2013 . 12 . 8

美容医療の神髄番外編-本邦の医療の経緯Ⅱ⇒形成外科医の卒後教育=認定医とは?。ⅱ

前回の続きとして、医師、この分野では形成外科の認定医の優位性と、その為の医師としてのあるべき教育研修を、自らの経験から徒然記してみます。

その前に、市民から受ける卒前教育での誤解をちょっと説明しておきます。

医学部卒前教育を受け、医師国家試験に合格すると、何でも知っていて、どんな診療もこなせると思っている市民が、多くいらっしゃいますが、大きな間違いです。診療の行為の手技は、医学部では学びません。学ぶのは、知識だけです。ましてや知識は机上の言や二次元での絵です。実体のある人を学ぶチャンスはほとんどありません。ですから、医師は卒後教育が大事です。一般の会社でも、仕事は就職後に学ぶでしょう。

さて、もう一度私の研修歴を思い返してみると、同期で四人の新人が形成外科に入局しました。北里大学病院に就職するのですが、北里大学医学部形成外科講座の医局に身を預けるので入局と言います。

そこにはまず、チームが二つあり、それぞれに六年目のチーフレジデント(レジデントとは、研修期間の医者です。)、二~五年目の一~二人に新人が二人ずつです。もちろんその上に教授陣=教授の下に助教授(今は準教授と言います。)その下に講師と、研究員(今は助教と言います。)が責任者としています。診療と言っても、ほとんど練習みたいなもので、初めは注射や点滴や採血の訓練を毎朝し、上級医の手術の助手をし、術前術後の患者さんのお世話をします。初めて手術したのは医者になって約六か月後で、小児の副耳珠切除でした。それでももちろん、耳の先天異常の勉強をしていないと手術させてもらえません。初めて手術したときは、やっと外科医になれたと思い感激しました。

一年目の後半に麻酔科を三か月研修し、通常の麻酔はかけられるようになりました。二年目は外科研修を一年間。三年目は整形外科研修を一年間しました。四年目には地方病院に出向しての形成外科研修ですが、脂の乗った八年目の医者と二人きりなので、ほとんど手術が回ってきませんでした。逆に勉強にはなりました。五年目で大学病院に戻って、半年は形成外科専修ですが、六年目のチーフが症例を占めてしまうので、大きな手術は30%くらいしかさせてもらえませんでした。瞼の腫瘍を取る際に教授に細かく教えてもらいながら、「この解剖はお前が将来眼瞼下垂や重瞼術をするときに役立つからな。」と言われ、大変ためになり、優しい先生だなと思ったものです。5年目の後半は、救命救急センターに派遣されている4人の形成外科チームに常駐します。とは言ってもあらゆる三次救急患者(生き死にを左右する様な、重症患者や、緊急的な専門的治療を要する搬送患者)を診療します。形成外科医は少ないのでどんどん紹介来院します。主にここでは重症熱傷、切断指等の顕微鏡的手足の外科、顔面骨折と顔面外傷患者を担当しますが、多発外傷患者を担当することもあります。生命と人間を診る医療の倫理も学べました。そして認定医試験の10症例のうち3症例はここで経験したものです。

私達は外科系ですから、実際には手術といっても簡単なものではなく、予め解剖や生理機能の知識を勉強するのは当然ですが、これもやはりは紙の上の2次元の像です。そうしてグループを組む上級医の手術時に実物を初めてみるのですから、何がなんだか判りません。「これが神経だよ。」「この血管は温存しなければならないよ。」などと教えてもらい。初めて実物にも触らせてもらい。つまんでみて感触を知ったりして、「あゝ、これが教科書に図が載っていた神経か。」などと五感で覚えます。何例か助手しながら教えてもらい、いよいよ4~6年目に認定医試験に提出するような、大きな手術をさせてもらえるのです。  

