前前回突然停めてしまいましたが、前回も面白かったでしょう。
では、続きです。
切らない手術は軟部組織通しをつなぐか、軟部組織を硬組織に吊り上げることで、「挙げる。」「寄せる。」ことを狙う手術です。その仕組みは単純ですよね。但し切る手術と違って、小さな瘢痕はしかできませんから、面で引き揚げることは難しく、糸にすべての荷重や負荷がかかることになります。さらに実は、糸がかかっている軟部組織は本来軟らかいのですから、糸で引き揚げた組織の負荷は糸にかかるのではなく、糸がかかった軟部組織の点や線にかかるのです。
つまり、糸での切らないの手術が戻るのは、糸のせいだけではなく、糸がかかった軟部組織が裂けていって、ずれていくからです。
私は、大学の形成外科で解剖や生理を学んだので、ダウンタイムをやり過ごせる人には、切開手術をすることも少なくなく、しかも同時に父の銀座美容外科で一緒に診療をしてきましたから、症例も多いのです。その限りでは、ちゃんと切開手術を受けられる。数少ない者と自負しています。その中い、切らない手術の持続性の低さに対して、最終手段として切開手術を受けられる症例もかなり含まれます。その際、例えば、埋没法の重瞼術を受けたのに戻ってしまった症例では、同じラインを作る際には、同じところを切開しますから、前に入っている糸を確認します。すると、必ず糸はあり、ほどけても切れてもいません。ただ、結び目が(通常表側)皮膚や、眼輪筋の表層になくて、眼輪筋より深く、たいていは眼窩隔膜の上にあります。つまり、埋没法重瞼術が戻るのは、糸の位置がずれてきたためだと言うことを、目で見て知っています。埋没法重瞼術を5回以上受けて戻って(他院施行です。)最後に私が切開した症例もありましたが、糸は1本もほどけたり、切れたりしていませんでした。切らないで糸で吊り上げるリフト手術の後戻ったから、今度は切るフェイスリフトをする場合でも、中に糸が見つかることが多いのですが、確認すると、支点がずれていて糸がたわんでいるものです。繰り返しますが、切らない糸での手術では、糸が切れたり、ほどけたりするのではなく、支点がずれるから戻るのです。
そこで、切らなくても戻りにくい手術のためには、糸のかかる支点がずれにくければいいのですね。糸の材質、太さ、形状が左右すると思います。もちろんそれをどの層に、どういうデザインで入れるかも、持続性を左右するはずです。
また、切らない手術は糸で締める訳だし、切る手術でも切るから縫い上げる、縫い合わせる。その際に使われる糸にはいろいろな種類があります。いろいろあるのは目的がいろいろあるからです。その事を知らなければ、切らない手術の内容の説明も理解いただけない訳です。
それでは、分類から説明しましょう。今回は切らない手術の説明に終始しようとも考えたのですが、もっと基本的な、糸の話をしておいたほうが理解をしやすいと考えました。次回ページを変えて説明します。