとした、東アジア人つまり非白人の外鼻の特徴として、絶対的に低い。幅がある。さらに周囲の顔面も抑揚のない平板。これが標準的な東アジア人なのです。またぞろ、形態人類学の論議になりますが、何故非白人の鼻は低いのでしょう。それには、外鼻が何故あるのか?、ひいては鼻腔(鼻の孔の中)は何をするところなのでしょうか?。

現在の定説では、鼻腔は吸気を温めるためとされています。また加湿もされると言われています。呼吸器の終点である肺に到達するまでに体温近くになっていないと、肺の血管が収縮して、ガス交換がなされない。つまり酸欠になるということです。また吸気が乾燥したままだと、粘液が蒸発してしまい、粘膜細胞が傷むのです。それにある種のウイルスは(インフルエンザが代表です)、乾燥環境の方が増殖します。

白人は中央アジアから、ヨーロッパ大陸に進出する数万年の間に寒冷に晒され、色白になり、鼻が高くなったというのです。外鼻が高いと、空気の通り道は細くはなりながら、当然体積が増えます。細い道の方が吸気が鼻腔の外壁に接触するので温まるということです。こうして白人の中では外鼻が高くなる突然変異遺伝子を備えた個体から継代していっったと考えられています。特に北欧人は平均血に差があるほど高いという数値があります。

東アジアに人類が進出した際には、地球全体が氷河期を抜け、しかも、温暖地を進出経路としたので、鼻はあまり高くなる必要がなかったというのです。ここで矛盾が生じます。東アジア人のうち一部がであるモンゴルやシベリア経由で来たために、一重瞼(蒙古襞も含む)と腋臭症の減少とい変異が生じたのは、これまで強調してきました。鼻に関しては何故か低いままで、乾燥と寒冷に耐えてきたのでしょう?。不明です。但し、白人に比べれば平均が低いというだけで、黒人に比べれば平均は高いのは誰もが知っているところですよね。つまり、約20万年前に誕生した人類は、約7万年前にアフリカから、アジアとヨーロッパへ進出した際に、寒冷地適応したのですが、鼻の高さの進化には差が付いたということです。

では日本人で綺麗な鼻の人はいるのでしょうか?。ですからぁ~、綺麗な鼻は高さだけではないのです。バランス、形、周囲との関係。これらの点をもう一度検討しましょう。さらに、この際の改善可能な点つまり治療法を太字で記していきます。

形態は3次元ですから、前後、上下、左右の比です。これをバランスとしなければ評価の仕様がありません。レオナルドダビンチが5:8の黄金比を書いています。そうあの煙草の箱や画用紙の比です。

鼻の縦と横の比はこれが美しいとされます。みなさんも、実際に定規を当ててみましょう。上端は眉間までです。日本人では幅がある人が多く、縦が短い人が多いのですが、ギリギリいい比の人もいます。さらに周囲との関係でいうと鼻翼の幅は、内眼角(眼頭)間距離と等しいのがバランスいいと考えられています。幅が太い鼻をバルキーノーズと言います。そこではa,幅の短縮が求められる訳です。上端は動かせませんから、縦を伸ばすためには、鼻尖の位置を下げることになります。b,鼻尖下制術とか延長術と呼ばれる方法です。また鼻骨の幅が異様にある人、いわゆるデカ鼻には、c,鼻骨々切り術がありますが、男性に多く、強そうでいいともされます。女性には少ない変異です。