認定医が目標ではありませんが、認定医の症例数を満たす為には、大きな手術を一定数完成させなければなりません、しかもいい結果が写真で判る様な症例をカテゴリー別に10例は要します。さすがに、初めて術前検討会で合格を得られて手術させてもらっても、完全にうまくいかない事もあります。ですから、巡り合わせというか、結果を得られる症例に順番が当たるかは、運でもあります。それでも北里大学医学部形成外科医局では、研修医がみんな6年間で基準になる症例数を集められるだけの全国有数の研修期間でした。

具体的に認定医を受ける為の、症例経験のうち、その後のためにもとってもためになった症例の意味を2例ご紹介します。1例目はなんと言っても耳下腺腫瘍。多形性腺腫といい良性ですが、完全摘出をしないと再発してしまうので耳下腺の浅い部分をまとめて切除する必要があります。顔面神経はその下にあるのですが、良性腫瘍ですから、4本の枝を確実によけて残す必要があります。耳の裏側から出る本幹から追っていって剥がしていき、かといって腫瘍は傷めない様に丁寧に取る。文字通り木の枝の様に神経を残せた時はホッとしました。今でも目に焼き付いています。顔面神経は分枝のバリエーションが少ないので、一度見れば次からは、いつも通りの目の運びで回避できます。これは美容外科医療においての重要な優位性となります。フェイスリフト手術を始めとした、顔面の手術において、顔面神経走行と深さ、層を知っていなければ「アッ、切れちゃった。」という事になります。形成外科認定医でなければ、フェイスリフトをしてはいけないと思います。  もう1例は、眼瞼下垂の手術。それまで何度か助手をしながら、よく見て、時には触れさせてもらっていましたが、今度は自分で、層ごとにに感触を確かめながら、挙筋と挙筋腱膜を同定するのです。層の構造は今まで何度もまぶたの〜で説明した通りです。先ず、皮膚はシャキシャキ切れ、眼輪筋はムニュムニュ切れる。SOOFは柔らかいので、ごそっと取ると、眼窩隔膜は結構硬い膜なのでジョリっと切るのですが、眼窩脂肪が押すと出るまで開き、眼窩脂肪を引っぱりながら上によけると、眼瞼挙筋腱膜とその上方に筋体が同定できます。初回は助手をしながら監視してくれる上級医に確かめながら進めますが、2例目からは見ながらうなずいているだけです。3例目からは助手をもしないで、一回覗くだけでした。こうして、二次元の勉強から三次元の実物をいじれる様になるまでは、教えてもらわなければ怖いものです。形成外科医局で研修しなければ、そんな機会はありません。他科から美容外科に転科したり、美容外科開業医に新人で就職した医師は、この研修を経ていません。少なくても形成外科認定医以外には眼瞼を切開する手術をさせてはいけないと思います。

もう一つ座学も、実はためになりました。それまで実際には経験していない症例でも勉強しておくと、実際に症例に遭遇した際に対処可能なのです。また経験した事のある症例ももう一度勉強すると、今度はバリエーションに対処できる様になります。人の身体は十人十色という様に、微妙に違うからです。解剖や、機能生理の知識や、創傷治癒の知識は、言葉で頭に入れておかないといざというときに出てこないし、論文を読む際にも意味が解らない事になります。いわゆる、専門分野の知識と単語(私達認定医は、形成外科医の言語と呼びます。)を身に付けたのはこの、認定医試験勉強をした1年でしたね。

あれこれ、形成外科認定医の優位性とそれを一つの目標とする形成外科卒後教育の優位性について述べましたが、私が言いたいのは、美容医療においての必要条件だという事です。美容医療とは、形成外科と美容外科を含めた範疇だと考えています。ただし本邦では、美容外科医療には教育システムが構築されていません。何故か?、儲け主義のチェーン展開などや、他科で研修してからの転科者。それに卒業後即開業医に就職する者がいます。もちろん彼らには美容外科を医学的に適正な診療を学ぶ機会はありません。医療はビジネスではなく、科学です。それは美容医療でも該当しますし、美容外科においてもその意識を持ってするべきです。昨今、形成外科研修を終了して、認定医を取得した医師が、美容外科を診療する様になってきたのは望ましい事だと思います。

ただし、美容外科医療は、形成外科医療と違いがあります。その点についてはまたお話ししていきたいと思います。

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