前項は、正面視でのバランスでしたが、横から見ると鼻の高さ(前後長とその長さが見えます。この場合の上端は一番低い鼻根です。ところがここでは、鼻尖の高さのが低い日本人は長さも短いので、バランスは悪くないのです。私は35㎜:56㎜で5:8です。問題は、鼻筋の流れです。鼻根(一番低い点)から鼻骨尖までのラインは骨です。鼻骨尖に角があり、鼻尖に向かって傾斜が落ちる形、鉤鼻といいます。日本人は鼻骨が低かったので少なかったのですが、最近の栄養状態の改善で、鼻骨が発達してきたのに、軟骨部の発達が追い付かなくて鉤鼻になった人が増えてきています。鉤鼻は品がないので、女性では治したいところです。この部位はd,ヒアルロン酸注入やシリコンプロテーシスで安全に改善できます。ここで大事な点を付け加えます。横から見て、鼻筋が鼻尖にどう移行するかです。綺麗な鼻尖の上にはわずかな緩やかな凹みがあります。その方が鼻尖を際立たせます。白人の美人やハーフによく見られます。いわゆるツンっとした鼻です。決して鼻尖が上方にあるのではなく、鼻尖が前を向いている形、これを”アップノーズ”と言います。今後はよく見てみてください。ちなみに、鼻尖の位置が上方にある状態をアップノーズという人がいますが、これは”ショートノーズ”です。アップノーズの製作には、まずe,ヒアルロン酸でのシミュレーションが適しています。私は得意としています。軟骨移植でも希望に応じて作れます。

これも比率に関係しますが、鼻根から眉間への3次元的な曲面。日本人では鼻根の位置が下にある人が多いのですが、ここを(鼻の一番低い点)を前に出して、鼻筋の最上点を上にあげればいいかというと、そうすると鼻筋が棒状になってしまいます。鼻筋は眉間へつながり、そこから、眉骨に逆三角形につながっているのが、正常です。この点は隆鼻においてf,ヒアルロン酸注入での隆鼻術における重要な留意点です。私達は、「彫りを作る。」と呼んでいます。

もうひとつ鼻尖から鼻柱へのカーブと、鼻柱と唇(鼻の下も唇の一部で白唇部と言います。)の角度は大事です。鼻尖が低い位置にある方が綺麗なのは言うまでもありません。鼻翼との位置関係で、鼻尖の方が下にある。いわゆる”矢印鼻”は今やタレントさんのトレンドです。先程の下制術や延長術だけでなく、ヒアルロン酸によるシミュレーションも慶ばれます。しかし、鼻尖が下方移動した際、鼻柱が伴っていないと、奇異になります。これを”魔法使いのおばあちゃん鼻”と言います。当然鼻唇角は鋭角になり喰いこんだ鼻下となり、いじわるっぽい顔になります。これも周囲との関係ですが、日本人では出っ歯=歯槽骨傾斜強い人が多く、当然鼻唇角は鋭角な人が多く、品がない感じになりやすいのです。鼻尖の位置を下げる際には、周囲とのバランスを取りながら、行う必要があるのです。方法はg,ヒアルロン酸で鼻尖と同時に形成していく。実はここだけのプロテーシスは安全に行えます。

最後に問題にするのは、鼻尖の形、前から見てここが鼻尖と判るように、でも形も綺麗に。なら一言、父と私の秘密だったのですが、明かします。”Diamond型の鼻尖”プロテーシスでこれを作るのが父の定番でしたが、やはり、数%の合併症を起こします。はっきり言って、私はこれの修復を何人もしています。まあそれは天命だから(父の墓参りのたびに報告しています。)させてもらうしかないとして、私は、現在h,耳介軟骨移植の3段重ねで”Diamond型”を作成できます。自然界にありうる形なのに、綺麗ですよ。手間と時間がかかりますが、手術後の患者さんの驚いたような悦び様には変えられません。

鼻だけでも、いろいろ細かい点を留意しているのを、判ってもらえましたか?。近々症例が提示できます。そのための下知識でもあります。実際に何をするかは、【お、た、の、し、み!】に しておきます。

今回最後に、大事なことを忘れていました。書き加えておきます。これまで、何度も強調してきましたが、鼻に限らず、人はそれぞれに違う顔を持っています。ですが、求めるいい形は、万人の意見の集約であり、一つの方向性を見出せます。標準的な理想像はあり得ますが、見方にはバリエーションがあります。ですから逆に、診療の場面では、どの点をどう治したいのかで、患者さんとの意見交換にになることも多くあります。かといって、こちらにできることにも医学的に限界があります。患者さんの側には経済的、時間的制約があります。そこの折り合いをつけるまでが大変なのです。できましたら、患者さんは、ご自分を把握してきてらいいんされるとお互いの理解が深まり、信頼関係が築けると思います。

 

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